名探偵マコトの事件簿3

naomikoryo

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特別編:クリスマスプレゼント、重すぎ問題

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~恋と婚姻届とチキンの夜~

 

12月24日、夜。
冬の冷たい風もどこ吹く風。相良家では、年に一度の“ちょっとした騒動”が巻き起ころうとしていた。

キッチンでは母がチキンを焼いている。リビングではツリーの下にプレゼントが並べられている。
そして、ソファでクッションと格闘していた長男・マコトは、何やら神妙な顔で立ち上がった。

「よし、今日は……重大発表がある!!」

「はいはい、お皿運んで」
母がフライパンを振りながら、淡々と返す。

「いや、違う! これは、俺の青春を揺るがす──命がけの宣言なんだ!!」

そのとき、ピンポーンとインターホンが鳴った。

「来たっ……!」

玄関に駆け寄ってドアを開けると、
白いマフラーにコート姿の早紀が立っていた。

「お邪魔します。……メリークリスマス」

「……お前が来てくれて、今年が救われた……!」

そう言いながら抱き着こうとするマコトの額を片手で抑えた。

「口説くな。家族の前で」

 

そしてリビング。

母がチキンをテーブルに並べ、ツリーの明かりがぴかぴかと瞬く中、
マコトはソファの前に立って、深呼吸。

「皆さん。改めまして、本日をもって……俺と佐藤早紀は付き合うことになりました!!」

一瞬の静寂。

「うっそおおおおぉぉぉおおお!!」

声を上げたのは、小学三年生の妹・春奈だった。
着ぐるみパジャマのまま、プレゼントを片手に絶叫している。

「えっ!? ねぇねぇ!? 早紀ねえちゃん!? 本当にお兄ちゃんと!?」

「うん。今日から、彼女になったんだって」

早紀が微笑んで言うと、春奈は心底ショックを受けた顔で振り返る。

「え……早紀ねえちゃん、ほんとにそれでいいの……?」

「えっ?」

「お兄ちゃん、今日の朝、トースト焼いたらバターのせるの忘れて“なんか乾いてる!”って文句言ってたよ!?」

「うん、知ってる」

「あと、この前、体育の時間に靴下裏返しだったの!!?」

「……それも、まぁ想像できる」

「去年、洗濯物たたむのサボって、私のパンツかぶって“帽子!”って叫んでたの!!」

「おいバラすなぁぁぁぁぁ!!」
マコトが咳き込む。

「……大丈夫。マコトのそういうとこも、ひっくるめて大好きだったから」

早紀は、そう笑って言った。

その笑顔に、母が「うわー」と感嘆しながら台所から顔を出す。

「早紀ちゃん……あんた、仏かな?」

「人間です」

 

そのときだった。

「よっしゃぁぁぁぁ! 来たぞぉぉぉぉ!!」

さっきまでそこに座っていた父親が走りながら2階へ上がっていき、がったんごっとんと音がしたと思ったら全力で階段を駆け下りる音の後、居間に飛び込んできた。

手には──婚姻届。

「今日中に記入すれば、“記念日”になるって聞いて!こんな時のために 書類は用意した!!」

「いやいやいやいや、どういうタイミング!?」

「早紀ちゃん! マコトをよろしく頼む!!」

そう言って、父はテーブルに婚姻届をドンッ!と広げ、
ゼェゼェと息を切らしながら、保証人欄にサインを始めた。

「いや、速すぎでしょ!?」

「お父さんストップ!! まだデート1回もしてないよ!?」

「いいじゃないか! 清い交際ってことで!」

「そういう問題じゃないのよ!?」

 

そこへ母も割って入る。

「あら、じゃあ私も保証人欄書いとこうかね」

「乗っかるなーー!!」

マコトは完全に顔を真っ赤にして大混乱。

だが、なぜかその横で、ペンを取る彼の姿が。

「どれどれ、俺も書くか。“相良 真人”っと」

「お前も乗っかるなーーー!!!」

 

そんな中、春奈が小さな声でぼそっと言った。

「……結婚って、サンタさんの次の日にするものなんだっけ?」

「ちがうよぉ!!!」
全員が叫ぶ中、

早紀はそっと婚姻届を手に取った。

「……まぁ、冗談ってことでね」

そして、破ろうとした指を止める。

「……冗談でも、こうやって真剣にふざけられる家族って、すごく好きかも」

そっと三つ折りにし、テーブルの端に置いてから、
自分のバッグの中にしまい込んだ。

「一応、記念に。笑えるネタとして」

「……そのまま出してもOKだぜ……」
マコトが小声でつぶやく。

 

「じゃ、はい」
春奈がテーブルからチョコレートをひとつ差し出す。

「お兄ちゃんたちに、クリスマスプレゼント」

「春奈……!」

「でも、ラブラブしすぎたら、お姉ちゃんにはやらないからね!」

「怖っ!? 小三なのに嫉妬重すぎない!?」

 

こうして、相良家のクリスマスパーティーは――

“婚姻届”と“謎の祝福ムード”とともに、にぎやかに幕を下ろすのだった。

 

──完──
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