バトル・オブ・シティ

如月久

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開戦

7.国際連合

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 「プレミアム・シティ」が交渉をまとめようとメールのやり取りに忙殺されているうちに、連合国側の軍事力は、着実に増強された。「イチロー」と「シティ・ジャニス」の航空機工場では、戦闘機が急ピッチで生産され、連合側の飛行場に分散配備した。戦車や大砲は、当面、「プレミアム・シティ」と国境を接する「シティ・ジャニス」に重点的に配備した。
「何とか、作戦を維持できるくらいの戦力は整った。それじゃ、プラン3を発動しようか」
「了解」
 ジャニスはおどけて敬礼のポーズをとった。
「覚悟はいい?、後戻りはできないわよ」
 そう言いながら、ジャニスは連合国にメールを一斉送信した。リョウもあらかじめ用意しておいたメールを、「プレミアム・シティ」に送った。このメールを読んだら、「プレミアム」のオーナーは度肝を抜かれるだろう。そして、その先にあるのは…、間違いなく「怒り」だ。

<プレミアム・シティ御中
 突然ではありますが、「シティ・ジャニス」「ポーラスターズ」「イチロー」「レールウエイズ」「ジャイアンツ」「タイガース」の6カ国は、この「メガロポリス」世界の平和を希求し、先ほど国際連合を設立致しました。
 国連は「メガロポリス」世界の安全保障など外交上の重要案件について、加盟各国が民主的な手順で協議し、その解決を図る組織です。加盟各国は、独自の軍事力を持たず、保有している全ての軍備を国連軍に供与します。国連軍は、加盟国に安全保障上の問題が発生した際に、総会もしくは常任理事会の決定により出動します。
 なお、事務総長は「シティ・ジャニス」、常任理事国は、前記の5カ国が務めることで、既に決定致しております。
 つきましては、「プレミアム・シティ」様にも、加盟をいただきたく、お伺い申し上げます>

「これ読んで、きっと怒り狂ってるだろうな」
「最初のメールの傲慢な態度からしたら当然そうね。自分がこの世界の支配者だと思ってるのに、新参者扱いだもの、これじゃまるっきり…」
 ジャニスが言いかけた途端、メールが届いた。余りにも早い反応だったので、二人は驚いた。リョウはすぐにメールを開いた。

<これは宣戦布告か? お前らグルだったのか、何様のつもりだ。今ならまだ間に合う、下手な考えは捨てて、今すぐ軍備を全て解け。この世界に入って間もないくせに、少々いたずらが過ぎるんじゃないか。せっかく造った街を失いたくはないだろう。思い直したら、国の存続くらいは認めてやってもいい。タイムリミットは5分だ〉
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