厄災の姫と魔銃使い:リメイク

星華 彩二魔

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第五部 五章「変わらぬ想い」

「華の王」

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 空腹をなんとかしのぎ、危機を乗り越えたニーズヘッグたち。
 その状況を救ったのは八の王に属すると名乗る少女だ。
 腹を満たして今更になって両者はその呼び名に首を傾ける。
 それは名というよりは種族的な名称だとも捉えることができる。
 最初に思いついたのは、八の王の機嫌取りというものだ。
 第一印象としてある八の王ことアリトドは、過激であるという事である。そのアリトドの機嫌を取るなど難業であり、目の前の少女がそれをできるかどうかを考えれば、言動が逆にストレスを与えないかと不安になる。
 
「……つーか、お前ちゃんとした名前ねーのかよ?」

「は? 一応言ったつもりだったのですが、それはつまり私の個体名を名乗れと言うわけでございますか?」

「その口調も馬鹿にしてんのか丁寧に話してんのか……どっちかにしてくれねーか?」

「これでもオブラートに包んでいる方です。ちょっとムカつく女の子って、一周周って可愛くないですか?」

「……見た目はいいと思うが、言動がそれをマイナスにさせる」

「そこは可愛いと言うところですよ? わかってねーですねこの野郎は。……まあ、いいでしょう。一応アリトド様にも個々で名をいただいておりますので。――シランです」

 少女は可愛らしくドレスのスカートを両手で左右に摘み上げお辞儀をする。
 何も言わなければ可愛いが、それは心の中にとどめておく事とした。
 
「……一つ聞きたいのだが、キミは八の王に近い存在なのか? だとすれば、何故ボクとニーズヘッグを助けた? 直属なら、ボクたちの事を聞いていてもおかしくないと思うのだが」

 不思議と。少し不安気にフレズベルグはシランに問いかける。
 話からすれば、シランはアリトドより名を貰い、属の中では王に近しい存在とも思える。
 そんなシランが王の間で狼藉を働いたニーズヘッグたちの話を聞いていないとはとても思えない。
 アリトドにはそれなりの怒りをかっていた。なら、縄張りに入っただけで抹殺命令が出されていてもおかしくない。
 だが、シランにその様子は見受けられず、むしろ食糧を分け与えるほどだ。
 何か裏があるのか……。それとも、本当に知らないのか。
 シランは小首を傾ける。

「あ……。テメェらがアリトド様に喧嘩売ったっていう馬鹿どもでしたか。まあ、どうであれ一々私が手を下すのも面倒ではありませんか。特になんとも言われておりませんし」

「……なにも、言われてないのか?」

「はい。あのクソガキどもムカつく、程度ですよ。子供っぽく愚痴を言われてましたね、アリトド様は」

「しかし、それでもボクらを助ける理由にはならないだろう? 属も違うし……」

 身内の属なら温情のいくつかはあるだろう。
 だが、ニーズヘッグたちはそれぞれ属が異なっている。
 シランは……少し上を見上げて、ポツリと呟く。


「――まあ……。がほしかった……というだけですよ。些細なことでございます」


 シランの言葉にはまた疑問を抱きたくなるところがある。
 表情が無のため読み取れないのも含め、少し変わった思考の悪魔なのやもしれない。
 
 そうひと段落ついた時だ。


「――さきほどから何を騒いでいる?」


 ニーズヘッグとフレズベルグは割り込んできた声にビクリと身が跳ね上がる。
 突然の事だったからではなく、その声にはどこか聞き覚えがあったからだ。
 食欲で周囲への気配りがおろそかになっていた。シランと会話をしていたこの場を見直す。
 少し拓けた空間。中央には巨大な大木と、大きな花が咲き誇っている。
 声はいくつかある花から聞こえてきた。
 声の主と思わしき影がゆっくりと姿を現し、こちらにへと顔を向ける。
 
「おはようございます。――アリトド様」

 シランは淡々と目覚めの挨拶をする。
 更にニーズヘッグたちの背筋がゾッと悪寒を感じて言葉がでない。
 何処かで聞いたことがある声だと思えば、こちらを見下ろすのは八の王であるアリトドではないか。
 まだ眠気を帯びる目でありこちらに気づいてはいないが、それも呆気に取られている間だけだ。
 互いが互いの姿を認識した時、アリトドは両目をカッと見開いて驚いた顔をする。

「きっ、貴様ら!? 何故此処に!!?」

 怒りよりも驚きが勝っているのか、アリトドの第一声はそれだった。
 好きでこの場にいるわけではない。
 知らず知らずに迷い込み、シランに案内されただけである。
 ニーズヘッグとフレズベルグは一緒になってシランを指さしし、アリトドの気を逸らす。

「……お前か。何故そいつらを此処まで連れてきた?」

「は? ダメなのですか?? 時が来るまで好き勝手生きていいと言ってくださったのはアリトド様ですよ? お忘れですか? 歳は怖いでございますね」

 淡々と。シランは王に対してもまったくブレることなくそんな言葉遣いである。
 そして、「ぷっ」と無表情で笑う。
 恐れを知らない生き物なのか。ニーズヘッグたちはこの少女が怖く思えてしまう。
 あの感情の激しいアリトド相手にそんな口の聞き方こそ、彼女の怒りを買うだけでしかない。
 恐る恐る。アリトドを眺めると……あら不思議。
 憤怒をまき散らすかと思えば、何処か呆れた様子でため息をついている。
 シランに対してはその程度でしかなく、その後はすぐに嫌悪の眼差しを部外者であるニーズヘッグたちに向けた。

「とりあえず、貴様ら。先日はよくもやってくれたな? ……此処で会ったのなら、覚悟は――」

 やはりアリトドは見逃す気がないらしい。
 此処は彼女の領地でありテリトリー。状況が違い今度こそ逃げる事ができないとすら強いられる。
 焦って立ち上がり臨戦態勢を取ると、上空に大きな影が通る。
 それに気づいてか、アリトドは視線を上にへと向ける。

「……っ」

 アリトドの前に下りてきたのは蟲だ。空を飛行するひょろりとしつつも、外装は硬い殻に覆われた蟲。
 それはアリトドに寄ると、鳴き声で何かを訴えている。

「……わかった。は準備できている。……だが、少し遅れてきてほしいと、伝えてくれ」

 蟲は了承してか、それを聞き入れるとまた天にへと舞い上がり何処かへ行ってしまう。
 後に、アリトドはまた深くため息をついて下にへと向き直る。
 シランの後ろでは植物の蔦に覆われた繭が。中にはニーズヘッグとフレズベルグがいた。

「な……なんなんだ……っ?」

「さ、さあ……」

「とりあえず、騒がないのは正解でしたね。先ほどのは六の王の配下。……おそらく、一番見つかりたくないと思い、隠しました」

 要はこの蔦はシランによるもの。
 確かに、アリトドもそうだが、六の王であるセントゥールにも知られると面倒でしかない。
 最悪、また二体の魔王を相手にせねばならないからだ。
 しかし、またしても不思議な事がある。
 それはアリトドがそのシランの行動を見逃したかだ。

「ご苦労、シラン。……それと、お前に一つ命令を出す」

「……なんでしょうか?」

 シランは首を傾けて問う。
 アリトドからの命令。それは驚くものでしかなかった。


「――その狼藉者たちを速やかに樹海の外に出せ。……お前が連れてきたんだ、責任をもってなんとかしろ」


 と。またもや見逃す発言をする。
 それには意見を口にせずにはいられない。

「ちょっと待て!」

「なんだ業火の蛇? 私は忙しいのだ」

「いやそうじゃなくって! お前、前回あんだけ殺す宣言みたいなことしといて、今更見逃すとかいったいなんなんだよ!?」

「ニーズヘッグの言いたいことは……よくわかる。だが、見逃してもらえるならいいんじゃ……ないのか?」

「逆にお前たちは、この場で殺されたいのか? ……まあ、なんというか、あれだ。もうじきセントゥールが来るのでな。できればお前たちを会わせたくないというのが、正直なところだ」

 それもまた、何故としか言いようがない。

「むしろ、あの魔王と一緒になってやるつもりの方がまだ納得がいくっ」

「……本当に殺されたいのかこの蛇は。……私としては、あまりセントゥールの目が他にいくのは……少し気がかりになってしまうのだ」

 不思議と顔を赤らめ、アリトドはその辺に咲いていた花を摘んで弄りだす。

「…………よくわからん」

「とりあえず、無事に出られるならいいじゃないか。それで納得しようニーズヘッグ」

「いい加減やかましいな! シラン! 早くそいつらを追い出せ!!」

「了解しました、アリトド様。……行きますよ部外者様ども」

 シランは言われるがまま案内をする。
 納得のいかないこともあるが、ニーズヘッグたちは黙ってシランの後に続くしかない。
 アリトドが何を考え逃がしたのか。その悩みは彼女本人から詳細を語る事はなかった。





「なあ? なんでアイツ俺らを見逃したと思う?」

 道中。ニーズヘッグはどうしても気になり口にする。

「言っていた通りじゃないのか? 六の王の目が他にいくのが気がかりだと……。ボクたちを会わせたくないとも言っていた」

「そこはよくわかんねーんだよな~。俺ら結構アイツらに恨まれてると思うんだが、なんつーか、意外っていうか……」

 どう考えても逃がす理由に納得がいかない。
 逃がすよりも、共闘して潰す方が一番道理にかなっている。
 多くの魔族ならそちらを実行する方が確立も高くある。
 ましてや魔王に逆らったのだ。会ったがその時に運命を決められるもの。
 頭を抱えているニーズヘッグに、先頭を歩んでいたシランが背中で「ぷっ」と笑う。

「結構みみっちいことで余計に悩まれるのですね。この蛇は」

「だって気になってこれじゃあ寝れねーぞ!」

「まあ、ガキんちょにはの悩みというのは理解できないのでございましょうね。……ぶっちゃけますと、アリトド様は六の王の事になんですよね」

 歩みつつ。シランは両手である形を作って頭の上にだす。
 その形は……ハートだ。
 しばし、ニーズヘッグたちは言葉を失い、数秒後、一緒になって驚きを叫んだ。

「つ、つつ、つまりあれだろ!? さっきの魔王はこの前の蟲野郎の事が……って、えええ!?」

「おお、落ち着けニーズヘッグ! 人それぞれって言葉もある通り、魔王もそれぞれって……事だろ?」

「はっ。ガキんちょでもそこらへんは理解しやがりましたか。いわばぞっこんなのでございますよ。我が尊敬する一途なアリトド様は。それなりに付き合いも長いらしく、今アリトド様が魔王の地位にいるのも六の王のおかげでもありまして。……先ほどのアリトド様がお二人を逃がす理由、詳しく知りたいです?」

 ニーズヘッグたちは「お願いしますっ」と同時に首肯。
 シランから詳細が語られる。

「アリトド様、もうじき六の王が来ると言ってましたでしょ? 実はアリトド様とはよく会われているお方でしてね、時折アリトド様も供物を捧げておられるのですよ。……捧げる、と言うよりは提供でしょうか? ですが六の王は…………あ、面倒なので蟲王でいいですね? 蟲王は魔界でも有名な暴食者なので、もう雑食もいい所ですよ。結構なんでも喰いやがります。アリトド様としては、他より自分を見てほしいという欲求があるため、余所者よりも喰うなら自分の提供するものを……って感じなのですよ。…………ご理解いただけましたか?」

 長くはあったが、呆気に取られつつなんとか頭に入れた。
 要は他に嫉妬してしまうところがあるという事だ。
 
「……な、なるほど。だからあそこでも蟲野郎につっかかったらあんだけ怒ったのか。……面倒な性格してやがるな」

「だとすると、六の王の指を潰してしまったボクは余計に恨まれている気がするのだが?」

「なんだかんだと、すぐキレてしまうアリトド様なので誤解は多いのですが。アリトド様はお二人が考えるほど残忍なお方ではありませんよ? 感情的になりやすいというのはありますが、後になって後悔したりして寝込んでしまう事もあるのですよ? でなければ、私たちのような者がアリトド様と簡単にお話などできるわけもありませんし、この口調を簡単に流せれるわけもありませんので」

「そういう……もんなのか。意外に……いい奴……なのか?」

 八の王。その脅威は周囲を呑み込む深緑の浸食と、荒れ狂う猛華。
 しかし、直属のシランの話から意外性が生まれ、噂とは違う事を思い知らされる。
 話題に区切りをつける様に、樹海の出口にへとたどり着く。
 
「着きましたよ部外者様ども。もう二度と迷い込まないでくださいね?」

「正直、見かけてもこねーよ。とりあえず、サンキューな」

「……感謝する」

「いえ……」

 くるっと、シランは後ろにへと身体を振り向かせる。
 行儀よく、スカートを摘み上げて頭を下げ、向き直るとシランはこれまでの無表情を解く。
 それは、不思議と裕福な時を得た様な笑みを静かに浮かべていた。
 
「なかなか良き時間でございました。外の住人と会うなど経験ありませんので、新鮮でしたよ。……それでは、良きをどうも。道中、お気をつけて魔界を生き抜いてください」

   ◆

 ニーズヘッグたちと別れたシランは真っ先にアリトドのもとにへと戻る。
 彼女はずっとその場で待っていた。
 シランは再び無表情でアリトドと言葉を交わす。

「……追い出したか?」

「はい。……なかなか面白連中でございました。……ぷっ」

「そうか。……ああ、まったく。遅れて来いなど、今までセントゥールに言った事がなかったというのに。後で問われるやもしれないな」

「いつもの様に誤魔化せばよろしいのでは? 例えば――……と」

「……それは、お前の思っていることなのか?」

 アリトドはシランに問う。
 シランは感情を表に出さず、ほんのわずかに視線を逸らすのみだ。
 
「正直、何故アリトド様があの野郎を好いているのか……この私にはわかりません。悪趣味で、性格も魔王の中で最悪。……何処が良いのですか?」

「……」

 アリトドは寝床の花から降り、シランにへと歩み寄る。
 そして、そっとシランを抱き寄せた。

「そう……言わないでやってくれ。セントゥールをああさせてしまったのは、私にも原因がある。……私は、セントゥールに施しを与えすぎた。それを当たり前と判断させてしまい、暴食を極めさせたのも私だ。……そして、を捧げるのも……もう止める理由がない。そのための愛玩華。そのための食用華いけにえなのだからな」

「知ってます。私たちは蟲に喰われるためにあるのだと……」

「……恐怖はないのか?」

「ありません。そういった感情など、持たぬ様に作ったのはアリトド様ではありませんか」

「………………そう、だったな」

 シランの髪を整え、一凛の花を髪飾りにする。
 
「では、行こうか。……未練はないか?」

「ありません。……良きも得られましたからね」

 小さな花は親と手を繋ぎ歩む。
 その手はこの後放される事も理解して、最後の親との時間を過ごした。
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