【魔王と共に死した英雄】――魔王の力を宿した少年は、救いを選べるのか

ロナンス

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エピローグ

エピローグ1 最初の絶望

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アレンは夜中、ふと目を覚ました。
古い宿屋の天井が視界に入る。体は鉛のように重く、戦いの疲労で倒れていたことを思い出す。

隣の部屋から、声が漏れていた。

「これ以上、アレンをパーティーに入れるわけにはいかない」
「そうだ。あいつは弱すぎる」
「だが……」
「勇者、心が強いだけじゃ人は救えないんだ!」

……分かっていた。
自分でも、ずっと。

才能なんてない。
剣も、魔法も、人並み以下。
恵まれていないことくらい、最初から分かっていた。

ガシャン、と窓が割れる音がした。
気づけば、アレンは宿を飛び出していた。

否定したかった。
弱いことを。
守れない自分を。

どれくらい走っただろう。
夜の闇の向こうから、悲鳴が聞こえた。
炎が空を染めている。

――助けたい。
――助けられる。
――僕は、ひとりでも。

村は、燃えていた。
そこにいたのは、ただの魔物ではない。

「おや、誰か来ましたか?」

振り返った影が、歪んだ笑みを浮かべる。

「ん? 貴方は……あぁ。勇者のパーティーの落ちこぼれじゃないですか」

「来てくれた……!」
「勇者様の仲間だ! お願いだ、助けてくれ!」
「こんなやつ、やっつけてくれ!」

「ふふふ……面白いですね、人間は。こんなものに縋っても、助かりなどしないのに」
「でも、弱い人間は好きですよ。己の強さを実感できるので」

「黙れ……」
アレンは震える声で言った。
「俺は、お前を殺して、この村を救う」

「虫けらが調子に乗るな。虫唾が走る」

パチン、と乾いた音が鳴った。

次の瞬間、火柱がアレンを包む。

「ぐあああぁっ!」

「やはり弱すぎる。傑作だ」

炎が消えた時、アレンは地面に倒れ伏していた。
指一本、動かない。

「そこで動けないまま、自分の弱さを思い知れ」

「やめて……殺さないで……」
「助けてくれ!」
「勇者のパーティーなのに……」
「なんで勇者が来てくれなかったんだ!」
「なんで、こんなのが……」

「お兄ちゃん……たすけて……」

声が、刃のように突き刺さる。
悲鳴を聞くたび、アレンは理解していく。

――俺は、弱い。
――なんでだ。

なんで、こんなにも責められる。
もしこの人たちが、自分で守れる力を持っていたら。
僕は、こんなに傷つかなくて済んだんじゃないか。

……僕だけが。
僕だけが、なんで。

違う。
アレンは、はっとする。

――なんで、他人のせいにしている?
――僕は、なんなんだ。

「……たすけて……こわいよ……」

少女の声。

「まだ生き残りがいたか」

魔王の幹部が、少女へ歩み寄る。

――僕は、守れないのか。
――ここで、這いつくばったままでいいのか。

なんで、僕は何も持たずに生まれた?

ボクハ、ナンナンダ。

その瞬間。
アレンの中で、何かが弾けた。

黒い力が噴き出す。

「……!? なぜだ。なぜ貴様が魔王の力を!?こんな、ちっぽけなガキが……!」

気づけば、僕は少女の手を取り、相手の腕が宙を舞っていた。

だが、力は大きすぎた。
体が悲鳴を上げ、アレンはその場に崩れ落ちる。

「アレン!!」

聞き慣れた声。勇者だった。

「ちっ……まぁいい」
幹部は嗤う。
「貴様は必ず、私が殺す」
「私は魔王軍幹部、カルマ・クラインだ。覚えておけ」

影は夜空へ消えた。

「生きている者の救助を急げ! 火を消せ!」

勇者とパーティーの面々は、燃え落ちる村を見て、言葉を失っていた。

「アレン……これは……」

「すみません……」
アレンは、力なく言った。
「守れなかったです。僕じゃ……」

沈黙の後、勇者は静かに告げた。

「アレン君。今日で、君はパーティーを追放だ」

抵抗する気力は、もうなかった。
宿へ戻る途中、意識は闇に沈んだ。
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