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秋祭りの闘技大会

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 ゼロはシーナとレナに連れられて再び王都を訪れた。
 ゼロにとっては2度目の王都である。
 前回は拘束されて連行されたのだが、今回も似たようなものだった。
 3人は先ず冒険者ギルド本部に向かうことにした。
 これから大会期間中はギルドの宿泊施設を利用することになっている。
 本来はギルドが予算を持ち、高級宿に宿泊することも提案されたが、ゼロが自分がネクロマンサーであることを懸念したうえ、泊まり慣れていない高級宿では落ち着かないとの理由でギルドの施設を利用することになった。
 とはいえ、そこは王国内のギルドを統括する本部の施設であり、立派な宿屋並みの施設であった。
 ゼロが1人部屋でシーナとレナは相部屋を利用することになった。
 ギルドに投宿した3人はギルドの食堂で軽く食事をしながらシーナが大会本部から入手してきた大会の予定表とトーナメント表を確認した。

「今回の出場者は32人ですね。トーナメント戦で、初日と2日目は1回戦、2回戦が3日目で、以降は1日に1回戦ずつ進めるので、日程は6日間の予定ですね」

 シーナが大会の予定を説明する。
 トーナメント表を見ていたレナが笑いながらトーナメント表を見せる。

「ゼロ、貴方1回戦の第1試合よ。開幕戦ね。初戦は国境警備隊のアレス・ミラーだって」
「ミラーさんって去年も出場して3位だった人ですよ。元々国境警備隊は強者揃いで有名ですからね。ゼロさん、いきなり強敵ですね」

 まるで人事のようにシーナとレナは盛り上がっているが、トーナメント表を見たゼロは固まっている。

「・・・」
「ゼロさん?どうしたんですか?」
「シーナさん、この大会って冒険者や軍人が出る大会ですよね?」
「はい、そうですよ。出場資格は冒険者は銅等級以上の上位者、当然黒等級も含まれますが、金等級以上の冒険者は出場できません。英雄や勇者と呼ばれる人は強すぎて大会のバランスが悪くなりますから。軍隊はある程度の実績を有する者に限られていますね。ですので、誰でも出場できるというわけではありません」
「そんな大会に執事が出てますけど・・・」
「しつじ?ですか?」

 ゼロはトーナメント表の自分の組の横にある名前を指示した。
 そこにはガストン・マイルズの名が記載されている。
 シーナは出場者のプロフィールを見ながら説明した。

「ああ、この方は貴族の護衛の任も兼ねていて、過去には騎士隊を率いていた実績がありますね。所属はエルフォード・・・って、以前に依頼を出されたエルフォード家の方ですか?」
「はい、エルフォード家のマイルズさんです。仮に私とマイルズさんが勝ち上がると2回戦で対戦する羽目になりますよ。あの方も相当な手練れですからね、正直戦いたくはありませんね」

 意外な出場者の名にゼロは首を傾げるが、トーナメント表にはそれよりも気になる名前が記されていた。

「マイルズさんもですが、もう1人、解せない名が」

 ゼロが指差した先にはイザベラ・リングルンドの名があった。

「えっ?何であの女の名が?」

 レナも驚きの表情を見せ、事実を知らないシーナが首を傾げる。

「この方は聖務院、聖騎士団の方ですね。それがどうしました?」

 ゼロとレナは顔を見合わせた。

「聖騎士団って、あの人は・・・」
     「私、表向きは聖騎士団所属ですのよ」

 背後から突然声を掛けられてゼロとレナは飛び上がった。
 そこには聖騎士の装束のイザベラが立っていた。

「貴女はっ!何故ここに」
「何故って、風の都市のネクロマンサーが到着したとの報告がありましたので、こうしてご挨拶に伺いましたの」

 イザベラは3人に対して優雅に礼をした。
 シーナは状況が分かっていないが、ゼロとレナは臨戦態勢だ。
 ゼロは周囲に人が居ないのを確認したうえで声をひそめた。

「聖務院特務兵の貴女が何用ですか?」
「貴方達と戦った特務兵なんて役職は公式にはありませんの。そんなものに予算なんか付くわけありませんわ。私達は表向きは聖騎士団所属で、お給金も騎士団員として頂いていますのよ」

 聖務院の内情について隠す素振りもなく話すイザベラにゼロとレナは呆れ顔だ。

「貴方達に話したところで何の問題もありませんわ。それよりも、今回の闘技大会、私は出場する予定はなかったのですが、貴方がエントリーしているのを見て急遽出場を決めましたの。でも残念、貴方と対戦はお互いに決勝まで勝ち上がらなければ叶いませんのね」

 イザベラの言うとおり、2人が対戦するには決勝戦まで勝ち上がらなければならない。
 ゼロは心から安堵した。

「貴方、折角私が出場するのですからちゃんと勝ち上がってくださいましね。でないと張り合いがありませんの」

 イザベラはそう言うが、ゼロにしてみれば真っ平御免である。
 もとより決勝までなど勝ち残れるとは思っていないが、その相手がイザベラだとすれば尚更である。

「貴女と戦うなんて願い下げですが、私も風の都市の代表として出場する以上は無様な姿だけは見せられませんからね」

 ゼロの言葉にイザベラは満足そうに頷いた。

「まあ、頑張ってくださいまし。もしも私と対戦することになったらお互いに全力で戦いましょうね。楽しみにしてますわよ」

 言い残して立ち去るイザベラの後ろ姿を見送ったゼロは早くも大会出場を引き受けたことを後悔しだしていた。
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