怪奇蒐集帳(短編集)

naomikoryo

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29)遺跡の闇(静岡県)

静岡県には、古くから語り継がれる遺跡がある。
 その遺跡は、縄文時代のものとされ、かつては大規模な集落があったと考えられている。

 しかし、考古学者たちは、決して触れてはいけない何かを発掘してしまった。

 その日以来、彼らは一人ずつ姿を消していった——。

 私はオカルト雑誌のライターをしている。
 全国の心霊スポットや怪事件を取材し、記事にまとめるのが仕事だ。

 ある日、静岡県の知人からこんな話を聞いた。

 「◯◯遺跡って知ってるか?」

 「名前くらいは聞いたことがあるな。縄文時代の遺跡だろ?」

 「そう。でも最近、あそこで発掘調査をした学者が、次々と失踪してるらしいんだよ」

 私は興味を引かれ、さっそくその遺跡を調査することにした。

***********************************

 遺跡は、山間部の丘陵地に広がる静かな場所だった。

 だが、現場に着いた途端、異様な雰囲気を感じた。

 空気が重く、鳥のさえずりすら聞こえない。

 遺跡には、崩れかけた竪穴式住居の跡が残っていた。

 その中心に、最近掘り返された大きな穴があった。

 近くにいた発掘作業員に話を聞くと、彼は不安げに言った。

 「……あの穴を掘ってから、みんなおかしくなったんです」

 「おかしくなった?」

 「発掘チームのリーダーが、夜中に“何かが呼んでいる”と言い出したんです。それで翌朝、姿を消した……」

 私は背筋が寒くなった。

 「その後、どうなった?」

 「それからも、一人ずつ……みんな消えていくんです。必ず、あの穴を覗いた者から順番に。」

 私は、問題の穴を覗き込んだ。

 そこには——

 古びた石棺が埋まっていた。

 私は震えた。

 これは、日本の縄文遺跡には極めて珍しいものだった。

 慎重に近づき、石棺を調べる。

 そこには、奇妙な模様が刻まれていた。

 しかし、最も異様だったのは——

 石棺が、ほんのわずかに開いていたことだった。

 その瞬間、耳元で囁くような声が聞こえた。

 「……カエレ」

 私は、息を飲んだ。

 誰もいないはずなのに、確かに声がした。

 作業員も青ざめていた。

 「やっぱり……これが原因なのか」

 「これ?」

 「石棺を開けた翌日から、人が消え始めたんです。学者たちも……みんな“夜に何かを見る”って言って……」

 私は、全身の毛が逆立つのを感じた。

 これは、ただの遺跡ではない。何かが封印されていたのだ。

 その夜、私は遺跡の近くの宿に泊まることにした。

 深夜——

 ふと目が覚めた。

 耳を澄ますと、外から微かな足音が聞こえる。

 私は、窓の外を見た。

 そこには——

 白い着物を纏った男が、じっとこちらを見ていた。

 顔はぼやけており、目だけが異様に暗い。

 私は息を飲んだ。

 彼は、失踪した学者の一人だった。

 男は、ゆっくりと口を開いた。

 「あの穴を……塞げ……」

 次の瞬間、彼の姿は消えた。

 私は、飛び起き、すぐに遺跡へ向かった。

 そして、問題の穴を見た。

 そこには——

 また一つ、新しい足跡があった。

 そして、その先には——

 石棺の蓋が、さらに開いていた。

 私は、恐る恐る石棺を覗き込んだ。

 すると、中には干からびた人骨が詰まっていた。

 私は震えた。

 そして、奥の闇の中で——

 何かが動いた。

 次の瞬間、耳元で囁き声がした。

 「お前も……仲間に……」

 私は全力で逃げ出した。

 翌朝、私は発掘チームの責任者に話をした。

 彼は顔を青ざめ、すぐに調査を中止することを決定した。

 数日後、遺跡は封鎖され、石棺のあった穴は埋め戻された。

 だが——

 その後も、あの遺跡周辺で**「白い着物の男を見た」という目撃証言**が続いている。

***********************************

 もし、あなたが静岡県の遺跡を訪れた時——

 決して、封印された石棺を開いてはいけない。

 なぜなら、それを開けた瞬間——

 あなたも、遺跡の一部になってしまうのだから。

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