19 / 51
第18話:少女の名は
しおりを挟む
「あ、あんた、意外と怖いことするね……」
襲撃者と、ついでに戦いを見ていた冒険者に口止めをし終わり、少女の元へと戻るとそんな言葉を投げつけられた。
「あはは……それより、身体はもう動く?」
「ううん。……あと数十分は無理だと思う」
「どんだけ大きな技使ったんだ……」
思わずため息が漏れる。しかし、ここまでの反動がある技、一度見てみたいものだ。
「……獣人の秘技みたいなものよ」
心なしか表情が暗い。詳しく聞きたいところではあるが、獣人の秘技を簡単に口外していいとも思えないので掘り下げないでおこう。
「なるほどね」
「それよりあんたっ、どうしてそんなに強いのにこんなところに……?」
一転、少女は目をキラキラさせて尋ねてくる。
戦闘狂とあって、強さには興味が尽きないようだ。
普段なら誤魔化すところだが、ボコボコにした現場を見られているので下手なことは言いたくない。だが、広められるのも困るのでどうしよう……。
返答に困っていると、少女が口を開く。
「誰にも言わないからさっ」
無邪気な目が眩しいっ。これはどう足掻いても引いてくれなさそうな気がする。
「……本当に?」
「うん、約束するから!」
「……今、各国は魔王討伐に備えて人を集めるよね」
「まあ、そうね」
「俺はそれに行きたくないんだ。戦争の駒として使われたくない。だから、あまり目立たないように生活したいんだ」
「ふーん。……珍しいね、徴兵が嫌だなんて。国に名指しで指名されることって、名誉だって考える人も多いのに」
少女は俺の理由が意外だったのか、目を丸くしている。やはり、俺と世間では価値観に違いがあるようだ。その辺を押し付けることなく育ててくれた婆さんには頭が上がらないな。
「そうなんだ。ま、俺は自由に生きたいから。この学校に入学したのもいろんな人と出会うためだったりするし」
「へぇ~。あんた、思ったより悪い奴じゃないかもね。……なーんて、私の耳触った時点でもう頭カンカンだけどね」
「それは悪かったって」
そう言って、俺たちは笑う。
少し、彼女と打ち解けられたかもしれない。
「ねえ、君名前はなんて言うの? 自己紹介の時教えてくれなかったよね」
少女は少し悩んで、名乗る。
「ルージュ。私の名前はルージュ。よろしくっ」
「よろしく、俺はシアン。頑張って一位を取ろうっ」
俺はそう言って動けない白髪の少女ーールージュの手を取り、そのままおんぶする。
「よっと」
「え、ちょ、きゃあ!? は、恥ずかしいじゃんか!」
背中から可愛い悲鳴が聞こえるが、怒っている様子はない。五歳の俺が年上の女の子を背負っている姿を第三者が見ると、なかなか滑稽なんだろうな、なんて思っていると、ルージュが俺のお腹に尻尾を巻きつけてきた。
「シアン、ちっちゃくて不安だから……」
まだ小さな俺の背中に顔を押し付けてそう言うものだから、可愛さに笑みがこぼれる。
「ごめんね、安心感がなくて」
「う……ん……すーすー……」
どうやら寝てしまったらしい。主人の温もりで安心したんだろうか、と考えているのがバレるとまた口を聞いてもらえなくなるなあ。
そして、俺は勝負の分かれ目にぶち当たろうとしているクラスメートたちに追いつくべく、静かに林中を駆け出した。
襲撃者と、ついでに戦いを見ていた冒険者に口止めをし終わり、少女の元へと戻るとそんな言葉を投げつけられた。
「あはは……それより、身体はもう動く?」
「ううん。……あと数十分は無理だと思う」
「どんだけ大きな技使ったんだ……」
思わずため息が漏れる。しかし、ここまでの反動がある技、一度見てみたいものだ。
「……獣人の秘技みたいなものよ」
心なしか表情が暗い。詳しく聞きたいところではあるが、獣人の秘技を簡単に口外していいとも思えないので掘り下げないでおこう。
「なるほどね」
「それよりあんたっ、どうしてそんなに強いのにこんなところに……?」
一転、少女は目をキラキラさせて尋ねてくる。
戦闘狂とあって、強さには興味が尽きないようだ。
普段なら誤魔化すところだが、ボコボコにした現場を見られているので下手なことは言いたくない。だが、広められるのも困るのでどうしよう……。
返答に困っていると、少女が口を開く。
「誰にも言わないからさっ」
無邪気な目が眩しいっ。これはどう足掻いても引いてくれなさそうな気がする。
「……本当に?」
「うん、約束するから!」
「……今、各国は魔王討伐に備えて人を集めるよね」
「まあ、そうね」
「俺はそれに行きたくないんだ。戦争の駒として使われたくない。だから、あまり目立たないように生活したいんだ」
「ふーん。……珍しいね、徴兵が嫌だなんて。国に名指しで指名されることって、名誉だって考える人も多いのに」
少女は俺の理由が意外だったのか、目を丸くしている。やはり、俺と世間では価値観に違いがあるようだ。その辺を押し付けることなく育ててくれた婆さんには頭が上がらないな。
「そうなんだ。ま、俺は自由に生きたいから。この学校に入学したのもいろんな人と出会うためだったりするし」
「へぇ~。あんた、思ったより悪い奴じゃないかもね。……なーんて、私の耳触った時点でもう頭カンカンだけどね」
「それは悪かったって」
そう言って、俺たちは笑う。
少し、彼女と打ち解けられたかもしれない。
「ねえ、君名前はなんて言うの? 自己紹介の時教えてくれなかったよね」
少女は少し悩んで、名乗る。
「ルージュ。私の名前はルージュ。よろしくっ」
「よろしく、俺はシアン。頑張って一位を取ろうっ」
俺はそう言って動けない白髪の少女ーールージュの手を取り、そのままおんぶする。
「よっと」
「え、ちょ、きゃあ!? は、恥ずかしいじゃんか!」
背中から可愛い悲鳴が聞こえるが、怒っている様子はない。五歳の俺が年上の女の子を背負っている姿を第三者が見ると、なかなか滑稽なんだろうな、なんて思っていると、ルージュが俺のお腹に尻尾を巻きつけてきた。
「シアン、ちっちゃくて不安だから……」
まだ小さな俺の背中に顔を押し付けてそう言うものだから、可愛さに笑みがこぼれる。
「ごめんね、安心感がなくて」
「う……ん……すーすー……」
どうやら寝てしまったらしい。主人の温もりで安心したんだろうか、と考えているのがバレるとまた口を聞いてもらえなくなるなあ。
そして、俺は勝負の分かれ目にぶち当たろうとしているクラスメートたちに追いつくべく、静かに林中を駆け出した。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
神様、ちょっとチートがすぎませんか?
ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】
未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。
本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!
おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!
僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。
しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。
自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。
へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/
---------------
※カクヨムとなろうにも投稿しています
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
構造理解で始めるゼロからの文明開拓
TEKTO
ファンタジー
ブラック企業勤めのサラリーマン・シュウが転生したのは、人間も街も存在しない「完全未開の大陸」だった。
適当な神から与えられたのは、戦闘力ゼロ、魔法適性ゼロのゴミスキル《構造理解》。
だが、物の仕組みを「作れるレベル」で把握できるその力は、現代知識を持つ俺にとっては、最強の「文明構築ツール」だった――!
――これは、ゴミと呼ばれたスキルとガラクタと呼ばれた石で、世界を切り拓く男の物語。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
主人公の義兄がヤンデレになるとか聞いてないんですけど!?
玉響なつめ
恋愛
暗殺者として生きるセレンはふとしたタイミングで前世を思い出す。
ここは自身が読んでいた小説と酷似した世界――そして自分はその小説の中で死亡する、ちょい役であることを思い出す。
これはいかんと一念発起、いっそのこと主人公側について保護してもらおう!と思い立つ。
そして物語がいい感じで進んだところで退職金をもらって夢の田舎暮らしを実現させるのだ!
そう意気込んでみたはいいものの、何故だかヒロインの義兄が上司になって以降、やたらとセレンを気にして――?
おかしいな、貴方はヒロインに一途なキャラでしょ!?
※小説家になろう・カクヨムにも掲載
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる