怪奇蒐集帳(短編集)

naomikoryo

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37)半年で潰れる店

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その場所は、駅前の大通り沿いにあった。
 一等地とは言えないが、客足は途絶えない立地。

 だが、どんな店が入っても、半年と持たずに潰れてしまう。

 それが、十年以上続いているのだ。

 私は都市伝説を追うライターだった。

 「○○駅前のテナント、知ってる?」

 地元の知人から、奇妙な話を聞いた。

 「いや、どうかしたのか?」

 「何をやっても、半年で潰れるんだよ。
 ラーメン屋、カフェ、古着屋、全部ダメ。店主が体調崩したり、借金抱えたり……」

 私は興味を持ち、その物件について調べることにした。

***********************************

 私は不動産会社を訪ね、過去に入居した店舗を調べた。

 すると——

 ここ十年間で、十数件もの店が入れ替わっていた。

 「やっぱり、この場所……何かあるんですか?」

 担当者は、渋い顔をした。

 「……正直、訳がわからないんですよ。立地は悪くないのに、どの店も長続きしない」

 「オーナーは?」

 「一応いますが、表に出てこないですね。貸してるだけで、何も言わない」

 私は、気味が悪くなった。

 その夜、過去にこの物件を借りていた元店主に話を聞いた。

 「確かに、何かおかしかったよ」

 カフェを経営していたNさんは、青ざめた顔で話し始めた。

 「オープンした頃は順調だった。でも、3ヶ月目くらいから、急に客足が遠のいたんだ」

 「それは、経営の問題では?」

 「それならいいんだけど……」

 Nさんは、震える声で続けた。

 「ある日、深夜に店に行ったんだ。仕込みのためにね。
 でも、店の奥から……誰かの話し声が聞こえたんだよ」

 私は、ゾッとした。

 「誰か、店に忍び込んでいた?」

 「いや……違う。奥には誰もいなかった。でも……」

 Nさんは、しばらく沈黙した後、こう言った。

 「そこに“何か”がいた気がする。」

 Nさんは、店に設置していた監視カメラの映像を見せてくれた。

 日付は、閉店後の深夜2時。

 誰もいない店内に、“黒い影”が映っていた。

 影は、店の奥の壁際に立ち、じっとレジの方を見ている。

 そして——

 ゆっくりと奥へ消えていった。

 「この影……?」

 「俺も、正体はわからない。でも、その後、急に体調が悪くなって、店を畳むしかなかった」

 私は、鳥肌が立った。

 私は、過去にこの場所で店を開いた他の店主たちにも話を聞いた。

 すると、彼らは皆、同じことを言った。

 「深夜、奥から“誰かの気配”を感じた」
 「開店後、妙に体調を崩すようになった」
 「店の奥に“影”を見た」

 さらに、不思議なことがあった。

 どの店も、潰れる直前に“壁に染みができた”と言うのだ。

 私は、現在この物件に入っている居酒屋のオーナーに頼み、店の奥を調べさせてもらった。

 そして——

 壁の一部に、妙な黒い染みが浮かんでいるのを見つけた。

 まるで、人の形をしているような染みだった。

 「これ……最近、急に出てきたんですよ」

 オーナーは、不安げに言った。

 私は、思わず壁に手を当てた。

 冷たい。

 そして、その瞬間——

 耳元で、誰かの囁きが聞こえた。

 「……ここに……いる……」

 私は、不動産登記を調べ、この物件の過去を追った。

 すると、ある事実が判明した。

 30年前、この場所には「仕立て屋」があった。

 しかし、その店の主人が店の奥で自殺していたのだ。

 遺体が発見された時、主人の体はすでに腐敗し、壁に黒い染みが広がっていたという。

 その後、店は取り壊され、今のビルが建った。

 だが、そのビルに入る店は必ず半年で潰れる。

 私は、恐怖で背筋が凍った。

 30年前に死んだ主人は、今も“奥”にいるのではないか?

***********************************

 それから数ヶ月後、あの居酒屋も潰れた。

 「オーナーが急に“誰かが見える”って言い出して、店を辞めたんです」

 新しく入ったカフェも、半年持たずに閉店した。

 理由は——

 「夜中、誰かが奥に立っているのが見える」

 結局、その物件はまた空き店舗になった。

 だが、それから1週間後——

 私は、恐ろしいものを見た。

 夜、ビルの前を通りかかると——

 誰もいないはずの店の奥に、“黒い影”が立っていた。

 じっと、こちらを見ているようだった。

 もし、あなたが新しい店を開こうとしていて——

 半年ごとにテナントが変わる物件を見つけたら——

 絶対に借りてはいけない。

 なぜなら、その場所には——

 今も“前の店主”が居座っているのだから。
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