クラス転移したら俺だけ五年後の世界転生させられた件

ACSO

文字の大きさ
12 / 51

第11話:烏合の衆

しおりを挟む
 婆さんの連絡から数分後、第20クラスは一つの部屋に集まりミーティングを始めていた。

「バラバラに行ったら、いつどこで誰が脱落しそうなのか分からない。だから俺たちはクラス全体でまとまって行動しようと思う。意見がある人はいないか?」

 一人前に立って喋るのは先ほどの少年で、名前はラーク・ジャークソン。人間領コーシール王国の辺境にある伯爵家の一人息子らしい。
 近年、彼の家名が落ちぶれてきているため、名誉復帰を果たすために魔法学校に来たそうだ。

「……ないみたいだな。あと、魔法は温存するように頼む。麓だが、ここは霊峰だ、いつ魔物と出会うか分からないし、それ以外にも、不測の事態に陥ることがあるかもしれないからだ」

 自己紹介の時間で分かったことだが、このクラスの最年長は十二歳、彼である。年下で見聞が狭いクラスメート達は年上の知識ある人物に任せることにしたらしい。誰も静観している。

「恐らく、俺たちのクラスは遅れて出発する。なぜなら、全クラスが一斉スタートだからだ。多くの人間が我先にと突き進むから、それ相応の怪我人はでる。第20クラスなど、特に小さい子供が多いクラスは余計に危険だ。だから、最初は安全を最優先にして、そのあと全員で出発する」

 なるほど、安全を重視するなら採用する案である。第20クラスに所属しているという立場上、全属性を使える俺が火属性、水属性魔法を使えるとしか明かしていない以上、他に隠している子がいない限りこのクラスで回復魔法を使えるのはアイラだけとなる。アイラの貴重な魔力を浪費してまでスタートダッシュに賭ける必要はないと考えたようだ。

「第20クラスなら、相応のリスクは覚悟して攻めないと勝てないと思うんだけど」

 声のする方には、真っ白な髪を肩辺りで雑に切っている女の子が一人、いた。

「自衛の能力が高い上位クラスならばともかく、下位クラスならば確実に潰される」

「ここは大半が下位クラスじゃん。みんなあんたみたいな陰鬱な考え方の奴らばっかだよ」

 ラークはひたいに青筋を浮かべて怒鳴った。

「誰が陰鬱だっ! 俺はみんなが怪我しないように、そしてなお高確率で勝利できるように考えて言ってるんだ!」

「そんな甘っちょろい考えでよく勝ち抜こうと思ったね」

「貴様ぁっ!」

 年上の男の怒号に臆することなく、それどころか煽り出す少女の口元には薄い笑みが浮かんでいる。

「やるか? 落ちこぼれの貴族様?」

 ラークは床に掌を当て、魔力を送り込む。

「俺を侮辱したこと、後悔させてやるッ! 自然よ、我に力を貸し給え『地割れクラーク』!」

 詠唱が始まるや否や、周りにいた者たちは一斉に二人の付近から離れ、動向を見守る。
 部屋全体が激しく揺れ、耐えきれなくなった床にヒビが入る。そして遂に、バリバリと音を立てて地面が割れた。
 しかし、そこに少女はいない。

「ワンオンワンでとろとろした魔法撃ってんじゃないよ!」

 突如として背後から現れた少女がラークにしがみつき首をホールド、落としにかかる。

「ガッ!? どこからっ!?」

 彼女は獣人特有・・・・の身体能力の高さを活かし、ラークが視線を下に向けた瞬間に地を蹴り、天井を駆けてラークの背後に身を潜めたのである。

「キレる相手は考えなよっ!」

 少女の碧眼はこれまでにないほど爛々と輝き、口元は愉悦に歪んでいる。俺もわりと戦闘が好きだから分かるが、彼女はバトルジャンキーの類だろう。
 ギリギリと首を締め上げ、とうとうラークが落ちるかと思われたその時、天井から先が尖った岩が突き出る。
 この歳で無詠唱とはなかなかやる。

「うわっと!」

 気配を察知した少女は慌てて跳びのき、難を逃れた。

「はぁーっ、はぁーっ……」

「まだやるの?」

 息を乱し、目に見えて疲弊しているラークが少女を睨むが、圧倒的優位な状況に少女は柳に風と受け流す。

「まだ、負けてねえ!」

 ひときわ大きな揺れが起こり、部屋中から悲鳴や泣き声が上がる。
 恐らくラーク最大の魔法であろうそれは、対象が少女だけでは済まなさそうである。
 瞬く間に立つこともままならないほどの大きな揺れになり、先ほどの地割れで出来た瓦礫や生徒の荷物が浮き上がり始めた。

「駆け廻れ、『全方位の礫シェイカー』!」

 浮上したそれらが意思を持ったかのように少女へ襲い掛かろうとした刹那、それら全てが叩き落とされた。

「はい、ストップ。これ以上は私闘じゃ済まないわよ」

 目にも留まらぬ速さで瓦礫を刀で撃ち落としたのは姫草 遥だった。彼女は唖然とするラークと少女にコツンとげんこつを落とし、これでおあいこと笑った。ラークは己の不用意さに俯き、戦闘狂の匂いがした少女も興を削がれたのか、バツの悪そうな顔をして引き下がった。
 喧嘩両成敗と言うが、少女の欲求のために煽られたラークが少し不憫に感じたりする。
 そのうち呼び出しくらうだろうけど、頑張れよ。
 しーんと静まり返るなか、遥は口を開く。

「えーと。変な空気のなかアレだけど、私と彼が君たちを担当するハルカ・ヒメクサとアレクよ。よろしくね」

「アレクだ。お前らを殺さないように、と依頼を受けているから守るが、基本的に何もしないならそのつもりでな」

 冷めた口調で告げる背の高い濃緑の髪の男性は、壁際に避難した生徒たちの中から出てきた。

「そうね、基本的に干渉はしないけど、応援はしてるから頑張ってね」

 遥のにこやかな表情とともに、開始五分前を告げる婆さんの音声が脳内に流れた。
 通信が切れると同時、室内が騒然とする。
 結局、スタートダッシュを狙うのか、遅れて出発するのか。リーダーは誰にするのか。まとめ役はラークでいいのか。準備はどうするのか。俺たちの荷物ぶち壊しやがって。お前のせいだ。
 などなど、一瞬まとまりかけたクラスは最初より散逸となり、まさしく烏合の衆である。
 かといって代わりのまとめ役がいるわけでもなく、俺たちは各々の判断で再び準備を始めた。
 こうして、俺たち第20クラスは大きく出遅れ、更に意思統一のされぬまま、大自然へと足を踏み入れることとなった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

構造理解で始めるゼロからの文明開拓

TEKTO
ファンタジー
ブラック企業勤めのサラリーマン・シュウが転生したのは、人間も街も存在しない「完全未開の大陸」だった。 ​適当な神から与えられたのは、戦闘力ゼロ、魔法適性ゼロのゴミスキル《構造理解》。 だが、物の仕組みを「作れるレベル」で把握できるその力は、現代知識を持つ俺にとっては、最強の「文明構築ツール」だった――! ​――これは、ゴミと呼ばれたスキルとガラクタと呼ばれた石で、世界を切り拓く男の物語。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

主人公の義兄がヤンデレになるとか聞いてないんですけど!?

玉響なつめ
恋愛
暗殺者として生きるセレンはふとしたタイミングで前世を思い出す。 ここは自身が読んでいた小説と酷似した世界――そして自分はその小説の中で死亡する、ちょい役であることを思い出す。 これはいかんと一念発起、いっそのこと主人公側について保護してもらおう!と思い立つ。 そして物語がいい感じで進んだところで退職金をもらって夢の田舎暮らしを実現させるのだ! そう意気込んでみたはいいものの、何故だかヒロインの義兄が上司になって以降、やたらとセレンを気にして――? おかしいな、貴方はヒロインに一途なキャラでしょ!? ※小説家になろう・カクヨムにも掲載

処理中です...