面倒くさがり令嬢領主の多種族領地経営

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ウェンディは用が済んだなら熊獣人たちには面倒なので、すぐに立ち去って欲しかった。

しかしながら、なぜか彼らはこのロランダから離れない。


『コンコンコン』

……うるさい。

『ドンドンドンドン』

本当に本当に毎朝毎朝うるさくてうるさくて堪らなった。
もはやノックではなく、ドアを叩く、いや叩きつけるような音が増えた。

「ウェンディ様っ、朝ですよ~!」

「ですよ」

「あさですっ」

ウェンディの返事が返ってくる前に今日も開かれるドア。

アンナとアンナの弟のダン。そして、熊獣人の集団の一員であるチャドという名の子供の熊獣人だった。
ちなみにチャドは、人間でいうとダンと同じ3歳くらいだろう。丸形のふわふわの黒い耳と尾を持つ、比較的人間に近い姿をしていた。

ウェンディは既に、うんざりしている。
毎朝毎朝なぜか彼らはウェンディと食事を取りたいという理由でウェンディの睡眠を妨害してくるのだ。



****


「ウェンディ様っ、おいしいね」

「おいしっ!」

「おいしいーっ」

いつも通りウェンディは面倒なので、その言葉をスルーした。
あんなことがあったのに仲良くできるなんて単純なやつら。そう失礼なことすら心に思っていた。

彼らは、ウェンディの横一列に3人仲良く座る。
ウェンディは別に一緒に食事をしたいわけではないので、勝手に1人で座るのだが、彼らがついてくるのだ。

「姉御、おはようございます」

そう声をかけてきたのは、ダンを人質に取って脅してきた熊獣人のホセだ。
なぜか、ウェンディが熊獣人のリーダーの怪我を治療した後、熊獣人たちはロランダを立ち去らず、厄介なことに居つくようになったのだ。

ウェンディは面倒なことになる前に立ち去ってくれと心の底から思っていたが、その思いは一切伝わることはなく。
むしろあんなことがあったというのに彼らはロランダの住人達と親交を深め、共存するようになったのだ。

彼らは見た目に反して、比較的穏やかな気質も持っているらしい。
もちろんその優れた体格と身体能力を生かし、未だがれきの多く残る街の片づけや森で獣の狩りをこなし、ロランダの街は少しずつだが、また復興に1歩前に足を進める。


「ああー、チャドこぼしたっ」
そうダンが大きな声で言葉にする。

ウェンディはその言葉を聞き、また頭が痛くなった。
横目でちらっと見て気づかなかったふりしてスルーしようとしたが、ワンピースの裾を隣に座っているアンナがくいくいと引っ張った。

「……はぁ」
そうため息をついて、仕方なくチャドの口元と濡れた衣服をハンカチで拭ってやった。

「今日も大人気だな」

その声に、ウェンディはまた厄介な人物が来たと内心ため息をついた。

チャドを拭ってやった後、再び食事を再開しようと自席に座り直すが目の前には、先ほどはいなかった熊獣人のリーダーであるマルグが腰掛けていた。
聞くところによると、チャドはマルグの年の離れた弟らしい。

「そんなことはないし、あなたの弟なのだから、あとはお任せするわ」

そうそっけなく返すウェンディんにマルグはなぜか愉快そうにくっくっと笑った。
マルグは普段からよくウェンディに絡んでくるが、ウェンディにとっては面倒でたまらない。

マルグはぴんと立つ黒い耳、左の耳は過去の戦いで失ったようで一部欠けており、筋肉質で立派な身体も戦いの古傷だろう、既に傷がふさがっているため修復不可能な傷も多く残っている。
10人程度の熊獣人の集団のリーダーであり、アンドーア王国の亜人への圧政に不満を持ち、戦争に乗じてチラキアウス帝国まで亡命してきたとのことだ。あの傷は国境を超える際に仲間たちを守るために負った傷らしい。

その経緯を聞いて、更にウェンディが頭を痛めたのはつい2日前の事だ。


「俺はあんたのそういうところ好きだぜ」

そう揶揄うように口にするマルグにウェンディは本当に面倒になってきた。

「はいはい、ありがとう」

食事に視線を向けマルグの方は一切見ずに、適当に返事をする。

今日の朝食は熊獣人たちが狩ってきてくれたウサギの肉をハーブで煮込んだものと、野草のスープだ。
熊獣人たちのおかげで面倒なことばかり増えたが、唯一の利点は食事に肉が増えたことだな。

そう思って、もう一口肉を口に運んだ。



食事をするウェンディを口元を緩めて見つめるマルグがいることには、全く気付いてはいなかった。








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