126 / 133
終末編
死の形
しおりを挟む
民間人と魔族は続々と船に乗り込んでいく。
「早く……早くしないと…」
溢れる涙を抑えながら、アンは人々を誘導する。
「あれは……!」
レナは絶句した。周囲の建物をかき分けて侵攻する、トラヴィス.ツヴァイデッドが、こちらに凄まじい速度で迫っていたのだ。
「全員乗り込んだ!!早く!!出航して!」
一同は船に乗り込み、出航を開始する。
「逃さねえよおおお!!」
トラヴィス口を大きく開け、砲撃を装填する。
「あれは……やばい!!」
シャーロットは魔力を装填させる。時間が足りない。アレを相殺できるだけの魔法が、放てるのだろうか。
その時だった。上空から降り注いだ何かが、トラヴィスの顔面に激突したのだ。
「行け!早く!!」
見ると、海岸にケビンが立っていた。
「親父!!何してんだ!乗れ!!」
ノーマンは彼へと手を伸ばす。
だが、彼はノーマンに優しく微笑みかけるだけで、それに応えようとしない。
「行け、若人達よ。私がここは引き受ける!」
「……くそ親父が。」
ノーマンは、下を向いてしゃがみ込んだ。
まだ全部は出航していない。船、ヘリを含む1000隻。それが完全に出ていくまで、粘るしかない。
「来い!!」
ケビンはボタンを押す。次々と、魔力の弾が周囲から打ち上がっていく。爆薬に使ったものと同じ、人造人間にダメージを与えられるもの。これならば、奴にも有効なはず。
だが、降り注ぐミサイルの嵐に、トラヴィスは屈する事は無かった。
「な…に…?」
爆弾は聞いていたはずだ。でなければ、ここまで我々は来れていない。奴にやられてとっくに全滅しているはず。
「痛ってぇなあ……流石に適応しきれてねえか。」
適応。その言葉を聞き、ケビンは全てを悟った。まさか、適応能力があるのか。それも急速なレベルでの。
「ならば……!」
より強力な爆薬。それを全て、叩き込む。
ケビンがスイッチを押すと同時に、先程の倍以上のミサイルが、国全土に降り注いだ。国土に残った人造人間もろとも巻き込んだその攻撃は、トラヴィスの前進を鈍化させる。
「チィィィ……うざってえ!!」
だが、彼の咆哮ひとつで、それら全ては吹き飛ばされた。
「くっ……化け物め……!」
最早、トラヴィスの体には傷は一つとして付いていない。
「あばよ、人間1人にしてはよくやったぜ?」
トラヴィスの爪が、ケビンの心臓部に突き刺さった。
「親父ぃぃぃぃぃぃ!!!」
ノーマンは叫ぶ。
船から飛び出そうとしたノーマンを、ヘルガは静止した。
「やめて…ください!貴方まで死んだら…私……」
「っ……!うう…うううう…」
ノーマンは膝をつき、その場で涙を流すしかできなかった。
「はは……」
ケビンは、どう言うわけか笑っていた。
「何がおかしい…?」
トラヴィスは彼を睨みつける。
彼女との出会いは、30年前だった。
「やーねー、あの人。1人で毎日籠って研究してるって話よ?」
周囲から、陰口が聞こえる。私はずっとそうたった。魔導機関師の資格をとって以来、ずっとこんな調子。危険区域周辺という安い土地で、ひたすら研究と開発に耽っていた。そんな時、彼女に出会った。
「………」
それは、魔族だった。私の家の前で、1人倒れていた。
何故、防壁を無視して通ることが出来たのか。何故、ここから来れたのか。それは分からなかった。だが、気づけば私は、彼女を家に連れ帰っていた。
「………やあ。」
起き上がった彼女に、一言挨拶する。
「え…」
彼女は怯えるように、部屋の隅で縮こまってしまった。
「ああ……いや……怯えないでほしい。回復したなら帰ってもいいから。」
そう言って、私は部屋から出ていく。
どうせ回復魔を待たず、ここから出ていくだろう、と思っていた。
だが、彼女はしばらく出ていかなかった。
「どうして…出ていかないんだい?」
「出て行ったら……殺されるから。」
すっかり怯え切っているらしく、彼女はガタガタと震えてながらそう言った。
それでも、私は彼女の看病を続けた。彼女は内包魔力が著しく不足しており、このまま返して仕舞えば死ぬ事は決まっている、と思った為だった。魔族といえど、死ぬとわかっていて返すわけにはいかない。善意というよりは罪悪感に近かった。
そうするうちに、彼女との距離は縮まっていった。
マリア.ドラリガント。彼女はそう言った。
「帰らないのかい?」
「うん、帰らない。」
笑顔で彼女はそう言った。私の研究の手伝いや、家事をこなすようになり、私自身、彼女に特別な感情を抱きつつあった。
そうして3年が経った頃、子供が産まれた。
その時は嬉しかったものだ。だが、突然悲劇は訪れる。
彼女の体調が急変し始めたのだ。生まれた事による疲労だけではなく、また別の要因がある事を、私は悟った。
そうして、彼女は話した。
壁をすり抜ける、特別な血筋。そんな彼女は特別な因子を持っているのだそうだ。内包魔力ごと因子を抜き取り、他の魔族に移植する事で、その魔族を強化する。その実験のために使い古されてしまった。つまり、出会った時から彼女の寿命は事切れていたのだ。
そうして病院にも連れて行けないまま、彼女は静かに息を引き取った。何もできなかった。何も……。
だから、なんとか息子だけは育てようとした。自分なりに真っ当に。だが、上手くいかなかった。彼には、生まれつき人間らしい感性、魔族らしい感性が欠如していた。
だが、ヘルガという少女と出会ってから彼は変わった。なんとか、真っ当に生きられるのだと安心した。
だが、一つ心残りなことがあった。彼女を死に至らしめた存在。それの為に、必死で詳細を調べた。調べた結果、新たな黒幕が潜んでいる事が分かった。
それから20年、それらの妥当にひたすらに時間を費した。自身の眼の力を利用し、奴らに対抗する力も生み出した。
だが、私の役目はここで終わりなようだ。自信の持ちうる知識も、データとして彼らに渡しているし、自身の持ちうる兵器も使い果たした。老人1人に、最早何もできまい。出来ることは、一つしかない。
「……滑稽だな、トラヴィス。」
「何…?」
「私自身に爆弾を埋め込んでいないと、どうして確信していた?」
「まさか…テメェ!」
ケビンはスイッチを押す。彼を中心とした巨大な爆発が巻き起こった。爆風は波を揺らし、辺りの木々を吹き飛ばしていく。
「………」
ノーマンは、その光景を沈黙しながら見ていた。
「こん……のおおおおおおお!!許さねえ…!許さねえ許さねえ許さ…ね…え…!」
体をドロドロに溶解させたトラヴィスが、ぜぇぜぇと息を吐きながら彼らを追う。
「くそ……止まってねえ…!」
ジハイドは船から飛び出そうと、足を出す。
「待て…!いくら死なないからってお前でも…」
「止めんなよ、ケイン。ここで死ぬのも悪く……なんだ?」
ジハイドは、トラヴィスの真上を見て、その視線を硬直させた。
「あれは……!」
「はあ…はあ…!こんなところにいた。」
1人倒れるレドの元に、ヴァルヴァローニが現れる。その背中には、花織が背負われていた。
「君…は…」
「立てよ、同類。」
彼は、レドに向けて右手を差し出す。
「僕は…人じゃなかった。ようやく人であると実感できたのに…結局そうじゃなかった。みんなに向けられた視線…あれはあの時と同じだ。何も…変わってなかったんだ。」
「ふざ…けんな!」
ヴァルヴァローニは、レドを殴りつける。
「君のせいで…君のせいで僕は散々に心を折られたんだ!僕がこうやって人間に味方してるのも君のせいだ!僕を変えた責任を取れ!!じゃないと絶対許さない。」
「…………でも、どうすれば…体が動かないんだ。人造人間になった影響なのか…」
「これを使え。」
「これは……」
「僕の再生核だ。魔族と人造人間は元は同じ…魔能力は再生核に結びついている。僕の再生能力で再生させ続ければ、無理矢理にでも動けるはずだ。」
「でも…それをしたら君が…」
「馬鹿野郎、他人なんかどうでも良いのが君、だろ?だったら最後まで貫き通せ、レド。」
思わずレドは、その手を取っていた。そうだ、出来ることがまだある筈だ。まだ、あるはずなんだ。
「おおおおおおお!」
花織は、トラヴィスの頭部を刀で貫く。
「ぐぁぁぁぁぁ!!馬鹿な…人造人間になってもなお理性を保つ、だと?!」
「まだ……私にはやる事がある!!」
「こ…のおおおお!」
「レドさん!!今です!!」
船の上に、1人の影。ケインは、ハッと目を見開いた。
「レ…ド…?」
レドの体は崩壊し続けている。恐らく、この体はあと1分も持たないだろう。
「ヴァルヴァローニ…お前はやり遂げたのか。」
ドレイクは、一言つぶやくと、船内へと戻った。
「先輩……待たせてすいませんでした。」
「おい……何…する気だ?」
「あー……まあ色々と、ありましたよね。色々と。でも、これだけは伝えさせてください。」
レドはケインの言葉を無視し、話を続ける。そして、あの一言を言った。
「僕は……あそこにいられて、幸せでした。」
いまだ浮かべた事のない、満面の笑みで、彼は言った。それは、誰よりも優しい笑顔だった。
レドは、銃を装填させる。
「待て…レド!」
ケインは彼に向かって走る。
『ああ…サレム。君もこんな感じだったのかなあ。』
そして、砲撃は放たれた。
「待て…待て待て待て待て…待てぇぇぇぇぇ!!」
花織を巻き込み、その砲撃はトラヴィスをとらえた。
「さようなら…皆さん。」
花織は目を瞑り、消えていく。
国土の果てまで削りったその一撃は、彼を跡形もなく消滅させた。
船の上。先程まで居たはずの少年は、既にそこにはいなかった。そこには、彼の銃のみが残っていた。
「あ…ああ……」
ケインは膝から崩れ落ちる。
「さて……後は私たちの仕事だな。」
「ああ。」
海の上、魔族と人間が、横に並ぶ。海の中から、大量の悪魔が飛び出した。
メリッサとアダム、その2人。
「あれは……Leviathan!!!おい、何やってんだ将軍!」
「やらせてくれ、Ms.シャーロット。君は最後まで残るべきだ。」
「……辞めてくれ、俺は…」
メリッサは船とヘリを糸で絡め取り、アダムは自身の魔能力でそれらを後ろに押し出した。
「アダムさん……アダムさん!!!!」
シーラはジタバタと暴れるが、周囲の魔族によって取り押さえられる。
「さて……よーやく会えたな。」
「ああ…そうだね。」
アダムは、ノーマンとの約束を思い出した。
「協力する代わりに…メリッサ将軍を俺に殺させろ。』
例えどんな状況になろうと、そんな生き方は変えられない。なぜならそうやって生きてきたんだから。
「…はあ。くだらねえわ結局アンタを殺すわけにいかなくなったな。だから…アンタの死に顔くらいは見させてもらうわ。」
「ああ…好きにした前、我が旧敵。」
そうして、2人は悪魔へと向かっていった。
「あの人…さ。何があっても……魔族達を化け物だとか言わなかったんだ。一つの敵として捉えてた。
本当は誰よりも……誰よりも他人と平等に接してたんだ。」
アンは、涙を流しながら語る。
「………!」
突然、ドレイクが立ち上がる。
「なんだ、大将。来るのか?」
「見ろ、あそこだ。ナンバーズの最後の1人…」
ドレイクが指差した方向にいた方向に、空中に浮かぶ何者かがいた。
「………クレア。」
クレア.アインベルツ。紛れもない彼女が、笑みを浮かべてそこに立っていた。
「早く……早くしないと…」
溢れる涙を抑えながら、アンは人々を誘導する。
「あれは……!」
レナは絶句した。周囲の建物をかき分けて侵攻する、トラヴィス.ツヴァイデッドが、こちらに凄まじい速度で迫っていたのだ。
「全員乗り込んだ!!早く!!出航して!」
一同は船に乗り込み、出航を開始する。
「逃さねえよおおお!!」
トラヴィス口を大きく開け、砲撃を装填する。
「あれは……やばい!!」
シャーロットは魔力を装填させる。時間が足りない。アレを相殺できるだけの魔法が、放てるのだろうか。
その時だった。上空から降り注いだ何かが、トラヴィスの顔面に激突したのだ。
「行け!早く!!」
見ると、海岸にケビンが立っていた。
「親父!!何してんだ!乗れ!!」
ノーマンは彼へと手を伸ばす。
だが、彼はノーマンに優しく微笑みかけるだけで、それに応えようとしない。
「行け、若人達よ。私がここは引き受ける!」
「……くそ親父が。」
ノーマンは、下を向いてしゃがみ込んだ。
まだ全部は出航していない。船、ヘリを含む1000隻。それが完全に出ていくまで、粘るしかない。
「来い!!」
ケビンはボタンを押す。次々と、魔力の弾が周囲から打ち上がっていく。爆薬に使ったものと同じ、人造人間にダメージを与えられるもの。これならば、奴にも有効なはず。
だが、降り注ぐミサイルの嵐に、トラヴィスは屈する事は無かった。
「な…に…?」
爆弾は聞いていたはずだ。でなければ、ここまで我々は来れていない。奴にやられてとっくに全滅しているはず。
「痛ってぇなあ……流石に適応しきれてねえか。」
適応。その言葉を聞き、ケビンは全てを悟った。まさか、適応能力があるのか。それも急速なレベルでの。
「ならば……!」
より強力な爆薬。それを全て、叩き込む。
ケビンがスイッチを押すと同時に、先程の倍以上のミサイルが、国全土に降り注いだ。国土に残った人造人間もろとも巻き込んだその攻撃は、トラヴィスの前進を鈍化させる。
「チィィィ……うざってえ!!」
だが、彼の咆哮ひとつで、それら全ては吹き飛ばされた。
「くっ……化け物め……!」
最早、トラヴィスの体には傷は一つとして付いていない。
「あばよ、人間1人にしてはよくやったぜ?」
トラヴィスの爪が、ケビンの心臓部に突き刺さった。
「親父ぃぃぃぃぃぃ!!!」
ノーマンは叫ぶ。
船から飛び出そうとしたノーマンを、ヘルガは静止した。
「やめて…ください!貴方まで死んだら…私……」
「っ……!うう…うううう…」
ノーマンは膝をつき、その場で涙を流すしかできなかった。
「はは……」
ケビンは、どう言うわけか笑っていた。
「何がおかしい…?」
トラヴィスは彼を睨みつける。
彼女との出会いは、30年前だった。
「やーねー、あの人。1人で毎日籠って研究してるって話よ?」
周囲から、陰口が聞こえる。私はずっとそうたった。魔導機関師の資格をとって以来、ずっとこんな調子。危険区域周辺という安い土地で、ひたすら研究と開発に耽っていた。そんな時、彼女に出会った。
「………」
それは、魔族だった。私の家の前で、1人倒れていた。
何故、防壁を無視して通ることが出来たのか。何故、ここから来れたのか。それは分からなかった。だが、気づけば私は、彼女を家に連れ帰っていた。
「………やあ。」
起き上がった彼女に、一言挨拶する。
「え…」
彼女は怯えるように、部屋の隅で縮こまってしまった。
「ああ……いや……怯えないでほしい。回復したなら帰ってもいいから。」
そう言って、私は部屋から出ていく。
どうせ回復魔を待たず、ここから出ていくだろう、と思っていた。
だが、彼女はしばらく出ていかなかった。
「どうして…出ていかないんだい?」
「出て行ったら……殺されるから。」
すっかり怯え切っているらしく、彼女はガタガタと震えてながらそう言った。
それでも、私は彼女の看病を続けた。彼女は内包魔力が著しく不足しており、このまま返して仕舞えば死ぬ事は決まっている、と思った為だった。魔族といえど、死ぬとわかっていて返すわけにはいかない。善意というよりは罪悪感に近かった。
そうするうちに、彼女との距離は縮まっていった。
マリア.ドラリガント。彼女はそう言った。
「帰らないのかい?」
「うん、帰らない。」
笑顔で彼女はそう言った。私の研究の手伝いや、家事をこなすようになり、私自身、彼女に特別な感情を抱きつつあった。
そうして3年が経った頃、子供が産まれた。
その時は嬉しかったものだ。だが、突然悲劇は訪れる。
彼女の体調が急変し始めたのだ。生まれた事による疲労だけではなく、また別の要因がある事を、私は悟った。
そうして、彼女は話した。
壁をすり抜ける、特別な血筋。そんな彼女は特別な因子を持っているのだそうだ。内包魔力ごと因子を抜き取り、他の魔族に移植する事で、その魔族を強化する。その実験のために使い古されてしまった。つまり、出会った時から彼女の寿命は事切れていたのだ。
そうして病院にも連れて行けないまま、彼女は静かに息を引き取った。何もできなかった。何も……。
だから、なんとか息子だけは育てようとした。自分なりに真っ当に。だが、上手くいかなかった。彼には、生まれつき人間らしい感性、魔族らしい感性が欠如していた。
だが、ヘルガという少女と出会ってから彼は変わった。なんとか、真っ当に生きられるのだと安心した。
だが、一つ心残りなことがあった。彼女を死に至らしめた存在。それの為に、必死で詳細を調べた。調べた結果、新たな黒幕が潜んでいる事が分かった。
それから20年、それらの妥当にひたすらに時間を費した。自身の眼の力を利用し、奴らに対抗する力も生み出した。
だが、私の役目はここで終わりなようだ。自信の持ちうる知識も、データとして彼らに渡しているし、自身の持ちうる兵器も使い果たした。老人1人に、最早何もできまい。出来ることは、一つしかない。
「……滑稽だな、トラヴィス。」
「何…?」
「私自身に爆弾を埋め込んでいないと、どうして確信していた?」
「まさか…テメェ!」
ケビンはスイッチを押す。彼を中心とした巨大な爆発が巻き起こった。爆風は波を揺らし、辺りの木々を吹き飛ばしていく。
「………」
ノーマンは、その光景を沈黙しながら見ていた。
「こん……のおおおおおおお!!許さねえ…!許さねえ許さねえ許さ…ね…え…!」
体をドロドロに溶解させたトラヴィスが、ぜぇぜぇと息を吐きながら彼らを追う。
「くそ……止まってねえ…!」
ジハイドは船から飛び出そうと、足を出す。
「待て…!いくら死なないからってお前でも…」
「止めんなよ、ケイン。ここで死ぬのも悪く……なんだ?」
ジハイドは、トラヴィスの真上を見て、その視線を硬直させた。
「あれは……!」
「はあ…はあ…!こんなところにいた。」
1人倒れるレドの元に、ヴァルヴァローニが現れる。その背中には、花織が背負われていた。
「君…は…」
「立てよ、同類。」
彼は、レドに向けて右手を差し出す。
「僕は…人じゃなかった。ようやく人であると実感できたのに…結局そうじゃなかった。みんなに向けられた視線…あれはあの時と同じだ。何も…変わってなかったんだ。」
「ふざ…けんな!」
ヴァルヴァローニは、レドを殴りつける。
「君のせいで…君のせいで僕は散々に心を折られたんだ!僕がこうやって人間に味方してるのも君のせいだ!僕を変えた責任を取れ!!じゃないと絶対許さない。」
「…………でも、どうすれば…体が動かないんだ。人造人間になった影響なのか…」
「これを使え。」
「これは……」
「僕の再生核だ。魔族と人造人間は元は同じ…魔能力は再生核に結びついている。僕の再生能力で再生させ続ければ、無理矢理にでも動けるはずだ。」
「でも…それをしたら君が…」
「馬鹿野郎、他人なんかどうでも良いのが君、だろ?だったら最後まで貫き通せ、レド。」
思わずレドは、その手を取っていた。そうだ、出来ることがまだある筈だ。まだ、あるはずなんだ。
「おおおおおおお!」
花織は、トラヴィスの頭部を刀で貫く。
「ぐぁぁぁぁぁ!!馬鹿な…人造人間になってもなお理性を保つ、だと?!」
「まだ……私にはやる事がある!!」
「こ…のおおおお!」
「レドさん!!今です!!」
船の上に、1人の影。ケインは、ハッと目を見開いた。
「レ…ド…?」
レドの体は崩壊し続けている。恐らく、この体はあと1分も持たないだろう。
「ヴァルヴァローニ…お前はやり遂げたのか。」
ドレイクは、一言つぶやくと、船内へと戻った。
「先輩……待たせてすいませんでした。」
「おい……何…する気だ?」
「あー……まあ色々と、ありましたよね。色々と。でも、これだけは伝えさせてください。」
レドはケインの言葉を無視し、話を続ける。そして、あの一言を言った。
「僕は……あそこにいられて、幸せでした。」
いまだ浮かべた事のない、満面の笑みで、彼は言った。それは、誰よりも優しい笑顔だった。
レドは、銃を装填させる。
「待て…レド!」
ケインは彼に向かって走る。
『ああ…サレム。君もこんな感じだったのかなあ。』
そして、砲撃は放たれた。
「待て…待て待て待て待て…待てぇぇぇぇぇ!!」
花織を巻き込み、その砲撃はトラヴィスをとらえた。
「さようなら…皆さん。」
花織は目を瞑り、消えていく。
国土の果てまで削りったその一撃は、彼を跡形もなく消滅させた。
船の上。先程まで居たはずの少年は、既にそこにはいなかった。そこには、彼の銃のみが残っていた。
「あ…ああ……」
ケインは膝から崩れ落ちる。
「さて……後は私たちの仕事だな。」
「ああ。」
海の上、魔族と人間が、横に並ぶ。海の中から、大量の悪魔が飛び出した。
メリッサとアダム、その2人。
「あれは……Leviathan!!!おい、何やってんだ将軍!」
「やらせてくれ、Ms.シャーロット。君は最後まで残るべきだ。」
「……辞めてくれ、俺は…」
メリッサは船とヘリを糸で絡め取り、アダムは自身の魔能力でそれらを後ろに押し出した。
「アダムさん……アダムさん!!!!」
シーラはジタバタと暴れるが、周囲の魔族によって取り押さえられる。
「さて……よーやく会えたな。」
「ああ…そうだね。」
アダムは、ノーマンとの約束を思い出した。
「協力する代わりに…メリッサ将軍を俺に殺させろ。』
例えどんな状況になろうと、そんな生き方は変えられない。なぜならそうやって生きてきたんだから。
「…はあ。くだらねえわ結局アンタを殺すわけにいかなくなったな。だから…アンタの死に顔くらいは見させてもらうわ。」
「ああ…好きにした前、我が旧敵。」
そうして、2人は悪魔へと向かっていった。
「あの人…さ。何があっても……魔族達を化け物だとか言わなかったんだ。一つの敵として捉えてた。
本当は誰よりも……誰よりも他人と平等に接してたんだ。」
アンは、涙を流しながら語る。
「………!」
突然、ドレイクが立ち上がる。
「なんだ、大将。来るのか?」
「見ろ、あそこだ。ナンバーズの最後の1人…」
ドレイクが指差した方向にいた方向に、空中に浮かぶ何者かがいた。
「………クレア。」
クレア.アインベルツ。紛れもない彼女が、笑みを浮かべてそこに立っていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
忘れ去られた婚約者
かべうち右近
恋愛
『僕はレベッカしか選ばない』
甘い声音でそう話したはずの王太子サイラスは、レベッカを忘れてしまった。
レベッカは、王太子サイラスと付き合っていることを、ある事情により隠していた。舞踏会で関係を公表し、婚約者に指名される予定だったのに、舞踊会の夜にサイラスは薬を盛られて倒れ、記憶喪失になってしまう。
恋人が誰なのかわからないのをいいことに、偽の恋人が次々と名乗りをあげ王太子の婚約者の座を狙ってくる。おかげで不信に陥ったサイラスに、レベッカは自分が恋人だと名乗り出せなくなってしまった。
サイラスの記憶喪失を解消するため、薬師兼魔女であるレベッカは恋人であることを隠しながら、事件調査を協力することになった。そうして記憶が戻らないまま二人の距離は再び近づいていく。だが、そんなおりにサイラスの偽の恋人を名乗りでた令嬢たちが、次々と襲われる事件も起き始めて……!?
※他のサイトにも掲載しています。
毎日更新です。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく
かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。
ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!?
俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。
第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。
「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」
信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。
賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。
様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する!
異世界ざわつき転生譚、ここに開幕!
※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。
※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる