怪奇蒐集帳(短編集)

naomikoryo

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75)消えた訪問者

1. 奇妙なインターホン
 Mさん(30代・男性)は、都内の小さなマンションに一人暮らしをしていた。

 ある夜、深夜1時を過ぎた頃——

 「ピンポーン」

 インターホンが鳴った。

 こんな時間に誰かが訪ねてくるはずがない。

 Mさんは、ドアスコープを覗いた。

 誰もいない。

 「……悪戯か?」

 Mさんは、そのままベッドに戻った。

 しかし、数分後——

 「ピンポーン」

 また鳴った。

2. 映らない訪問者
 Mさんは、少し気味が悪くなった。

 「もしかして、モニターに映ってないだけか?」

 インターホンの画面を確認する。

 しかし——

 画面には、何も映っていなかった。

 「……」

 怖くなり、Mさんは居留守を決め込んだ。

 だが、また——

 「ピンポーン……ピンポーン……」

 今度は、連続で鳴り始めた。

3. ドアノブが動く
 インターホンを切っても、音は止まらない。

 Mさんは、意を決してドアを開けようとした——その瞬間。

 ガチャ……ガチャガチャ……

 ドアノブが勝手に動いた。

 まるで、誰かが外から必死に開けようとしているようだった。

 「……やばい……」

 恐怖で体が動かない。

 ドアの向こうには、確実に何かがいる。

 しかし、モニターには何も映らない。

4. 玄関の影
 Mさんは、スマホで警察を呼ぼうとした。

 だが、その時——

 「ピンポーン」

 今度は、インターホンの音が変わっていた。

 音が、どこか不気味に長く、低く響く。

 Mさんは、玄関の隙間からそっと覗いた。

 そして、彼は見た。

 玄関の前に、黒い影が立っていた。

 ドアスコープでは見えなかったのに——

 影は、確かにそこにいた。

5. 足のない影
 Mさんは、恐怖で呼吸が乱れた。

 よく見ると——

 影には足がなかった。

 ドアの隙間から、スッと何かが覗き込む。

 「開けて……」

 かすれた声が、ドア越しに響いた。

 Mさんは、咄嗟にドアを押さえつけた。

 すると——

 影が、ゆっくりとドアの隙間に指を差し込んできた。

6. 這い込む手
 指は異様に細く、爪が異常に長かった。

 その指が、ゆっくりとドアの内側に這い込んでくる。

 Mさんは、パニックになった。

 「やめろ!!」

 全力でドアを押し戻す——が、指は折れもせずに、ずるずると入り込んでくる。

 「……開けて……」

 声が、耳元で囁いた。

7. インターホンの録画
 Mさんは、咄嗟にドアを蹴りつけた。

 その瞬間——

 音が止んだ。

 恐る恐るドアを開ける。

 そこには、誰もいなかった。

 しかし、玄関の床には——

 無数の黒い指紋が残っていた。

 Mさんは、急いでインターホンの録画履歴を確認した。

 画面には、何も映っていないはずだった。

 だが、最後の記録を再生すると——

 画面の端に、何かがいた。

 それは——

 天井から逆さまにぶら下がる、人の顔だった。

8. 消えた訪問者
 Mさんは、翌日すぐに引っ越した。

 しかし、数日後——

 新しい部屋でも、深夜1時にインターホンが鳴った。

 「ピンポーン」

 Mさんは、恐る恐るモニターを確認した。

 画面には、何も映っていなかった。

 しかし、彼の背後で——

 「開けて……」

 ドアの中から、囁く声が聞こえた。

***********************************

 もし、あなたの家のインターホンが深夜に鳴ったら——

 決して、ドアを開けてはいけない。

 そして、もし——

 誰もいないはずの玄関で、指が這い込んできたら。

 その瞬間、あなたは——

 次の「消えた訪問者」になるのだから。

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