厄災の姫と魔銃使い:リメイク

星華 彩二魔

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第一部 六章「黒翼の後輩」

「交渉といらない魔銃使い」

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 イロハの手がエリーに届こうとした時。イロハの頭が真横からなにかに直撃したのか急な動作をとり、そのまま床にへと倒れた。
 
「……えぇっ!?」

 床を覗き込むと、イロハの意識はなく頭からは血液を流していた。銃痕らしきそれを見て蒼白とエリーは頭を混乱させる。
 この直前、朧気だが銃声が鳴った気も……。


「――なにしてんだ、お前!!」


 割れた窓に固定した絨緞のカーテンをめくり、クロトは部屋の中にへと押し入ってくる。クロトの魔銃からはつい先ほど銃弾を放ったようにうっすらと煙を上げていた。確実にイロハを撃ったのはクロトだ。

「ク……クロトさん……?」

「ん? やっと起きたか……。俺の寿命を縮めるつもりかクソガキ?」

「ごめ、なさい……。でも、これは……っ」

 状況が把握できない。だがそれでもクロトが目の前で人を殺したという事実がエリーの頭の中で何度も繰り返されてしまう。
 そんなことあってほしくない。そう夢だと自分を誤魔化そうとするエリーだが、ふと室内で空気の流れが変わった。
 風がそよぐ。窓からの風ではなく、それは室内で発生していた。そよそよとした風はイロハの頭部を煽ぎ……。

「……――っびっくりした! 先輩いたの?」

 瞬時に意識を覚醒させたイロハは一気に体を起こし仰天。つられてエリーも再び狼狽してしまう。
 確かに頭を撃ち抜かれたはずなのだが……。
 更にクロトは床に座り込んだイロハの脳天にへと銃口を向ける。
 
「……じょ、冗談だよ。お願いだから撃たないでよぉ」

 冷や汗を浮かべながらイロハは苦笑いを返す。
 しかしクロトのイロハを見る目は許そうとなどしてはいない。
 
「戻ってみれば……、どういうつもりだ? 俺の許可なくそいつに手を出せば……」

「えへへ……。先輩、怖い顔、ボクやだよ……」

「ま、待ってください、……クロトさ――」

 おぼつかない腕でエリーは体を必死に起こす。しかしまだエリーの体力は半分も戻っておらず一気に腕が力をなくせばソファーから落ちてしまう。
 険悪としていたクロトがいつの間にか血相を変えたように取り乱した様子へ。床に衝突するよりも先に、クロトはエリーの身を支え衝撃を防ぐ。疲労が起きたことでまた増してしまったのかエリーは再び眠りにへと無意識に落ちてしまう。
 そのままクロトも彼女を抱き上げ再びソファーにへと寝かし上着をかけなおしておく。
 
「……おい。ガキ」

「イロハだよ」

「……とりあえず、お前とはしっかり話をしておいた方がよさそうだな」





「――さて、いろいろ聞かせてもらおうか?」

 とにかく、クロトはイロハを部屋の中央にへと移動させ床に座らせる。クロトはそれ以上イロハがエリーに近づかないよう彼の前へ。相も変わらずクロトの彼を見る目は冷たく、話さなければ「殺す」とでも言わんばかりの殺気を放っていた。
 その視線にイロハはまた汗を表情に滲ませる。

「お前、その魔銃をから貰ったと言ったな? そのマスターって言うのはのことか? ……あの黒い魔女の」

 イロハが持っていた魔銃【フレズベルグ】は、以前魔女が持っていたものである。
 そんな代物を他から譲り渡されるなど考えることもできず。クロトはイロハが現在捜している魔女の関係者であるとふんだ。
 するとイロハは質問にまたパッとした笑みを浮かべ答えだす。

「そうそう! 魔女のマスター! ボクの名前、マスターが付けてくれたんだぁ」

「お前の名前なんざどうでもいい。……あの魔女は今何処にいる? それにその魔銃……。お前も契約者か? なんのために俺たちを捜していた?」

 質問を連続で出されてしまいイロハは頭を悩ませながら質問の回答をだす。
 ただし、順番通りとは違った。
 
「え~っとぉ……。マスターに言われたんだよ?」

 最後の質問から答えだす。
 もしかしたら頭はそれほど良くなく最後の質問しか覚えていない可能性もある。
 どの質問からでもよくクロトはそのまま話を続けることに。

「……なにをだ?」

「――【厄災の姫】の姫ちゃんを……かんし? と……どうこう? ……って」

 どこか言語の理解不足な言いよう。
 魔女は当初姿を見せないままクロトに【厄災の姫】であるエリーを守るようにと言われていた。そしてイロハは少し似た内容。監視と同行。
 要はこちらの動きが気になり監視役として送り込んできた、らしい。
 どうも腑に落ちない。
 今更エリーの守護に追加をだしてきた。他者を嫌うクロトにとってそれは酷く迷惑な話でしかない。
 それにあの魔女の言うことをすんなりと聞き入れているこのイロハという存在もだ。

 ――同じ魔銃使い。同じ不死身。なんだこの組み合わせは……。


「あ。――あと、って」


 ――……はぁ?

 続いてイロハはそんな自分を不必要とする言葉を吐いた。
 それはイロハ自身の言葉ではなく、口ぶりからして魔女からの伝言だと思える。
 ……あの魔女が、だと?
 あの時、魔女は確か……。

『――それが貴方の役目よ』

 と、言ったはずだ。
 その言葉と呪いのせいで、クロトはエリーとの同行を強制されている。
 イロハの言葉を疑った。だが同じ不死身で同じ魔銃使い。更にはあんな大技までも見せつけられた。

 ――つまり、あの魔女は俺の代わりにこのガキを送ってきたのか?

「……はは」

 思わずクロトから乾いた笑いが漏れる。
 そして次の瞬間、


「――ふざけるなッ!!!」

 と叫んでしまった。
 怒りが頂点を超えてしまう。ここまでのことをさせておいて、ついには「いらない」ときた。それはクロトの怒りを余裕で買い、更なる魔女への憎悪が増していく。
 しかし、瞬時に熱を飛ばしクロトはハッとして後ろを振り返る。怒鳴り声のせいで再びエリーが目を覚ましたのではと思えたが、なんとか起きてはおらずホッと息を吐いた。
 そんな様子はいざ知らず、イロハは自身の要求を直球で言う。

「だからさぁ、先輩。その姫ちゃん渡してくれないかなぁ? ボク、マスターに頼まれてるし」

 また魔女の言いつけ。
 そう言われてもクロトがすんなり了承するはずなどない。

「アホかお前。お前に渡してなにかあったらどうする? 悪いが俺は自分の呪いが解けるまでコイツを手放すつもりは一切ないっ」

 こんな役目から下ろされるのはいいが、呪いが健在であるためそれは下りるわけにはいかない。イロハとの対話で少しはどういう奴なのかは理解した。
 ほぼ魔女の言いなり。知能もそこまであるとも思えない。楽観的でそこも気にくわない点だ。そんな奴に任せればそれこそ自滅コースまっしぐらではなかろうか。
 それなら自分で管理をしていたい。よって認めるわけにはいかない。
 
「とにかく。帰って魔女にでも伝えとけ。いつかその首取ってやるから首洗って待ってろって」

「え~、姫ちゃんのことと関係ないじゃん。それに、ボクはマスターに頼まれてるからそのまま戻ったら怒られちゃうよ。マスターには怒られたくない~」

「知るか。お前のことなんか俺には関係ない」

「うーん……。あ! じゃあさぁ、しようよ、先輩!」

 唐突な提案をイロハは出してきた。
 それは勝負である。
 
「勝負……?」

「うん」

 勝負の内容を出したということは、その内容を決めるのもイロハに特権がある。その勝負内容を聞いてからでもクロトは断ることが可能なため、不利と思えるなら即拒否でいるつもりだ。
 だがこのイロハという少年に自分が劣っているわけがない。ネアではあるまいし、そんなことが万に一つあればそれはとてもクロトにとって屈辱的なことだ。
 クロトがどのような内容でも、そのプライドから断る確率はとても低くある。

「えっとね~、なにかあったらコレで決めろって、マスターが言っていたから」

 なるほど。また魔女か……。
 ならこれは魔女からの勝負とも受け止められるためクロトは絶対に断るという選択肢を自ら断った。
 内容など確認するまでもない。そう強気で挑もうとするクロトはイロハが取り出した物に目が行くと、思わず目を見開いてしまう。
 
「……これは」

 驚いた。というよりは、クロトはイロハの出した物に見覚えがあった。
 イロハの手にあるのは二つの腕輪。白いシンプルなものに緑色の球体が組み込まれた物。
 クロトは、この腕輪を知っている。かつて魔女がコレを使い何度も自身を試していたことがあった。
 ――訓練、という目的で。
 だが、これを使っての勝負となると、クロトの中では一つしか思い浮かばずイロハにへと目を向ける。
 
 この道具を使っての勝負。それは……。

「お前、俺とつもりか……?」

「だってボク、それくらいしかよくわかんないもん。ボクはマスターに教えてもらったこと以外は知らないから」

 能天気なのかどうなのか……。
 イロハはなんの問題もなくそれを積極的にクロトにへと申しでる。
 断るつもりはクロトにはない。だが、このイロハとの勝負となると少し難なことがある。
 それを視野に入れつつ、クロトはそれに応じた。

「ずいぶんな自信だな。お前があの魔女にどれだけ吹き込まれたかは知らないが、殺し合いで下りるというのは俺の主義に反するからな。……受けてやるよクソガキ。その抜けた頭に刻み付けてやるから覚悟しておけ」

「おお、さすが先輩。じゃあ、ボクが勝ったら姫ちゃんちょうだいね」

 同じ不死にして魔銃使い同士の勝負。この勝負によりエリーの所有権が決まることだろう。
 
「絶対に負けねぇからな」

「うん。ボクも負けないからね」

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