スマホ岡っ引き -江戸の難事件帖-

naomikoryo

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篠宮綾の奪還⑦

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「これは……厄介なことになったな。」
悠介は、町の辻に張り出された紙を睨みつけた。
篠宮綾の似顔絵付きの手配書——幕府より、重要指名手配。

「見たことある顔だぞ!」
「確か、この辺に住んでるんじゃねぇのか?」
「とにかく、見かけたらすぐに知らせるんだ!」
町の男たちが手配書を指差しながら噂している。

悠介は、唇を噛んだ。
(黒幕が本気で動き出しやがった……!)
ただの抜け荷を追っていた綾が、なぜここまで幕府の敵とされるのか。
悠介は、まだその理由を完全には掴めていなかった。

だが、一つだけ分かっていることがある。
——綾が、このまま町にいれば捕まるのは時間の問題だ。
(ここに長く置いとくわけにはいかねぇ。)
悠介は、長屋へと急いだ。

「おい! 綾!」
悠介が部屋に駆け込むと、綾は既に荷物をまとめていた。
「……やっぱり、出回ったのね。」
彼女は、静かに微笑んだ。
「お前、まさか出ていくつもりじゃ……!」
「それしか方法がないでしょう?」
「バカヤロウ!! どこに行くってんだよ!」
悠介は、思わず怒鳴った。
「外に出れば、あっという間に見つかるんだぞ!?」
「……。」
「大奥にも戻れねぇ、町にもいられねぇ……だったら、しばらく隠れるしかねぇんだよ!」
「でも……!」
「俺がすべてを解決するから、それまで辛抱しろよ。」
悠介は、真剣な目で綾を見つめた。
「俺が、必ず……黒幕を暴いて、お前の身の潔白を証明する。」
綾は、そんな悠介の強い決意を見つめ——
ゆっくりと頷いた。
「……分かった。」
悠介は、すぐに平次親分の家へ向かった。

「ほう、とうとう手配書が回ったか……。」
平次親分は、手配書を見ながら、難しい顔をしていた。
「綾の身を守らねぇと、幕府の連中は何をするか分からねぇ……。」
「それで、どこか隠れる場所はないか?」
悠介が尋ねると、平次親分は渋い顔で唸った。
「……実はな。」

彼は、家の奥へと悠介を案内した。
そして、二階の壁の奥に隠された襖を開いた。
「この奥が、昔の隠し部屋よ。」
中には、小さな畳敷きの部屋があった。
「こりゃ、良い隠れ家だな……!」
「昔、悪党を捕まえるために使ったこともあるが……今はめっきり使ってねぇ。」
「なら、綾をここに匿わせてもらう。」

悠介は、綾を連れてくると、彼女を中へと案内した。
「狭いけど、我慢してくれ。」
「……ありがとう。」
綾は、小さく頷いた。
「俺が、絶対に何とかするから……。」
悠介は、綾の肩に手を置き、まっすぐに言った。
「だから、それまでここでじっとしてろ。」
「……分かった。」
綾は、不安げに見つめながらも、悠介を信じているようだった。

「さぁて、これからどう動く?」
お美代が腕を組んで尋ねた。
悠介は、平次親分とお美代を見渡しながら言った。
「まずは、黒幕が誰なのかを突き止める。」
「もう見当はついてんのか?」
「いや、まだそこまでの確証はねぇ……。」
悠介は、顎に手を当てながら考えた。
「ただ、幕府の中でこれだけの権力を持って動ける奴となると、かなり上の方の人間に違いねぇ。」
「たしかに……。」
「そして、抜け荷に関わっていた奴とも繋がっているはずだ。」
悠介は、手元の手がかりを整理した。

・大奥で起きた不正な金の流れ
・御台所の死を指示した人物がいる
・篠宮綾を手配した人物は、それを隠したい

(この中で、誰が一番得をするのか……。)
「まずは、抜け荷の流れを追う。」
悠介は、そう決めた。
「黒幕にたどり着くには、まずそっちを突き止めねぇと話にならねぇ。」
平次親分とお美代も、頷いた。
「よし、じゃあ手分けして情報を集めるとするか!」
悠介は、そう言いながら腰の十手を握りしめた。
「必ず、綾を救い出すために——!」

夜の江戸の町に、三人は動き出した——。
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