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竜騎兵との激闘1
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上空で指揮を取りつつ戦いの様子を見ていた竜騎兵の隊長は判断を迫られていた。
支配地域の警戒飛行中に敵の小部隊を捕捉した時、確かに彼等は敵を甘く見ていた。
自分達は辺境部隊とはいえ精鋭の竜騎兵が30騎。
それに比べて敵は複数の馬車を護衛している小部隊であることから力の差は歴然だと考え、半ば演習代わりのつもりで敵に向かった。
しかし、射程外と思っていた距離からの強烈な一撃で先行する1騎を落とされたとき、竜騎兵隊長の脳裏からは驕りも油断も消え失せた。
敵には一撃で竜騎兵を葬ることができる弓兵がいるだけではない、数多のアンデッドを使役するネクロマンサーを有する部隊だ。
彼は部下に全力を持って敵に対処するように下命した。
彼等はセオリーに従って上空からのアウトレンジ攻撃、それに続いて急降下攻撃を仕掛けるも、その全てが失敗に終わり、敵に損害を与えることが出来なかったばかりか竜騎兵を10騎以上を失った。
これは彼等の常識では考えられない程の大損害である。
そんな戦いの中で敵は竜騎兵の攻撃を受けているのに逃げ出す様子がない。
それどころか、亀甲状に固められたアンデッドの盾に守られた馬車の馬が眠らされている。
つまり敵はハナから逃走することを考えておらず、竜騎兵相手に真っ向から立ち向かおうとしているのだ。
敵に数多くいるアンデッドは脅威ではない。
それらを的確に使役するネクロマンサーの存在と竜騎兵相手に対等以上に戦う敵兵が脅威なのである。
間違いなく彼等が対峙しているのは敵の精鋭部隊であり、武人としてそのような敵と戦えることはむしろ誇りすら覚えた。
そのうえで隊長としての彼が取りえる策は限られている。
それらの策も敵の指揮官に先読みされているかもしれないが、それでも彼は彼の思う最善の策を選択した。
ゼロは上空に退避した残りの敵の動きを注視していた。
こうも反撃が上手くいくとは予想していなかったが、ここからはそうもいかない。
竜騎兵の指揮官はゼロ達の戦力と手の内を把握しただろう。
そのうえで敵が取りえる策も限られている筈だ。
「さて、どう出ますか?上空からの遠距離攻撃に徹するか、それとも地上に降りて力ずくの近接戦闘を仕掛けてきますか?それとも・・・」
ゼロが見上げる上空で竜騎兵が動いた。
部隊が二手に分かれて10騎程が降下を開始し、残りは上空に止まっている。
「やはり、そう来ますか。敵は二手に分かれて地上戦と上空からの遠距離攻撃を仕掛けてきます!皆さんは地上戦に備えてください!上空警戒と対空防御はオメガ、アルファ、シールドに任せます!」
ゼロが全員に示達する。
オックス、ライズ、イズが前衛、リリス、イリーナ、リズが後衛に立つ。
彼等の左右にはスケルトンロードのサーベルとスピアに指揮されたスケルトンナイトとスケルトンウォリアーの部隊が多数。
ゼロの傍らにはレナが控え、ゼロとレナの前にはゼロが新たに召喚したアンデッド、首なしの騎士10体が並んだ。
「ゼロ、これは?」
「首なしの騎士、デュラハンです。彼等は上位アンデッドであり、スケルトンナイトに匹敵する戦闘力を持っているうえ、守備力はそれ以上です。今回は彼等にも参加してもらいます」
ゼロの前に並んだデュラハン達は一糸乱れぬ動きで腰の剣を抜いて構えた。
ゼロが戦闘態勢を取り直している間に竜騎兵10騎はゼロ達の前方に距離を取って着陸し、ワイバーンは地上戦に備えてその翼を畳んだ。
地上に降りたのは竜騎兵の中でも特に強固な身体を持つワイバーン達で、その強靭な脚で大地を賭けて突撃してくるつもりだろう。
騎乗する竜人も突撃に備えてランスを構えている。
上空に残ったのは逆に飛行に特化したワイバーン達で竜騎兵の隊長も上空から指揮を取っている。
「敵の突撃を受け止めます!こちらからは仕掛けないでください!」
ゼロの指示にオックス達が笑みを浮かべた。
「あのデカいワイバーンの突撃を受け止める?正気の沙汰じゃねえな」
オックスの背後ではリリスが弓に矢を番えている。
「突撃を受け止めると言っても別に矢を放っちゃダメなわけではないのよね?モタモタしている敵がいたら射抜いてあげるわ」
イリーナとリズも頷きながら弓を構えた。
前方では竜騎兵が密集して突撃に入ろうとしている。
「来ます!」
ゼロの声と共にワイバーンが咆哮を上げて突撃を開始した。
即座にリリス達が矢を放つがランスで払われ、盾で受け止められ、最早竜騎兵には通用しない。
それでもリリスの放った矢が先頭に続くワイバーンを貫き、倒れたワイバーンから振り落とされた竜人にイリーナとリズの矢が突き刺さる。
残る9騎がオックス達の目前に迫る。
オックスもライズもイズもゼロの指示どおり飛び出したりはせず、それぞれの武器を構えて防御姿勢を取っていた。
双方が衝突する直前、突撃する竜騎兵の前に大盾を持った数百のスケルトンウォリアーが出現して瞬時に防御壁を構築した。
目の前に突然現れた大盾の壁に竜騎兵の突撃の勢いがほんの僅かに鈍ったが、竜騎兵は止まることなく防御壁に衝突し、スケルトンウォリアー達を蹴散らした。
一瞬にしてスケルトンウォリアーの防御壁は崩壊し、直撃を受けたスケルトンウォリアーはバラバラに吹き飛んだが、それもこれもゼロの想定内だった。
防御壁を突破したと思ったのも束の間、生き残りやバラバラになったスケルトンウォリアーがワイバーンの全身に取り付く。
全身に纏わりついたスケルトンウォリアーに突撃の勢いは完全に失われた。
「今です!」
ゼロの合図でオックス達と左右に展開していたスケルトンウォリアー達が竜騎兵に一斉に飛びかかった。
無謀ともいえる竜騎兵相手の肉弾戦が始まった。
支配地域の警戒飛行中に敵の小部隊を捕捉した時、確かに彼等は敵を甘く見ていた。
自分達は辺境部隊とはいえ精鋭の竜騎兵が30騎。
それに比べて敵は複数の馬車を護衛している小部隊であることから力の差は歴然だと考え、半ば演習代わりのつもりで敵に向かった。
しかし、射程外と思っていた距離からの強烈な一撃で先行する1騎を落とされたとき、竜騎兵隊長の脳裏からは驕りも油断も消え失せた。
敵には一撃で竜騎兵を葬ることができる弓兵がいるだけではない、数多のアンデッドを使役するネクロマンサーを有する部隊だ。
彼は部下に全力を持って敵に対処するように下命した。
彼等はセオリーに従って上空からのアウトレンジ攻撃、それに続いて急降下攻撃を仕掛けるも、その全てが失敗に終わり、敵に損害を与えることが出来なかったばかりか竜騎兵を10騎以上を失った。
これは彼等の常識では考えられない程の大損害である。
そんな戦いの中で敵は竜騎兵の攻撃を受けているのに逃げ出す様子がない。
それどころか、亀甲状に固められたアンデッドの盾に守られた馬車の馬が眠らされている。
つまり敵はハナから逃走することを考えておらず、竜騎兵相手に真っ向から立ち向かおうとしているのだ。
敵に数多くいるアンデッドは脅威ではない。
それらを的確に使役するネクロマンサーの存在と竜騎兵相手に対等以上に戦う敵兵が脅威なのである。
間違いなく彼等が対峙しているのは敵の精鋭部隊であり、武人としてそのような敵と戦えることはむしろ誇りすら覚えた。
そのうえで隊長としての彼が取りえる策は限られている。
それらの策も敵の指揮官に先読みされているかもしれないが、それでも彼は彼の思う最善の策を選択した。
ゼロは上空に退避した残りの敵の動きを注視していた。
こうも反撃が上手くいくとは予想していなかったが、ここからはそうもいかない。
竜騎兵の指揮官はゼロ達の戦力と手の内を把握しただろう。
そのうえで敵が取りえる策も限られている筈だ。
「さて、どう出ますか?上空からの遠距離攻撃に徹するか、それとも地上に降りて力ずくの近接戦闘を仕掛けてきますか?それとも・・・」
ゼロが見上げる上空で竜騎兵が動いた。
部隊が二手に分かれて10騎程が降下を開始し、残りは上空に止まっている。
「やはり、そう来ますか。敵は二手に分かれて地上戦と上空からの遠距離攻撃を仕掛けてきます!皆さんは地上戦に備えてください!上空警戒と対空防御はオメガ、アルファ、シールドに任せます!」
ゼロが全員に示達する。
オックス、ライズ、イズが前衛、リリス、イリーナ、リズが後衛に立つ。
彼等の左右にはスケルトンロードのサーベルとスピアに指揮されたスケルトンナイトとスケルトンウォリアーの部隊が多数。
ゼロの傍らにはレナが控え、ゼロとレナの前にはゼロが新たに召喚したアンデッド、首なしの騎士10体が並んだ。
「ゼロ、これは?」
「首なしの騎士、デュラハンです。彼等は上位アンデッドであり、スケルトンナイトに匹敵する戦闘力を持っているうえ、守備力はそれ以上です。今回は彼等にも参加してもらいます」
ゼロの前に並んだデュラハン達は一糸乱れぬ動きで腰の剣を抜いて構えた。
ゼロが戦闘態勢を取り直している間に竜騎兵10騎はゼロ達の前方に距離を取って着陸し、ワイバーンは地上戦に備えてその翼を畳んだ。
地上に降りたのは竜騎兵の中でも特に強固な身体を持つワイバーン達で、その強靭な脚で大地を賭けて突撃してくるつもりだろう。
騎乗する竜人も突撃に備えてランスを構えている。
上空に残ったのは逆に飛行に特化したワイバーン達で竜騎兵の隊長も上空から指揮を取っている。
「敵の突撃を受け止めます!こちらからは仕掛けないでください!」
ゼロの指示にオックス達が笑みを浮かべた。
「あのデカいワイバーンの突撃を受け止める?正気の沙汰じゃねえな」
オックスの背後ではリリスが弓に矢を番えている。
「突撃を受け止めると言っても別に矢を放っちゃダメなわけではないのよね?モタモタしている敵がいたら射抜いてあげるわ」
イリーナとリズも頷きながら弓を構えた。
前方では竜騎兵が密集して突撃に入ろうとしている。
「来ます!」
ゼロの声と共にワイバーンが咆哮を上げて突撃を開始した。
即座にリリス達が矢を放つがランスで払われ、盾で受け止められ、最早竜騎兵には通用しない。
それでもリリスの放った矢が先頭に続くワイバーンを貫き、倒れたワイバーンから振り落とされた竜人にイリーナとリズの矢が突き刺さる。
残る9騎がオックス達の目前に迫る。
オックスもライズもイズもゼロの指示どおり飛び出したりはせず、それぞれの武器を構えて防御姿勢を取っていた。
双方が衝突する直前、突撃する竜騎兵の前に大盾を持った数百のスケルトンウォリアーが出現して瞬時に防御壁を構築した。
目の前に突然現れた大盾の壁に竜騎兵の突撃の勢いがほんの僅かに鈍ったが、竜騎兵は止まることなく防御壁に衝突し、スケルトンウォリアー達を蹴散らした。
一瞬にしてスケルトンウォリアーの防御壁は崩壊し、直撃を受けたスケルトンウォリアーはバラバラに吹き飛んだが、それもこれもゼロの想定内だった。
防御壁を突破したと思ったのも束の間、生き残りやバラバラになったスケルトンウォリアーがワイバーンの全身に取り付く。
全身に纏わりついたスケルトンウォリアーに突撃の勢いは完全に失われた。
「今です!」
ゼロの合図でオックス達と左右に展開していたスケルトンウォリアー達が竜騎兵に一斉に飛びかかった。
無謀ともいえる竜騎兵相手の肉弾戦が始まった。
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