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第30話 到着、歓喜、そして
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マコトもそうだが、ソフィアはその意識を分身体のソアに移しての行動だった。魔女は身体の外側に溢れ出るオーラを操ることで特殊な力を発揮する。魔力の行使は、母体となる身体を基点に生体エネルギーであるオーラを外部に展開させて行うが、大いなる力を振るえる代わりに、勢い余ってオーラの全てが身体から出ていくことは生体エネルギーの枯渇、そう、言い換えるなら、抜けきった身体は死んだも同然の状態となる。それゆえに、魔女は自身のオーラの総量を認識し、決して抜けきることのないよう制御することは、魔女の魔女たる基本中の基本とも言える心構えでもある。
今、緊急時だったとはいえ、自身の制御限界を、抑止する暇も、抗うほどの力も不足する状態で、咄嗟に上方移動するマコトにより強引に突破させられたソフィア。もはや意識さえ保てないほどの状態で、屍のごとくぐったりとしていた。分身体が姿を保っている今は、辛うじて生を繋ぎ止めている状態とも言えるが、それも時間の問題だ。
『何が起こってるの? とにかく急いで戻らなきゃ』
軍事衛星をちらりと見やった次の瞬間には、ソフィアを抱え、猛速で旅客機に向かうマコト。
『パパ、パパ、大変、ママが……あれ? パパ、聞こえる? あれ? まさか遠く離れすぎたの? だからママも……』
この異常な状況をジンに伝えようとするが、無反応は、より事態の深刻さを心に刻みこむ。
「あ! そういえば、ママからもパパからも、オーラが抜けきることは生体エネルギーが枯渇することと同じ、枯渇は即ち死を意味する、って聞いた記憶がある。マコはなんてことを……とにかく急がなきゃ」
急いではいるが、焦っていては出せる力も出せないことをジンの時に学んだばかりのマコト。
「オーラはまだ繋がってる。マコのオーラで補強! あとマコのエネルギーをソアに注入!」
旅客機のソフィアの元に急行しながら、ソアからソフィアへと結ばれるオーラを途切れることのないように、癒やすようにと、マコトのありったけのオーラを発動させて優しく包み込む。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ママ。お願いだから意識戻って!」
併せて自身が漆黒状態かを髪色で確かめつつ、エネルギー注入を試みるべくソアに口づける。
『お願い……戻って、ママ』
『マコト? どうした? 何があった?』
念波に乗ったマコトの呟きにジンが反応する。心細さが少しだけ和らぐマコト。思わず泣きそうになるが、踏みこらえて、まずは事情説明と、気掛かりのソフィアの状況を求める。
『あ、パパ! 繋がった。良かったぁ。今急いでそっちに向かってるけど、ママは大丈夫? マコがママを連れたまま離れ過ぎちゃったから、ソアの意識が途絶えちゃったみたいなの? ママ、枯渇しちゃってない?』
急ぎつつ、ソアをケアしつつ、念波を交わす。
『あぁ、だからか。さっき急にぐったりとしてたから呼びかけてたんだ。至急補充にかかる』
と、僅かだが包み込むソアのオーラの脈動を感じるマコト。少しだけ希望の感情が芽生える。
『お願い。もう到着する』
ソアを抱き抱える琴はコックピットに到着し、ソアを抱えたままの状態で、主たる意識をマコトに戻す。
「はぁはぁ、着いた。ぜぇぜぇぜぇ。ママは?」
「あぁ、確かに枯渇しかけていたようだが、なんとか持ち直したように見えるよ。まだ意識は戻らないが……」
ジンの『持ち直した』の一言に、張り詰めていた感情が一気に緩みかけるが、キッと唇を引き締め、念を押す言を投げる。
「ホント? ホントに? 大丈夫そうなの?」
「あぁ。まだ手放しで喜べるわけじゃないが、枯渇の危機はもうないと思う」
危機が回避できたらしい言と、意識は戻らないが生が感じられるソフィアの姿を直接目で確かめると、途端に感情を縛り付けていた意識が綻び瞼が潤み、鼻もぐずって涙が零れ落ちる。
「ズズッ、よ、良かったぁ。もうダメかと思ったよぉ。ぅぅぅぅ、ヒック、ヒック、えぇーん。枯渇は……命の危機に……ズビッ……繋がることを……ヒック……思い出して……ズズズズッ……もう必死だったよーっ……あーーんっ」
「マコちゃん、大丈夫?」
もはや堰き止める必要もなくなった涙は、止まることを知らないかの如く大量に溢れ出す。
「マコト? どうした? 大丈夫か?」
「ごめんなさい、パパ。ママを危険な目に会わせちゃった。気が回らなかったのぉ……ズズ」
「ああ、そうか、そうだな。うん、確かに。気を回すべきだったとは言えるが」
「ヴン。ズズ」
「ただ、それは今後のために反省点と捉えて改善に結びつける努力をしていけばいいんだ」
「ヴン。ヴン」
「だが、この旅客機全体が絶体絶命の中で、瞬間的な判断が強要される状況だったんだろ?」
「ヴン。そ、そうだけど、でも……」
「そんなのパパだって気が回らないよ。一瞬でも躊躇していたら、この全員の命がなかったかもしれないんだ、マコトの判断は間違っていないよ」
「ヴン……え? そうなの?」
「ああ。マコトは間違っていない! それに、過剰に離れてしまったわけだけど、直ぐに気付いて全力で対処に当たったんだろ?」
「ヴン」
「そして、何よりも、結果的にママは無事だったんだ。時間にして、数秒も経っていなかったし、たぶん全速力でこっちに向かったのだろうし、そうしながらもおそらくマコトのエネルギーを分け与えようとしたんだろ?」
「ヴン」
「そうやって懸命に対応したはずで、その何か一つでも欠けていたら救えなかった可能性もあるけど、そんな危機的状況に最善へと全力を尽くしたからこそ、掴み取った事実があるわけだ。結果として、ママはちゃんと生きている。これ以上の正解はないと思うぞ?」
「そそそ、そうなの?」
大人と対等に会話できる物腰や、みんなの危機を救ってのける恐るべき力の持ち主であることから、うっかり忘れそうになるが、マコトはこれから日本の小学校に入学する、まだ未就学児の女の子だ。自身の思惑を超える対処しようのない事態、しかも大切な家族を自らの過失で害したかもしれない思いに打ちひしがれれば尚更のこと、身の丈を大きく飛び越える事態に直面すれば、泣き縋るしかない年相応のか弱い子どもの姿を覘かせる。そんなマコトの弱々しく、ともすれば負の方向に傾いてしまいそうな感情をひとつひとつ丁寧に掬い上げ、綻びを解いていったジン。ひとつひとつ、大切に解されたことで、気持ちに整理を付けられたマコトの表情に、ようやく救えた喜びの灯が点る。
「マコト? よくやった。みんなを救ってくれて、ママを引き戻してくれてありがとう」
「えへっ、えへっ、えへっ、えーーーん。ママ、助けられて良かったぁ」
この後、機長を始めとする面々から、マコト達は代わる代わる、繰り返し感謝の意が告げられる。基本、誉められることに不慣れなマコトだが、今度ばかりは躱すための隠れ蓑を見つけられず、湯気が出そうなほどに顔を赤く染め上げ、テンパりながらもなんとかやり過ごす。
着陸までの間、意識の戻らないソフィアの安静状況を見守りつつ、ジンとマコトは、ファーストクラスのパーティションにて、S国の市長のアーネストとザック達を引き合わせ、嘆願内容を伝え、今後の対応とその方向性を談話する。日本でザック達の面倒を暫く見ることを話すと、アーネストもその中の行動に参加させてほしいことを願ったため、日本での再会予定を詰める。アーネストは、予定されている上っ面ばかりの研修よりも、ジンやザック達との行動のほうが身のある内容であることと、何やら日本人視点での観光もしたいのだそうだ。
また、事件終結への事情聴取やハイジャック犯達の身柄に関する諸々の調整事項と、ソフィアの搬送などで、ザック達との直接の行動が制限されるため、サトルにそのあたりの行動サポートをお願いすることを告げ、サトルとザックの了解を得た。
やがて旅客機は日本の航空管制区、新東京国際空港の進入経路へと進み、無事、成田空港への着陸を果たす。接地の瞬間まで、一同は一心に無事を祈ったらしい。進入経路上の要所要所にテロ組織と思われる、ランチャー狙撃を目論む集団が潜んでいたらしいが、総力であたる海上保安庁と陸海空自衛隊の捜索警戒の前にあっては、あっけなく掌握、検挙されたとのこと。
係留位置に停止し、エンジンを停止、『ポーン』と、安全ベルト解除の案内音が鳴ったのを聞き届けると、ジェイムズが口火を切り、辺りは歓喜の声でどよめく。
「ぅぉおおお! 生きて日本に辿り着いたぞぉ! 我々の勝利だぁ!」
「ホントに到着できたのね? 何度も諦めかけたのに、マコちゃん達のお陰だわ」
皆が歓喜に震える中、ふとソフィアに意識の戻る兆しが見て取れ、マコトがいち早く気付く。
「んっ、ふぅ、んーん……」
「あ、ママ! 気が付いた。ママ、ママ、大丈夫?」
「ソフィア、大丈夫か」
「ソフィー」
「ソフィア気が付いたの?」
周りの心配をよそに、長い眠りから覚めたように、ぼんやりと見え始める視界から、目を擦りながら、話しかける声の主達の顔を目線だけで辿るソフィア。なぜか関心は薄い様子。
「ママ? ここがどこだかわかる? マコだよ」
「ソフィア? わかるか? ジンだ」
日本に無事到着を果たした直後、ファーストクラスで寝かされていたソフィアの意識回復を心待ちにし、ソフィアの周辺に待機していた全員の表情が歓喜に満ち溢れ……ていたが。
「んんっ、マ、マコ? ジン? ソフィア? だぁれ? 私はいったい……あれ?」
「え? マ、ママ?」
「ソフィア? まさか……」
テロ組織、エニシダから放たれる、想像を絶する数々の猛襲。しかし一人も失うことなく見事撥ねのけ目的地日本に辿り着くジン達。唯一人、命は救えたが大切なモノを喪失す……。
また、最新鋭兵器を勝手に使用された挙句、破壊されてしまった軍事大国のV国は、報復への調査を開始する。過去の類似事例との重ね合わせでスーパーコンピュータが弾き出したリストに挙げ連ねられた、とある乗客名。それは「ソフィア」、7年前に消息不明の王女の名……。
今、緊急時だったとはいえ、自身の制御限界を、抑止する暇も、抗うほどの力も不足する状態で、咄嗟に上方移動するマコトにより強引に突破させられたソフィア。もはや意識さえ保てないほどの状態で、屍のごとくぐったりとしていた。分身体が姿を保っている今は、辛うじて生を繋ぎ止めている状態とも言えるが、それも時間の問題だ。
『何が起こってるの? とにかく急いで戻らなきゃ』
軍事衛星をちらりと見やった次の瞬間には、ソフィアを抱え、猛速で旅客機に向かうマコト。
『パパ、パパ、大変、ママが……あれ? パパ、聞こえる? あれ? まさか遠く離れすぎたの? だからママも……』
この異常な状況をジンに伝えようとするが、無反応は、より事態の深刻さを心に刻みこむ。
「あ! そういえば、ママからもパパからも、オーラが抜けきることは生体エネルギーが枯渇することと同じ、枯渇は即ち死を意味する、って聞いた記憶がある。マコはなんてことを……とにかく急がなきゃ」
急いではいるが、焦っていては出せる力も出せないことをジンの時に学んだばかりのマコト。
「オーラはまだ繋がってる。マコのオーラで補強! あとマコのエネルギーをソアに注入!」
旅客機のソフィアの元に急行しながら、ソアからソフィアへと結ばれるオーラを途切れることのないように、癒やすようにと、マコトのありったけのオーラを発動させて優しく包み込む。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ママ。お願いだから意識戻って!」
併せて自身が漆黒状態かを髪色で確かめつつ、エネルギー注入を試みるべくソアに口づける。
『お願い……戻って、ママ』
『マコト? どうした? 何があった?』
念波に乗ったマコトの呟きにジンが反応する。心細さが少しだけ和らぐマコト。思わず泣きそうになるが、踏みこらえて、まずは事情説明と、気掛かりのソフィアの状況を求める。
『あ、パパ! 繋がった。良かったぁ。今急いでそっちに向かってるけど、ママは大丈夫? マコがママを連れたまま離れ過ぎちゃったから、ソアの意識が途絶えちゃったみたいなの? ママ、枯渇しちゃってない?』
急ぎつつ、ソアをケアしつつ、念波を交わす。
『あぁ、だからか。さっき急にぐったりとしてたから呼びかけてたんだ。至急補充にかかる』
と、僅かだが包み込むソアのオーラの脈動を感じるマコト。少しだけ希望の感情が芽生える。
『お願い。もう到着する』
ソアを抱き抱える琴はコックピットに到着し、ソアを抱えたままの状態で、主たる意識をマコトに戻す。
「はぁはぁ、着いた。ぜぇぜぇぜぇ。ママは?」
「あぁ、確かに枯渇しかけていたようだが、なんとか持ち直したように見えるよ。まだ意識は戻らないが……」
ジンの『持ち直した』の一言に、張り詰めていた感情が一気に緩みかけるが、キッと唇を引き締め、念を押す言を投げる。
「ホント? ホントに? 大丈夫そうなの?」
「あぁ。まだ手放しで喜べるわけじゃないが、枯渇の危機はもうないと思う」
危機が回避できたらしい言と、意識は戻らないが生が感じられるソフィアの姿を直接目で確かめると、途端に感情を縛り付けていた意識が綻び瞼が潤み、鼻もぐずって涙が零れ落ちる。
「ズズッ、よ、良かったぁ。もうダメかと思ったよぉ。ぅぅぅぅ、ヒック、ヒック、えぇーん。枯渇は……命の危機に……ズビッ……繋がることを……ヒック……思い出して……ズズズズッ……もう必死だったよーっ……あーーんっ」
「マコちゃん、大丈夫?」
もはや堰き止める必要もなくなった涙は、止まることを知らないかの如く大量に溢れ出す。
「マコト? どうした? 大丈夫か?」
「ごめんなさい、パパ。ママを危険な目に会わせちゃった。気が回らなかったのぉ……ズズ」
「ああ、そうか、そうだな。うん、確かに。気を回すべきだったとは言えるが」
「ヴン。ズズ」
「ただ、それは今後のために反省点と捉えて改善に結びつける努力をしていけばいいんだ」
「ヴン。ヴン」
「だが、この旅客機全体が絶体絶命の中で、瞬間的な判断が強要される状況だったんだろ?」
「ヴン。そ、そうだけど、でも……」
「そんなのパパだって気が回らないよ。一瞬でも躊躇していたら、この全員の命がなかったかもしれないんだ、マコトの判断は間違っていないよ」
「ヴン……え? そうなの?」
「ああ。マコトは間違っていない! それに、過剰に離れてしまったわけだけど、直ぐに気付いて全力で対処に当たったんだろ?」
「ヴン」
「そして、何よりも、結果的にママは無事だったんだ。時間にして、数秒も経っていなかったし、たぶん全速力でこっちに向かったのだろうし、そうしながらもおそらくマコトのエネルギーを分け与えようとしたんだろ?」
「ヴン」
「そうやって懸命に対応したはずで、その何か一つでも欠けていたら救えなかった可能性もあるけど、そんな危機的状況に最善へと全力を尽くしたからこそ、掴み取った事実があるわけだ。結果として、ママはちゃんと生きている。これ以上の正解はないと思うぞ?」
「そそそ、そうなの?」
大人と対等に会話できる物腰や、みんなの危機を救ってのける恐るべき力の持ち主であることから、うっかり忘れそうになるが、マコトはこれから日本の小学校に入学する、まだ未就学児の女の子だ。自身の思惑を超える対処しようのない事態、しかも大切な家族を自らの過失で害したかもしれない思いに打ちひしがれれば尚更のこと、身の丈を大きく飛び越える事態に直面すれば、泣き縋るしかない年相応のか弱い子どもの姿を覘かせる。そんなマコトの弱々しく、ともすれば負の方向に傾いてしまいそうな感情をひとつひとつ丁寧に掬い上げ、綻びを解いていったジン。ひとつひとつ、大切に解されたことで、気持ちに整理を付けられたマコトの表情に、ようやく救えた喜びの灯が点る。
「マコト? よくやった。みんなを救ってくれて、ママを引き戻してくれてありがとう」
「えへっ、えへっ、えへっ、えーーーん。ママ、助けられて良かったぁ」
この後、機長を始めとする面々から、マコト達は代わる代わる、繰り返し感謝の意が告げられる。基本、誉められることに不慣れなマコトだが、今度ばかりは躱すための隠れ蓑を見つけられず、湯気が出そうなほどに顔を赤く染め上げ、テンパりながらもなんとかやり過ごす。
着陸までの間、意識の戻らないソフィアの安静状況を見守りつつ、ジンとマコトは、ファーストクラスのパーティションにて、S国の市長のアーネストとザック達を引き合わせ、嘆願内容を伝え、今後の対応とその方向性を談話する。日本でザック達の面倒を暫く見ることを話すと、アーネストもその中の行動に参加させてほしいことを願ったため、日本での再会予定を詰める。アーネストは、予定されている上っ面ばかりの研修よりも、ジンやザック達との行動のほうが身のある内容であることと、何やら日本人視点での観光もしたいのだそうだ。
また、事件終結への事情聴取やハイジャック犯達の身柄に関する諸々の調整事項と、ソフィアの搬送などで、ザック達との直接の行動が制限されるため、サトルにそのあたりの行動サポートをお願いすることを告げ、サトルとザックの了解を得た。
やがて旅客機は日本の航空管制区、新東京国際空港の進入経路へと進み、無事、成田空港への着陸を果たす。接地の瞬間まで、一同は一心に無事を祈ったらしい。進入経路上の要所要所にテロ組織と思われる、ランチャー狙撃を目論む集団が潜んでいたらしいが、総力であたる海上保安庁と陸海空自衛隊の捜索警戒の前にあっては、あっけなく掌握、検挙されたとのこと。
係留位置に停止し、エンジンを停止、『ポーン』と、安全ベルト解除の案内音が鳴ったのを聞き届けると、ジェイムズが口火を切り、辺りは歓喜の声でどよめく。
「ぅぉおおお! 生きて日本に辿り着いたぞぉ! 我々の勝利だぁ!」
「ホントに到着できたのね? 何度も諦めかけたのに、マコちゃん達のお陰だわ」
皆が歓喜に震える中、ふとソフィアに意識の戻る兆しが見て取れ、マコトがいち早く気付く。
「んっ、ふぅ、んーん……」
「あ、ママ! 気が付いた。ママ、ママ、大丈夫?」
「ソフィア、大丈夫か」
「ソフィー」
「ソフィア気が付いたの?」
周りの心配をよそに、長い眠りから覚めたように、ぼんやりと見え始める視界から、目を擦りながら、話しかける声の主達の顔を目線だけで辿るソフィア。なぜか関心は薄い様子。
「ママ? ここがどこだかわかる? マコだよ」
「ソフィア? わかるか? ジンだ」
日本に無事到着を果たした直後、ファーストクラスで寝かされていたソフィアの意識回復を心待ちにし、ソフィアの周辺に待機していた全員の表情が歓喜に満ち溢れ……ていたが。
「んんっ、マ、マコ? ジン? ソフィア? だぁれ? 私はいったい……あれ?」
「え? マ、ママ?」
「ソフィア? まさか……」
テロ組織、エニシダから放たれる、想像を絶する数々の猛襲。しかし一人も失うことなく見事撥ねのけ目的地日本に辿り着くジン達。唯一人、命は救えたが大切なモノを喪失す……。
また、最新鋭兵器を勝手に使用された挙句、破壊されてしまった軍事大国のV国は、報復への調査を開始する。過去の類似事例との重ね合わせでスーパーコンピュータが弾き出したリストに挙げ連ねられた、とある乗客名。それは「ソフィア」、7年前に消息不明の王女の名……。
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