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【シオンの手紙】
しおりを挟むアフロディ様へ
って……もう世界樹になってからしばらく経ったし読んでもらえないだろうから、この手紙の中でだけは友達みたいに話しちゃおっかな。
実は、夢だったんだ。そうやって話すの。
いつも私に付き合って森の中を散歩してくれて、見つけた花の名前とか花言葉とか、色々教えてくれたのが懐かしくて泣いちゃいそう。
全部覚えてるよ、私の大切な思い出だもん。
世界樹の上から、全部見てるのかな?
士郎が妖精の友達を食べちゃったこと。集落の皆んなの心がバラバラになっちゃったこと。
私が、この小屋で一人過ごしてること。
寂しいから会いに来てほしいけど、それは無理って分かってるからせめて、私を世界樹の上から見守っててほしいな。
あ、そうだ! 見てほしいものがあるんだった!
あのね、アフロディ様の木像たくさん作ったんだよ!
最初はちょっぴり下手だったけど、もう何十個も作ったから今は結構いい感じなんだ~。
でもね、種はまだ植えられてないの。みんな事故とか病気とかで死ななくなったんだけどね、集落は平和じゃないから……。
悲しいよね、こんなことなっちゃって。
平和になると思って、皆んなが健康でいられるようにしたのにね。
確かに、集落がこうなったきっかけにはなっちゃったけど……でも、アフロディ様がしたことは間違ってなんかないよ、絶対。皆んな助けられてるんだから。
私だって、世界樹の葉がなかったら今死んでるもん。……この小屋に逃げる前に一回だけ、ナイフで刺されちゃったからね。
だから、ありがとう。誰よりも優しい妖精王様。
この手紙、もし誰かが読んでくれてるならって思って今
話すんだけど……。私ね、ここでずっと考えてたんだ。
ユグドレーンは、みんな「平等」に死ぬ世界から、「不平等」に死んじゃう世界になっちゃった、だから争いが起きたんだと思うの。
永遠の健康っていう自由な生活が手に入って、そのおかげで助かった人は沢山いたけど、さらに上を求める人も出て来ちゃったから。
私たちは皆んな、アフロディ様のことを大好きだったのに、その意思を守れなかった。
だからね、大切なのは自由はどこまでも平等でなきゃいけないってことだと思うの。
私たちの場合、健康なだけじゃダメ。身体的自由は、寿命から逃れるところまで行かなきゃダメだった。じゃないと、不平等だから。
仮にね、これを読んでるあなたがもし、ご飯も食べられないような子ども達に何かを恵む機会が会った時。
誰か一人だけに沢山ご飯あげちゃダメだよ?
その子が周りに恨まれちゃう。だから、皆んなが笑顔になれるように、皆んなにあげなきゃ。
なんか、まとまらない手紙になっちゃったなー。
一人だと言葉がどんどん溢れ出てきて整理できないや。
最後にアフロディ様、もし私がお花の種を植えられて綺麗なお花畑が出来たら、褒めてほしいな。
そしたら、辛かった今までも、これからも。頑張って耐えて生きてきて良かったなぁ、って思えるから!
だから、お願い!
頑張ったね、って。……言ってほしいな。
シオンより
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