魔法少女は会社員

naomikoryo

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第6章:都市の深層

第1話:都市の下にあるもの

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その報告は、静かに届いた。

「都内で同時多発的に“地下構造起点の魔力波形異常”が発生しています」

LinkLine本部に届いた、都庁魔力災害対策課からの連絡書。
本文はわずか数行。だが、添付されていたデータにミユキの眉はぴくりと動いた。

「……これ、全部“地下”からの波形じゃない」

「しかも、“水平拡張”じゃなくて、“垂直伸長”。
地表方向じゃなく、“都市の底”に向かって魔力が流れてる」

アイナが端末をタップしながら言う。

「新宿区・千代田区・港区、計6地点。
共通点は、“旧構造が再開発で封鎖されたまま”の区域ってことよ」

ナナがスクリーンを睨みつける。

「なあ、これってまさか……“都市全体の下に異界が滲み出してる”ってことじゃないの?」

「……かもね」

ミユキは頷いた。

「私たち、今まで“表に出た異界”と戦ってきた。
でもこれは、“出てこない異界”の話だよ。
都市の地層に棲みついて、じわじわと染み出してくる“底の感情”」

まどかが小さくつぶやく。

「まるで、ずっと前から“そこにあった”って感じがする……」

調査の起点として選ばれたのは、新宿区・西新宿六丁目。
再開発途中の地下連絡通路群。
もともと都庁と地下鉄、企業ビルを結ぶ多層構造の一部だったが、
10年以上前に工事が頓挫し、以降は封鎖されたままだった。

「行政も“施工記録が残っていない”って言ってた。
誰も“構造の全貌を把握してない”地下なんて、正気の沙汰じゃないわ」

ナナが吐き捨てるように言う。

「でも、そこに反応がある。
そして誰も、“確かめようとしなかった”」

ミユキは硬い声で言った。

「……なら、私たちが行こう」

深夜0時。
LinkLineの4人は、都市の灯の切れ目に立っていた。

フェンスを乗り越え、鉄のゲートを開け、
誰も通らない暗がりのコンクリート階段を下りていく。

その先に広がっていたのは、“空虚”だった。

照明の切れた地下通路、コンクリートむき出しの壁、
作業車が入った形跡も、清掃された跡もない。

けれど、その“何もなさ”が異様だった。

「静かすぎる……空間の“反響音”がない」

アイナが耳を澄ませる。

「これは、空気が音を拒絶してる」

ミユキが剣を抜く。

「結界、展開する。
この先、普通の感覚じゃ追いつかないかもしれない」

ユリが低く告げる。

《この空間には、“記録されていない建築情報”があります。
おそらく都市建設初期、“魔法庁関連施設”が接続していた地下網です》

「つまり、“都が意図的に黙殺した”ってこと?」

「そう。都市の成長の下で、“何か”を埋めたんだ。
それが、今になって動き出してる」

ナナが肩を強張らせる。

「冗談じゃない。
過去の“都合”で異界が生まれてるなんて」

一行が地下三層に到達したとき、空気が変わった。

壁面に、うっすらと残る文字列。
それは古い公文書のような文章で、かろうじて読み取れた。

――適性評価未定区域
――感情出力限界超過群、処置保留
――機能化不能者、廃棄

「……ここ、“魔法少女制度の棄却層”だ」

アイナの声が低くなる。

「制度の成立当初、“適合率が低すぎた者たち”を――
“訓練も補償もなく、放置したまま封鎖した”施設の跡」

「それって……“見捨てられた魔法使い”ってこと?」

まどかが凍りついたように問う。

ミユキは、目の前の錆びたシャッターに手を当てる。

(そうだ。
ここには、“語られなかった魔法少女たち”がいた。
歴史からも、社会からも、制度からも――)

シャッターが軋み、風が吹き出す。

まるで、眠っていたものが“呼吸”を始めたようだった。

「……始まるよ。
都市の底で、“何が終わっていなかったのか”が」

LinkLineの本当の戦場は、
剣でも契約でもない場所にあったのかもしれない。

“都市の下”に降りた彼女たちは、
やがて、自分たちの魔法が何を継いでいたのかを知ることになる。
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