名探偵マコトの事件簿3

naomikoryo

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第61話:探偵、推理じゃなく告白しろ

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生徒会室には、緊張感とはまるで無縁な空気が漂っていた。

「まずは状況確認だ。今回の依頼は“告白”。つまり対象人物に思いを伝える、いわば恋愛事件だ」

指揮を取るのは、生徒会書記・綾小路 蓮。
ホワイトボードに「告白作戦」とでかでかと書かれたその隣に、赤字で書かれたスケジュールが並ぶ。

「え、なにこれ、怖い」
マコトがぽつりと呟くと、

「静かに。今は会議中だ」
詩織がすかさずタイピングしながら冷たく言う。

 

「では、作戦概要を説明する」

蓮が立ち上がり、ボードを指差す。

「目標は“12月24日クリスマスイブまでに佐藤早紀副会長へ告白を成功させる”こと」

「期限付き!?」
マコトが目を見開くと、

「72時間以内に行動を起こさなければ、クリスマスは闇に沈む」
蓮が真顔で頷いた。

 

「……俺はただ、手紙を書こうと思って……」

「それで伝わると思ってるの?」
詩織が冷静に返す。

「伝わっても“間接攻撃”で終わる可能性が高い。“手紙”は“補助装備”でしかない」

「恋愛ってRPGなの?」

「むしろノベルゲーム」

「やめて、リアルにバッドエンド見えてきた……!」

 

「兄貴ィ!」
そこに割り込んできたのは、生徒会補佐の熱血後輩・佐伯虎太郎。

「告白ってのは、声で伝えるからこそ魂が届くんスよ! 文字だけじゃダメっス! だから! 校舎裏の夕陽をバックに――!」

「いやその演出、ベタすぎて逆に引かれるだろ!?」

 

「では、デート場所の候補案を30件まとめてきました」
詩織がA4のプリントを手渡す。

「30!?」

「第1候補:図書館(静かで話しやすい)
第2候補:動物カフェ(癒し効果)
第3候補:科学部実験室(非日常感)」

「最後おかしくない!? ワカメの悪夢がよみがえる!」

「それはそれで記憶に残るじゃん」
美穂が無邪気に笑った。

 

「まあまあまあ! ここは“いつも通りの場所”で行こうよ」
美穂がカップケーキを配りながら言う。

「なんならさ、放課後の生徒会室とか、校舎裏のベンチとかさ。マコトと早紀って、そういう“ちょっとした日常”が似合うじゃん?」

「……たしかに」

マコトが俯きながら呟いた。

「無理に特別な場所にしなくてもいいかも……そもそも、ちゃんと伝えるのが一番大事だし」

「うんうん、やっと正気に戻った?」

「いや、そもそも俺が壊れてたのは、お前らのせいな気が……」

 

そんな会話をしていると、蓮が静かに告げた。

「残り、48時間だ」

「カウントダウンしないでええええ!!」

「さ、マコト」
美穂がカップケーキの紙カップをぽんっと押しつける。

「明日、早紀と話す約束くらい、取りつけてきなよ。手紙だけじゃダメって、もう分かったんでしょ?」

 

マコトは、カップケーキを見つめた。
上には、小さなハート型のチョコレート。

「……俺、逃げてたのかもな」

「うん、思いっきりね」

「言うねぇ……」

それでも、マコトは笑った。

「……よし。明日、放課後。早紀を呼び出す」

 

探偵は、真実を明かすために謎を解く。
でも、今回の“謎”は、ただ一つ。

“想いは、届くのか”

 

マコトの指が、便箋に触れる。
照れと不安と、でもそれ以上の決意を込めて――
ペンが、動き出した。
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