バトル・オブ・シティ

如月久

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シティのルール

1.まずは村をつくる

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 リョウがこのオンライン・ゲームで、街づくりに挑戦したのは、これが3度目だった。
 ゲームの最初の画面は、真っ白な地図。メールアドレスとハンドルネームを入力してユーザー登録をして、街の名前を決める。そうすると、地図の真ん中に、1軒だけ建物が建つ。これは村役場との設定で、これから参加者が思い思いに街をつくっていくのだ。
 役場の庁舎は小さく、みすぼらしい。画面の右側には、街の人口、歳入、歳出、貯金、負債などのデータが表示されるパレットが表示されていて、プレーヤーはこの数字を見ながら、街づくりの計画を練る。スタート時点の人口は1人、初年度の歳入は1千万円と決められている。貯金はゼロ、負債はゼロだが、1年の間に、人口1人当たり百万円まで借金することができる。
 ゲームを始めるパターンには、いろいろあるが、リョウは3回とも、村役場に職員を雇うことから街づくりをスタートさせた。まずは歳入の範囲内でしか行動を起こせないので、職員を年収4百万円で2人雇う。すると、村の人口は3人に増え、村は3百万円の借金ができることになる。歳入の中から職員給与2人分を引いた残り2百万円と新たな借金の3百万円を加えた5百万円が当面の公共事業費だ。リョウは、初めて街を作った時、この5百万円で役場の前に全長百メートルの道路工事を発注してみた。
 すると、役場の横に、土木工事会社が現れ、村の人口が一気に10人増えた。リョウは次にその10人分で借金した1千万円で、水道工事を始めることにした。水道工事を始めようとしたら、画面には「補助事業を選択しますか」という表示がでた。「はい」を選ぶと、地図の中に建設、土木の会社が5つほど登場し、役場から数十キロ離れた場所に浄水場を建設し始めた。人口は一気に50人増え、役場庁舎の隣には、初めての商店が建った。
 村の歳入、歳出の下には、起債残高という項目が新たに増え、そこに1億円という数字が刻まれた。マニュアルを読むと、起債はゲーム上での5年後から毎年、残高の5%ずつに、利子をつけて均等返済していくらしい。会社や商店が建ち、人口が増えるごとに、税収が増え、歳入額がプラスされていく。この歳入と借金を上手に使って街を拡張していくのだ。
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