Heavens Gate

酸性元素

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地獄編

堕天と打開③

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「はあ……!はあ……!」
レドは山の山頂へと登っていた。
間違いなくこの頂上にある。今まで見えなかったのは、恐らくジャニスという女せいだろう。
だが、足はすでに限界を迎えていた。常人同然の人間が全力疾走で坂を登り続ければ、こうなるのも当然である。
「……!」
闇の中で、何かが光った。なんだ、誰かいる。いや、何かがいる。光は一つ、二つとレドを囲い込むように光り始める。
「まさか……!」
そこにいたのは、人型だった。
奴らはここにもいたのか。これをどう突破する。
「やるしか無いか…」
レドは腰についた銃を構えると、全速力で山を駆け上がっていった。

メリッサは糸を手繰り寄せる。生き物のように無数の糸は空中を飛ぶ。アンの矢は糸に乗る。反射し、誘導され、そして絡まりながら。
加速した矢は、ウヴァルの剣とぶつかる。矢は全て叩き落とされる。
ジハイドはウヴァルと正面からぶつかり合った。幾度となく体を崩壊させながら、彼はウヴァルに拳を一撃、浴びせる。
だが、あまりの強度を持つ体に、拳はなす術なく砕けた。
「なるほど……君は竜の血を持っているんだね!」
ウヴァルは腰から巨大な剣を取り出す。
「それは…まさか…!」
竜殺の剣バルムンク!」
ジハイドの不死を打開する唯一の武器にして、竜を殺すためだけに存在するもの。
ジハイドの腹部が切り付けられた。
「がっ…は!」
再生しない。
今まで無敵を誇っていたはずの彼が死に直面するという事実を突きつけられ、アンとメリッサは恐怖した。
だが、彼は依然として笑っていた。いや、それどころか高揚が増していた。
「ひひひひひひ…ははははははは!最高だよお前!殺してくれよ!俺を!その手で全力で燃えたぎるほどの殺意を持って!さあさあさあさあさあさあさあさあああああ!」
腹の傷など穴も解さず、ジハイドは叫んだ。
すると、ウヴァルの顔からは笑顔が消えていた。
『何故だ……?!俺が今まで見てきた人間は、皆恐怖した。なのに何故、この男は笑っている!』
ウヴァルはカイムの言葉を思い出した。単純な争いを好まない生き物。そう奴は言っていた、
まさか、これはそういう事なのか。その感情が恐怖であると分かったのは、その直後だった。
「おい!俺を撃て。」
ジハイドは右手を挙げる。アンは即座に弓を引くと、ジハイドの頭を撃ち抜いた。
「ふふふふ…ははは!パーフェクトな俺!ここに見参!」
ジハイドの体に鱗が生える。歯は鋭利さを帯び、背中には翼が生えていく。
その姿は、まさしく竜そのものだった。
一度の死にて爪へと至り、五十の死にて牙を得る。そして百度の死にて竜へと成る。
腹部の傷は修復していない。ボタボタ、と血が垂れる。
だが、それでも彼は悪魔に言い放つ。
「さあ…こいよ、悪魔サンよ!」
「この……!」
ジハイドは突撃する。今までとは別格の速さ。屈強な翼と足を利用したその速度は、空気の壁を突き破り、マッハ100へと到達した。彼の周囲の物が吹き飛ばされる。
当然、空気の壁を前にして怯むウヴァルでは無い。当然剣を彼に向ける。
だが、その剣は、ジハイドに振るうより前にボロボロと崩れ落ちた。
「!」
「ふぅ…よーやく砕けてくれた。どーせその調子じゃ直ぐ再生するんだろうけど…そんな余裕ないでしょ?」
アンは冷笑するように言い放つ。
ウヴァルは咄嗟に竜殺の剣を振るった。
メリッサは糸を手繰り寄せ、彼の体を固定する。即座に糸は振り解かれるが、ジハイドが避けるだけの時間を作るには十分だった。
ジハイドは拳を叩き込んだ。
しかし、ウヴァルは吹き飛ばされることなく踏みとどまる。
「ここで…終われ!」
ジハイドの首目掛けて剣を振る。
その瞬間、彼の体は、巨大な爆発によって吹き飛ばされた。
「な…に…?!」
ウヴァルが驚愕したその直後、彼の腹を何者かの手が貫いた。否、内部から突き破っている。何が起きている。何が起きている。ナニガオキテイル。ナニガオキテイル。ナニガオキテイル……
次々と体は突き破られ、最後に体の中から全裸のジハイドか飛び出した。
「ひゃーはははー!恥ずかしながら帰って参りましたぁ!
じゃ、後は頼むぜ。」
セシルは右手を前に構える。
「シルキー…これで良いんだな?」
『ええ。』
ゾルダの精霊、シルキーは、彼の右手から飛び出した。
黒い塊が、ウヴァルを飲み込んでいく。
「あ…ああ…ああああ!」
ウヴァルは恐怖の中で死を迎えた。
「ふぅ…」
アンは腰が抜けたようにストン、他座り込む、
「作戦成功、だな。少将サンよ。」
「ああ…君は再生場所を指定できると言っていた。ならばそれを利用して内側から破壊することも可能な筈。
……まあ単純な作戦さ。」
「シルキー…行くのか?」
『ええ、ありがとう。』
精霊、シルキーは、笑顔で空気に溶けていった。
「……ん?お前は!」
突然現れた人影に、ジハイドは駆け寄った。

アンナの弾丸が宙を舞う。流星の如く、或いは白鳥の如く。
されども悪魔には通らない。
カイムはやはり攻撃を防ぎ続ける。
『内側からの攻撃ったって…どうすんだよこの野郎!』
ジークは既に満身創痍。半ば槍投げにも近い心境であった。
デボラは蹴りをカイムに振るう。
当然、防がれる。繰り返される動作の一つに過ぎない……
筈だった。
デボラの攻撃を受け止めたカイムの魔法が、凍りついていたのである。
「!」
咄嗟にカイムは距離を取る。
「デボラ……お前……」
「こいつはアタシが止める。トドメは任せたよ。
リミット.オーバー、ブレイク!」
デボラは体のスイッチを押す。
その直後、彼女の体から冷気が周囲に伝播し始める。
周囲の熱を吸収し、低下させる。
加速度的に温度は低下していき、絶対零度にまで最後は到達する。ジークが焼き尽くす能力ならば、彼女は凍て付かせる能力。
「なるほど……やはり人間は面白い!」
カイムは魔力を解放した。
透明世界スペース.オブ.クリア!」
全長100mはあるであろうか。20にも及ぶ巨大な塊が彼を包み込んでいた。
「……行くよ!」
この氷結能力は、発動したが最後、持続時間が終了し次第強制的に戦闘能力が奪われる。時間は5分。5分で決着をつけなければ。
ジークとノーマンは飛び出した。
カイムの透明世界は氷に包まれ、氷結する。だが、それも一瞬のこと。即座にそれは動きを取り戻す。
だが、彼らが掻い潜るには十分な時間だった。
「!」
3人、近づいている。まさか。
アンナが、カイムの後方に潜り込んでいた。
ノーマンとアンナは銃を構える。
『なるほど……どちらが打つのかわからない…と。
ですが本命は…こちらでしょう?』
ジークはアンナから受け取った銃を構えると、引き金を引く。それを完全に読み切っていたカイムは、下に伏せて回避した。そしてその姿勢のまま、下から上に透明世界を発動させる。
だが、事態は予想外の方向へと傾く。
カイムが回避した弾丸を、ノーマンは剣で弾き返したのだ。
『しまっ……』
弾かれた弾丸がカイムに命中する。弾は体内で拡散し、彼の体を内側から破壊した。
『だが……既に銃を持てる余裕は……』
しかし、ある筈のない銃を、アンナは握っていた。
「黒い銃…?!そうか……あの男が作り出したのか!」
『神乱激楼《ウル.アストロガノン》!』
100、200、300、400、10000、100000………
夥しい量の弾丸が浴びせられ、カイムの体は一つ残らず塵へと変わった。
『ふふふ…やはり人間は素晴らしい…』
カイムは笑いながら消えていった。
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