静寂の星

naomikoryo

文字の大きさ
5 / 8

第5章:沈黙の意思

しおりを挟む
サミュエルの消失は、クルーたちの心に恐怖と疑念を植え付けた。
彼は突然姿を消し、その痕跡すら残っていない。
唯一残されたのは、船内で記録された奇妙な音声── 彼の声を模倣する何か だった。

「この星は“音を消す”意思を持っている──音を発する者は、排除される」

ノアの言葉が重くのしかかる。
ならば、自分たちはどうすればいいのか?
救助が来る可能性は限りなく低い。脱出手段もない。

そして次に消えるのが、自分たちの誰かかもしれない という恐怖が、じわじわと彼らを蝕んでいた。

音の実験
クルーたちは、惑星の“沈黙のルール”を探るための実験を行うことにした。

「理論が正しければ、ある程度の音なら許容されるはずだ。」

ノアは慎重に説明する。

「サミュエルは普段からよく独り言を言っていた。彼の失踪はそれと関係している可能性がある。」

「だが、俺たちだって会話していたぞ?」

イーサンが疑問を投げかける。

「そうだ。だから、音の“量”や“種類”が関係しているのかもしれない。」

「つまり、大きな音を出したり、特定の種類の音を発すると……“何か”が動き出すってことか?」

「試してみるしかない。」

リサは深く息を吸い込み、周囲を見渡した。

「……やるなら、慎重に。」

音を発するということ
ノアは岩の一つに向かい、小石を投げつけた。

──コツン。

乾いた音が響く。

「……何も起きないな。」

「じゃあ、これは?」

イーサンがしゃがみ込み、手を叩いた。

──パチン!

空気を打つ音が、かすかに響く。

──何も起きない。

「やはり、音の大きさが関係するのか?」

グラントが眉をひそめる。

「いや……」

ノアが冷や汗を浮かべながら、スキャナーを確認した。

「確かに、何かが変化している。」

「……どういうことだ?」

「空気の振動が減少している。まるで、音そのものが周囲に“吸収”されているかのように。」

「吸収……?」

リサが不審そうに岩に手を触れた。

「この岩……異常に滑らかだ。」

そう言って耳を近づける。

「……」

何も聞こえない。

「普通、耳を近づければ、わずかにでも風の音や自分の呼吸音が反響するはず。でも……」

リサは言葉を詰まらせた。

「まるでこの岩自体が音を飲み込んでいるみたい。」

クルーたちは沈黙する。

この星の大気、地表、そして岩すらも 音を吸収する性質を持っている 。

もしこの星が、意志を持って「音を消している」としたら?

彼らはこの惑星に、歓迎されていないのではないか ?

囁く声
実験を終え、船に戻ろうとした時だった。

──サァァ……

風のような音が聞こえた。

「……風?」

グラントが呟く。

「違う……風なんか吹いていない。」

ノアが顔を強張らせる。

──サァァ……ミュ……

「!!」

全員が動きを止めた。

それは確かに聞こえた。

「サミュエル」 と誰かが囁く声が。

「……今の、聞こえたか?」

イーサンが震える声で言う。

「ああ……確かに聞こえた。」

グラントが警戒しながら銃を構える。

しかし、周囲には誰もいない。

「どこから聞こえた?」

リサが慎重に尋ねる。

「……分からない。」

音の発生源が分からないのだ。
まるで、空間そのものが音を発しているように。

新たな犠牲者
船に戻ったクルーたちは、不安を抱えながら眠りについた。

そして、次の朝──

「……イーサンがいない。」

リサの声に全員が跳ね起きた。

「なに?」

「どこにもいないの。船の中にも、外にも……!」

グラントは歯を食いしばった。

「またか……!」

クルーたちは慌てて船の外に飛び出した。

そして、彼らは見つけた。

イーサンが昨夜寝ていた場所には、彼の服だけが残されていた。

「……消えた?」

「違う……彼は“消された”んだ。」

ノアが呆然と呟く。

「俺たちは間違っていた。この星は、ただ音を消すだけじゃない……」

彼は息を呑む。

「音を発した者の存在そのものを、消すんだ。」

沈黙が支配する。

グラントは静かに拳を握りしめた。

「……この星を出る。」

彼の言葉に、リサとノアが顔を上げる。

「どうやって?」

「方法は分からない。でも、ここにいたら俺たちも全員消される。」

「じゃあ、どうする?」

グラントは言った。

「この星の意志を探る。静寂の中心に踏み込むんだ。」

沈黙の中心へ
イーサンの消失を受け、クルーたちは最後の決断を下した。

この星の“沈黙のルール”を理解しなければ、生き残ることはできない。

静寂を生み出す原因を探し、そこを突き止める。

だが、それが何を意味するのか、彼らにはまだ分からなかった。

この惑星の静寂は、ただの性質ではない。
それは、
それ自体がひとつの 意志 なのだ。

クルーたちは、静寂の中心へと足を踏み入れた。

果たして、彼らに 生存の道 はあるのか?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

アガルタ・クライシス ―接点―

来栖とむ
SF
神話や物語で語られる異世界は、空想上の世界ではなかった。 九州で発見され盗難された古代の石板には、異世界につながる何かが記されていた。 同時に発見された古い指輪に偶然触れた瞬間、平凡な高校生・結衣は不思議な力に目覚める。 不審な動きをする他国の艦船と怪しい組織。そんな中、異世界からの来訪者が現れる。政府の秘密組織も行動を開始する。 古代から権力者たちによって秘密にされてきた異世界との関係。地球とアガルタ、二つの世界を巻き込む陰謀の渦中で、古代の謎が解き明かされていく。

身体交換

廣瀬純七
SF
大富豪の老人の男性と若い女性が身体を交換する話

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

リボーン&リライフ

廣瀬純七
SF
性別を変えて過去に戻って人生をやり直す男の話

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...