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第13話 海面の敵
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改めて男の身体を診て判明したいくつかの事実をソフィアが語り始める。
「この男、なんだか異能が使える能力者を謳っていたけど、おそらく静電気を少し変化させられるくらいのチンケな能力者な気がするわ」
「なんかわかったのか?」
「うーん。詳しくは、その手の研究所にでも調べてもらう必要はあるけれど、想像だけど、あるときそんな静電気を制御できることに気付いたこの人は、その力を増幅させることを思い付いたんだと思うわ。この義足の中身は歩くための精密な仕組みもあるみたいだけど、それとは別に服を通して、バッテリーの出力を腕まで流す仕組みになっているように思えるもの」
「なるほど、それなら義足を外すだけで、歩けず大した能力も発揮できないというわけか。しかしそんなことができるもんなんだな? これは研究の価値があるかもしれないな。オレの同期に生体工学専門で国の機関に所属するやつがいるから、そいつに解析させてみるか」
「それがいいかもね。できれば同じようなヤツがいた場合の対処法まで教えてもらたいわ」
「そうだな。そうするか。ただオレ達のことをどこまで話すかは少し悩ましいが。ウーン」
また、この義足を持ち上げ、靴の踵と、靴を外して踵部分の装置を見せながら説明を加える。
「あとこの義足、たぶんロケットみたいな噴出装置が付いてると思うわ。さっきまでの会話からも、この飛行機が爆発しても、逃げる算段があったのじゃないかしら?」
「そういえば、オレを仲間に引き込む発言や、マコトを連れ帰るようなことを言ってたな。ということは、なんとかこの飛行機を飛び出せたら、ロケットの噴出装置で着水、または船があれば、直接着艦もできるのかもな? 待てよ? その推測が合っているなら、今この下辺りに仲間の船がいるってことになるな。あぁ、そういえば、この男が動き出す直前、しきりに時間や外の様子を気にしていたのはそういうことだったんだな?」
ジンは記憶を振り返り、男の逃走方法に一定の辻褄合致から、海面へと警戒心を向け直す。が、この速度と高さゆえに不安は少ないと思い直し、安堵の息を漏らしながら続けた。
「でもまぁ、ここから海面の船を特定なんてできないし仮にできても手を出しようがないな。それは向こうも同じで、この高高度飛行中の航空機を撃墜できるランチャーなんてある訳ないから、まぁ、逃げるに限るな。ただそれでも撃ってこない保証はないから注意しておこう」
そんなジンの言葉を聞いたマコトから、不意を突く言葉が飛び出る。
「あぁ、それならマコがやろうか? なんかできそうな気がするんだ」
「え? どういうことだ、マコト?」
「あぁ、前にパパとやった魔法の修練で、円錐形の探索方法を海に向けてやるんだよ」
「ああ、あれか。でもこの高さだぞ? 届くのか?」
円錐状の探索方法とは、以前オーラを紐状に伸ばして周囲に回転させ、オーラに触れるものを感知する2次元レーダーのようなものを修練したその改良版のこと。新体操のリボンのように上方に円錐状に回転させる方式で、ある程度方向を特定できた場合に、その方向に絞った、より遠方の精細な探知を可能とする方法で、ここではそれを下方に向けて放つらしいが、オーラを伸ばすにもその距離には限度がある認識だ。
「うんたぶん。なんかさっきの戦いから力が漲ってて、やれそうな予感があるんだ」
「そ、そうか。本当にできるのなら、その真の力? そっちも本当に覚醒したのかもしれないな? どれほどのことができるのか興味が沸いたから、やれるのならやってみて欲しいな」
「わかった。やってみる」
そういって、マコトは床に向けて右手を伸ばし、手のひらを当てる。静かに深呼吸して手のひらにオーラを集約。マコトの全身の表面は光っているわけでも色が付いているわけでもないが、透明な何かが右手に向かい、なんとなく空気が揺らぐ感覚を周囲に与える。マコトが纏うオーラも、周囲の空気もどちらも透明で、通常、普通の人にははまったく見えることはない。おそらくはオーラが身体の表面に沿って動くときの所々の拡縮による密度の変化が透過率や屈折率の変化を生んだ結果の見え方なのだろう。
それまで目に見えるものと実際に起こっていることが噛み合わず、ただ不可思議な感覚を呑み込むしかなかったジェイムズにも、すんなり受け止められるこの状況に感嘆の息が漏れる。
「おぉぉ!」
「じゃあやるよ?」
「あぁ、やってくれ」
ホンの一瞬、マコトの右手と接している床がふわりと光る。ともすれば、気付くこともなかったそんな瞬間を捉えることに成功したジェイムズは、嬉しかったのと、その感覚が間違っていないことを確かめたい意識から、わざわざ呟いてみた。
「コレがマコちゃんの力なんだな?」
「おぉ見えたのか? ジェイムズ。そうなら、知覚した今以降は見えやすくなるのかもな?」
「あぁ、ん? え? これからはオレにも見えるようになるってことか?」
「あー絶対とはいえないが、知覚したということは、今起こっている事象にジェイムズの意識が干渉できるように能力が向上した証なのかもしれないからな? まぁ、ジェイムズ次第さ」
「そ、そういうものなのか? いや、ちょっと嬉しいな、それは」
ジェイムズは、自身には能力はないが、少しでも近付けたかもしれない喜びを噛み締める。
今の状況はマコトからの声の報告から読み取るしかないのだが、ふとジンは気付く。マコトと同じように機外にオーラを展開し、分身を作成する要領でオーラに視覚を持たせられれば、海面の状況も見ることが可能なのではないのか、ということに。
『マコト? できるかわからないけど、機外にオーラを放って、海面に向けて視覚を得てみたいから、やってみるよ』
『あ、それいいかもね。ぜひやってみて、パパ』
『わかった。もしかしたら、この同調している念波でも見えるんじゃないかな?』
『あぁ、ジン、あの時みたいに映像が共有できるかも? って思ってるのね?』
『お、ソフィア? そうなんだ。ちょっと試してみたくなってね』
ソフィアは、ジンと出会った頃の同調している状態で思い描く映像が共有できた経験がある。
『それスゴくおもしろい。パパぜひぜひやって欲しいです。あ、パパ、毒は大丈夫なの?』
『あ、イル? 心配かけたね。もう大丈夫だよ』
『良かったです。状況はよくわからないけど、スゴいことができそうで楽しみ!』
後部座席にいるイルには状況が見えないから、念波で映像共有ができるのは嬉しいようだ。
『そうか、みんなも興味のある能力なんだな? できるときにいろいろな検証をたくさんやっておきたいとも思ってるんだ。話しながらも進めていて、よーし、下方が見えてきた。じゃあ視覚を共有してみるよ? ホイ。みんな見える?』
瞼を閉じると、念波を介して、ふゎーっと、映像が脳裏に浮かび上がってくる。
『あ、来た来た-。見えてきたよパパ。もしかして、マコのオーラセンサも映像共有できるのかな? みんなにも届け~、てい。どう? 見えた?』
『スゴいわね、マコちゃにジン。まるで2画面テレビよ? こんなこともできるのね?』
『スゴいスゴい。イルも感動です』
マコトのセンサー映像も念波に加わる。それぞれ別の映像なのだが、2画面と意識すれば、脳裏に2つの映像が並んで見えるらしい。
『想像以上の出来だな。ゾクゾクしてきた。イル? 今、海面にも敵の仲間がいるかもしれなくて、それを映像に捉えようとしているところなんだ』
『なるほど、イル了解です』
『じゃあ、マコトはこのまま続けてくれるか?』
イルを意識したマコトは、イルにだけ、この場の会話が聞こえないことに気付く。
『りょ。あ、イルは離れてて聞こえないか。マコの声もそのまま念波に乗せるね』
『お、オレもそうするよ』
『さすがマコちゃんとパパ、助かるなぁ。そんなこともできるんだね』
マコトから航空機の下方に向けたオーラは伸びて広がり、辺りのざっくりとした探索状況をキャッチすると、マコトの口から状況が語られる。
「うーんと、陸地なんて見えないくらい大海原だからか、あんまり船はいないみたいだけど、位置と方向的に可能性があるのは3隻かな?」
マコトは1隻ずつ、少し解像度を上げて、その状況を告げていく。ジンの視覚映像もオーラをできる限り伸ばしてみるが、オーラの伸長限度に達するためか、ある一定以上の拡大は難しいようだ。それでも辺りの海面の全容は掴める程度の映像は得ることができた。
『オレの視覚映像はこれが限度みたいだな』
『パパ、充分だよ。パパの視覚映像と合わせて見れるから、マコも視点をロストしにくくなって助かってるよ』
『お? そうか。嬉しい言葉を返してくれるね。もぉ、マコトはなんて可愛いんだ』
『あ! ニヒヒ。パパのそんな言葉は、マコの力も漲らせてくれるみたい。不思議だね』
『そ、そうなのか?』
マコトは海面の船の状況の報告を始める。
「1隻は大型客船で甲板にはたくさん乗客がいるけど、パパの視覚映像も合わせると怪しい感じはなさそう。他の2隻は小型ではない、たぶん漁船とクルーザー船っぽいね。漁船のほうは、昼は活動しないのか甲板には誰もいないね。やっぱり怪しいのはクルーザー船かな?」
最後に当たりを付けたクルーザー船で異常を検知し、細かな状況を語り始めるマコト。
「あ、当たりかな? 甲板で言い争ってるし、ランチャーっぽいのも……うん? 今真下付近を通過したからか焦ってるっぽい。あ、ランチャーを向けてきた。どうする? 阻止する?」
ジンは、マコトの詳細な報告と見える映像から、そんな行動にピクリと反応するが、今のこの速度、高度と離れつつある位置関係から、おそらくは何もできないであろうことを心の中で再確認する。しかしこちらからも何もできないはずなジンの概念をひっくり返すマコトの言葉に驚きつつも、何かもわからない期待だがその方法をマコトに尋ねずにはいられなかった。
「お? 何かできそうなのか?」
「あ、いろいろできそうだよ? なんなら琴を派遣もできるし、ランチャーを発射しそうなら、発射直前にロケット弾をオーラで包んでおければ、発射直後に向きを無理やり変えて船のスクリューにでもぶつければ、誰もケガさせないで漂流船が出来上がるよ?」
思わず状況を連想して、『ぷぷっ』と笑いを漏らすジン。マコトの発想はいつも自由で柔軟だ。しかも誰も傷付かない前提で、慌てふためくヤツラの姿がいかにもな想像を掻き立てる。もぅ誰に似たんだか? ここは遊び心満点なマコトのアイデアに乗らない手はないな、っと妄想を膨らませるジン。しかも相手が仕掛ける機に合わせるところもジンのポリシーにぴったりフィット。何があってもこちらに非が及ばないことも含めて、かなり秀逸なアイデアだった。
「お? それいいね? 専守防衛が成立するのなら、ミサイルが届こうが届くまいが反撃していい理由になる。まぁ発表できるものでもないからオレの自己満足なんだが。それに船が漂流してしまうのなら、誰かに助けられるにしても武器の存在は隠せないから助かるイコール捕まるということになる可能性も高いな。うんおもしろい。できるのならやっていいよ、マコト」
「了解。そう言うと思って、準備はOKだよ?」
「あ、ほら発射した。ほれ、軌道修正! アハハハ、慌ててる」
飛行機に向けて放たれたロケット弾は、一定距離離れたところで回頭し、弧を描いて大きく回り込みながら、海面スレスレを船の真横方向から船尾に向けて真っ直ぐに進入していく。船尾に限りなく近付いたところで海面に突っ込む。目標はスクリューだからだ。目標に見事命中し、スクリューを破壊、そのまま海中を進み20mくらい進んだところで爆発。信管に影響しないよう、スクリューをかすめて破壊しただけで本体には当てていない。船が浮かぶだけなら影響はなく、そのままでは不発弾となるロケット弾は、内部を発火して爆発させた状況だ。
「はい着弾。スクリューはお陀仏だね?」
「アハハハ、甲板の人達、一斉に海に飛びこんだ。まぁそりゃそうだよね。船体にぶつかったら爆発するか、しなくても船が沈むと思うのがフツーだもんね。マコが操縦してるなんて知る訳ないし、漂流だけで済ましてあげるんだから感謝して欲しいくらいだよね? アハハハ」
あっけらかんと話すマコトだが、その精緻なコントロールは凄まじいものだ。しかしそんな凄さにジン以外は気付くことはなかった。
「アハハハ、本当だな? でかしたマコト。というか、なんて緻密な誘導操作なんだ。それにしても本当に覚醒したんだな。いよいよこの驚異の力は誰にも知られるわけにはいかないな」
「この男、なんだか異能が使える能力者を謳っていたけど、おそらく静電気を少し変化させられるくらいのチンケな能力者な気がするわ」
「なんかわかったのか?」
「うーん。詳しくは、その手の研究所にでも調べてもらう必要はあるけれど、想像だけど、あるときそんな静電気を制御できることに気付いたこの人は、その力を増幅させることを思い付いたんだと思うわ。この義足の中身は歩くための精密な仕組みもあるみたいだけど、それとは別に服を通して、バッテリーの出力を腕まで流す仕組みになっているように思えるもの」
「なるほど、それなら義足を外すだけで、歩けず大した能力も発揮できないというわけか。しかしそんなことができるもんなんだな? これは研究の価値があるかもしれないな。オレの同期に生体工学専門で国の機関に所属するやつがいるから、そいつに解析させてみるか」
「それがいいかもね。できれば同じようなヤツがいた場合の対処法まで教えてもらたいわ」
「そうだな。そうするか。ただオレ達のことをどこまで話すかは少し悩ましいが。ウーン」
また、この義足を持ち上げ、靴の踵と、靴を外して踵部分の装置を見せながら説明を加える。
「あとこの義足、たぶんロケットみたいな噴出装置が付いてると思うわ。さっきまでの会話からも、この飛行機が爆発しても、逃げる算段があったのじゃないかしら?」
「そういえば、オレを仲間に引き込む発言や、マコトを連れ帰るようなことを言ってたな。ということは、なんとかこの飛行機を飛び出せたら、ロケットの噴出装置で着水、または船があれば、直接着艦もできるのかもな? 待てよ? その推測が合っているなら、今この下辺りに仲間の船がいるってことになるな。あぁ、そういえば、この男が動き出す直前、しきりに時間や外の様子を気にしていたのはそういうことだったんだな?」
ジンは記憶を振り返り、男の逃走方法に一定の辻褄合致から、海面へと警戒心を向け直す。が、この速度と高さゆえに不安は少ないと思い直し、安堵の息を漏らしながら続けた。
「でもまぁ、ここから海面の船を特定なんてできないし仮にできても手を出しようがないな。それは向こうも同じで、この高高度飛行中の航空機を撃墜できるランチャーなんてある訳ないから、まぁ、逃げるに限るな。ただそれでも撃ってこない保証はないから注意しておこう」
そんなジンの言葉を聞いたマコトから、不意を突く言葉が飛び出る。
「あぁ、それならマコがやろうか? なんかできそうな気がするんだ」
「え? どういうことだ、マコト?」
「あぁ、前にパパとやった魔法の修練で、円錐形の探索方法を海に向けてやるんだよ」
「ああ、あれか。でもこの高さだぞ? 届くのか?」
円錐状の探索方法とは、以前オーラを紐状に伸ばして周囲に回転させ、オーラに触れるものを感知する2次元レーダーのようなものを修練したその改良版のこと。新体操のリボンのように上方に円錐状に回転させる方式で、ある程度方向を特定できた場合に、その方向に絞った、より遠方の精細な探知を可能とする方法で、ここではそれを下方に向けて放つらしいが、オーラを伸ばすにもその距離には限度がある認識だ。
「うんたぶん。なんかさっきの戦いから力が漲ってて、やれそうな予感があるんだ」
「そ、そうか。本当にできるのなら、その真の力? そっちも本当に覚醒したのかもしれないな? どれほどのことができるのか興味が沸いたから、やれるのならやってみて欲しいな」
「わかった。やってみる」
そういって、マコトは床に向けて右手を伸ばし、手のひらを当てる。静かに深呼吸して手のひらにオーラを集約。マコトの全身の表面は光っているわけでも色が付いているわけでもないが、透明な何かが右手に向かい、なんとなく空気が揺らぐ感覚を周囲に与える。マコトが纏うオーラも、周囲の空気もどちらも透明で、通常、普通の人にははまったく見えることはない。おそらくはオーラが身体の表面に沿って動くときの所々の拡縮による密度の変化が透過率や屈折率の変化を生んだ結果の見え方なのだろう。
それまで目に見えるものと実際に起こっていることが噛み合わず、ただ不可思議な感覚を呑み込むしかなかったジェイムズにも、すんなり受け止められるこの状況に感嘆の息が漏れる。
「おぉぉ!」
「じゃあやるよ?」
「あぁ、やってくれ」
ホンの一瞬、マコトの右手と接している床がふわりと光る。ともすれば、気付くこともなかったそんな瞬間を捉えることに成功したジェイムズは、嬉しかったのと、その感覚が間違っていないことを確かめたい意識から、わざわざ呟いてみた。
「コレがマコちゃんの力なんだな?」
「おぉ見えたのか? ジェイムズ。そうなら、知覚した今以降は見えやすくなるのかもな?」
「あぁ、ん? え? これからはオレにも見えるようになるってことか?」
「あー絶対とはいえないが、知覚したということは、今起こっている事象にジェイムズの意識が干渉できるように能力が向上した証なのかもしれないからな? まぁ、ジェイムズ次第さ」
「そ、そういうものなのか? いや、ちょっと嬉しいな、それは」
ジェイムズは、自身には能力はないが、少しでも近付けたかもしれない喜びを噛み締める。
今の状況はマコトからの声の報告から読み取るしかないのだが、ふとジンは気付く。マコトと同じように機外にオーラを展開し、分身を作成する要領でオーラに視覚を持たせられれば、海面の状況も見ることが可能なのではないのか、ということに。
『マコト? できるかわからないけど、機外にオーラを放って、海面に向けて視覚を得てみたいから、やってみるよ』
『あ、それいいかもね。ぜひやってみて、パパ』
『わかった。もしかしたら、この同調している念波でも見えるんじゃないかな?』
『あぁ、ジン、あの時みたいに映像が共有できるかも? って思ってるのね?』
『お、ソフィア? そうなんだ。ちょっと試してみたくなってね』
ソフィアは、ジンと出会った頃の同調している状態で思い描く映像が共有できた経験がある。
『それスゴくおもしろい。パパぜひぜひやって欲しいです。あ、パパ、毒は大丈夫なの?』
『あ、イル? 心配かけたね。もう大丈夫だよ』
『良かったです。状況はよくわからないけど、スゴいことができそうで楽しみ!』
後部座席にいるイルには状況が見えないから、念波で映像共有ができるのは嬉しいようだ。
『そうか、みんなも興味のある能力なんだな? できるときにいろいろな検証をたくさんやっておきたいとも思ってるんだ。話しながらも進めていて、よーし、下方が見えてきた。じゃあ視覚を共有してみるよ? ホイ。みんな見える?』
瞼を閉じると、念波を介して、ふゎーっと、映像が脳裏に浮かび上がってくる。
『あ、来た来た-。見えてきたよパパ。もしかして、マコのオーラセンサも映像共有できるのかな? みんなにも届け~、てい。どう? 見えた?』
『スゴいわね、マコちゃにジン。まるで2画面テレビよ? こんなこともできるのね?』
『スゴいスゴい。イルも感動です』
マコトのセンサー映像も念波に加わる。それぞれ別の映像なのだが、2画面と意識すれば、脳裏に2つの映像が並んで見えるらしい。
『想像以上の出来だな。ゾクゾクしてきた。イル? 今、海面にも敵の仲間がいるかもしれなくて、それを映像に捉えようとしているところなんだ』
『なるほど、イル了解です』
『じゃあ、マコトはこのまま続けてくれるか?』
イルを意識したマコトは、イルにだけ、この場の会話が聞こえないことに気付く。
『りょ。あ、イルは離れてて聞こえないか。マコの声もそのまま念波に乗せるね』
『お、オレもそうするよ』
『さすがマコちゃんとパパ、助かるなぁ。そんなこともできるんだね』
マコトから航空機の下方に向けたオーラは伸びて広がり、辺りのざっくりとした探索状況をキャッチすると、マコトの口から状況が語られる。
「うーんと、陸地なんて見えないくらい大海原だからか、あんまり船はいないみたいだけど、位置と方向的に可能性があるのは3隻かな?」
マコトは1隻ずつ、少し解像度を上げて、その状況を告げていく。ジンの視覚映像もオーラをできる限り伸ばしてみるが、オーラの伸長限度に達するためか、ある一定以上の拡大は難しいようだ。それでも辺りの海面の全容は掴める程度の映像は得ることができた。
『オレの視覚映像はこれが限度みたいだな』
『パパ、充分だよ。パパの視覚映像と合わせて見れるから、マコも視点をロストしにくくなって助かってるよ』
『お? そうか。嬉しい言葉を返してくれるね。もぉ、マコトはなんて可愛いんだ』
『あ! ニヒヒ。パパのそんな言葉は、マコの力も漲らせてくれるみたい。不思議だね』
『そ、そうなのか?』
マコトは海面の船の状況の報告を始める。
「1隻は大型客船で甲板にはたくさん乗客がいるけど、パパの視覚映像も合わせると怪しい感じはなさそう。他の2隻は小型ではない、たぶん漁船とクルーザー船っぽいね。漁船のほうは、昼は活動しないのか甲板には誰もいないね。やっぱり怪しいのはクルーザー船かな?」
最後に当たりを付けたクルーザー船で異常を検知し、細かな状況を語り始めるマコト。
「あ、当たりかな? 甲板で言い争ってるし、ランチャーっぽいのも……うん? 今真下付近を通過したからか焦ってるっぽい。あ、ランチャーを向けてきた。どうする? 阻止する?」
ジンは、マコトの詳細な報告と見える映像から、そんな行動にピクリと反応するが、今のこの速度、高度と離れつつある位置関係から、おそらくは何もできないであろうことを心の中で再確認する。しかしこちらからも何もできないはずなジンの概念をひっくり返すマコトの言葉に驚きつつも、何かもわからない期待だがその方法をマコトに尋ねずにはいられなかった。
「お? 何かできそうなのか?」
「あ、いろいろできそうだよ? なんなら琴を派遣もできるし、ランチャーを発射しそうなら、発射直前にロケット弾をオーラで包んでおければ、発射直後に向きを無理やり変えて船のスクリューにでもぶつければ、誰もケガさせないで漂流船が出来上がるよ?」
思わず状況を連想して、『ぷぷっ』と笑いを漏らすジン。マコトの発想はいつも自由で柔軟だ。しかも誰も傷付かない前提で、慌てふためくヤツラの姿がいかにもな想像を掻き立てる。もぅ誰に似たんだか? ここは遊び心満点なマコトのアイデアに乗らない手はないな、っと妄想を膨らませるジン。しかも相手が仕掛ける機に合わせるところもジンのポリシーにぴったりフィット。何があってもこちらに非が及ばないことも含めて、かなり秀逸なアイデアだった。
「お? それいいね? 専守防衛が成立するのなら、ミサイルが届こうが届くまいが反撃していい理由になる。まぁ発表できるものでもないからオレの自己満足なんだが。それに船が漂流してしまうのなら、誰かに助けられるにしても武器の存在は隠せないから助かるイコール捕まるということになる可能性も高いな。うんおもしろい。できるのならやっていいよ、マコト」
「了解。そう言うと思って、準備はOKだよ?」
「あ、ほら発射した。ほれ、軌道修正! アハハハ、慌ててる」
飛行機に向けて放たれたロケット弾は、一定距離離れたところで回頭し、弧を描いて大きく回り込みながら、海面スレスレを船の真横方向から船尾に向けて真っ直ぐに進入していく。船尾に限りなく近付いたところで海面に突っ込む。目標はスクリューだからだ。目標に見事命中し、スクリューを破壊、そのまま海中を進み20mくらい進んだところで爆発。信管に影響しないよう、スクリューをかすめて破壊しただけで本体には当てていない。船が浮かぶだけなら影響はなく、そのままでは不発弾となるロケット弾は、内部を発火して爆発させた状況だ。
「はい着弾。スクリューはお陀仏だね?」
「アハハハ、甲板の人達、一斉に海に飛びこんだ。まぁそりゃそうだよね。船体にぶつかったら爆発するか、しなくても船が沈むと思うのがフツーだもんね。マコが操縦してるなんて知る訳ないし、漂流だけで済ましてあげるんだから感謝して欲しいくらいだよね? アハハハ」
あっけらかんと話すマコトだが、その精緻なコントロールは凄まじいものだ。しかしそんな凄さにジン以外は気付くことはなかった。
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