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第3章 死者の都
起死回生 2
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カミラは、自席に戻ると、レーダーコントロールを自身の端末にリンクさせる。カミラは、サニが変性意識活動中のレーダー監視を引き受けた。
周辺はまた不気味なほど、静まりかえっている。
「アラン、シールドをいつでも展開できるよう準備しておいて。ティムは、最大船速で発進できるよう、機関を温めておいて頂戴。……いざとなったら……」
「た……隊長、まさか?」「特攻する気か!?」
「死ぬ気はないわよ。でも、奴はこの空間を支配して、こちらからは観測できない……第3PSIバリアに巻き込めば、一瞬でも奴を捕捉できるはず。『レギオン』が現れたタイミングで船ごとぶつければ」
「あとはシールドの耐久次第か」「ええ」
「ちくしょう……ナオ……お前が離脱したら、ロクな戦い、できないじねぇか」隣で横たわる直人を横目に、ティムは操縦桿を握りしめる。
「サニの探索も5分程度が限界よ。その間は何とか凌いで……もしナオが戻らなかったら、その時は……」
ティムとアランは、無言で頷く。
「………待て!カミラ!いくらなんでも、危険すぎる!」タイムラグでやや遅れて、険しい表情を浮かべた東が反応を示していた。
「チーフ!……ですが、他に方法は……あんな怪物を現象化させるわけには!」
「……………………わかっている。こちらでも『レギオン』のデータを解析しているところだ!早まったマネだけは……」「……左舷に……『レギオン』……来る……センパイ……どこ?」東の言葉を遮るように、トランス状態のサニがうわ言を発していた。
すぐさま、カミラが、レーダーのフォーカスを左舷に集中させるやいなや、空間にレギオンの頭が浮かび上がる。
「回避!!」カミラの発令とティムの操舵はほぼ同時だった。<アマテラス>は紙一重でレギオンの突撃をかわす。レギオンはそのまま、また空間へと溶け込んでいく。
「くっそぉ!あっちには、俺たちは丸見えかよ」
「ティム!PSI-Linkへダイレクト接続!サニに見えたなら、いくらかヤツの動きを感じ取れるはず」「了解!」
「田中!レギオンの情報は?何か掴めたか?」
東は、焦りを露わに問う。
IN-PSID本部では、IMC田中と、<アマテラス>メンテナンスドッグの制御室にいるアルベルトが協力してレギオンの解析にあたっていた。
「……PSIクラスターコンプレックス……『エレメンタル』であることは確かです。アーキタイプ形成は、推定約一万から二万年年前。世界的に見られる『蛇神』の表象が"型"になっているようです。この中から固有PSIパルスが数千以上検出され、融合しあっていて……」
田中の説明によると、蛇体を形成しているのは、震災被災者を含む、多くの死者の魂や、土地の記憶、この地域の水に関わる事象などで構成されており、個々の情報は正確に掴めない。この様々な構成要素の複合体である蛇体をいくら攻撃したところで、決定打にはならないようだ。
ただ、これらを求心している何らかの反応があるようだが、蛇体奥深くにあって掴みきれないという。
「それにな……」アルベルトも説明に加わる。
蛇神のアーキタイプは、高次元集合無意識に属し、<アマテラス>の観測限界領域の存在らしい。ただでさえ、観測が難しい上に、呪術結界の効力で、"制宙権"を奪われいる状況では勝ち目はない。
「いいか、こんな相手だ。船をぶつけたところで、無駄死にだぞ!」アルベルトは語気を強めて言い放つ。カミラは拳を握りしめ、奥歯を噛み締める。
「勝機があるとすれば……時空間を超える力」アルベルトは呼吸を整えながら続けた。
「PSI波動砲か?」藤川も通信に入ってくる。
「ああ。ヤツの求心部を見つけ、そこにPSI波動砲を打ち込む。それくらいしか、ヤツを制する方法はない」アルベルトは、自身のシミュレーション結果からの結論を述べる。アルベルトの端末コンソール上では、50%に満たない成功率の低さを示しているが、その事については口にしなかった。
「田中!ミッションの限界時間は?」
「先程、結界の電力供給増を確認。来場者の意識集中緩和効果も加味すると……約30分」東の問いに田中は素早く返す。
「チッ、たった10分延長かよ!」如月は、顔を歪めて悪態をつく。
「構わねえぜ!長引くと、こっちがもたないっ……てね!……おっと!!」
ティムも、PSI-Linkシステムへのダイレクト接続により、空間の僅かな揺れを変性意識で掴みながら、何とか『レギオン』の攻撃をかわす。
この空間に何処からともなく現れては、姿を隠しを繰り返す『レギオン』に、紙一重の回避行動をとるティムの集中力もすり減ってきていた。
「とにかく!一刻も早く直人を見つけることが先決だ!あいつでなければ、PSI波動砲も役に立たん」アルベルトが畳み掛けるように声を張る。
「……了解です。アラン!サニのPSIパルストレースデータをそっちに転送する。サニの掴んだ情報をこちらでも時空間解析して、ナオを探して」「わかった」
「サニの探索可能限界は、あと3分ほど……それまで沈むわけにはいかない!ティム、何とか凌いで!」
「了解!早く頼むぜ……サニ!」ティムは下方から迫る反応を指先で掴むと、船をドラフトさながらに旋回させ、その一撃を回避する。
周辺はまた不気味なほど、静まりかえっている。
「アラン、シールドをいつでも展開できるよう準備しておいて。ティムは、最大船速で発進できるよう、機関を温めておいて頂戴。……いざとなったら……」
「た……隊長、まさか?」「特攻する気か!?」
「死ぬ気はないわよ。でも、奴はこの空間を支配して、こちらからは観測できない……第3PSIバリアに巻き込めば、一瞬でも奴を捕捉できるはず。『レギオン』が現れたタイミングで船ごとぶつければ」
「あとはシールドの耐久次第か」「ええ」
「ちくしょう……ナオ……お前が離脱したら、ロクな戦い、できないじねぇか」隣で横たわる直人を横目に、ティムは操縦桿を握りしめる。
「サニの探索も5分程度が限界よ。その間は何とか凌いで……もしナオが戻らなかったら、その時は……」
ティムとアランは、無言で頷く。
「………待て!カミラ!いくらなんでも、危険すぎる!」タイムラグでやや遅れて、険しい表情を浮かべた東が反応を示していた。
「チーフ!……ですが、他に方法は……あんな怪物を現象化させるわけには!」
「……………………わかっている。こちらでも『レギオン』のデータを解析しているところだ!早まったマネだけは……」「……左舷に……『レギオン』……来る……センパイ……どこ?」東の言葉を遮るように、トランス状態のサニがうわ言を発していた。
すぐさま、カミラが、レーダーのフォーカスを左舷に集中させるやいなや、空間にレギオンの頭が浮かび上がる。
「回避!!」カミラの発令とティムの操舵はほぼ同時だった。<アマテラス>は紙一重でレギオンの突撃をかわす。レギオンはそのまま、また空間へと溶け込んでいく。
「くっそぉ!あっちには、俺たちは丸見えかよ」
「ティム!PSI-Linkへダイレクト接続!サニに見えたなら、いくらかヤツの動きを感じ取れるはず」「了解!」
「田中!レギオンの情報は?何か掴めたか?」
東は、焦りを露わに問う。
IN-PSID本部では、IMC田中と、<アマテラス>メンテナンスドッグの制御室にいるアルベルトが協力してレギオンの解析にあたっていた。
「……PSIクラスターコンプレックス……『エレメンタル』であることは確かです。アーキタイプ形成は、推定約一万から二万年年前。世界的に見られる『蛇神』の表象が"型"になっているようです。この中から固有PSIパルスが数千以上検出され、融合しあっていて……」
田中の説明によると、蛇体を形成しているのは、震災被災者を含む、多くの死者の魂や、土地の記憶、この地域の水に関わる事象などで構成されており、個々の情報は正確に掴めない。この様々な構成要素の複合体である蛇体をいくら攻撃したところで、決定打にはならないようだ。
ただ、これらを求心している何らかの反応があるようだが、蛇体奥深くにあって掴みきれないという。
「それにな……」アルベルトも説明に加わる。
蛇神のアーキタイプは、高次元集合無意識に属し、<アマテラス>の観測限界領域の存在らしい。ただでさえ、観測が難しい上に、呪術結界の効力で、"制宙権"を奪われいる状況では勝ち目はない。
「いいか、こんな相手だ。船をぶつけたところで、無駄死にだぞ!」アルベルトは語気を強めて言い放つ。カミラは拳を握りしめ、奥歯を噛み締める。
「勝機があるとすれば……時空間を超える力」アルベルトは呼吸を整えながら続けた。
「PSI波動砲か?」藤川も通信に入ってくる。
「ああ。ヤツの求心部を見つけ、そこにPSI波動砲を打ち込む。それくらいしか、ヤツを制する方法はない」アルベルトは、自身のシミュレーション結果からの結論を述べる。アルベルトの端末コンソール上では、50%に満たない成功率の低さを示しているが、その事については口にしなかった。
「田中!ミッションの限界時間は?」
「先程、結界の電力供給増を確認。来場者の意識集中緩和効果も加味すると……約30分」東の問いに田中は素早く返す。
「チッ、たった10分延長かよ!」如月は、顔を歪めて悪態をつく。
「構わねえぜ!長引くと、こっちがもたないっ……てね!……おっと!!」
ティムも、PSI-Linkシステムへのダイレクト接続により、空間の僅かな揺れを変性意識で掴みながら、何とか『レギオン』の攻撃をかわす。
この空間に何処からともなく現れては、姿を隠しを繰り返す『レギオン』に、紙一重の回避行動をとるティムの集中力もすり減ってきていた。
「とにかく!一刻も早く直人を見つけることが先決だ!あいつでなければ、PSI波動砲も役に立たん」アルベルトが畳み掛けるように声を張る。
「……了解です。アラン!サニのPSIパルストレースデータをそっちに転送する。サニの掴んだ情報をこちらでも時空間解析して、ナオを探して」「わかった」
「サニの探索可能限界は、あと3分ほど……それまで沈むわけにはいかない!ティム、何とか凌いで!」
「了解!早く頼むぜ……サニ!」ティムは下方から迫る反応を指先で掴むと、船をドラフトさながらに旋回させ、その一撃を回避する。
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