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超速これまで① ~ 漆黒の魔女
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魔女が魔女としての力と成す魔力。魔女は歴史の中でその扱いに長け、それを極めた先に魔女を魔女たらしめる存在となり得る。
今よりおよそ800年ほど前のこと、北欧の辺境にひっそりと息づく魔女の里と呼ばれる地に、若く美しき魔女、アンナがいた。そんな容貌だけでなく、群を抜く魔力の扱いと聡明で思慮深く、何よりも優しい人柄、そしてここぞというときの度胸や判断力の確かさから、次代の長として里の誰もが推す魔女だった。ただそのためには伴侶を得なければならないが、里とその周辺には見合う男が見当たらず、適齢期でもあったため、それを求め都へと赴く。
時は数年遡り、ところ変わって極東の地。同種同様の力を内に秘める資質の持ち主がいた。その類稀なる特性を持つのはほんの一握りの辺境の貧しい一族だったが、この地ではその扱いを磨いた歴史もなく、資質を備える自覚も薄いまま、戦乱に巻き込まれ滅んでしまう。その中で唯一生き残れた子どもがいた。そのキャパシティ量は途轍もなく大きく、外に向け振るわずとも、内に秘める潤沢な魔力は、知力や体力、俊敏性などへ自然と昇華し、他を圧倒する能力を発揮することになる。この子どもは、とある騒動に巻き込まれ、武人としての生き方が強いられる。それはとある武家の子どもに成り代わり大願を背負って生きていくことだった。そうして戦乱の中で特別な才覚を振るうこととなるのだが、さまざまな謀略渦巻く戦況では、幾多の戦を重ねる中で、如何な能力を持ってしても敵わない場面もある。あの手この手の狡猾な知謀策謀に落ちてしまうのだ。そして一度負ければ、一族郎党が処刑される世の中であったため、そんな希有な資質を備える血筋も簡単に失われる時代。もったいない話ではあるが、傑出する才能もそうやってどんどん絶ち消えていくのが戦乱の世だ。
ところがその希有な血筋の男は戦に敗れながらも一人生きながらえ大陸に逃れることとなる。家臣の決死の計らいによって、自刃したように見せかけ、妻子とともに活路に誘われるのだ。しかし、逃避の最中、既に負傷していた妻子は、祈りも叶わず息絶えてしまう。傷心の男は倭の国を飛び出し、追跡を受けぬよう幼名から取ったシャナを名乗り、とある男の夢を手伝うこととなる。そうして数年が過ぎ、躍進を重ねた先の西方遠征にて、魔女の里の若く美しき長候補との、時空を共有する機会が訪れる。そこにいるだけで、互いの魔力は共鳴するように、自身の特殊な紋様のオーラを相互に認識し、その刹那、誰かに誘われることなく、強烈に惹かれ合い恋に落ちる。いくらかの紆余曲折を経るが、子を宿し、二人は結ばれる。魔女の里で生まれた子は、漆黒の髪が特徴で、その成長の都度、生粋の魔女たちの常識を打ち砕く、数々の奇跡を巻き起こす。魔女の里で永い時をかけて培われ磨かれてきた、魔力を使いこなす技に、潤沢なキャパシティに裏付けられた魔力量と、さまざまな理の根源を奮い起こす具現化の特徴が重なることで、魔力行使の力量の底上げだけでなく、化学融合のように魔法でできることの幅が格段に拡張されることになる。里では、これを漆黒の力と呼び、以降はこの力を備える魔女を、『漆黒の魔女』と呼び始めることとなる。
その象徴ともいえる『漆黒』とは、髪色から捉えた特徴でもあるが、生まれてからその力が覚醒する5歳くらいまで、髪は黒というよりは本当に漆黒の髪色となる。吸い込まれそうなくらいの闇、真っ黒で艶も殆どない黒色だが、その黒さの向こう側に、光ってもいないのに、本人の感情か何かの揺らめきが顕現するときなのか、なぜか見るものを刺激するような煌めきの片鱗を感じさせられることのある、そんな不思議な髪色だった。力が覚醒して初めて本来の髪色を取り戻す。また本来の髪色となった後も、漆黒の力を揮うそのときだけは再び漆黒の髪色となり、その揮われかたに応じて意志を持っているが如く舞いあがる髪。そのような魔力発動のさまを見た者なら、自然に『漆黒の魔女』と呼称してしまうのも頷けるというものだ。
なお、婚姻を契機にシャナは名を改め、生まれてくる子を「シャナ」と名付ける。そう、『漆黒の魔女』はシャナを元祖に、細々と受け継がれていく。
今よりおよそ800年ほど前のこと、北欧の辺境にひっそりと息づく魔女の里と呼ばれる地に、若く美しき魔女、アンナがいた。そんな容貌だけでなく、群を抜く魔力の扱いと聡明で思慮深く、何よりも優しい人柄、そしてここぞというときの度胸や判断力の確かさから、次代の長として里の誰もが推す魔女だった。ただそのためには伴侶を得なければならないが、里とその周辺には見合う男が見当たらず、適齢期でもあったため、それを求め都へと赴く。
時は数年遡り、ところ変わって極東の地。同種同様の力を内に秘める資質の持ち主がいた。その類稀なる特性を持つのはほんの一握りの辺境の貧しい一族だったが、この地ではその扱いを磨いた歴史もなく、資質を備える自覚も薄いまま、戦乱に巻き込まれ滅んでしまう。その中で唯一生き残れた子どもがいた。そのキャパシティ量は途轍もなく大きく、外に向け振るわずとも、内に秘める潤沢な魔力は、知力や体力、俊敏性などへ自然と昇華し、他を圧倒する能力を発揮することになる。この子どもは、とある騒動に巻き込まれ、武人としての生き方が強いられる。それはとある武家の子どもに成り代わり大願を背負って生きていくことだった。そうして戦乱の中で特別な才覚を振るうこととなるのだが、さまざまな謀略渦巻く戦況では、幾多の戦を重ねる中で、如何な能力を持ってしても敵わない場面もある。あの手この手の狡猾な知謀策謀に落ちてしまうのだ。そして一度負ければ、一族郎党が処刑される世の中であったため、そんな希有な資質を備える血筋も簡単に失われる時代。もったいない話ではあるが、傑出する才能もそうやってどんどん絶ち消えていくのが戦乱の世だ。
ところがその希有な血筋の男は戦に敗れながらも一人生きながらえ大陸に逃れることとなる。家臣の決死の計らいによって、自刃したように見せかけ、妻子とともに活路に誘われるのだ。しかし、逃避の最中、既に負傷していた妻子は、祈りも叶わず息絶えてしまう。傷心の男は倭の国を飛び出し、追跡を受けぬよう幼名から取ったシャナを名乗り、とある男の夢を手伝うこととなる。そうして数年が過ぎ、躍進を重ねた先の西方遠征にて、魔女の里の若く美しき長候補との、時空を共有する機会が訪れる。そこにいるだけで、互いの魔力は共鳴するように、自身の特殊な紋様のオーラを相互に認識し、その刹那、誰かに誘われることなく、強烈に惹かれ合い恋に落ちる。いくらかの紆余曲折を経るが、子を宿し、二人は結ばれる。魔女の里で生まれた子は、漆黒の髪が特徴で、その成長の都度、生粋の魔女たちの常識を打ち砕く、数々の奇跡を巻き起こす。魔女の里で永い時をかけて培われ磨かれてきた、魔力を使いこなす技に、潤沢なキャパシティに裏付けられた魔力量と、さまざまな理の根源を奮い起こす具現化の特徴が重なることで、魔力行使の力量の底上げだけでなく、化学融合のように魔法でできることの幅が格段に拡張されることになる。里では、これを漆黒の力と呼び、以降はこの力を備える魔女を、『漆黒の魔女』と呼び始めることとなる。
その象徴ともいえる『漆黒』とは、髪色から捉えた特徴でもあるが、生まれてからその力が覚醒する5歳くらいまで、髪は黒というよりは本当に漆黒の髪色となる。吸い込まれそうなくらいの闇、真っ黒で艶も殆どない黒色だが、その黒さの向こう側に、光ってもいないのに、本人の感情か何かの揺らめきが顕現するときなのか、なぜか見るものを刺激するような煌めきの片鱗を感じさせられることのある、そんな不思議な髪色だった。力が覚醒して初めて本来の髪色を取り戻す。また本来の髪色となった後も、漆黒の力を揮うそのときだけは再び漆黒の髪色となり、その揮われかたに応じて意志を持っているが如く舞いあがる髪。そのような魔力発動のさまを見た者なら、自然に『漆黒の魔女』と呼称してしまうのも頷けるというものだ。
なお、婚姻を契機にシャナは名を改め、生まれてくる子を「シャナ」と名付ける。そう、『漆黒の魔女』はシャナを元祖に、細々と受け継がれていく。
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