クラス転移したら俺だけ五年後の世界転生させられた件

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第9話:修羅場

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 翌日、俺たちは入寮の準備があるため再び学校に来ている。必ずしも入寮しないといけないわけではないが、入寮するのは無料なので、入寮すれば朝昼晩の食事代、宿泊代が浮くのである。要するに、働かなくて良いのである。
 しかし、その蜜に辿り着くためには困難を乗り越えなければならない。

「うはぁ~、何時間待ちだろこれ」

「一時間じゃ済まないね……」

 リアに肩車してもらって分かったのだが、受付は箱詰め状態であり、学校の長い廊下を飛び越えて校舎の外まで列ができていた。

「なんでこんなに混んでる時間に来たんだろ」

「シアン君が寝坊するからよ!」

「そーだった」

 今現在の時間は十時。地球と同じ一年365日、一日24時間なので、時間感覚は気にしないでいい。
 本来ならば八時に並び出す予定だったのだが、二度寝がしたいがためにリアにごねた結果、予定より二時間遅れて宿を出ることになったのである。

「もうっ。だから早く来たかったのに」

 拗ねたように口をとがらせるリアに謝罪を述べていると、腹部に鈍痛が走った。

「シアーン!」

「ぐぶっ!」

 頭突きという形で。
 お腹を襲った衝撃に空気を吐き出しながらそのまま押し倒される。

「えへへ~、お姉ちゃんが帰って来たよ?」

 そのまま俺の上へ乗っかり、眩しい笑みを向ける少女はアイラである。
  
「ゴホッゴホッ、なんでここに……あー、そういや婆さんが言ってたな……」

「シアン成分補給しないと~」

「んぐっ!?」

 考え事をしていると、アイラが抱きついてくる。彼女の方が背が高いため、俺の顔はアイラの胸の辺りに当たることとなる。
 まだ未成熟なのでなにもないのだが……。

「ち、ちょっと、あなたシアン君のなんなの!?」

「んー、お姉ちゃん?」

「んなっ!?」

 アイラの胸の隙間からリアを覗くと、リアが顔を赤くして突っかかっている。そして、アイラの返答で更に顔を真っ赤にして俺を見ていて、何か物言いたげだ。

「シアンはお姉ちゃん大好きだもんねーっ」

「う、うん……」

 それを傍目にアイラは俺の頭を撫で始めた。
 アイラに頭を撫でられると俺はもう彼女に抵抗できない。彼女の言葉に肯定してしまう。

「シアン君!? あなた、シアン君から離れなさいよ!」

「嫌だよーだ!」

「「ぐぬぬ……」」

 アイラは、俺に私の所有物だと言わんばかりに抱きつき、リアはそれを竜人の威圧感でアイラを威嚇し、一触即発の雰囲気が二人の間に流れる。
 まさに修羅場である。
 こんな衆人環視の中で喧嘩でもされたらたまったもんじゃない。まして魔法でもぶっ放されたら入学前に退学すらありえる。そうしている間に二人は魔力を溜め始めた。
 やばいやばいやばいやばいーー

「二人とも、落ち着いてっ!」

「「うるさい!」」

 泣きそうである。
 しかし、まだ俺の学校生活は死んではいなかった。

「こら、皆さんの迷惑になるからやめなさい」

「お父さん! ごめんなさ~い」

「あ、すみませんっ」

 アイラのお父さんが柔らかい笑みでアイラを窘めた。元々西洋風な顔つきでイケメンなのだが、今はその精悍な顔が輝いて見える。

「シアン君もすまないね、ウチの子が迷惑をかけて」

「いえ、大丈夫ですよ」

「ありがとう。ところでそこの子は?」

 アイラのお父さんはリアを見て尋ねた。

「えっと、私は竜人のリア・ドラグニールと言います」

「ほう、竜人とは珍しいね、シアン君はなかなかに女ったらしみたいだね」

 アイラの父は快活に笑う。彼の視線の先には頬をぷくっと膨らましたアイラがいた。

「負けないもん!」

「わ、私だって!」

 負けじとリアも口を開くが、このまま放置すると先ほどの二の舞になりそうだ。

「ちょっと、カマかけないで下さいっ」

「あはは、ごめんね。それより、これから入寮の手続きに行くんだけど、君たちも来るかい?」

「え? 並ばないんですか?」

「シアン君も知ってるだろうけど、学園長とは知り合いだから優先的に見てもらえるんだよ」

 学校としてそれはどうなのかと思う。
 ……俺たちはアイラ父のご厚意に甘えることにして、無事に入寮の手続きを終えることができた。
……二人の関係はとても無事とは言えない気がするが。
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