Heavens Gate

酸性元素

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魔人衝突編

真実と、その名は

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「シャーロットが…結界から出ている…!これは一体…いや、これは好奇だ。ミス.シャーロット…ここは任せて良いかい?」
「ああ、ここは俺に任せろ。他の隊員の支援に迎え。…それとゾルダとアンナの解放、任せたぞ!」
シャーロットはメリッサの提案に迷わず応じた。
「行かせてなるか!」
メルディベール、及びその他の魔族は砲撃を放つ。
「させねぇっつーんだよ。」
シャーロットは魔能力で全てを漏れなく撃ち落とした。
魔族の間に緊張が走る。勝てないかもしれない、そんなありうべからざる未来が、彼らの脳裏に浮かんだ。
それからは早かった。魔族が微量の焦りで放つまた魔力、そこから連鎖して次々と砲撃が放たれていく。
が、無作為な攻撃といえど、シャーロットも回避できない。
「何をしている?!落ち着け!」
「で、ですがこれで…これで…!」
しかし彼女は無傷だった。
「なっ…!」
「そ、そんな…!」
「馬鹿げている…!」
メルディベールと言えど、この光景には戸惑っていた。
明らかに当たった筈だ。
「忘れたか?俺は原子を操作できるんだ。魔力を操作するとあれば原子も必然的に混じる…霧散させる程度なら俺は一瞬で出来るからな…俺を不意打ちしない限りは特殊な条件下を除いて傷をつけることすら出来ない。」
未来予知で基本的な攻撃は避けられる、当たったとしても攻撃を認識されれば物理以外は無効化…そもそも限界のない再生能力を持つ…。
彼女を殺す事が不可能なら、殺し続ければ良い。そのような認識ですら絶望させる強さ。もはや魔族でも人間でもない。
魔女と言われるが所以の強さ、それをメルディベールは実感していた。
「ああああああ!」
魔族が次々と逃げ出していく。生物である以上、死への恐怖は平等にある。
一つの叫びで彼らの動きは止まった。
「待てッ!!!我らの目的を忘れるな!我々が戦うのは政府のためでも、人のためでもない!魔族のためだ!!貴様らは己の信念すら捨てるのか?!信念すら捨てた命なぞ糞の価値にも届かんと知れ!それでも逃げるのなら…ここで逃げて死ぬと良い。意味のある死を迎えたいものだけここに残れ!」
魔族達の恐怖は止んだ。そうだ、メルティバールに、彼の信念に賛同したからここにいる。その為に、命を捨てねばいけないのだ。
「………。」
シャーロットは何も言わずにその光景を見ていた。
「すまない、待たせたね。再開しよう、戦いを。」
「ああ…いや、別に幾らでも。殺すんだからな、俺が。……何も言わずに殺すのだけはやりたかねぇのよ。」
「殺し合いに向かないね、君は。」
「そうだな、つくづくそう思うよ。それに気づくまで500年以上かかった。」
先手を仕掛けたのはシャーロットだった。何か先にされると危険なタイプだ。彼女の警戒からすればその行動は当然であった。
瞬くよりも早く、爆発が周囲の魔族を吹き飛ばした。数百体いた魔族は一瞬のうちに数十人規模まで縮小する。
熱で膨張した空気は、その直後に即座に冷却され、吸引する形で発生した熱風により、生き残った魔族はバランスを崩していく。
当然彼女はそれを考慮していた。
死の槍ロンギヌス800本。それを密集した魔族の間に全て放った。
しかし、それに至るまでで既に、彼らが反撃をする猶予は出来ていた。
反撃だ、と彼女が認識するにはしばしの時間がかかった。
魔族の群れは何もせず、ただ灰へと還るのみだった。
その直後、異変は起こる。
魔族の灰は、途端に魔族の軍勢へと姿を変えた。
先ほどのものとは別。理性の欠落を除けば、一体一体がstage5を超える。
シャーロットとて無視はできなかった。無作為に魔能力を放つ幾千万もの脅威。電撃で自身の周囲を守ると、メルディベールの姿を目で追った。
『知性魔族の複製……ここまで無理をしたんだ、奴とて無事では済まんはず…』
しかし彼の姿は無かった。
直感的に彼女は悟り、魔族の群れへと目を向ける。
その瞬間、群れの中から飛び出したメルディベールが、彼女へと襲いかかった。
が、それを彼女は、既に魔眼で予知していた。彼の放った魔法を回避すると、300もの魔法陣で彼を囲い込んだ。
メルディベールは土を操作する。魔力で硬度を強化した、無尽蔵に増える土。それらで魔法の大半を相殺した。
間髪入れずに彼は攻撃を叩き込む。
捩れながら増幅する魔弾を3000配置し、土で退路を断ち、そのまま彼女を包み込んだ。
強化した筈の土は、あっさり粉へと戻された。しかし、魔法を放つには十分な時間。彼女の手足を魔族の群れは固定する。
『何がしてぇんだ…?!不意打ちじゃねぇ限りは俺に攻撃は…』
一斉に放たれた魔弾一つ一つに合わせる形で、彼女は魔能力を発動する。毎秒数千発間隔の攻撃一つ一つに対応するこの防御力、まさしく怪物だ。
が、それでも彼が一枚上手だった。
シャーロットの魔眼は、数秒先を予見した。
シャーロットの一瞬の動揺。その隙をメルディベールは見逃さなかった。
魔族の群れは彼女の境を遮り、魔弾の認識を妨害させた。
『その程度……視界に入る一瞬で防御可能だぞ?』
しかし、彼女の魔眼の映す未来に、魔力の光は映らない。
まさか、と言う彼女の読みは的中した。
魔弾は直進しなかったのだ。彼女の放たれた直後に停止し、視覚へと移動。目線をそこへと移動するより早く、彼女の体へと到達させた。
シャーロットの右腕が消し飛んだ。直後、魔族の砲撃が一斉に始まる。
逃れようとも無意味。恐らく最大限防御を張り巡らせれば、この程度の攻撃は難なく相殺出来ただろう。しかし、彼女の脳裏には、他の部隊がチラついていた。
巻き込まないギリギリの攻撃。それをこれ以上の規模で行おうものなら、却って戦況を悪化させてしまう。
そこを前提とした攻撃だった。
全てが彼女の視覚を狙う。完全な命中こそないが、着実に彼女を追い詰めていく。
『……おい、本気、少し出していいか?』
セシルの魔能力を介して彼女はメリッサに問いかけた。
『……良いよ、いつでも。』
彼女に当然余裕はない。巻き込まれる可能性は大。
その上での発言である事を、シャーロットも自覚していた。
巻き込むことが怖い。恐怖に彼女は凍りついた。
だが、その躊躇いもたった一瞬。数100年に及ぶ彼女の経験値は、その恐怖でさえも無に帰した。
シャーロットの髪が黄色く発光する。
『来たか…!』
メルディベールは固唾を飲む。
ヴェルフリッドに見せたものよりも更に上。だがこれが本気では無いと彼も理解していた。
展開は一瞬だった。目に映る光景の変化を脳が理解する頃には、彼が作り上げたもの全ては壊れ、そして彼自身の体も半分以上消し飛んでいた。
平面だった大地には巨大な穴が空き、底が見えない。余熱が煙を放っている。
「……ふう、何とかなったか。各部隊は安否の確認を取れ!」
「射撃第十三部隊、負傷者なし。異常ありません!」
「白兵第九部隊、此方も負傷者なし!」
シャーロットのある方面を眺めながら、メリッサは胸を撫で下ろした。
「…よし、シャーロットが結界から出られた理由はわかったか?」
「ええ、先ほど連絡がありました。白兵部隊の隊員がしたようです。名は劉龍と言うようですが…そしてもう一つ…」
「劉龍…サリサくんのところの…classSの魔族の?まさか撃破したのか?」
「ええ、それがもう一つの連絡です。どうやら撃破に成功したようです。」
周囲はざわつき始める。遠方からでも感知できるほどの魔力を持つアレを、少数で撃破できたというのか。
「ははは!なるほど…正直足止めになれば良いとしか思っていなかったが…まさかやってくれるとは!……君の部隊は強かったらしい。生存者は?」
「ケイン.クロシキ、セシル.ドルフネーゼ軍曹、ジーク.ハイドラッド、ハナオ.フウギシキ。劉龍二等兵、以下四名です。死亡確認の取れた者は…」
「いや、後でいい。……」
メリッサは顔を曇らせる。生き残ったのは彼だけか。ようやく部下が芽吹いたと言うのに。それを見る事ができないと言うのは気の毒でならない。
…しまった、死への感情移入が歪と彼女に言われたじゃないか。これでは同じことの繰り返しだ。サリサの死への悲しみはある。仕事以外での付き合いも多かった。普通なら悲しむのだろうが、やはり気の毒だ、と言う感情しか湧かない。
レド.ケニーシュタイン。彼を引き入れた理由は、そんな自分とどこか重なったから。
自分の代わりが多少できるのでは無いか、と言う期待感があったから。
他人を傀儡としか思えなかった彼女には、誰もが恐怖した。だがサリサは、彼女だけは違ったのだ。
『龍くんはね…自分が思っている以上に才能あるよ。』
『転移魔法は面白いが…正直魔力量は低い。魔力網度も平均以下だ。ましてや転移できる距離もあまり遠く無い。』
『うん、まあ…そうだけどさ。知ってるんだ。夜な夜な自主練してる事。ああ言うのは多分伸びる。』
『根拠は?』
『無い。でもアタシの野生的な勘は割と当たるからね。』
『そうか、分かった。』
『ねぇ、メリッサ。アタシに色々あったらさ、アタシの部下の今後とか…任せて良い?』
『ああ…いいとも。死ぬなら役に立って死んでくれよ?……ああ、何でも無い、今のは忘れてくれ。直ぐに他人を駒と思ってしまう、私の悪い癖さ。』
『別に良いと思うなあ、それ。アタシはそんな風になれないし。まあ周りが冷酷過ぎるからダメだー!ってスタンスでアタシはやってるけど、逆に冷酷無慈悲な人がいた方がバランス取れるでしょ?……それにさ、それが貴方でしょ?』
『……そうか、ありがとう。』
自分と一度交わした誓い。それを忘れかけていた。最悪だ。友だと認めた者のことすら疎かにするとは。
「連絡を今すぐに。劉龍二等兵にだ。」
メリッサは無線を繋ぐ。
「君が劉龍二等兵か?」
『ゲホ!ゲホ!……はい。」
「シャーロットを転移させたのかい?」
『ええ…召喚対象の所有物を使って召喚するんです…大昔の眷属の召喚術を元に…』
「そうか…悪魔召喚というものか…。悪魔の召喚は成功しなかったが、結果として精霊の召喚が出来たという…であれば…君にとって酷かもしれんが、聞いてくれるか?あと2人、追加で召喚してくれ。まず1人はアンナ.マクラウド。もう1人はゾルダ.フランツジェイル。所有物はそれぞれある。セシルくんがアンナの弾丸、ゾルダの精霊の羽を持っている。……可能かい?」
『ええ…シャーロットさんを召喚した時よりかは繋がりが強いので…大丈夫です。』
「相応の負荷はかかるか。それと召喚した後に余裕があるなら、もう一つ頼みたい事がある。良いね?」
『はい…分かりました。』
何度か遠目から見た、あの怯えきった彼は何処にもない。まさしく戦士の姿がそこにあった。
「大丈夫……君の部下は立派になった。せいぜいこき使わせてもらうよ。」
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