Heavens Gate

酸性元素

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終末編

死の形

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民間人と魔族は続々と船に乗り込んでいく。
「早く……早くしないと…」
溢れる涙を抑えながら、アンは人々を誘導する。
「あれは……!」
レナは絶句した。周囲の建物をかき分けて侵攻する、トラヴィス.ツヴァイデッドが、こちらに凄まじい速度で迫っていたのだ。
「全員乗り込んだ!!早く!!出航して!」
一同は船に乗り込み、出航を開始する。
「逃さねえよおおお!!」
トラヴィス口を大きく開け、砲撃を装填する。
「あれは……やばい!!」
シャーロットは魔力を装填させる。時間が足りない。アレを相殺できるだけの魔法が、放てるのだろうか。
その時だった。上空から降り注いだ何かが、トラヴィスの顔面に激突したのだ。
「行け!早く!!」
見ると、海岸にケビンが立っていた。
「親父!!何してんだ!乗れ!!」
ノーマンは彼へと手を伸ばす。
だが、彼はノーマンに優しく微笑みかけるだけで、それに応えようとしない。
「行け、若人達よ。私がここは引き受ける!」
「……くそ親父が。」
ノーマンは、下を向いてしゃがみ込んだ。
まだ全部は出航していない。船、ヘリを含む1000隻。それが完全に出ていくまで、粘るしかない。
「来い!!」
ケビンはボタンを押す。次々と、魔力の弾が周囲から打ち上がっていく。爆薬に使ったものと同じ、人造人間にダメージを与えられるもの。これならば、奴にも有効なはず。
だが、降り注ぐミサイルの嵐に、トラヴィスは屈する事は無かった。
「な…に…?」
爆弾は聞いていたはずだ。でなければ、ここまで我々は来れていない。奴にやられてとっくに全滅しているはず。
「痛ってぇなあ……流石に適応しきれてねえか。」
適応。その言葉を聞き、ケビンは全てを悟った。まさか、適応能力があるのか。それも急速なレベルでの。
「ならば……!」
より強力な爆薬。それを全て、叩き込む。
ケビンがスイッチを押すと同時に、先程の倍以上のミサイルが、国全土に降り注いだ。国土に残った人造人間もろとも巻き込んだその攻撃は、トラヴィスの前進を鈍化させる。
「チィィィ……うざってえ!!」
だが、彼の咆哮ひとつで、それら全ては吹き飛ばされた。
「くっ……化け物め……!」
最早、トラヴィスの体には傷は一つとして付いていない。
「あばよ、人間1人にしてはよくやったぜ?」
トラヴィスの爪が、ケビンの心臓部に突き刺さった。
「親父ぃぃぃぃぃぃ!!!」
ノーマンは叫ぶ。
船から飛び出そうとしたノーマンを、ヘルガは静止した。
「やめて…ください!貴方まで死んだら…私……」
「っ……!うう…うううう…」
ノーマンは膝をつき、その場で涙を流すしかできなかった。
「はは……」
ケビンは、どう言うわけか笑っていた。
「何がおかしい…?」
トラヴィスは彼を睨みつける。

との出会いは、30年前だった。
「やーねー、あの人。1人で毎日籠って研究してるって話よ?」
周囲から、陰口が聞こえる。私はずっとそうたった。魔導機関師の資格をとって以来、ずっとこんな調子。危険区域周辺という安い土地で、ひたすら研究と開発に耽っていた。そんな時、彼女に出会った。
「………」
それは、魔族だった。私の家の前で、1人倒れていた。
何故、防壁を無視して通ることが出来たのか。何故、ここから来れたのか。それは分からなかった。だが、気づけば私は、彼女を家に連れ帰っていた。
「………やあ。」
起き上がった彼女に、一言挨拶する。
「え…」
彼女は怯えるように、部屋の隅で縮こまってしまった。
「ああ……いや……怯えないでほしい。回復したなら帰ってもいいから。」
そう言って、私は部屋から出ていく。
どうせ回復魔を待たず、ここから出ていくだろう、と思っていた。
だが、彼女はしばらく出ていかなかった。
「どうして…出ていかないんだい?」
「出て行ったら……殺されるから。」
すっかり怯え切っているらしく、彼女はガタガタと震えてながらそう言った。
それでも、私は彼女の看病を続けた。彼女は内包魔力が著しく不足しており、このまま返して仕舞えば死ぬ事は決まっている、と思った為だった。魔族といえど、死ぬとわかっていて返すわけにはいかない。善意というよりは罪悪感に近かった。
そうするうちに、彼女との距離は縮まっていった。
マリア.ドラリガント。彼女はそう言った。
「帰らないのかい?」
「うん、帰らない。」
笑顔で彼女はそう言った。私の研究の手伝いや、家事をこなすようになり、私自身、彼女に特別な感情を抱きつつあった。
そうして3年が経った頃、子供が産まれた。
その時は嬉しかったものだ。だが、突然悲劇は訪れる。
彼女の体調が急変し始めたのだ。生まれた事による疲労だけではなく、また別の要因がある事を、私は悟った。
そうして、彼女は話した。
壁をすり抜ける、特別な血筋。そんな彼女は特別な因子を持っているのだそうだ。内包魔力ごと因子を抜き取り、他の魔族に移植する事で、その魔族を強化する。その実験のために使い古されてしまった。つまり、出会った時から彼女の寿命は事切れていたのだ。
そうして病院にも連れて行けないまま、彼女は静かに息を引き取った。何もできなかった。何も……。
だから、なんとか息子だけは育てようとした。自分なりに真っ当に。だが、上手くいかなかった。彼には、生まれつき人間らしい感性、魔族らしい感性が欠如していた。
だが、ヘルガという少女と出会ってから彼は変わった。なんとか、真っ当に生きられるのだと安心した。
だが、一つ心残りなことがあった。彼女を死に至らしめた存在。それの為に、必死で詳細を調べた。調べた結果、新たな黒幕が潜んでいる事が分かった。
それから20年、それらの妥当にひたすらに時間を費した。自身の眼の力を利用し、奴らに対抗する力も生み出した。
だが、私の役目はここで終わりなようだ。自信の持ちうる知識も、データとして彼らに渡しているし、自身の持ちうる兵器も使い果たした。老人1人に、最早何もできまい。出来ることは、一つしかない。
「……滑稽だな、トラヴィス。」
「何…?」
と、どうして確信していた?」
「まさか…テメェ!」
ケビンはスイッチを押す。彼を中心とした巨大な爆発が巻き起こった。爆風は波を揺らし、辺りの木々を吹き飛ばしていく。
「………」
ノーマンは、その光景を沈黙しながら見ていた。

「こん……のおおおおおおお!!許さねえ…!許さねえ許さねえ許さ…ね…え…!」
体をドロドロに溶解させたトラヴィスが、ぜぇぜぇと息を吐きながら彼らを追う。
「くそ……止まってねえ…!」
ジハイドは船から飛び出そうと、足を出す。
「待て…!いくら死なないからってお前でも…」
「止めんなよ、ケイン。ここで死ぬのも悪く……なんだ?」
ジハイドは、トラヴィスの真上を見て、その視線を硬直させた。
「あれは……!」

「はあ…はあ…!こんなところにいた。」
1人倒れるレドの元に、ヴァルヴァローニが現れる。その背中には、花織が背負われていた。
「君…は…」
「立てよ、同類。」
彼は、レドに向けて右手を差し出す。
「僕は…人じゃなかった。ようやく人であると実感できたのに…結局そうじゃなかった。みんなに向けられた視線…あれはあの時と同じだ。何も…変わってなかったんだ。」
「ふざ…けんな!」
ヴァルヴァローニは、レドを殴りつける。
「君のせいで…君のせいで僕は散々に心を折られたんだ!僕がこうやって人間に味方してるのも君のせいだ!僕を変えた責任を取れ!!じゃないと絶対許さない。」
「…………でも、どうすれば…体が動かないんだ。人造人間になった影響なのか…」
「これを使え。」
「これは……」
「僕の再生核だ。魔族と人造人間は元は同じ…魔能力は再生核に結びついている。僕の再生能力で再生させ続ければ、無理矢理にでも動けるはずだ。」
「でも…それをしたら君が…」
「馬鹿野郎、他人なんかどうでも良いのが君、だろ?だったら最後まで貫き通せ、レド。」
思わずレドは、その手を取っていた。そうだ、出来ることがまだある筈だ。まだ、あるはずなんだ。

「おおおおおおお!」
花織は、トラヴィスの頭部を刀で貫く。
「ぐぁぁぁぁぁ!!馬鹿な…人造人間になってもなお理性を保つ、だと?!」
「まだ……私にはやる事がある!!」
「こ…のおおおお!」
「レドさん!!今です!!」
船の上に、1人の影。ケインは、ハッと目を見開いた。
「レ…ド…?」
レドの体は崩壊し続けている。恐らく、この体はあと1分も持たないだろう。
「ヴァルヴァローニ…お前はやり遂げたのか。」
ドレイクは、一言つぶやくと、船内へと戻った。
「先輩……待たせてすいませんでした。」
「おい……何…する気だ?」
「あー……まあ色々と、ありましたよね。色々と。でも、これだけは伝えさせてください。」
レドはケインの言葉を無視し、話を続ける。そして、あの一言を言った。
「僕は……あそこにいられて、幸せでした。」
いまだ浮かべた事のない、満面の笑みで、彼は言った。それは、誰よりも優しい笑顔だった。
レドは、銃を装填させる。
「待て…レド!」
ケインは彼に向かって走る。
『ああ…サレム。君もこんな感じだったのかなあ。』
そして、砲撃は放たれた。
「待て…待て待て待て待て…待てぇぇぇぇぇ!!」
花織を巻き込み、その砲撃はトラヴィスをとらえた。
「さようなら…皆さん。」
花織は目を瞑り、消えていく。
国土の果てまで削りったその一撃は、彼を跡形もなく消滅させた。
船の上。先程まで居たはずの少年は、既にそこにはいなかった。そこには、彼の銃のみが残っていた。
「あ…ああ……」
ケインは膝から崩れ落ちる。
「さて……後は私たちの仕事だな。」
「ああ。」
海の上、魔族と人間が、横に並ぶ。海の中から、大量の悪魔が飛び出した。
メリッサとアダム、その2人。
「あれは……Leviathan!!!おい、何やってんだ将軍!」
「やらせてくれ、Ms.シャーロット。君は最後まで残るべきだ。」
「……辞めてくれ、俺は…」
メリッサは船とヘリを糸で絡め取り、アダムは自身の魔能力でそれらを後ろに押し出した。
「アダムさん……アダムさん!!!!」
シーラはジタバタと暴れるが、周囲の魔族によって取り押さえられる。
「さて……よーやく会えたな。」
「ああ…そうだね。」
アダムは、ノーマンとの約束を思い出した。
「協力する代わりに…メリッサ将軍を俺に殺させろ。』
例えどんな状況になろうと、そんな生き方は変えられない。なぜならそうやって生きてきたんだから。
「…はあ。くだらねえわ結局アンタを殺すわけにいかなくなったな。だから…アンタの死に顔くらいは見させてもらうわ。」
「ああ…好きにした前、我が旧敵。」
そうして、2人は悪魔へと向かっていった。

「あの人…さ。何があっても……魔族達を化け物だとか言わなかったんだ。一つの敵として捉えてた。
本当は誰よりも……誰よりも他人と平等に接してたんだ。」
アンは、涙を流しながら語る。
「………!」
突然、ドレイクが立ち上がる。
「なんだ、大将。来るのか?」
「見ろ、あそこだ。ナンバーズの最後の1人…」
ドレイクが指差した方向にいた方向に、空中に浮かぶ何者かがいた。
「………クレア。」
クレア.アインベルツ。紛れもない彼女が、笑みを浮かべてそこに立っていた。
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