厄介払いで結婚させられた異世界転生王子、辺境伯に溺愛される

楠ノ木雫

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第二章

◇4 恐ろしく感じるんだが

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※嘔吐シーンあり。


 ボス来訪後、マジで白ヒョウ達が来なくなった。本当にヴィルの言葉を理解したらしい。


「ここを冬越しのための宿にされたら困るからな」

「まだ一匹残ってますけど」

「宿代は支払ってもらう予定だ」


 一体何をやらせる気なのやら。まぁ白ヒョウ研究に貢献こうけんしてくれたらこっちも助かるけど。

 あ、ちなみにもうマロは山に帰ったよ。どっかの誰かさんみたいに帰ってこなかったからもう一匹居候いそうろうが増えることにはならないと思う。

 なんて話をしつつの夕食。だけど……


「今日はビーフシチューでございますよ」


 俺が教えたメニュー。本当は喜ぶべきところ。だけど、それを目の前に出されて、身体の異変を感じてしまった。


「う”っ」


 ビーフシチューの匂いを、何故か変に強く感じてしまい、吐き気がしてしまって。咄嗟とっさに口と鼻を押さえた。


「……リューク!?」

「おっ奥様っ!?」


 こみあげてくる吐き気を必死に抑えてるけど……


「どうした、吐き気か……!」

「う”っ……」

「早く袋を持ってこいっ!! 医者も呼べっ!!」

「はいっ!!」


 すぐに駆け寄ってくれたヴィルが、何かに気が付いたらしい。早く料理の皿を下げるよう言っていたけど、今はそれどころじゃない。ようやく袋を持ってきてくれて、だいぶ我慢していたから盛大に戻してしまった。


「ゆっくりでいい」


 そう言って、背中をさすってくれる。

 口の中が気持ち悪くて、また吐きそうになる。


「医者はまだかっ!!」

「今いらっしゃいました!!」

「奥様っ!!」


 やっと医者が来てくれて、診てくれた。ようやく落ち着いてくると、ヴィルがそ~っとベッドまで運んでくれて。そして……


「奥様……」


 俺、また風邪でも引いた? インフルエンザ? それとも病気? 流行り病? なんて不安があったんだけど……なんか、医者の顔、にこやかに見えるん、だ、が……


「おめでとうございます、ご懐妊です」

「……」


 ご、懐、妊……ご懐妊って、何だっけ……えっ?


「……マジ?」

「はいっ!」

「ほんと?」

「はい、そうですよ」

「……」


 ……マジ? え、マジで?

 その医者の言葉で頭の中は大混乱。いや、何かが頭の中でぐーるぐーる回ってて。

 だけどいきなりヴィルが抱きしめてきた。ピモも周りの使用人達、拍手はくしゅしてんだけど。


「おめでとうございます! 奥様!」

「おめでとうございます!」


 ただ一人、俺だけが置いてけぼりにされていた。

 は?


「ありがとう、リューク」

「……泣いてます?」

「泣いてない」


 なんか即答してきたんだが。本当か? ……ヴィルが泣いてるところ、全っっっ然想像出来ないんだが。まぁ、だいぶ落ち込んでるところは見た事あるけどさ。見たい、すんごく見たい。あの呪いの言葉を言えば見られるか? いや、それはダメだ。


「体調はどうだ」

「大丈夫ですって。さっきも言ったでしょ」

「いや、大事を取ったほうがいい。もう寝よう」

「いや、まだ風呂入ってないんですけど」

「風呂の準備を」

「旦那様、まずは数時間ここでお休みになられてからですよ」


 なぁんか、実感が全く湧かないんだが。とりあえずあの狸ジジイに会わなくて済んだんだから、いっか。ず~っと謁見えっけんに来いって話を大雪だとか吹雪だとかを理由にして先延ばしにしていたけれど、もうそろそろヤバく感じてたんだよね。

 これからが何となく恐怖を感じているけれど……まぁ、とりあえず、頑張ります。

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