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第4話 ザックの懸念事項
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「……なるほど。わかった。ちょっと待ってくれるか? マコト? ちょっといいか?」
「何? パパ」
「今日、空港でジェイムズを見かけた気がしたんだ。さっきの話で警察官が同行しているのなら、もしかしたらジェイムズが乗っている可能性があると思うんだ。見てきてくれないか?」
「そうか、そういえば空港でマコも見かけた気がするよ。うん、今、ミニ琴でイルに説明してる。イルに機内を歩いてもらって琴は透過状態で、2人の目で探してみるよ。マコも行くから3人の目かな? でもイルがいれば、髪色でジェイムズが気付いてくれるかもしれないしね」
琴とは、オーラで創り出されたマコトの分身体の呼称。ミニ琴とは、オーラゆえに伸縮自在で、この場合は1/12スケールサイズくらいの分身体を暗黙的にそう呼んでいる。
「おぉ、さすがはマコトだな。もしもいたなら、オレが話したがってた、って言ってうまく連れてきて欲しいんだ。こっちの状況は悟られないように気を付けて欲しい。できそうか?」
「いいよ。いたならバッチリ連れてきてあげる。今すぐ行ってくるからちょっと待っててね」
「あぁ、頼んだぞ」
パタパタと客室に戻っていくマコト。その可愛らしさに目を奪われているサトルを横目に、ジンは説明を始める。
「あぁ、ジェイムズってのは、そのギャング事件の中心になった警察官なんだ。あの事件で昇進も決まったらしく、ちょっと融通が利きそうだから、事情を説明して相談しようと思う。そこで銃のことはいったん伏せておくから、漏らさないように頼むよ」
ザックとその配下の面々は、警察官、という言葉に、一瞬、緊張を走らせる。が、ギャング事件と聞いて、抱く不思議な親近感に緊張感はほどなく解かれる。
「あ、あぁ、ギャング事件のか……わかった。あなたは警察にも顔が利くんだな」
「あぁ、まぁ、たまたまギャング事件のときに協力してもらったからね。まぁ、それだけなんだけど、向こうが勝手に興味を持ってくれてるんだ。個人的には警察関係は苦手なんだけど、いつかは自分の救いにもなる可能性もあるし、敢えて無碍にすることもないからね」
ふと、隔てるシールドをすり抜ける、透過率100%、妖精サイズの琴。誰の目にも見えないが、ジンだけはそのオーラの接近に気付く。ふわりとジンの肩に着地しジンの左耳で囁く。
「パパ、いたいた、今連れてくるね」
「お、琴か? わかった。ほっ、いてくれて良かった」
サトルは思った。『なぜか、小さいけれど、マコちゃんの声が聞こえた気がする。いや、ジンさんも会話のような素振り? う、うん? トランシーバーでも使ってるのかな?』
「さっき言ったジェイムズが居たそうだ。今来るからくれぐれも発言には気をつけてな?」
「わかった」
するとマコトに伴われ、ひとりの男が入ってきた。
「やぁ、ジェイムズ。ご足労ありがとうございます」
「お久しぶりです。ミスターイチノセ。奇遇ですね。こんなところで何をしてるんですか?」
「あぁ、ちょっと大事な話があって。それとちょっとお力を拝借できないかと思いましてね」
「ほぅ、私なんかがお役に立てるのなら、何なりと……と、それよりも、こちらの方達は?」
やや訝しげな目でザック達を見やるジェイムズ。正体不明の集団に向ける目は、警察官の職業的なそれだった。ザック達はその圧に気圧される。
「あぁ、そのお力を借りたいことの元でちょっとした相談事を彼らから受けているんですよ」
助けを求める集団であると認識したジェイムズは、ふっと表情を緩め、柔らかな目で見回す。ザック達は、なぜか止まっていた息を再開し、安堵の息を漏らす。
「なるほど、で、その御用の向きはどのようなものですか?」
「あぁ、その前にいくつか質問させてください」
「はい、いいですよ」
まずはジェイムズの搭乗目的や立ち位置、差別などに対する考え方、そして何よりも信頼に足る人物かなどを明らかにしておく必要があるとジンは考え、つらつらと質疑を交わす。
「今日はお仕事で搭乗されたのですか?」
「はい、警護任務を仰せつかったので、今もある意味勤務中なんですよ」
「え? それはどなたの警護ですか?」
「我々の市の市長ですよ」
もしも突撃していたら、この人と争っていたかもしれないことを想像してしまうザック達。『助かったぁ~』と心で呟きながら、みな目と口がへしゃげている。
「え? 市長とはそれほどに偉い役職なんですか? 日本じゃ考えられない高待遇ですね」
「あ、いや、そんなことはないんだが、最近きな臭い噂が多いらしくてな」
「ほぉ、きな臭い……それはどんな噂ですか?」
「生活が成り立たない輩がそれを市長のせいだと襲うかその手前の小競り合いが多いらしい」
ザック達は、自分達のことだと冷やり顔でお互いを見合わせる。
「なるほど、その市長さんは、そんな恨みを買うような人物なんですか?」
「いやオレは仕事柄、話す機会も少なくないんだが、稀にみる、できた人物だと思ってるよ」
「んん? それなら、誰がそんな噂があるって言ってるんですか?」
「あぁ、それは市の役人達さ。オレはあまり好かん連中だがな」
ザックの言とジェイムズの話が大筋で一致していること、感情面でジェイムズが同じ方向性であること、などを確認できたジンは、確証が深まり本腰を入れての本気の対策に乗り出す。
「ほぉ、ところで私も詳しくはないんですが、アフリカ南部は人種差別が激しいところと聞いていますが、ジェイムズは白人ですよね? あなた自身はどのように考えていますか?」
ここからが本題だ。慎重に言葉を選びながら、ジンは質問を紡ぎ出し投げ掛ける。人種差別や白人のワードに一瞬だが眉に反応が認められる。意図が見透かされたかもしれない。
「うーん、先程からの問答はその辺を聞き出したいからか? そちらは原住民なんだろう?」
ジェイムズの職業柄、まだザック達の素性を明かせないジンは、少しだけ話を濁す。
「まぁ、そういう側面もありますが、私自身の認識が浅いため、地元に根付いた仕事をしているジェイムズにお聞きしたかったわけですよ」
「ふむ。そうか。オレは前にも言ったように、不正は許せない性質でな。そこに人種って境界線を加えると正しい判断はできなくなってしまうと思っている。白人の皆がみんな、そうであるとは限らないんだが、とかく白人の中に根付いている差別の心は腹立たしいと思っている」
方向性一致の精度のさらなる高まりに思わず顔が綻び頷きを返すジン。ジェイムズは続ける。
「さらには白人の一部に蔓延っている不正や弾圧、迫害。許し難いにもほどがあるんだが、そいつらは巧妙でなかなか尻尾を掴ませない。イライラしてくるよ。同じ人間なのに、神様かと思うほどの理不尽な偉さを振りまいている。考えただけでもヘドが出るよ」
「思ってたよりもずっといい人間だったんだな? 考えが重なりすぎて怖いくらいだよ。あなたがそういう人間だとわかって嬉しいよ」
これまで警察官という職業に何となくな一線を引いていたジンだったが、話してみれば安心この上ない人物と知れて、心の境界線は霧散したようだ。ジェイムズに心からの笑みで返す。
「おぅ、そうか? って、今までどんな人間だと思ってたんだ? まぁいいが……ただな、いくら理不尽でも、法で定められていることには従うしかないんだ。法を守り守らせるのが警察官の仕事だからな。だから、それが不平等な天秤でも、法に触れるのなら、弱者をしょっぴかなくてはならない場面もある。腹立たしいことだがな」
「うん。でも、警察官とはそうでなくてはならないよ。それでも、それとは異なる正義の天秤を心に持ち、その違いによる葛藤に心を痛める。ジェイムズ? あなたは素晴らしいよ。そのままの気持ちを忘れないで警察トップを目指して欲しいな」
「だからこそ、警察ではないからこそ振るえる正義の行動。ミスターイチノセ。あなたが元警察署長を引きずりおろしたあの手腕。ホントによくやってくれたと思う。まぁ、ギャング壊滅への立ち居振る舞いもすごかったがな」
自身の嬉しさの高まりに重ねて、ジェイムズに最大のエールを贈ったジンだったが、ジェイムズだって黙ってはいなかった。ギャング壊滅など、大賞賛の逆襲を受け、タジタジのジン。
「うっ、まぁまぁ、もうそれはそのくらいで……」
「ハハハハ、まぁ、そこを弄るくらいしか、あなたに勝る要素はないんだから、諦めてくれ」
「ぐっ」
してやったりなジェイムズ。趣を理解したことで、今度はザックたちに向けてエールを贈る。
「それとそちらのあなた達。今はまだ辛いことも多いと思うが、腐ったり、諦めたり、負けるんじゃないぞ。まだまだゆっくりとではあるが、そう遠くない未来にはきっと良い時代はやってくるからな。根気よく生きていくんだぞ」
強面の現職警察官からのまさかの不意打ちエールに驚くザックたち。今はまだ不遇な最中《さなか》でも兆しは確かに見えるからもう少しだ、頑張れ! と、温かい手が背中を押し留めてくれる、そんな言葉に少しだけ勇気の火が灯る。涙腺は僅かに拡がり、言葉の主を瞳に映そうとするが、瞬き忙しく視点が留まらない。瞳を滲ませながら謝意を述べるザック。
「うぅ、ありがとう。世の中まだまだ捨てたものじゃないんだな。あなたみたいな人が警察にもいるんですね?」
「あぁ、困ったことがあったらぜひ頼ってくれ。状況によっては、まだできないことも多いかもしれないが、力になれることは少なくないと思うぞ?」
更なる心強さを帯びた言葉にザックたちの多くは涙腺瓦解、頷きを何度も繰り返す。
関係の深まりによしよしと頷きながら、ジンはジェイムズの言葉に付け足す。
「あぁ、こんな風に控えめに言っているが、この人はまもなく副署長に昇進するらしいから、きっと頼りになると思うよ」
「そ、そんなに持ち上げないでくれるか? そもそもあなたのおかげの特例昇進でもあるし、古手の反感だって買いかねないから、最初は地固めしなきゃな忙しい毎日が待ってるんだ」
自身の昇進は素直に嬉しいジェイムズ。はにかみそうな表情に慌てて手柄をすり替え、苦労話で押し包む。そんな状況が想像できたジンは苦笑いで同意を返す。
「あ、まぁ、そうだろうな。心の中だけで応援しているよ」
「それもあるから、署のパーティーに友人として参加してほしかったんだが、色好い返事をくれてないじゃないか?」
話題転換に成功するジェイムズの舌の勢いは止まらない。余計な苦労話まで漏らしてしまう。
「え? そういう裏があったんだ」
「あ、しまった!」
「それにいつから友人になったの?」
「おっと、冷たいなぁ。一緒に死地を潜り抜けた間柄じゃないですか? それにあなたが友人という触れ込みはオレの立ち位置にもいい影響があるんだ。署内でのあなたの人気はすごくて皆暇さえあれば、あの銃撃戦についてそれぞれの視点から見た活躍話で華が咲くんだ。しかも警察トップとも知り合いなんて何から何までスゴすぎるってのが皆の共通見解なんですよ」
逆襲の如く、不意に褒められると、褒められ慣れないジンは慌てるばかりだ。
「え? えーっ! いや警察トップなんて偶々の人の伝手だし、あのときはそんなにたくさんの目があったっけ? あー、マコト? パパはやっぱり大失敗。派手にやらかしたっぽい」
いろんな状況を振り返るジンの視点は忙しく迷走。いつもはもっと冷静なジンだが、今日は珍しく見せてくれるその狼狽え振りの面白さ。一頻り満喫したマコトはフォローの言葉を返す。
「アハハ。まぁ、いいんじゃない? 悪い話なわけじゃないんだから」
「まぁ、そうなんだけど……」
「わっはっはっは。相変わらずお嬢ちゃんはしっかりしているんだな?」
イルの住まいのギャング襲撃事件から前回ジェイムズが来訪した隕石落下の明けた朝まで、数回顔を合わせて苦言も交わせば、マコトのなんとなくな人となりは認識されている。
「もぅジェイムズさん、いい加減お嬢ちゃんはないんじゃない? マコって呼んでください」
「あぁ、すまないすまない。マコちゃん? 今日は黒髪黒目なんだね」
前回、金髪碧眼を目撃されてしまったマコト。それまでの黒髪黒眼状態をコスプレ好きでごまかしていたから僅かに驚くが、慌てる素振りは見せずに返す。
「うん、今日はパパルックなんだ」
「そうかそうか。うん今日も可愛らしい。また少し大人びて賢さも一段と増した気がするよ」
「エヘヘ、そうかな? ありがとう」
以前は可愛らしいと褒められると、嬉しさとそれを認める恥ずかしさと、純粋に照れてしまうことから、うまく返せなかったマコト。しかし今なら素直にありがとうと返せる成長を見せる。
自身から話題が逸れたジンは、ふと我に返り、話の本線を思い起こして、切り出す。
「あー、えーと、話が脱線したけど、話を戻していいかな?」
「あ、すまない。どうぞ、続けて」
そこでザックが割り込むように口を開く。
「あ、ジェイムズさんと仰るんですね。未来が今よりも明るいことがわかって嬉しいです。でも、もう少し早くお知り合いになれていれば……」
「ん? どういうことだ?」
「あぁ、ジェイムズ。実はここからが本題なんだ」
そこから、ジンは武器の件を伏せた、今日のこれまでの経緯をジェイムズに説明した。
……
「大体状況は飲み込めたよ」
「そこで、ジェイムズ? 要点は3つ。1つめは、彼らは事前に食い止めたから、まだ何もやっていない。ただの善良な市民だ。それで問題ないよね?」
「あぁ、問題ない」
「2つめ。市長に彼ら原住民の現状を伝えたい。これが可能かどうか。またはもしも方法が複数あって、一番効果的な方法があるならそれを教えて欲しい」
「3つめ。2つめがうまくいったとしてもこれからもその悪辣役人の猛威は止まらないし、ぐずぐずしてる間にまた犠牲者が生まれることになる。これをなんとかする方法がないかだ。オレ的には立ち直れないほどにぶちのめしたい位の憤りを感じている。何か妙案はないかな?」
市長に関しては良い返答を持ち合わせるのか、ジェイムズの表情は余裕と自信に満ちていた。
「そうだな。まず2つめの市長。これはオレから話せなくもないが、もっといい方法がある」
「おっ! それはなんだ?」
「あぁ実はな、市長もギャング壊滅の立て役者であるあなたの大ファンでな。逆に会わせて欲しい、なんてお願いされてるんだ。まぁ、オレも少々大袈裟に盛った部分もあるんだが」
与り知らぬところで話題にされ、しかも誇張報告と聞けば、驚きも隠せず、心中穏やかではいられないジン。膨れっ面で苦言を返す。
「えぇぇっ? もぉ……ジェ・イ・ム・ズ! 一体なんて事を。まったくもぉ。んーーんっ」
「まぁまぁ、これを利用すれば直接話ができるわけだし願ったり叶ったりではないか?」
したたかなジェイムズは自信満々に今の利点に繋げる。ジンは渋々受諾する。
「んー、じゃあ、期せずして会えるわけね?」
「そ! ナイスでしょ?」
「ったく。どれだけ盛られてるのかは、あとでちゃんと説明してくださいよ」
「承知した!」
ジェイムズとの会話の区切りを見届けると、ジンはするりとザックに向き直る。
「ザック? 市長が本当に人格者であるならキチンと話せば活路も見えるはずなんだよね?」
「おそらく」
「じゃあ、その言葉を信じて、あなた達の今回に関する問題は解決とみていいかな?」
「はい、そこさえ何とかなるのなら、充分です。死ななくて済むのだから、また家族にも会えるんですね? 本当になんてお礼を言って良いのか」
ジンは問題点の一つの解決に安堵の息を吐き、ザックの瞳に希望の光が差し込まれたような、そんな印象を感じ取ると、嬉しい思いから、頬の緊張が緩み、思いを柔らかに吐き出す。
「うん。まぁ、これから先もまだまだ大変だろうけど、なんかあったらこれからはジェイムズも力になってくれると思うしね。命を諦める選択はもうダメだよ? あぁ、本当に良かった」
「本当にありがとう。こんなにスムーズにことが運ぶなんて……いまだに信じられないよ。それに、うん。命は地球より重い、だよね?」
「そうだ。それを学習、認識できたことが、今回の最大の成果かもね? はい、じゃあ3つめの件。こっちはどうしてくれようか? 彼らを苦しめるヤツらを野放しにしておくことが一番許せない。それでなくともヤツらは日本人の血税から絞り出した援助のお金を横領し……ん? 待てよ? そ、そうか! それならオレ達日本人もれっきとした被害者か。その思いを踏みにじってもいるわけだ。うん、その線で攻めるなら、正攻法で最も効果の高い報復ができそうだな? あいつらは間接的だが何人もの弱者を死に至らしめている。一切の遠慮も不要だな」
突破口を見つけたジンは、生き生きとした瞳で、話すピッチも速くなる。やや悪巧みな悪戯を仕掛ける子どものようにも見える。そんな変化を捉えたジェイムズが尋ねる。
「お? 何か仕掛けるのか?」
「あぁ、ジェイムズ? これ、何とかして証拠を押さえられないかな?」
「それなんだが、さっきも言ったように、上向けの報告は体裁を整えているのか、特に問題が起こってるような報告もないみたいなんだ。だから市長も問題なく業務が行われていると思っている。さっきの話にもあったように、下からの直訴があっても、届かないようきっちりガードしているから、市長が真実を知る機会は失われていることになるな」
尻尾を掴もうと現場事情に詳しいジェイムズに尋ねるが、そう簡単には掴ませては貰えないことを知る。それならそれで、と別のやり方に行き当たるジン。
「あーーっ、そういう隠蔽の構造ができあがっているのか。……いや待てよ。公のお金が動いてるんだ。マルサじゃないが、外務省かどこか、然るべき部署を動かして、抜き打ちで調査させれば、到底、誤魔化せる金額ではないはず。可能なら3ヶ月くらい潜伏調査させられれば、より完璧か。ただ対国家だと難しいかもだが、市が相手なら融通が利き……ぶつぶつ……」
すっかり悪い顔をしているジン。悪巧みにのめり込むジンの様子を目の当たりにする周囲の者は若干引き気味に見えるが、そんな構想内容を耳にして驚きが隠せないジェイムズ。
「そんなことができるのか?」
「あぁ、そういう道筋なら、相手の首元に噛み付くくらいはできそうじゃないか?」
「いや、そういうことを言ってるんじゃない。そんなことができるのは、自分か、かなり近い存在に、相応の力を振るえる誰かがいなければ成立しない話だと思うんだが」
「え? あぁ、まぁ、外務省に知り合いがいて警察のトップとの繋がりも持てたわけなんだ」
どっぷりのめり込んでいたお陰で僅かではあるがうっかり素性の片鱗を晒してしまうジン。ジェイムズの指摘に慌てながらも取り繕うが、また一歩、確信を深めるジェイムズだった。
「おぉ、やはりそういうパイプがあるんだな? いや、まだ隠してることがあるんだろう?」
「あ、いやぁ、まぁ、そんなものだよ」
「ふーむ。まぁ、今はそういうことにしておきましょうか」
「何? パパ」
「今日、空港でジェイムズを見かけた気がしたんだ。さっきの話で警察官が同行しているのなら、もしかしたらジェイムズが乗っている可能性があると思うんだ。見てきてくれないか?」
「そうか、そういえば空港でマコも見かけた気がするよ。うん、今、ミニ琴でイルに説明してる。イルに機内を歩いてもらって琴は透過状態で、2人の目で探してみるよ。マコも行くから3人の目かな? でもイルがいれば、髪色でジェイムズが気付いてくれるかもしれないしね」
琴とは、オーラで創り出されたマコトの分身体の呼称。ミニ琴とは、オーラゆえに伸縮自在で、この場合は1/12スケールサイズくらいの分身体を暗黙的にそう呼んでいる。
「おぉ、さすがはマコトだな。もしもいたなら、オレが話したがってた、って言ってうまく連れてきて欲しいんだ。こっちの状況は悟られないように気を付けて欲しい。できそうか?」
「いいよ。いたならバッチリ連れてきてあげる。今すぐ行ってくるからちょっと待っててね」
「あぁ、頼んだぞ」
パタパタと客室に戻っていくマコト。その可愛らしさに目を奪われているサトルを横目に、ジンは説明を始める。
「あぁ、ジェイムズってのは、そのギャング事件の中心になった警察官なんだ。あの事件で昇進も決まったらしく、ちょっと融通が利きそうだから、事情を説明して相談しようと思う。そこで銃のことはいったん伏せておくから、漏らさないように頼むよ」
ザックとその配下の面々は、警察官、という言葉に、一瞬、緊張を走らせる。が、ギャング事件と聞いて、抱く不思議な親近感に緊張感はほどなく解かれる。
「あ、あぁ、ギャング事件のか……わかった。あなたは警察にも顔が利くんだな」
「あぁ、まぁ、たまたまギャング事件のときに協力してもらったからね。まぁ、それだけなんだけど、向こうが勝手に興味を持ってくれてるんだ。個人的には警察関係は苦手なんだけど、いつかは自分の救いにもなる可能性もあるし、敢えて無碍にすることもないからね」
ふと、隔てるシールドをすり抜ける、透過率100%、妖精サイズの琴。誰の目にも見えないが、ジンだけはそのオーラの接近に気付く。ふわりとジンの肩に着地しジンの左耳で囁く。
「パパ、いたいた、今連れてくるね」
「お、琴か? わかった。ほっ、いてくれて良かった」
サトルは思った。『なぜか、小さいけれど、マコちゃんの声が聞こえた気がする。いや、ジンさんも会話のような素振り? う、うん? トランシーバーでも使ってるのかな?』
「さっき言ったジェイムズが居たそうだ。今来るからくれぐれも発言には気をつけてな?」
「わかった」
するとマコトに伴われ、ひとりの男が入ってきた。
「やぁ、ジェイムズ。ご足労ありがとうございます」
「お久しぶりです。ミスターイチノセ。奇遇ですね。こんなところで何をしてるんですか?」
「あぁ、ちょっと大事な話があって。それとちょっとお力を拝借できないかと思いましてね」
「ほぅ、私なんかがお役に立てるのなら、何なりと……と、それよりも、こちらの方達は?」
やや訝しげな目でザック達を見やるジェイムズ。正体不明の集団に向ける目は、警察官の職業的なそれだった。ザック達はその圧に気圧される。
「あぁ、そのお力を借りたいことの元でちょっとした相談事を彼らから受けているんですよ」
助けを求める集団であると認識したジェイムズは、ふっと表情を緩め、柔らかな目で見回す。ザック達は、なぜか止まっていた息を再開し、安堵の息を漏らす。
「なるほど、で、その御用の向きはどのようなものですか?」
「あぁ、その前にいくつか質問させてください」
「はい、いいですよ」
まずはジェイムズの搭乗目的や立ち位置、差別などに対する考え方、そして何よりも信頼に足る人物かなどを明らかにしておく必要があるとジンは考え、つらつらと質疑を交わす。
「今日はお仕事で搭乗されたのですか?」
「はい、警護任務を仰せつかったので、今もある意味勤務中なんですよ」
「え? それはどなたの警護ですか?」
「我々の市の市長ですよ」
もしも突撃していたら、この人と争っていたかもしれないことを想像してしまうザック達。『助かったぁ~』と心で呟きながら、みな目と口がへしゃげている。
「え? 市長とはそれほどに偉い役職なんですか? 日本じゃ考えられない高待遇ですね」
「あ、いや、そんなことはないんだが、最近きな臭い噂が多いらしくてな」
「ほぉ、きな臭い……それはどんな噂ですか?」
「生活が成り立たない輩がそれを市長のせいだと襲うかその手前の小競り合いが多いらしい」
ザック達は、自分達のことだと冷やり顔でお互いを見合わせる。
「なるほど、その市長さんは、そんな恨みを買うような人物なんですか?」
「いやオレは仕事柄、話す機会も少なくないんだが、稀にみる、できた人物だと思ってるよ」
「んん? それなら、誰がそんな噂があるって言ってるんですか?」
「あぁ、それは市の役人達さ。オレはあまり好かん連中だがな」
ザックの言とジェイムズの話が大筋で一致していること、感情面でジェイムズが同じ方向性であること、などを確認できたジンは、確証が深まり本腰を入れての本気の対策に乗り出す。
「ほぉ、ところで私も詳しくはないんですが、アフリカ南部は人種差別が激しいところと聞いていますが、ジェイムズは白人ですよね? あなた自身はどのように考えていますか?」
ここからが本題だ。慎重に言葉を選びながら、ジンは質問を紡ぎ出し投げ掛ける。人種差別や白人のワードに一瞬だが眉に反応が認められる。意図が見透かされたかもしれない。
「うーん、先程からの問答はその辺を聞き出したいからか? そちらは原住民なんだろう?」
ジェイムズの職業柄、まだザック達の素性を明かせないジンは、少しだけ話を濁す。
「まぁ、そういう側面もありますが、私自身の認識が浅いため、地元に根付いた仕事をしているジェイムズにお聞きしたかったわけですよ」
「ふむ。そうか。オレは前にも言ったように、不正は許せない性質でな。そこに人種って境界線を加えると正しい判断はできなくなってしまうと思っている。白人の皆がみんな、そうであるとは限らないんだが、とかく白人の中に根付いている差別の心は腹立たしいと思っている」
方向性一致の精度のさらなる高まりに思わず顔が綻び頷きを返すジン。ジェイムズは続ける。
「さらには白人の一部に蔓延っている不正や弾圧、迫害。許し難いにもほどがあるんだが、そいつらは巧妙でなかなか尻尾を掴ませない。イライラしてくるよ。同じ人間なのに、神様かと思うほどの理不尽な偉さを振りまいている。考えただけでもヘドが出るよ」
「思ってたよりもずっといい人間だったんだな? 考えが重なりすぎて怖いくらいだよ。あなたがそういう人間だとわかって嬉しいよ」
これまで警察官という職業に何となくな一線を引いていたジンだったが、話してみれば安心この上ない人物と知れて、心の境界線は霧散したようだ。ジェイムズに心からの笑みで返す。
「おぅ、そうか? って、今までどんな人間だと思ってたんだ? まぁいいが……ただな、いくら理不尽でも、法で定められていることには従うしかないんだ。法を守り守らせるのが警察官の仕事だからな。だから、それが不平等な天秤でも、法に触れるのなら、弱者をしょっぴかなくてはならない場面もある。腹立たしいことだがな」
「うん。でも、警察官とはそうでなくてはならないよ。それでも、それとは異なる正義の天秤を心に持ち、その違いによる葛藤に心を痛める。ジェイムズ? あなたは素晴らしいよ。そのままの気持ちを忘れないで警察トップを目指して欲しいな」
「だからこそ、警察ではないからこそ振るえる正義の行動。ミスターイチノセ。あなたが元警察署長を引きずりおろしたあの手腕。ホントによくやってくれたと思う。まぁ、ギャング壊滅への立ち居振る舞いもすごかったがな」
自身の嬉しさの高まりに重ねて、ジェイムズに最大のエールを贈ったジンだったが、ジェイムズだって黙ってはいなかった。ギャング壊滅など、大賞賛の逆襲を受け、タジタジのジン。
「うっ、まぁまぁ、もうそれはそのくらいで……」
「ハハハハ、まぁ、そこを弄るくらいしか、あなたに勝る要素はないんだから、諦めてくれ」
「ぐっ」
してやったりなジェイムズ。趣を理解したことで、今度はザックたちに向けてエールを贈る。
「それとそちらのあなた達。今はまだ辛いことも多いと思うが、腐ったり、諦めたり、負けるんじゃないぞ。まだまだゆっくりとではあるが、そう遠くない未来にはきっと良い時代はやってくるからな。根気よく生きていくんだぞ」
強面の現職警察官からのまさかの不意打ちエールに驚くザックたち。今はまだ不遇な最中《さなか》でも兆しは確かに見えるからもう少しだ、頑張れ! と、温かい手が背中を押し留めてくれる、そんな言葉に少しだけ勇気の火が灯る。涙腺は僅かに拡がり、言葉の主を瞳に映そうとするが、瞬き忙しく視点が留まらない。瞳を滲ませながら謝意を述べるザック。
「うぅ、ありがとう。世の中まだまだ捨てたものじゃないんだな。あなたみたいな人が警察にもいるんですね?」
「あぁ、困ったことがあったらぜひ頼ってくれ。状況によっては、まだできないことも多いかもしれないが、力になれることは少なくないと思うぞ?」
更なる心強さを帯びた言葉にザックたちの多くは涙腺瓦解、頷きを何度も繰り返す。
関係の深まりによしよしと頷きながら、ジンはジェイムズの言葉に付け足す。
「あぁ、こんな風に控えめに言っているが、この人はまもなく副署長に昇進するらしいから、きっと頼りになると思うよ」
「そ、そんなに持ち上げないでくれるか? そもそもあなたのおかげの特例昇進でもあるし、古手の反感だって買いかねないから、最初は地固めしなきゃな忙しい毎日が待ってるんだ」
自身の昇進は素直に嬉しいジェイムズ。はにかみそうな表情に慌てて手柄をすり替え、苦労話で押し包む。そんな状況が想像できたジンは苦笑いで同意を返す。
「あ、まぁ、そうだろうな。心の中だけで応援しているよ」
「それもあるから、署のパーティーに友人として参加してほしかったんだが、色好い返事をくれてないじゃないか?」
話題転換に成功するジェイムズの舌の勢いは止まらない。余計な苦労話まで漏らしてしまう。
「え? そういう裏があったんだ」
「あ、しまった!」
「それにいつから友人になったの?」
「おっと、冷たいなぁ。一緒に死地を潜り抜けた間柄じゃないですか? それにあなたが友人という触れ込みはオレの立ち位置にもいい影響があるんだ。署内でのあなたの人気はすごくて皆暇さえあれば、あの銃撃戦についてそれぞれの視点から見た活躍話で華が咲くんだ。しかも警察トップとも知り合いなんて何から何までスゴすぎるってのが皆の共通見解なんですよ」
逆襲の如く、不意に褒められると、褒められ慣れないジンは慌てるばかりだ。
「え? えーっ! いや警察トップなんて偶々の人の伝手だし、あのときはそんなにたくさんの目があったっけ? あー、マコト? パパはやっぱり大失敗。派手にやらかしたっぽい」
いろんな状況を振り返るジンの視点は忙しく迷走。いつもはもっと冷静なジンだが、今日は珍しく見せてくれるその狼狽え振りの面白さ。一頻り満喫したマコトはフォローの言葉を返す。
「アハハ。まぁ、いいんじゃない? 悪い話なわけじゃないんだから」
「まぁ、そうなんだけど……」
「わっはっはっは。相変わらずお嬢ちゃんはしっかりしているんだな?」
イルの住まいのギャング襲撃事件から前回ジェイムズが来訪した隕石落下の明けた朝まで、数回顔を合わせて苦言も交わせば、マコトのなんとなくな人となりは認識されている。
「もぅジェイムズさん、いい加減お嬢ちゃんはないんじゃない? マコって呼んでください」
「あぁ、すまないすまない。マコちゃん? 今日は黒髪黒目なんだね」
前回、金髪碧眼を目撃されてしまったマコト。それまでの黒髪黒眼状態をコスプレ好きでごまかしていたから僅かに驚くが、慌てる素振りは見せずに返す。
「うん、今日はパパルックなんだ」
「そうかそうか。うん今日も可愛らしい。また少し大人びて賢さも一段と増した気がするよ」
「エヘヘ、そうかな? ありがとう」
以前は可愛らしいと褒められると、嬉しさとそれを認める恥ずかしさと、純粋に照れてしまうことから、うまく返せなかったマコト。しかし今なら素直にありがとうと返せる成長を見せる。
自身から話題が逸れたジンは、ふと我に返り、話の本線を思い起こして、切り出す。
「あー、えーと、話が脱線したけど、話を戻していいかな?」
「あ、すまない。どうぞ、続けて」
そこでザックが割り込むように口を開く。
「あ、ジェイムズさんと仰るんですね。未来が今よりも明るいことがわかって嬉しいです。でも、もう少し早くお知り合いになれていれば……」
「ん? どういうことだ?」
「あぁ、ジェイムズ。実はここからが本題なんだ」
そこから、ジンは武器の件を伏せた、今日のこれまでの経緯をジェイムズに説明した。
……
「大体状況は飲み込めたよ」
「そこで、ジェイムズ? 要点は3つ。1つめは、彼らは事前に食い止めたから、まだ何もやっていない。ただの善良な市民だ。それで問題ないよね?」
「あぁ、問題ない」
「2つめ。市長に彼ら原住民の現状を伝えたい。これが可能かどうか。またはもしも方法が複数あって、一番効果的な方法があるならそれを教えて欲しい」
「3つめ。2つめがうまくいったとしてもこれからもその悪辣役人の猛威は止まらないし、ぐずぐずしてる間にまた犠牲者が生まれることになる。これをなんとかする方法がないかだ。オレ的には立ち直れないほどにぶちのめしたい位の憤りを感じている。何か妙案はないかな?」
市長に関しては良い返答を持ち合わせるのか、ジェイムズの表情は余裕と自信に満ちていた。
「そうだな。まず2つめの市長。これはオレから話せなくもないが、もっといい方法がある」
「おっ! それはなんだ?」
「あぁ実はな、市長もギャング壊滅の立て役者であるあなたの大ファンでな。逆に会わせて欲しい、なんてお願いされてるんだ。まぁ、オレも少々大袈裟に盛った部分もあるんだが」
与り知らぬところで話題にされ、しかも誇張報告と聞けば、驚きも隠せず、心中穏やかではいられないジン。膨れっ面で苦言を返す。
「えぇぇっ? もぉ……ジェ・イ・ム・ズ! 一体なんて事を。まったくもぉ。んーーんっ」
「まぁまぁ、これを利用すれば直接話ができるわけだし願ったり叶ったりではないか?」
したたかなジェイムズは自信満々に今の利点に繋げる。ジンは渋々受諾する。
「んー、じゃあ、期せずして会えるわけね?」
「そ! ナイスでしょ?」
「ったく。どれだけ盛られてるのかは、あとでちゃんと説明してくださいよ」
「承知した!」
ジェイムズとの会話の区切りを見届けると、ジンはするりとザックに向き直る。
「ザック? 市長が本当に人格者であるならキチンと話せば活路も見えるはずなんだよね?」
「おそらく」
「じゃあ、その言葉を信じて、あなた達の今回に関する問題は解決とみていいかな?」
「はい、そこさえ何とかなるのなら、充分です。死ななくて済むのだから、また家族にも会えるんですね? 本当になんてお礼を言って良いのか」
ジンは問題点の一つの解決に安堵の息を吐き、ザックの瞳に希望の光が差し込まれたような、そんな印象を感じ取ると、嬉しい思いから、頬の緊張が緩み、思いを柔らかに吐き出す。
「うん。まぁ、これから先もまだまだ大変だろうけど、なんかあったらこれからはジェイムズも力になってくれると思うしね。命を諦める選択はもうダメだよ? あぁ、本当に良かった」
「本当にありがとう。こんなにスムーズにことが運ぶなんて……いまだに信じられないよ。それに、うん。命は地球より重い、だよね?」
「そうだ。それを学習、認識できたことが、今回の最大の成果かもね? はい、じゃあ3つめの件。こっちはどうしてくれようか? 彼らを苦しめるヤツらを野放しにしておくことが一番許せない。それでなくともヤツらは日本人の血税から絞り出した援助のお金を横領し……ん? 待てよ? そ、そうか! それならオレ達日本人もれっきとした被害者か。その思いを踏みにじってもいるわけだ。うん、その線で攻めるなら、正攻法で最も効果の高い報復ができそうだな? あいつらは間接的だが何人もの弱者を死に至らしめている。一切の遠慮も不要だな」
突破口を見つけたジンは、生き生きとした瞳で、話すピッチも速くなる。やや悪巧みな悪戯を仕掛ける子どものようにも見える。そんな変化を捉えたジェイムズが尋ねる。
「お? 何か仕掛けるのか?」
「あぁ、ジェイムズ? これ、何とかして証拠を押さえられないかな?」
「それなんだが、さっきも言ったように、上向けの報告は体裁を整えているのか、特に問題が起こってるような報告もないみたいなんだ。だから市長も問題なく業務が行われていると思っている。さっきの話にもあったように、下からの直訴があっても、届かないようきっちりガードしているから、市長が真実を知る機会は失われていることになるな」
尻尾を掴もうと現場事情に詳しいジェイムズに尋ねるが、そう簡単には掴ませては貰えないことを知る。それならそれで、と別のやり方に行き当たるジン。
「あーーっ、そういう隠蔽の構造ができあがっているのか。……いや待てよ。公のお金が動いてるんだ。マルサじゃないが、外務省かどこか、然るべき部署を動かして、抜き打ちで調査させれば、到底、誤魔化せる金額ではないはず。可能なら3ヶ月くらい潜伏調査させられれば、より完璧か。ただ対国家だと難しいかもだが、市が相手なら融通が利き……ぶつぶつ……」
すっかり悪い顔をしているジン。悪巧みにのめり込むジンの様子を目の当たりにする周囲の者は若干引き気味に見えるが、そんな構想内容を耳にして驚きが隠せないジェイムズ。
「そんなことができるのか?」
「あぁ、そういう道筋なら、相手の首元に噛み付くくらいはできそうじゃないか?」
「いや、そういうことを言ってるんじゃない。そんなことができるのは、自分か、かなり近い存在に、相応の力を振るえる誰かがいなければ成立しない話だと思うんだが」
「え? あぁ、まぁ、外務省に知り合いがいて警察のトップとの繋がりも持てたわけなんだ」
どっぷりのめり込んでいたお陰で僅かではあるがうっかり素性の片鱗を晒してしまうジン。ジェイムズの指摘に慌てながらも取り繕うが、また一歩、確信を深めるジェイムズだった。
「おぉ、やはりそういうパイプがあるんだな? いや、まだ隠してることがあるんだろう?」
「あ、いやぁ、まぁ、そんなものだよ」
「ふーむ。まぁ、今はそういうことにしておきましょうか」
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