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本編

プロローグ

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 異世界に召喚されて勇者になる。
 剣を使って魔王を倒したり、魔法でドラゴンを倒したり。
 夢でもいいから、一度そんな経験をしてみたい。
 と、思ったことはあったけど。

 実際にそういうことになると、人間の脳は「異世界」なんてものを認めることが出来ないらしい。


 ザクザクザクザク、葉っぱが鳴る。
 もしかしたらそこに小さな虫がいるかもしれないけれど、そんなことを気にしている場合ではない。
 とにかく、走るしかない。

 腕に抱えた小さな生き物を抱きしめ直し、出来る限り力いっぱい走った。

(あれなにアレなにアレナニ......!?)

 森なのか林なのか山なのか。
 とにかく木がたくさん生えた獣道だ。
 でこぼこや石に躓きながら、足を動かした。

 何故なら。

 グルァアアアア!!!!!

 耳が引き裂かれそうなほどの咆哮が、周囲に轟いた。

 思わず振り向くと、怪物が大きな口を開けている。
 真っ黒な翼が、木々の枝を折り、葉を散らしながら迫ってくる。

 後ろを見たせいで、地面の凹みに足をとられた。
勢いよく転倒してしまう。

 でも、痛みを感じる余裕は無かった。

 俺は小さな生き物をお腹に庇うように、地面に丸まる。

 怪物がすぐそこまで来ている。

「俺、寝てただけなのになんでぇえ!!」

 その問いに応えてくれる人は、誰もいなかった。
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