Heavens Gate

酸性元素

文字の大きさ
24 / 133
魔人衝突編

予兆②

しおりを挟む

「ひゃははははは!来たぜ来たぜ魔導師様がよお!」
突然上空から声がし、花織は刀を構え、自身の元へと落下して来た刺客に対して防御を取る。
「……知性魔族か。」
「その通り!その通りだぜえ?!」
「知性魔族の被害がこの国で多発しているとは聞いたが…」
「良いか?コイツァ『流れ』なんだよ!俺らの時代が来てんのさ!」
「なるほど…知性魔族がこの先大量に押し寄せてくる訳だ…貴様はどうやら…『組織』に属している訳ではないらしいな…とすれば貴様は何だ?」
「そうだぜ?俺個人の行動さ。怖いかい…?やっぱ人間だもんなあ…怖えよなあそりゃ…」
「く…クククククク…ははははははははははははははははは!ははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!待ってたよおおおおおお!この時をずっっっっっっっっっと待ってたよお!!!」
「あ"?」
「さあやろう!やってしまおう!もう護衛などどうでもいい!何時間でも何ヶ月でも殺し明かそう!ああ…楽しみで仕方ない…無知性ではない…知性だ…。ケインばかりがずっと奴らと…ああ野郎だけが奴らと…ああ許せん…許せんとも…私の獲物を一人で殺そうなど断じて許せんとも!」
「こいつ…イカれてんのか?」
「ああイカれてるだろうイカれているともそうさとことんイカれている!だからどうした言いたいものさ!殺し会いたいそれだけだ!なんでも良い!なんでも良いぞ?どんな手段でも殺しに来い!あらゆる武器で殺しにこい!」
花織は地面を踏み込むと、刀を魔族へと振り上げる。
「防ぐか…?防ぐだろうなあ…さあ次はどうする?次は…」
ブツブツと呟きながら、斬り裂いた魔族の方へと振り返る。が、そこに居たのは、抵抗する間もなく体を無数に斬り裂かれ、肉塊になって消滅する物体だけだった。
「ああ…そうか…しまったな…期待しすぎてしまった。Stage5との対峙は希少とは言え、国公は年に数回は対応している…。それに苦戦するようでは人類など守りきれんか…。分かっていたが…国公が問題なく対応出来るなら…明らかにStage5classCのコレに苦戦する訳がない…。」
花織は落胆し、地面にへたり込んだ。すると、10体以上の無知性魔族が、花織たちを渓谷の崖から囲み始める。
「はあ…そうかそうか…まあ見たところStage3はある…先程よりはマシと言えるだろう。これ以上…幻滅させてくれるなよ?!」
花織は再び刀を引き抜くと、高らかと笑い声を上げながら、襲い魔族へと飛びかかった。
ーーーーーーーーー
「……なんでテメエは帰って早々血まみれなんだ?」
事務所に入ってきた花織の足元に滴る青い血液を見て、ケインはため息をついた。
「えー…偶然…カブトガニの血の採集を…しており…」
「その血のかかり方だとカブトガニを斬った事になるんだが…それは割と問題になるんじゃないかい?」
やはりクレアはため息混じりに言う。
「……魔族を斬るのが楽しくなり……気づいたらこうなっていました。」
「なんか…うん…風呂入れ。」
シャーロットは頭を掻きながら、風呂場を指差して言った。
「……彼は?」
「おい風呂入ってからソファ座れって…あああああああ!」
ケインの言葉を意にも介さず、花織はレドの方を見ながらソファに座る。
「……今年入った新人だよ。かれこれ2ヶ月って辺りか?」
「二ヶ月…思ったより生き残っていますね。大抵どっかしらの依頼で銃撃に合うだので死ぬのに。」
「……強いとか思われてる感じですか?申し訳ないですけど僕の成績は下の方でしたよ。…魔能力も殆ど良くわからないですし。」
「……分からない?分からないとは?…何か特殊な条件が?」
「…ある程度の予想は付いてはいるんですが…初めて発動できたのがつい先日ですのでなんとも言えないです。でも条件があるのは確かですね。」
「……魔力値は?」
「平均中の平均です。小数点第四位までピッタリ0です。」
「…筋肉も魔導師としては殆どついていない……分かりました。鍛え直しましょう。」
花織は机をドンと叩く。その衝撃により青い血液が飛び散り、ケインとシャーロットは顔を抑えた。
「貴方とて戦闘力が必要でしょう?出ないとこの先生き残れないしここに貢献できない。ならば今一度学ぶべきです。」
「……貴方はまだ僕が戦う場面を見ていないでしょう?なのに自分の方が強いと決め込むんですか?何というか……随分と自己評価が高いんですね。」
「うっ…」
「貴方…武士?侍?の家系らしいですが…少なくともそう言った家系の剣技なら自身を驕り高ぶれなどと言う方針は教えないでしょう?」
「つまり貴方は自分の方が強いと?」
「いいえ?ほぼ確実に貴方が強いと思いますよ?」
「………なんだかなあ…なんか…なんか腹たつ…」
花織は首を傾げた。
「そうやって他者を先入観で決めつけるって言うのは……貴方の戦闘狂な面々に反映されてるんでしょう?相手が強いと言う先入観で先走るからそうやって押し進めてしまう。……貴方魔族と戦って満足しましたか?……もしかしたら『期待はずれで心底ガッカリしている』んじゃないですか?恐らくあなたは僕を鍛えたいんじゃなくて、僕の強さを見て自分の好奇心と期待を満たしたいだけなんだ。何もかもが先入観で成り立っている。自己欲求で成り立っているクレアさんと一緒だ。」
「………自覚はあります。」
「そうでしょうね。ここにいる人間は自分の歪みを自覚している、でしたっけ?」
レドはクレアにそう問いかける。
「ああ…まあそうだね。」
クレアはニヤニヤと笑いながら堪える。
「とは言えまあ…それが悪いとは思いませんよ。……本当に。」
「…そういう貴方も他人の事を一切考えていないでしょう?」
「…ええ、そうですよ?僕は貴方をまだ信頼しきれていないので。…僕がここにいるのはここが好きだからであって、別に貴方と関わりたい訳じゃない。」
「……分かりました。では私はあなたに積極的に関わっていきますので!」
花織は勢いよく立ち上がり、あたりに血液を飛ばすと、そう高らかに宣言した。
「……そうですか。」
「それとケインさん!……後で少し。」
「…ハイ……ワカッテマス…」
枯れた声で答えるケインにレドは何かしらの事情を感じたが、詮索する気など起こらなかった。
ーーーーーー
「…料理ですか?」
フライパンを用意するレドの背後にから、花織が話しかける。
「……いきなり後ろから話しかけないでください。」
「お手伝いします!」
「あー良いです良いです…」
「料理くらいは嗜んでいます!ほら!」
花織はフライパンをコンロに置くと、なんの工程もなく火を点火した。
「だったら油を引いてから火をつけるくらいして下さい!」
レドは自身の出せる最大限の声量で叫ぶ。
洗濯物を取り込むとき、買い物に行く時、アルバイトに勤しむ時、ひたすらに背後について回る花織に、レドは限界を感じ始めていた。
「……あの、降参するので辞めてください。」
「降参?殺し合いに降参とは?」
「これを殺し合いだと思ってたんですか?」
「いや…他者と関わる際は殺し合いと同等だと…」
「随分と物騒な家系にお育ちで…」
「…まあ分かりました。私の勝ちという事で。」
花織は勝ち誇ったような表情でソファに座る。
「初めから勝負とは言ってないんですが…」
「所で…貴方は本当に成績が下の方なんですか?」
「…どういう意味ですか?」
「……いえ、忘れてください。随分と中身のない事をお聞きしてしまいました。」
花織はそそくさとレドの前から立ち去る。…確かに体力的に見て成績が振るわないのは納得できる。だが私に言い放ったことといい、彼について回る何かがある。
「…知りたいかい?」
自身の部屋に向かおうとする花織の前にクレアが立ちはだかる。
「……まあ知りたいです。」
心の内を彼女が読んでくるのはいつも通りだ、とあまり花織は驚かなかった。
「まあ彼はね…言ってしまえば行動が極端で、かつ冷酷極まりないんだよ。自身の大事なもののために何もかもを切り捨てられる…そういう人間だ。」
「…そうは見えませんが。」
「少し丸くなったんだよ。2ヶ月前なんか日常生活ではほとんど関わろうともしなかった。…彼には父と母が居た。…まあそれは誰でもそうだね?裕福とは言えずとも、ある程度には幸せだった。だけど彼は先天的に異常だった。故に両親に異常性を察知されたのさ。……そしてその結果問題行動を起こして、周辺から孤立した。……でも彼の行動全ては家族のためなんだ。母親が近隣の同世代の子供と友達になる事を勧めたから、彼らが怖がっている犬を撲殺し、会社が燃えて無くなって自暴自棄になり、虐待を振るうようになった父親を殺した。」
「……!」
「だけどそれが家族を不幸にした。母親は周囲からの影口で精神を病んで病気になって死んだ。」
「……」
「君も同じだろう?君も良かれと思ってやった行動のせいで兄が…」
「それ以上は言わないで。」
「…分かったよ。兎に角、彼は君が思う以上に繊細なのさ。……これ、彼の成績を気になって調べてみたんだよ。」
クレアはプリントを花織の前に差し出す。
「………筆記が全て一位…?でも終盤の成績は落ちている。」
「母親が死んだあたりだね。彼を知る人物に聞いたんだが…」
『レド…あーあいつね。殆ど喋んないし殆ど表情筋動かないんですよ。……クソキツい訓練の後にも全然キツそうな表情してなかったのは流石に怖かったですよ。成績的に確実に疲れてるとは思うんですけど。…朴念仁って言うにも流石に愛想なさすぎるって言うか。』
『あの人寮にも泊まらずに毎日自分の家帰ってたらしいですよ。なんでも母親のためとか。まあ最後の一年は普通に寮で過ごしてましたけど。…ウワサだと母親のために毎日とか…。国公も国公でそういう面の優遇ぐらいさせてくれれば良いのに…。意外と良い奴だったのかなあ……』
『うーん…あんまり印象残ってないですけど…あ、そーだ!アタシ養成時代の時の筆記試験も国公魔導師の筆記試験もあの人の近くだったんですけど、いつもなら一瞬で解いて天井眺めてるのに、国公魔導師の試験の時……なんか全然動かないなーって思ってチラッと見たんですよ。……そしたらこうやって下向いたまんま一切動いてなかったんですよ。』
「……」
「彼は大事なものを守りたいだけだよ。…それが依存という形で現れただけでね。」
「……ありがとうございます。」
花織は立ち上がると、クレアに頭を下げ、自身の部屋に戻っていった。
「ふう…関係が崩れちゃったら元も子もないよ…」
クレアは安堵し、肩の力を抜いた。
ーーーー
「あの…花織さん。」
「…なんでしょうか?」
「やっぱりどこかで訓練みたいなのが必要だと思うんです。…僕の魔能力については理解しておいた方が良いですし。」
「…フフン!」
「あ、調子乗った。となると俺も巻き込まれる感じか…」
ケインは項垂れる仕草を見せてそう言う。
「では今から行きましょう!屋上です屋上!」
花織は満面の笑みでレドの服を引っ張り、どこからか取り出してきた屋上の鍵を右手に、そのまま彼を引きずり始める。
「…ケインさんも来て下さい!」
「アッハイ」
悟りを開いたような表情でケインは立ち上がった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

忘れ去られた婚約者

かべうち右近
恋愛
『僕はレベッカしか選ばない』 甘い声音でそう話したはずの王太子サイラスは、レベッカを忘れてしまった。 レベッカは、王太子サイラスと付き合っていることを、ある事情により隠していた。舞踏会で関係を公表し、婚約者に指名される予定だったのに、舞踊会の夜にサイラスは薬を盛られて倒れ、記憶喪失になってしまう。 恋人が誰なのかわからないのをいいことに、偽の恋人が次々と名乗りをあげ王太子の婚約者の座を狙ってくる。おかげで不信に陥ったサイラスに、レベッカは自分が恋人だと名乗り出せなくなってしまった。 サイラスの記憶喪失を解消するため、薬師兼魔女であるレベッカは恋人であることを隠しながら、事件調査を協力することになった。そうして記憶が戻らないまま二人の距離は再び近づいていく。だが、そんなおりにサイラスの偽の恋人を名乗りでた令嬢たちが、次々と襲われる事件も起き始めて……!? ※他のサイトにも掲載しています。 毎日更新です。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく

かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。 ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!? 俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。 第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。 「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」 信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。 賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。 様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する! 異世界ざわつき転生譚、ここに開幕! ※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。 ※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

処理中です...