144 / 147
144)『#今見てるよ』
そのタグが流行り出したのは、春の終わりだった。
InstagramやX(旧Twitter)、TikTokなどで急激に拡散された謎のハッシュタグ――
「#今見てるよ」
投稿には特に決まりはない。
風景、自撮り、飯テロ、愚痴、何でもいい。
ただ、最後に「#今見てるよ」と添えるだけ。
「誰が見てるの?」「見られるのはどっち?」
“ちょっと怖いけどウケる”と若者の間で火がついた。
私がそのタグを初めて目にしたのは、深夜のTLだった。
フォロワーでも何でもないアカウントが、私の投稿をRTしていた。
引用でこう書かれていた。
> 「#今見てるよ」
……誰?
アカウントに飛ぶと、アイコンは真っ黒。
投稿はすべて同じ内容。
> 「#今見てるよ」
> 「#今見てるよ」
> 「#今見てるよ」……
100件以上、何の画像もなしにタグだけが投稿されていた。
不気味だったが、私は冗談半分で真似して投稿してみた。
> 今日の残業しんどかった~
> #今見てるよ
その10分後、通知が来た。
“黒いアイコンのアカウント”から「いいね」がついた。
そして、DMが届いた。
> 「見えたよ」
たった一言。
画面を閉じようとしたが、DM欄からそのメッセージが消えなかった。
通知はあるのに、中身がない。
でも、スマホの画面にかすかに“目のような模様”が浮かんでいた気がした。
それ以降、私の投稿には必ず“黒いアカウント”から反応がつくようになった。
何を投稿しても、「#今見てるよ」の返信。
誰にも見られていない時間でも、
“何か”が常に見ているような気配が付きまとう。
ある日、バイト仲間のハルカが言った。
「ねえ、あのタグ使ったあとからさ、ずっと誰かに見られてる気がしない?」
「わかる。背中とか視線とか、カメラ越しとか……」
「私、この前、寝てたとき夢に出たんだよ。
真っ黒い顔の人が、枕元で覗いてて――“見てるよ”って」
私たちは、半笑いでその話を終えた。
けれど、背中に貼りつくような違和感は消えなかった。
その週の金曜、ハルカが急に欠勤した。
何度も電話したが、出ない。LINEも既読がつかない。
SNSを見ると、最後の投稿が「#今見てるよ」の自撮りだった。
その画像――よく見ると、画面の端に“もう一つの顔”が写っていた。
窓の外。真っ黒な輪郭、だが白く浮かぶ“目”だけがこちらを向いている。
誰かが、「これなに?」とコメントしていた。
そのコメントはすぐに削除された。
ハルカは、そのまま行方不明になった。
家には鍵がかかったまま。
室内に争った形跡はなく、スマホだけが消えていた。
だが、彼女のアカウントだけは生きていた。
毎日、「#今見てるよ」という投稿が続いていた。
ハルカの顔ではない何かの写真とともに。
私は怖くなってタグを削除しようとした。
しかし、削除ボタンが反応しなかった。
スマホが一瞬暗転し、画面に“文字”が浮かんだ。
> 「見ている者は、見られた者に記録される」
> 「記録された者は、目となる」
> 「次は――君の番」
その夜、私のスマホのインカメラが勝手に起動した。
そして、自動的に自撮りが保存された。
その写真は、即座にInstagramに投稿された。
> #今見てるよ
“私の顔”ではなかった。
**口元が裂け、目が白く濁った“私に似た何か”**が、画面の中で笑っていた。
◆エピローグ
ハッシュタグは、目印です。
つけたその瞬間、“見てほしい”という意志が、誰かの視界と繋がります。
「#今見てるよ」
もしその言葉が、あなたの投稿についたら、
もう“あなたの後ろ”にも、誰かの目があるかもしれません。
InstagramやX(旧Twitter)、TikTokなどで急激に拡散された謎のハッシュタグ――
「#今見てるよ」
投稿には特に決まりはない。
風景、自撮り、飯テロ、愚痴、何でもいい。
ただ、最後に「#今見てるよ」と添えるだけ。
「誰が見てるの?」「見られるのはどっち?」
“ちょっと怖いけどウケる”と若者の間で火がついた。
私がそのタグを初めて目にしたのは、深夜のTLだった。
フォロワーでも何でもないアカウントが、私の投稿をRTしていた。
引用でこう書かれていた。
> 「#今見てるよ」
……誰?
アカウントに飛ぶと、アイコンは真っ黒。
投稿はすべて同じ内容。
> 「#今見てるよ」
> 「#今見てるよ」
> 「#今見てるよ」……
100件以上、何の画像もなしにタグだけが投稿されていた。
不気味だったが、私は冗談半分で真似して投稿してみた。
> 今日の残業しんどかった~
> #今見てるよ
その10分後、通知が来た。
“黒いアイコンのアカウント”から「いいね」がついた。
そして、DMが届いた。
> 「見えたよ」
たった一言。
画面を閉じようとしたが、DM欄からそのメッセージが消えなかった。
通知はあるのに、中身がない。
でも、スマホの画面にかすかに“目のような模様”が浮かんでいた気がした。
それ以降、私の投稿には必ず“黒いアカウント”から反応がつくようになった。
何を投稿しても、「#今見てるよ」の返信。
誰にも見られていない時間でも、
“何か”が常に見ているような気配が付きまとう。
ある日、バイト仲間のハルカが言った。
「ねえ、あのタグ使ったあとからさ、ずっと誰かに見られてる気がしない?」
「わかる。背中とか視線とか、カメラ越しとか……」
「私、この前、寝てたとき夢に出たんだよ。
真っ黒い顔の人が、枕元で覗いてて――“見てるよ”って」
私たちは、半笑いでその話を終えた。
けれど、背中に貼りつくような違和感は消えなかった。
その週の金曜、ハルカが急に欠勤した。
何度も電話したが、出ない。LINEも既読がつかない。
SNSを見ると、最後の投稿が「#今見てるよ」の自撮りだった。
その画像――よく見ると、画面の端に“もう一つの顔”が写っていた。
窓の外。真っ黒な輪郭、だが白く浮かぶ“目”だけがこちらを向いている。
誰かが、「これなに?」とコメントしていた。
そのコメントはすぐに削除された。
ハルカは、そのまま行方不明になった。
家には鍵がかかったまま。
室内に争った形跡はなく、スマホだけが消えていた。
だが、彼女のアカウントだけは生きていた。
毎日、「#今見てるよ」という投稿が続いていた。
ハルカの顔ではない何かの写真とともに。
私は怖くなってタグを削除しようとした。
しかし、削除ボタンが反応しなかった。
スマホが一瞬暗転し、画面に“文字”が浮かんだ。
> 「見ている者は、見られた者に記録される」
> 「記録された者は、目となる」
> 「次は――君の番」
その夜、私のスマホのインカメラが勝手に起動した。
そして、自動的に自撮りが保存された。
その写真は、即座にInstagramに投稿された。
> #今見てるよ
“私の顔”ではなかった。
**口元が裂け、目が白く濁った“私に似た何か”**が、画面の中で笑っていた。
◆エピローグ
ハッシュタグは、目印です。
つけたその瞬間、“見てほしい”という意志が、誰かの視界と繋がります。
「#今見てるよ」
もしその言葉が、あなたの投稿についたら、
もう“あなたの後ろ”にも、誰かの目があるかもしれません。
あなたにおすすめの小説
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
洒落にならない怖い話【短編集】
鍵谷端哉
ホラー
【累計55万PV突破‼】
話題作「アンケートに答えたら、人生が終わった話」が10万PVを記録。
日常に潜む“逃げ場のない恐怖”を集めた、戦慄の短編集。
その違和感は、もう始まっている。
帰り道、誰もいないはずの部屋、何気ない会話。
どこにでもある日常が、ある瞬間、取り返しのつかない異常へと変わる。
意味が分かると凍りつく話。
理由もなく、ただ追い詰められていく話。
そして、最後の一行で現実がひっくり返る話。
1話1000〜2000文字。隙間時間で読める短編ながら、
読み終えたあと、ふとした静寂が怖くなる。
これはすべて、どこかで起きていてもおかしくない話。
――あなたのすぐ隣でも。
洒落にならない実話風・創作ホラー。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。