怪奇蒐集帳(短編集)

naomikoryo

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35)消えたショッピングモール(山口県)

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山口県某所に、かつて賑わっていたショッピングモールがあった。
 大型スーパー、映画館、ゲームセンター、飲食店が立ち並ぶ、地元住民に愛された施設——。

 しかし、ある時を境に、このショッピングモールには誰も近づかなくなった。

 なぜなら、そこでは奇妙な“客”が出ると噂されているからだ。

 私は地方の廃墟や心霊スポットを取材するライターだ。
 山口県にあるという“曰く付きのショッピングモール”について調べるため、地元の元従業員に話を聞いた。

 「ここ、数年前までは普通に営業してたんですよ。でも……ある日から“おかしく”なったんです」

 「おかしく?」

 「深夜、清掃員が“ありえないもの”を見たって言い出して……」

 私は、さらに詳しく聞くことにした。

***********************************

 ショッピングモールの閉店後、清掃員たちは館内を巡回しながら掃除をする。

 深夜2時を過ぎた頃、ある女性清掃員がエスカレーターの前を通った。

 その時——

 エスカレーターが、勝手に動き出した。

 「……?」

 彼女は不思議に思ったが、誰もいないはずのフロアに一人の女性が立っているのを見つけた。

 白いワンピースを着た、長い髪の女性。

 その女性は、ゆっくりとエスカレーターに乗った。

 清掃員は驚き、すぐに警備員を呼ぼうとした。

 しかし、その瞬間——

 エスカレーターの途中で、女性の姿が消えた。

 清掃員は、すぐに監視室へ駆け込んだ。

 「監視カメラを確認してください! さっき、エスカレーターに誰かいました!」

 警備員とともに映像を巻き戻す。

 しかし——

 カメラには、誰も映っていなかった。

 だが、エスカレーターは確かに“勝手に動いていた”。

 清掃員は、その夜から体調を崩し、仕事を辞めてしまったという。

 そのショッピングモールでは、奇妙なことが続いた。

 ある日、買い物中の母親が、ふと気づくと子供が消えていた。

 「さっきまで隣にいたのに!」

 慌てて探し回るが、どこにもいない。

 モール全体が騒然となり、防犯カメラを確認することになった。

 すると——

 映像には、子供が一人でエスカレーターに乗り、上の階へ向かう姿が映っていた。

 しかし、その後——

 子供はカメラの映像から消えた。

 上の階のカメラには、どこにも子供の姿はなかったのだ。

 警備員が総出で探したが、結局、その子供は見つからなかった。

 まるで、エスカレーターの途中で“どこかへ消えてしまった”かのように——。

 私は、このモールの地図を調べた。

 すると、不自然なことに気がついた。

 公式の館内案内には、“3階”が記載されていなかった。

 「3階は、昔使われていたけど、今は閉鎖されてるんです」

 元従業員の話によれば、3階にはかつてゲームセンターやレストランがあったが、突然閉鎖されたという。

 「でも……3階に行こうとすると、“何かがいる”って言う人が多かったんですよ」

 私は、ますます興味を持ち、閉鎖された3階へ行ってみることにした。

 夜中、私はモールに忍び込んだ。

 エスカレーターは動いていないが、私は階段を使って3階へ向かった。

 3階は、ほとんどの電気が消えており、廃墟のような雰囲気だった。

 しかし、一番奥の店舗の扉が——

 ほんの少し開いていた。

 私は、恐る恐る中を覗いた。

 すると——

 白いワンピースの女性が、じっとこちらを見ていた。

 私は、叫びそうになった。

 彼女は、無表情のままこちらを見つめている。

 そして、ゆっくりと口を開いた。

 「……戻れなくなるよ」

 その瞬間、背後から冷たい風が吹き抜けた。

 私は、全力でその場から逃げ出した。

***********************************

 数年後——

 そのショッピングモールは、突如として閉鎖された。

 理由は「老朽化」とされたが、地元の人々は皆、**“あの女のせいだ”**と囁いた。

 現在、その跡地には新しい施設が建設されているが——

 工事関係者の間では、こんな噂がある。

 「深夜、エスカレーターが勝手に動く」

 「3階から“誰か”がこちらを覗いている」

 「閉鎖されたはずのショッピングモールが、霧の中に見えた」

 もし、あなたが山口県で閉鎖されたショッピングモール跡地を見かけたら——

 決して、中に入ってはいけない。

 なぜなら、そこでは今も——

 消えた人々が“買い物”を続けているのだから。
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