駅前のひまわり

naomikoryo

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駅前の出会い

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小さな駅の前に佇む花屋「ひまわり」。
古びた外観が、どこか懐かしい雰囲気を漂わせている。
花屋を営む杏奈(あんな)は、都会から戻ってきてこの店を引き継いでから数年が経っていた。
両親の面影が残るこの場所で、彼女は日々、ささやかな幸せを感じながら町の人々と接している。

その日、夕方近くになって杏奈は花束のラッピングをしていた。
すると、店先にふと気配を感じて顔を上げると、小学生くらいの男の子がじっと花を見つめていた。
背丈は小さく、制服姿で肩に大きなランドセルを背負っている。

「こんにちは。
どうしたの?
この花、気に入ったの?」

杏奈が優しく声をかけると、少年は少し驚いた表情を見せてから、うつむきがちに頷いた。

「…これ、なんて名前ですか?」

少年が指差したのは一輪の向日葵(ひまわり)だった。
杏奈は微笑みながら答えた。

「それはね、ひまわりって言うんだよ。
太陽の方を向いて、元気に咲く花なの。」

少年はしばらくひまわりを見つめた後、ぽつりとつぶやいた。

「…いいな。
ひまわり、明るくて元気で…」

杏奈は少年の様子に何か感じるものがあり、少しだけ視線を合わせてみた。
彼の表情にはどこか寂しさが漂っている。

「君は、ひまわりみたいに元気な感じがするよ。
でも、いつもこんな時間に帰るの?」

少年はしばらく黙ったままだったが、杏奈の柔らかな雰囲気に少しだけ心を開いたのか、ぽつりと話し始めた。

「…僕、父さんが遅くまで仕事してるから、一人で帰るんだ。
ここ、駅の近くだから、つい寄ってしまって…」

杏奈はその言葉に、どこか自分の過去を重ねていることに気づいた。
彼女もかつて、忙しい両親を支えながら都会での生活に疲れ、家族と過ごす時間を求めてこの町に戻ってきたのだ。

「そうなんだね。
じゃあ、いつでもこの花屋に遊びに来ていいんだよ。
ひまわりはね、元気をくれる花だから。」

少年は少しだけ笑顔を見せた。
その姿がどこかいじらしく、杏奈の胸に温かいものが広がった。

「ありがとう、じゃあ、また来るかも。」

そう言って、少年は店を後にし、駅のホームへと向かった。
杏奈はその小さな背中を見送りながら、心の奥でこの町に戻ってきて良かったと感じていた。

その日から、少年は時折、学校帰りに花屋に立ち寄るようになった。
彼の名前は慧(けい)。
おしゃべりが少ないが、花を見る目は真剣で、杏奈にとっては新しい友人のような存在になりつつあった。
杏奈は慧と少しずつ心を通わせ、彼の寂しさを和らげられる存在になりたいと願うようになった。

ある日、慧が花屋にやってきたとき、彼は一輪のひまわりを見つめて何かを考え込んでいるようだった。
杏奈がそっと声をかけると、慧は照れくさそうに口を開いた。

「このひまわり、買ってもいいですか?
…お父さんに、元気をあげたいから。」

その言葉に、杏奈は心が温かくなるのを感じた。
彼の中にある小さな優しさが、誰かを思いやる気持ちが、彼を少しずつ大人にしていくのだろうと思ったのだ。

杏奈は笑顔でひまわりを包み、慧に手渡した。
そのひまわりは、彼の小さな手の中で、まるで太陽のように輝いているかのようだった。

「じゃあ、お父さんに元気を届けてね。」

慧は頷き、手にしたひまわりを大切そうに抱きしめながら帰っていった。
杏奈はそんな彼の後ろ姿を見送りながら、彼がこの花屋「ひまわり」で見つけたものが、いつか彼の支えになってくれることを願った。
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