厄介払いで結婚させられた異世界転生王子、辺境伯に溺愛される

楠ノ木雫

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第二章

◇6 自覚しないといけないな

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 アメロの妊娠・出産は大体前世の地球での出産と同じくらいの期間だ。だが、つわりやお腹が出てくる期間はこっちの方が結構短い。友人の奥さんが妊娠した時の話を聞いたことがあるから、多分そうだと思う。だから、お腹が出てからの期間が長いのだ。

 だからもうお腹はポッコリだ。つわりを越えてからもう元気に急成長し、お腹の中でポコポコ動くようになった。


「どうした、リューク。眠れないか」

「お腹の赤ちゃんが動いちゃって起きちゃいました。結構元気なんですよ。ヴィルの血結構継いでるのかな」

「そうか? それを言うならリュークの方だろ」


 なんて言いつつ、俺の腹を撫でてくる。余計ポコポコ動くんだよな、これやると。どんだけヴィルが好きなんだよ。……でもそしたら、俺の血結構継いでるのかも。言えないけど。

 なんて事が毎晩とまではいかないけど何度もある。

 体の変化が出てきたから本当に妊娠したんだなぁ、って思うようになった。母親になったって意識は、まだ何となくだけど。

 使用人達には会うたび会うたび「安産でありますよーに!」と手を合わせてくる奴もいる。いやおかしいから。

 俺の小さい頃を知ってる元離宮の使用人達は、目にハンカチを当てて「あんなに小さかった殿下が妊娠だなんて……時の流れは早いですね」「こんなに立派に成長されて……まさかママになる殿下の姿をお近くで見られるとは思いもしませんでした……!」なんて言ってくる。

 そう考えると、何だか不思議な気分だ。

 そんなある日のこと。

 今日もバラの間でノンカフェインのお茶をたしなんでいた時、ピモが俺にこう言ってきた。


「奥様、4日後お休みをいただいてもよろしいでしょうか。代わりにテワールが奥様のお世話をいたしますので」

「4日後? 別にいいけど。何かあるのか?」


 ピモがお休みだなんて初めてだ。でも、今考えてみるとピモってずっと俺の近くにいてくれてるよな。お休みなんて……なかったよな。え、ずっと働き詰め!? なんか申し訳ないなそれ!!


「そろそろ本格的な冬になってお屋敷から出られなくなってしまうので、その前に一度祖母と母の所に顔を出そうと思っています」

「あ、そっか。冬凄いんだっけ。なら1日と言わず2・3日休んだらどうだ? そっちの方が家族も喜ぶだろ?」


 そう言った瞬間、ピモは……固まり、青ざめていた。

 俺、何かマズい事言ったっけ。あ、そういえばピモのおばあさまってあの元気いっぱいの人だったよな。元ヴィルの乳母さん。ヴィルの目の前で坊ちゃんと呼べる強者つわもの


「……そんな事したら、巻き込まれていいように使われてしまいます……ただでさえ向こうは宴会の準備で忙しいのに……」

「宴会?」

「あ、はい。メーテォスの冬は長く続きますので皆に会えなくなりますから、無事皆で冬を越せるようにという意味を込めて皆で集まり宴会をするのです」


 そっか……長い間会えなくなるから今のうちにって事か。ずっと建物の中になっちゃうもんな。なんか、いいなそれ。


「それっていつ?」

「5日後ですね」

「あの銭湯でやるのか? 夜?」

「昼間から、ですけど……もしかして奥様……」

「行きたい!」

「ダメです!」

「何で! もう安定期だし! 静かにしてれば大丈夫だろ。ちゃんと防寒もするし、少しだけ顔を出すだけだし。昼間からなんだろ? じゃあ昼に行けばいいじゃん」


 お医者さんには適度に運動した方がいいって言われてるし。だから歩き回ってるわけだし。ならちゃんと防寒して気を付けていれば大丈夫じゃん。


「奥様は身重みおもなんですよ! そんな時に何かあれば……」

「だって! ……都市の皆さんと会えなくなるんだろ? だったらまた春に会おうって言いたいじゃん」


 もう都市の皆さんは俺が妊娠したって聞いてるはずだ。でも、それでも自分で報告したい。あんなによくしてくれたメーテォス領民の皆さんだから。


「……でしたら旦那様にお聞きください」


 果たして、ヴィルが許してくれるだろうか。



「ダメだ」


 ほぉら、こうなった。こういう時、ピモはそういう手段を取るんだよな。全く……


「安定期に入ってますよ!」

「それでも、身重みおものリュークに何かあったら危険だろ」

「……ヴィル……」

「っ!?」

「……」


 つい、呪いの言葉を口から出すところだった。これじゃデジャヴだ。でも、思いとどまった。ポコッとお腹を蹴ってきたのだ。ヴィルの気持ちが伝わった。目で、心配そうに見つめてくる。


「リューク、ただでさえここは過酷な冬の地なんだ。甘く見ては危険だ」

「……」

「また皆に春に会えるんだ。だからリュークは自分の身体の事だけ考えてくれ」


 もう、一人の身体じゃない。こんな時に風邪でも引いたら? 凍っている地面で転んだら? ヘタしたら大変な事になる。

 もっと、自覚しないとだよな。


「……じゃあ、春にまた会って大きくなったお腹見せに行きますね」

「あぁ、一緒に行こうか」


 今もお腹ポッコリしてるけど、春になったら赤ちゃんが成長してもっとお腹も大きくなってるはず。なら、その時見せに行けばいいよな。一生会えないわけじゃないんだから。春なんてすぐそこなんだから、すぐ会えるよな。

 だから、今は我慢がまんしよう。

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