再び君に出会うために

naomikoryo

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本編

啖呵を切る

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高橋 :「でもびっくりだよなぁ~。・・・・・・・・・・・・・小宮って、男になんか興味ないかと思ってたよ。」
美智子:「そうなんですか?・・・昔から貴ねぇは何かと太一の世話を焼いてたから・・・あぁやっぱりね、て感じですけど。」
高橋 :「そうなんだ!」
美智子:「でも、太一こそ、女の子に興味があるとは思わなかったですけど・・・」
高橋 :「・・・・・がっかり?」
美智子:「え?」
高橋 :「自分じゃなくて・・がっかりしてる?」
美智子:「あ、いえ、それは無いですから。」
高橋 :「・・・即答だね。」
美智子:「私たちはほぼ家族なんで。」
高橋 :「それは、また・・・・・」
美智子:「弟みたいなものですよ・・・・・・・あっ、そうは言っても、健君は本当に弟になると思いますけどね。」
高橋 :「そう?」
美智子:「えぇ。・・・・・・・・あれ?」
二人が太一の家にあと百mほどという所で、太一の家の近くに人が集まってるのが見えた。
若者達のようだが制服ではなく土木作業者のような格好をしている。
美智子:「何だろう?」
目を凝らすと、その中の一人に太一が絡まれている感じだ。
そうしてるうちにそいつが太一の胸倉を掴んだ。
美智子は嫌な予感がして走り出した。
高橋翔もすぐにその後を追った。

悪役 :「おいおい、本当にこいつが貴子の彼氏ってか?」
手下B:「はい、情報では。」
悪役 :「まだガキじゃねぇ~か。」
太一 :「あんたらから見れば子供だろよ。」
胸倉を掴まれていても太一は呆れた顔で言った。
太一は家先から少し美智子の家のほうに向かって30mぐらいのところで囲まれていた。
太一 :「はいはい、俺がその彼氏ってことで、もういいかな?」
太一は少しも動揺することも無く掴んでいる手を上から握ってほどいた。
悪役 :「お~いてぇ・・・・・お前、ちから強いな。」
太一 :「はいはい。じゃあね。」
太一は帰ろうと家の方を向いた。
悪役 :「おいおい、まだ帰っていいなんて言ってないだろ?」
太一 :「・・・・・あんたらの許しなんか別にいらねぇし。」
手下C:「・・・こいつ、生意気だな?」
手下D:「調子に乗ってんだろ。・・・・・少しびびらせてやりましょう・・・・・」
そう言いながら、一人のガタイのいい奴が太一の左肩を掴んだ。
悪役 :「よし、少し大人の躾をしてやれ。」
リーダー風の男はそう言いながら後ろに下がった。
そこへ、
美智子:「太一に何してんだ!」
と叫びながら美智子が走ってきた。
「何だ、この女、邪魔ぶしっ!」
美智子に振り向いた、両手をポケットに入れて凄んでいたその手下Eは、ミドルキックを腹にくらいうずくまった。
太一 :「あ~、手~出しちゃった。」
太一が呆れた顔で美智子を見た。
美智子:「えっ?・・私がなんかした?」
太一 :「無意識なのがこえ~。」
手下E:「なんだ、このアマ~!」
それを見た3人が同時に美智子に掴みかかろうとした、が一瞬で膝から崩れ落ちた。
高橋 :「こらこら、ケンかはダメだぞ、ケンかは。」
その背後には翔がニコニコと立っていた。
どうやら得意の古武術とやらで後ろから3人の首に手刀を入れたようだ。
手下D:「なんだ~?」
太一の肩を掴んでいる男はその手を離し、後ずさった。
他の奴らもそいつの後ろに急いだ。
その3人もフラフラと立ち上がり、腹を蹴られてうずくまっている男を担ぎ起こして、リーダー風の男の後ろへ行った。

手下F:「てめぇ~ら、やりやがったな!」
太一 :「おぉ~、なんか腐ったチンピラみたいなセリフ言った~!」
太一は拍手しながらあからさまに喜んで見せた。
「ふざけやがって・・・」
太一 :「ふざけてんのはあんたらだろ?」
手下D:「あ~?」
太一 :「貴子が誰と付き合おうがあんたには一生関係ねぇだろ?」
悪役 :「馬鹿野郎!・・・だいぶ前から俺が狙ってたんだよ。」
リーダー風の男が言った。
そいつは、170cmぐらいの身長でガタイが良くパンチパーマで眉毛が薄い。
土木職人のような格好だから、恐らくその手の仕事をしているのだろう。
他の連中はこいつに引き連れられて来た感じだ。
高橋 :「全く見た事無いけど、どちらさん?」
翔が尋ねた。
悪役 :「うるせぇ、お前らは消えろ!」
太一 :「早川工業のやつだろ?」
悪役 :「な、なんで知ってるんだ?!」
太一 :「そいつのジャンパーの背中に書いてある・・・・・」
悪役 :「・・・・・・・・・」
みんなが太一が指差した男を見た。
悪役 :「何でお前は会社のジャンパー着てきやがったんだ~!」
手下B:「すいません若、急いでたもんで・・・」
悪役→早川 :「若っていうな~!」
高橋 :「なんだ、その早川工業とやらの若旦那ってか?」
早川 :「・・・・・うるせーな、会社は関係ねぇよ。俺と貴子の問題だよ!」
太一 :「・・・・・貴子の知り合い?」
早川 :「去年のパーティーで知り合ったんだよ!」
美智子:「え~?お見合いパーティーかなんか~?」
手下B:「・・・市の都市開発パーティーだ。」
太一 :「・・・・・・・・・・」
早川 :「小宮さんがうちと仕事したいって言って来たのさ!」
高橋 :「お得意さん?」
手下A:「ふざけんな~!うちは優秀な下請け会社だ。」
太一 :「・・・・・・・・・・」
早川 :「その後で、パパが絶対に貴子と結婚しろと!」
手下C:「政略結婚ってやつだ。」
太一 :「・・・・・・・・・・」
早川 :「そうすりゃ、うちは安泰なんだよ!」
手下D:「逆玉ってことさ。」
太一 :「・・・・・・・・・・」
美智子:「・・・あ~!・・・・・早川興業って言うと、あの県庁の建替工事で有名になった?」
早川 :「・・・・・それはうちじゃない・・・・・・・」
太一 :「・・・・・・・・・・」

終始黙っていた太一だったが、
太一 :「アホくさ~。」
と伸びをしながら言うと、
太一 :「いいか、良く聞けよ!」
と、早川に近付きながら、
太一 :「貴子は俺の物だから、今日限りで存在は忘れろ。そして・・・」
ここで深呼吸して、
太一 :「今後、一生懸命仕事しろ!・・・・・その無能な連中もきちんと教育しろ!」
手下共:「む、無能だと!」
早川は手下共が騒ぎ出すのを右手で制した。
中2だけど最近少し声変わりの兆しのあるちょっと太いぐらいの声を、より低く太くしながら言った。
太一 :「そうすれば、うちで雇ってやる。」
早川 :「?」
美智子:「うちって?」
太一 :「小宮建設だよ!」
高橋 :「え~、何、太一・・・・・もう結婚する気満々?」
美智子:「太一、すご~い!」
太一 :「うるせ~な~。・・・・・付き合うって事は・・・将来、結婚するってことだろ?」
高橋 :「・・・いや、そうとは・・・・・」
太一 :「・・・そうなんだよ!」
美智子:「でも、ほら、まだ若いんだし・・・・・」
手下連中も聞きながら頷いている。
太一 :「それに・・・・・」
早川 :「それに?」
もう早川からも毒気が消えてしまっていた。
太一 :「もうとっくにプロポーズしちまってんだよ!」
美智子:「えっ、もう?」
太一 :「あぁ・・・・・幼稚園の時に。」
早川 :「・・・・・・・・・はぁ・・・・・・・・もういいや・・・・・・・・・・何だか、おめぇ、すげぇわ。」
そう言って太一の肩をポンポンと軽く叩いた。
早川 :「おい、帰るぞ。」
早川が背中を向けて歩き出したが、手下Eは気が収まらないようだ。
手下E:「ふざけんなよ!・・・・あれだ・・・・慰謝料請求すっからな!」
と美智子にすごんだ。
その間に翔が割り込んだ。
高橋 :「おいおい、人が折角穏便に済ませてやろうと・・・」
太一 :「いや、翔先輩・・・手~出したし。」
美智子:「あんたらみたいな雑魚が歩いていい道じゃないんだよ!」
美智子は手下共を睨みつけながら言った。
太一 :「・・・・・国道だし・・・・・・・って言うか、お前ら歩く凶器なんだから少しは・・」
早川 :「そういえば、そもそもなんなんだ、お前らは?」
太一 :「うるせぇ、俺が喋ってんだから口出すな!」
早川 :「・・・・・・・お前、ほんとにナマイキ・・・・・」
高橋 :「まぁまぁ、センパイ!・・・・・・・正直、この中で一番強いの、こいつなんですよ。」
翔は早川にこっそり言った。
太一 :「あのね、翔先輩・・・・・俺は暴力なんかしないで収めようと・・・」
高橋 :「それに、ほら・・・・・・あそこの電柱に隠れてる愛しの彼女にそんな姿を見せても、ね?」
翔が指を差した。
太一 :「は?」
その場にいた全員が用水路をはさんで20mほど離れた太一の家の庭先にある電柱を見た。
そこにはしゃがみながら電柱を両手で掴み、真っ赤な顔をして半分だけ顔を出してる貴子がいた。
貴子 :「え?」
貴子もまたびっくりして電柱にパッと隠れた。

暫くの沈黙があって早川は溜息をついた。
早川 :「あ~、みっともねぇから、この辺で消えるわ。」
手下E:「でも・・・」
早川 :「うるせ~!女子高生にやられましたって、言えんのか?」
高橋 :「俺ら、みんな中学生ですけど。」
早川 :「は?」
バシッ!
早川 :「女子高生って言ったよな!」
そう言いながら手下Eの頭をどついた。
太一 :「貴子は大人っぽく見えるからな・・・綺麗だし・・・・・」
美智子:「ヒューヒュー!」
高橋 :「ヒューヒュー!」
早川 :「わりぃ~わりぃ~。・・・・・・・・ほら、行くぞ!」
そう言いながら、みんなを引き連れて歩き出した。
こちらに振り返らずに片手を振って、
早川 :「青春を謳歌してくれたまえ、キミタチ。」
とだけ残して行った。
3人は終始黙って見ていたが、ついには笑い出した。
少し経って、
高橋 :「で、あれはどうするの?」
貴子が隠れたままの電柱を指差した。
太一 :「あ~・・・・・・」
太一は頭を掻いた。
美智子:「貴ねぇ、こっちに来なよ!」
美智子が声をかけると、
貴子 :「えっ?・・・・・・あ・・・・・・・・うん。」
とこちらを向かずに用水路をぐるりと回ってきた。

高橋 :「耳まで真っ赤だし・・・・・」
美智子:「太一の啖呵も聞こえてたのね。」
二人はこそこそ話した。

貴子はみんなの前に立つと軽く深呼吸をした。
そして、
貴子 :「あら、あなた達・・・こ、こんな所で・・き、奇遇ね。」
とニッコリ笑って言った。
美智子:「貴ねぇ、何か聞こえてた?」
と美智子もニッコリして聞くと、貴子は更に赤くなりながら手をブンブン振って、
貴子 :「な、な~んにも聞こえてない!太一が言ったことなんて、な~んにも聞こえてない!」
と大声で言った。
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