怪奇蒐集帳(短編集)

naomikoryo

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67)赤い橋の女(大分県)

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大分県には、昔から不気味な噂のある橋がある。
 それは、**「夜中に一人で渡ると、赤い女に呼ばれる」**というものだ。

 「橋の真ん中で後ろから呼ばれても、絶対に振り向いてはいけない」
 「振り向いた者は、二度と帰れない」

 しかし、最近になって、この噂が現実となる事件が相次いでいるという。

 これは、実際に起きた出来事である。

***********************************

 大学生のTさん(20歳・男性)は、友人たちと肝試しをすることになった。

 「大分の都市伝説って、なんかないかな?」

 そう言うと、友人のYがスマホを見ながら答えた。

 「あるぞ。“赤い橋の女”っていう噂、知ってるか?」

 「夜中に一人で橋を渡ると、赤い着物の女に呼ばれる」
 「もし振り向いたら、そのまま消えてしまう」

 Tさんは笑った。

 「よし、試してみるか」

 午前1時、TさんとYは、その橋へ向かった。

 山の中にぽつんと架かる赤い橋。

 昼間は観光スポットとして有名だが、夜は様子がまるで違った。

 街灯はなく、暗闇が橋を飲み込んでいた。

 「なんか、やばくね?」

 Yが震える声で言った。

 Tさんはスマホのライトをつけ、橋を渡り始めた。

 コツ……コツ……

 靴音が響く。

 風が止み、森の中の虫の音も聞こえない。

 異様な静寂が広がっていた。

 橋の真ん中まで来たとき——

 「ねえ……」

 背後から、かすかな声がした。

 女の声だった。

 Tさんは、心臓が凍りついた。

 「おい……誰かいるのか?」

 Yが、怯えた声を出した。

 だが——

 「ねえ……」

 もう一度、声がした。

 Tさんは、無意識に振り向こうとした。

 その瞬間、Yが叫んだ。

 「振り向くな!!」

 Tさんは、ハッとして足を止めた。

 後ろを見るな。

 でも、気配を感じる。

 背後に——

 赤い着物の女が立っている。

 Tさんは、恐怖で足がすくんだ。

 だが、スマホの画面に映る橋の影に——

 白い足が見えた。

 裸足の女の足。

 「ねえ……こっち、向いてよ……」

 女の声が、すぐ耳元で囁いた。

 Tさんは、全身の血の気が引いた。

 「逃げろ!!」

 YがTさんの腕を引っ張り、全力で橋を駆け抜けた。

 二人は、橋を渡りきったところで立ち止まった。

 「はぁ……はぁ……」

 振り返ると——

 女の姿は、どこにもなかった。

 しかし、橋の上には——

 赤黒い足跡が点々と残っていた。

 だが、それは橋の途中で途切れていた。

 まるで、途中で消えたかのように。

 翌日、Tさんたちは地元の老人に話を聞いた。

 すると、老人は青ざめた顔で言った。

 「やっぱり、まだいるんじゃな……」

 「まだ?」

 老人は、重々しく語った。

 「昔、あの橋で女が投身自殺したんじゃ」
 「恋人に捨てられ、赤い着物を着たまま、川へ身を投げた」

 「それで……?」

 「それ以来、橋の上に女が立つようになったんじゃ」

 「夜中に橋を渡る者を呼び、連れて行こうとするんじゃよ……」

 Tさんは、背筋が寒くなった。

 そして、老人は最後にこう言った。

 「一度“赤い橋の女”を見た者は、また呼ばれる」

 「……呼ばれる?」

 「次は、逃げられんかもしれんぞ」

***********************************

 もし、あなたが大分の「赤い橋」に行くことがあれば——

 深夜に、決して一人で渡ってはいけない。

 そして、もし——

 「ねえ……」と呼ばれても、絶対に振り向かないこと。

 なぜなら、その瞬間——

 あなたは、赤い橋の女に連れて行かれるのだから。
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