2 / 12
02
しおりを挟む「……はあ、どうにもしたくないけどどうしよう」
しばらく途方にくれていたウェンディだったが、そのうち立っているのも面倒になって、壊れていない低い石塀へと腰かけた。
ぐぅぅぅと空腹を示すように胃が収縮する音が鳴った。
そう言えば、揺れる馬車で食事を取ることが面倒だったので、道中何も食べてなかったのだ。
肩から下げるカバンからごそごそと紙袋に包まれたサンドイッチを取り出した。
ウェンディは面倒くさがりだが、食べることは比較的好きなことだった。
誰も見ていないからと大口を開けて1口を噛みしめる。
屋敷のコックが作ったハムとレタス、特製ソースで作られたシンプルなサンドイッチだった。
『ガサッ』
その物音に咄嗟にパンを口から離し立ち上がり、音の方向へと目を向ける。
そこにいたのは、がれきの隙間から少し顔をのぞかせてこちらを見る5歳くらいの少女だった。
身なりも薄汚れていて髪も乱れており、見た目から判断するにこの地での争いに巻き込まれた民間人だろう。
ウェンディがこちらに気づき、目が合うとすぐに顔と身体をがれきに隠すが、しばらくするとまた窺うように顔をのぞかせた。
関わったら面倒だなと思ったウェンディは食べかけのサンドイッチを紙袋に戻し、その場を立ち去るため歩き出した。
スタスタスタ
スタスタスタスタ
ウェンディの足音よりも小刻みな足音が聞こえる。
――振り向いたら負けだ。振り向いたら負けだ――
スタスタスタ
スタスタスタタッ
気にしないようにウェンディは早く拠点へ戻ろうとさらに足早に歩くが、後をついてくる足音も駆け足になりながらもついてきた。
『ぐぅぅぅ』
しばらくそんな調子で歩き続けていたが、ウェンディの音よりも数倍大きな音が後ろから聞こえてきた。
「はあ~~~」
そう大きくため息をつき、ウェンディはぱっと後ろへ向き直った。
急に振り向いたウェンディに驚いた少女は、びくっと大きく身体を震わせ、さっと物陰へと隠れこんだ。
少女の隠れた物陰を見つめたが、こちらの様子を窺ってはいるが出てくる様子も一向にないため、ごそごそとカバンからサンドイッチの入った紙袋を取り出し、その場の地面に置く。
そしてこれ以上関わり合うのはごめんだということで、一目散にその場から駆け出す。
決して後ろは振り向かない。
『パタンっ』
拠点のドアを勢いよく閉め、息切れに乱れる呼吸がなかなか整わないし、急に走ったため足腰も痛かった。
こんなに全力で走ったことなんて何年振りだろう?
ああもう、息も苦しいし足も痛いし。疲れたし。
「疲れたし、もう寝よう」
やっと息が整ったところで、バタンと倒れこむようにベッドへと横たわった。
0
あなたにおすすめの小説
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
転生後はゆっくりと
衣更月
ファンタジー
貧しい集落で生まれたリリは、生まれた瞬間から前世の記憶があった。
日本人特有の”配慮”に徹した赤ん坊を演じていたことで、両親から距離を置かれた挙句、村人からも「不気味な子」として敬遠されることに…。
そして、5才の誕生日に遠くの町に捨てられた。
でも、リリは悲観しない。
前世の知識チートは出来ないけど、大人メンタルで堅実に。
目指すは憧れのスローライフが出来るほど、ほどほどの守銭奴としてリリは異世界人として順応していく。
全25話(予定)
猫なので、もう働きません。
具なっしー
恋愛
不老不死が実現した日本。600歳まで社畜として働き続けた私、佐々木ひまり。
やっと安楽死できると思ったら――普通に苦しいし、目が覚めたら猫になっていた!?
しかもここは女性が極端に少ない世界。
イケオジ貴族に拾われ、猫幼女として溺愛される日々が始まる。
「もう頑張らない」って決めたのに、また頑張っちゃう私……。
これは、社畜上がりの猫幼女が“だらだらしながら溺愛される”物語。
※表紙はAI画像です
最弱白竜ですが、なぜか学園最強の銀竜に番認定されました
斉藤めめめ
恋愛
竜の血を引く者だけが貴族になれるこの世界で、白竜は最も格の低い竜の証。
白竜の男爵令嬢リーゼロッテは、特待生として国内最高峰の王立竜騎学園に入学する。待っていたのは上位貴族からの蔑みと、学園を支配する四人の御曹司「四竜」。
その筆頭、銀竜公爵家の嫡男ルシアンに初日から啖呵を切ったリーゼは、いじめと嫉妬の嵐に巻き込まれていく。
それでも彼女は媚びない、逃げない、折れない。
やがてルシアンはリーゼから目が離せなくなり――
白竜の少女が、学園と王国の運命を変える。
身分差×竜×学園ラブファンタジー、開幕。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。
蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。
これで、貴方も私も自由です。
……だから、もういいですよね?
私も、自由にして……。
5年後。
私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、
親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、
今日も幸せに子育てをしています。
だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。
私のことは忘れて……。
これは、すれ違いの末に離れ離れになった夫婦の物語。
再会したとき、二人が選ぶのは「離婚」か、それとも「再構築」か。
妻を一途に想い続ける夫と、
その想いを一ミリも知らない妻。
――攻防戦の幕が、いま上がる。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる