10 / 133
レド編
家族色②
しおりを挟む「え…?!あ、ご依頼…あ、いえいえご予約でなくても大丈夫です。上がっていただいて…」
ケインは明らかに疲労の溜まった表情で会話していた。
「で、ご依頼についてですが…ああそういえばお名前は…」
「フランク.カーターです。年齢は20です。」
カーターという青年の見た目は、好青年というイメージをそのまま現実世界に引っ張ってきたかのような見た目だった。
「ああ…そうですか。それでご依頼というのは?」
「弟を探して欲しいんです!」
「人探しですか…居なくなってからどれぐらい経ったんですか?」
「3週間前の1月6日です。遊びに行くと言ったっきりで。名前はアルバス。これが写真です。」
10歳程の少年だった。
「それは国公に頼む案件になっているんじゃないですか?」
「通報したんです…。したんですが…何故か一向に見つからなくて…聞いた話だとここ最近似た感じの行方不明事件が多発しているらしくて弟もそれに巻き込まれた危険があると…」
「…国公に痺れを切らしたって感じか。…分かりました。お受けしましょう。」
「……ありがとうございます!」
「行くぞ。探しに。」
「え?今から?」
「人の命がかかってる状況でタイミングなんぞ関係あるか!」
「……いつでもご連絡を。」
ケインはカーターに名刺を渡し、彼を玄関前まで送ると、クレアの部屋の扉を叩いた。
「おい!クレア!」
「なんだぁい…?」
クレアはやはりのっそりと扉の中から現れた。
「人探しだ。お前の人脈が必要になる。」
「……そうかい。裏社会側とかの方面にも聞くかい?」
「そっちの方面は所長のが良いだろうが…今何処にいるか分からねえからなー…」
「探しても良いけど…条件がある。」
「条件?」
「人体実験の実験台に…」
「うっし…探しに行くかあ…」
「物凄く食い気味にスルーしたね。」
「何?!レド…お前…自ら実験台を…」
「え?」
「『わーい僕実験受けたーい!』お前…そこまでして…」
ケインはレドの声を真似るが、全く似てなどいない。
「あの…」
「てな訳でこいつが受けるってよ。」
「ええ…ちょっと困るんですけど…」
「ははははははは!覚悟しておきたまえよマウス君!こうなったら止められないからね?拒否権など無いからね?ひゃっっはあああああ!」
レドは自身の命が残りわずかであることを悟った。
「あ!ケインじゃーん!」
「おー久しぶりだな。…なんか雰囲気変わった?」
「あ、分かる?香水変えたのよ」
「あー…まあ今のも良いが俺は前のが好きだな」
「本気で言ってる?」
「…いや適当」
「もーなにそれー!」
「ギャハハハ!」
「ケインくーん!」
「ケイン!」
「あの先輩。」
「…なんだ?」
「さっきまで話しかけてきた女性……大体10人…いや12?13?…全員と寝たんですか?」
「んな訳無いだろ。」
「ええ…」
「どーせ信じ無いとは思ってた。」
「さて…と。ここらへんだったかな?」
「こんなところで聞き込みしても意味なんてあります?国公がどうせ調べ尽くしてるんじゃ…」
「あまりにもヒントが少ないもんでな。1月6日の朝以降失踪としか分からないし、カーターさんの地区で連続した疾走が続いてるって割に手がかりが掴めねえし…」
「まあやるだけやりましょうか。……もしかしたら関係ないところでも分かるかもしれないですし。」
しかし三時間ほど聞き込んでも、何一つとして有力な情報は得られなかった。
「……おい誰だここで聞き込もうって言った奴。」
「あんただよ。」
冷酷な口調でレドは返す。
「…なあ。フランクさんの前じゃ気使って言わなかったが今回の事件…」
「知ってますよ。魔族関連でしょ?どうせ国公もそっち方面で動いてる。国公が動いてここまでヒント無しってなると相当ですよ。…っていうかフランクさん本人も気づいてるでしょ?…そもそも可能性が高い時点で彼に言うべきだったのでは?」
「…確証もつかめんし、何より不安にさせちまうよそれじゃ。…まあお前の言うことが正しいかもな。」
「……」
「んだよ?」
「いえ…先輩って夜遊びしまくって昼寝てるイメージしか無かったのでそう言う解答は少し意外で…」
「はあ?!あのなあ、俺は俺で色々と…まあ良い。取り敢えず一旦戻ろう。」
レドの言葉に対し怒りを露わにしかけたケインはそれを抑え込んだ。
2人は疲労感を溜め込んだ足取りで、ドラゴンクロウへと戻った。
「え?ああ…情報?見つかったよ。なんとね…カーター氏の居た地区の情報さ!」
「俺の努力って…」
『俺たちって言わないのかよ。』
レドはそんな文句が漏れ出そうになる。
「それ信用できるんですか?グレーゾーンな証言とかじゃ疑ってしまいますが…」
レドはクレアに疑問をぶつける。
「ふっふっふ…大丈夫さ!何を隠そう地区有数の裕福な家系…」
「おおまじか。」
「に住み着いているパラサイトおじさんの証言だからね。」
「思いっきしブラックゾーンじゃないですか。」
「ま、まあ詳細を知らない事には…一概に根拠がないとは言えんだろ…」
「それでね…彼の証言によると1月5日…大体深夜11時30分…その頃に例の少年が歩いていた所を見たらしい。」
「時刻は正しいんですか?」
「その日は住み着いている家の家族が旅行に行っていたらしくてね。遊び放題だと言わんばかりに外をウッキウキで歩いていたらフッと人影が見えた。どう考えてもこどもの身長だったもんで疑問に思い、後をつけた。が、その曲がり角で突然消えてしまったとの事だ。」
「う~ん…じゃあますます分からんな…」
「…もしかして地下とか?」
「いや、地下の探索はとっくにやってる筈さ。」
「地下と言っても下水じゃなくてもっと下の…」
「下ぁ?!そりゃ考え過ぎってもんだろう!」
「じゃあそこで消えた理由が分からないじゃないですか。仮にこれが魔族事件だとして…その魔族がたとえば地面を操作する魔能力でも持っていたとしたら…それは可能なのではないかと。」
「妄想の域を出ていないよ…。」
「…だが手がかりがそれ以外無いってんならもうそこで行くしかねえだろ。ここまでくると魔族事件なのは明白だろうし…何より生半可に姿をくらますような能力で国公を却られるとは思わない。」
「……分かったよ。そうなってくると…大体此処からここまでは覚悟しといてね。」
クレアは地図に巨大な丸を書いてそう言った。
「…何するんだ?」
「私の魔力探査機は精度が高い割に持続時間が短くてねえ…電池が切れた時に取り替える役をしてもらいたいのさ。」
「…大体どれぐらい?」
「最低3日。もちろん休みなしでね。」
「終わった…」
「もちろん手がかりが無かったら別のところを探して、さらにもう違うと思ったら別の方法を探さなきゃ行けないからね?」
クレアの言葉には、誰よりも強い圧がかかっていた。
「カーターさん…あと3日以上はかかります。……もう少しの辛抱ですので。」
ケインは電話越しにカーターに謝っていた。レドはそんなケインを見て、やはりかつての母親を思い出してしまった。
6日後…
「あ!…ホントにあった。ホントにあったあああああああああああ!」
クレアは部屋で発狂した。
「終わった…終わったんだ…」
「流石にちょっと休みたいな…。」
レドとケインはその連絡を通信機から聞き、道端で膝をついて安堵の表情を浮かべる。当然道ゆく人に奇怪なものを見る目で見られていたが、彼らはそれを気にも止めなかった。
「…となると…この地下に空洞があるのか。」
「まあそうだね…正確な場所は色々調べるとし…ここまで不自然に穴が開いているってのは…明らかに怪しいよ…ちょっと休もう…今日は寝よう…」
3人はベッドに倒れ込んだ。レドに関しては自身の家があるにも関わらずである。
「カーターさん…魔族が居ると思わしき場所が見つかりました…。」
「本当ですか?!」
「…あなたは祈っていてください。今できる事はそれだけです。現場に行こうなんて事は絶対にしないでください。良いですね?」
後日、ケインはカーターにそう訴えかけた。カーターは何も答えなかった。
ーーーー
「うっし…行くか。」
「…どれくらいだ?強さは。」
「そうだね…最低でもStage5はある。」
「…一体どうなってんだか。知性魔族がぽんぽん出てくるなんぞ聞いてねえよ。」
ケインは軽く口をこぼした。
カーターは3人が事務所から出るのをビルの屋上から眺めていた。まだ気づいていない。よし、このまま着いていけばいい。弟を探すと言った執念が彼の瞳には宿っていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
忘れ去られた婚約者
かべうち右近
恋愛
『僕はレベッカしか選ばない』
甘い声音でそう話したはずの王太子サイラスは、レベッカを忘れてしまった。
レベッカは、王太子サイラスと付き合っていることを、ある事情により隠していた。舞踏会で関係を公表し、婚約者に指名される予定だったのに、舞踊会の夜にサイラスは薬を盛られて倒れ、記憶喪失になってしまう。
恋人が誰なのかわからないのをいいことに、偽の恋人が次々と名乗りをあげ王太子の婚約者の座を狙ってくる。おかげで不信に陥ったサイラスに、レベッカは自分が恋人だと名乗り出せなくなってしまった。
サイラスの記憶喪失を解消するため、薬師兼魔女であるレベッカは恋人であることを隠しながら、事件調査を協力することになった。そうして記憶が戻らないまま二人の距離は再び近づいていく。だが、そんなおりにサイラスの偽の恋人を名乗りでた令嬢たちが、次々と襲われる事件も起き始めて……!?
※他のサイトにも掲載しています。
毎日更新です。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく
かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。
ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!?
俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。
第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。
「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」
信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。
賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。
様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する!
異世界ざわつき転生譚、ここに開幕!
※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。
※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる