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◇side.クロエ
今日も、陛下の執務室はほっこりしている。天使がいらっしゃるからだ。
今日は、陛下のお膝に座られて、自由帳を開いてお絵描きをしている。え? じゃあ陛下は仕事出来ないじゃないって? ムカつく事にこの方はとても器用なため自由帳の隣に資料を広げて手を伸ばして書き物をしている。
それにしても、皇女様は絵が上手い。可愛いくまさんに、うさぎさんに、ねこさん。おひげもちゃんとあって、おめめも可愛く描かれている。もう最高級の額縁に納めたいくらい最高の絵です。
……ん? 何かお困りですか? 手が止まって頭傾げてるんだけど……
「どうした」
「え?」
最近陛下、色々とリンティ様がお困りの時を察知する事になったよね。だいぶパパレベル上がってると思う。急上昇よ。周りの者達は本当に助かってると思う。全然氷点下になってないんだもん。怒らせなければ、こんなほっこりした陛下でいてくださってるんだもん。さすがリンティ様よね。
「……ほわいと、たいがー」
「ホワイトタイガー……」
え、リンティ様ホワイトタイガーをお知りですか。え、こんなお可愛らしいリンティ様があんな凶暴で大きな動物を! あ、絵本で見た事があるのかも。でもそのホワイトタイガーをお描きになろうとするなんて。……え?
何か考え事をした陛下が、リンティ様がお使いになっているクレヨンを持って、リンティ様の自由帳に描き始めた。
何を描く気? と、思っていたら……
え……嘘でしょ……!? え、何それ!! モロホワイトタイガーじゃない!? え、陛下ってそんな才能があったの!? きっと世界中の名だたる絵師様達はこれを見たら泣き崩れるくらいのレベルよこれ!! 本当にこの人ムカつくぐらいなんでも出来るな!! ムカつくぐらい!!
「あ、ありがとう、ございます、おとうさま!」
「……あぁ」
めちゃくちゃ嬉しそうじゃないですか!! え、そこにいらっしゃるお父様は本当に陛下ですか!?
だけど、リンティ様に心を射抜かれていたデービス様が正気に戻り陛下に話しかけた。今度の皇室主催のパーティーの件だ。
「その日、正式に皇女殿下をご紹介いたしましょう」
「……」
「皇女殿下の着飾った可愛らしい姿、楽しみですね」
「……いつだ」
「来週です」
流石デービス様、陛下の事を熟知していらっしゃるわ。パーティー嫌いの陛下を言いくるめた。と言ってもリンティ様を理由に、だけど。でも私もリンティ様の着飾った女神のようなお姿を拝見出来る日をだいぶ心待ちにしている。本っっっ当に楽しみです!!
「ラリエティス洋装店を呼べ」
「畏まりました。陛下も採寸と確認をお願いしますよ」
「いらん、いつも通りお前が適当にやっておけ」
「皇女様、陛下のカッコいい姿、拝見したくはありませんか?」
「え?」
「陛下の着飾った姿、見たいでしょ? あ、皇女殿下とお揃いにするのはいかがですか?」
考えてから、目をキラキラさせて大きく頷かれたリンティ様。それから陛下の方に視線を持っていかれた。
真顔の陛下と、目を輝かせたリンティ様。さて、陛下は折れて下さるだろうか。いや、これはもう勝負あったな。ほら、陛下が大きな溜息をつかれてリンティ様の頭を撫でてる。さすがリンティ様です!!
「明日呼べ」
「畏まりました!」
呆れ顔の陛下に対して、リンティ様は嬉しそうにルンルンしている。そしてデービス様はニッコリと微笑んでいらっしゃる。
最近デービス様、明るいな。楽しそうだし。以前は濃い隈を作ってたり疲れた顔だったのに。まぁ理由は分かるけれど。天使を前にしたら疲れなんてどこかに行ってしまう程の破壊力よ。いつもありがとうございます、リンティ様。拝みたい、拝ませてください。
次の日、私達侍女他ラリエティス洋装店のスタッフは鼻血を出し失神する未来が待っている。
もう思い残す事はない、無念。
「リボン……」
「これがいいのか」
ちらり、と陛下を見て頷くリンティ様。きっとお揃いにしたいけれど陛下には似合わない事が残念なのだろう。さすがに水色の大きなリボンはね。
「この色でマントを付けろ」
「かっ畏まりました!!」
うんうん、リンティ様今日も素敵な笑顔をありがとうございます。天使様、万歳。
拝ませてください、天使様。
ここにいる陛下とリンティ様以外の者達の心が一つになった瞬間である。
今日も、陛下の執務室はほっこりしている。天使がいらっしゃるからだ。
今日は、陛下のお膝に座られて、自由帳を開いてお絵描きをしている。え? じゃあ陛下は仕事出来ないじゃないって? ムカつく事にこの方はとても器用なため自由帳の隣に資料を広げて手を伸ばして書き物をしている。
それにしても、皇女様は絵が上手い。可愛いくまさんに、うさぎさんに、ねこさん。おひげもちゃんとあって、おめめも可愛く描かれている。もう最高級の額縁に納めたいくらい最高の絵です。
……ん? 何かお困りですか? 手が止まって頭傾げてるんだけど……
「どうした」
「え?」
最近陛下、色々とリンティ様がお困りの時を察知する事になったよね。だいぶパパレベル上がってると思う。急上昇よ。周りの者達は本当に助かってると思う。全然氷点下になってないんだもん。怒らせなければ、こんなほっこりした陛下でいてくださってるんだもん。さすがリンティ様よね。
「……ほわいと、たいがー」
「ホワイトタイガー……」
え、リンティ様ホワイトタイガーをお知りですか。え、こんなお可愛らしいリンティ様があんな凶暴で大きな動物を! あ、絵本で見た事があるのかも。でもそのホワイトタイガーをお描きになろうとするなんて。……え?
何か考え事をした陛下が、リンティ様がお使いになっているクレヨンを持って、リンティ様の自由帳に描き始めた。
何を描く気? と、思っていたら……
え……嘘でしょ……!? え、何それ!! モロホワイトタイガーじゃない!? え、陛下ってそんな才能があったの!? きっと世界中の名だたる絵師様達はこれを見たら泣き崩れるくらいのレベルよこれ!! 本当にこの人ムカつくぐらいなんでも出来るな!! ムカつくぐらい!!
「あ、ありがとう、ございます、おとうさま!」
「……あぁ」
めちゃくちゃ嬉しそうじゃないですか!! え、そこにいらっしゃるお父様は本当に陛下ですか!?
だけど、リンティ様に心を射抜かれていたデービス様が正気に戻り陛下に話しかけた。今度の皇室主催のパーティーの件だ。
「その日、正式に皇女殿下をご紹介いたしましょう」
「……」
「皇女殿下の着飾った可愛らしい姿、楽しみですね」
「……いつだ」
「来週です」
流石デービス様、陛下の事を熟知していらっしゃるわ。パーティー嫌いの陛下を言いくるめた。と言ってもリンティ様を理由に、だけど。でも私もリンティ様の着飾った女神のようなお姿を拝見出来る日をだいぶ心待ちにしている。本っっっ当に楽しみです!!
「ラリエティス洋装店を呼べ」
「畏まりました。陛下も採寸と確認をお願いしますよ」
「いらん、いつも通りお前が適当にやっておけ」
「皇女様、陛下のカッコいい姿、拝見したくはありませんか?」
「え?」
「陛下の着飾った姿、見たいでしょ? あ、皇女殿下とお揃いにするのはいかがですか?」
考えてから、目をキラキラさせて大きく頷かれたリンティ様。それから陛下の方に視線を持っていかれた。
真顔の陛下と、目を輝かせたリンティ様。さて、陛下は折れて下さるだろうか。いや、これはもう勝負あったな。ほら、陛下が大きな溜息をつかれてリンティ様の頭を撫でてる。さすがリンティ様です!!
「明日呼べ」
「畏まりました!」
呆れ顔の陛下に対して、リンティ様は嬉しそうにルンルンしている。そしてデービス様はニッコリと微笑んでいらっしゃる。
最近デービス様、明るいな。楽しそうだし。以前は濃い隈を作ってたり疲れた顔だったのに。まぁ理由は分かるけれど。天使を前にしたら疲れなんてどこかに行ってしまう程の破壊力よ。いつもありがとうございます、リンティ様。拝みたい、拝ませてください。
次の日、私達侍女他ラリエティス洋装店のスタッフは鼻血を出し失神する未来が待っている。
もう思い残す事はない、無念。
「リボン……」
「これがいいのか」
ちらり、と陛下を見て頷くリンティ様。きっとお揃いにしたいけれど陛下には似合わない事が残念なのだろう。さすがに水色の大きなリボンはね。
「この色でマントを付けろ」
「かっ畏まりました!!」
うんうん、リンティ様今日も素敵な笑顔をありがとうございます。天使様、万歳。
拝ませてください、天使様。
ここにいる陛下とリンティ様以外の者達の心が一つになった瞬間である。
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