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ゼロの悪巧み
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水鏡を通してゼロの宣戦布告を受けたベルベットは妖艶な笑みを浮かべた。
この情報は魔王ゴッセルにも届いている筈だ。
「宣戦布告・・・本当に面白い人。でも、魔王様にまで刃向かうなんて、身の程知らずも甚だしい。結構、挑発に乗ってあげる。私自ら迎え撃ってあげましょう」
ベルベットは自軍を等分し、連合軍の対処を副将に任せて自らは2万の軍勢を率いてゼロの迎撃に向かった。
その頃、ゼロ達は夜の闇に紛れて潜伏中の村を離れて再びその姿を眩ませた。
捕らえたダークエルフはメッセンジャーの役割を果たしてもらうために解放した。
当然ながらイズとリズの手によってゼロ達の足取りが辿れないように巧妙に秘匿操作をされたうえである。
「決戦まで2日、時間がありません。速やかに移動して戦場の優位な位置を確保しなくてはいけません」
決戦場と決めた国境線に向かう森の中で地図を広げて全員に説明する。
連合国と帝国の国境は王国と連合国の国境の山脈ほどではないが、山々の連なりに隔てられている。
そして、ゼロ達が向かうのは道などは整備されていないが、辛うじて山を抜けて帝国に向かうことができる地点。
魔王軍を突破できたら、又は魔王軍がゼロ達を無視したならばそこを通過して帝国領に進軍するつもりだ。
「場合によっては数万の大軍を相手にするとなると俺達が最前線に立つ機会は無いな。戦いはゼロのアンデッドを中心にして、俺達はアンデッドを指揮するゼロの護衛に徹するべきだ」
ライズの言葉に全員が頷く。
確かに大軍同士の衝突ではライズ達の個人的な強さは意味を呈さないのだ。
オックスは山の入口の荒野を指示した。
「敵が万単位の軍勢で来るのならば、この荒野に布陣するだろう。だとしたら、俺達は真正面に陣を張るのは危険だ」
レナもオックスに同意する。
「ゼロが万の兵を連れてこい、なんてハッタリかましたからたまったもんじゃないわ。こっちの総兵力の10倍以上じゃない。戦略やアンデッドの用兵はゼロに任せるとして、私達は戦場を見渡せる後方の丘を確保したいところね」
レナの意見に皆が同意するが、ゼロだけは不敵な笑みを浮かべながらも首を縦に振らない。
「どうしたんだ?」
そのゼロの様子を見てオックスが問いかける。
「いえ、ちょっと安心しました。皆さんの意見を聞いて私の考えが間違えていなかったことが分かりました。そのうえで、私の策を説明します」
ゼロの説明を聞いた全員が呆れ顔、白け顔、蔑んだ目でゼロを見た。
「ゼロ、いくらなんでもこれは無いんじゃない?バカに磨きが掛かってきたわよ?」
目を細めてゼロを睨むレナ。
「こりゃあ、魔人だかなんだか知らんが、魔王軍の将軍に叱られるぞ」
オックスも頭を抱える。
「ガキのイタズラみたいで面白いじゃねえか」
ライズは楽観的だ。
「ゼロが魔族に見えてきたわ」
「いえ、生粋の詐欺師よ」
呆れ顔のリリスとイリーナ。
「これは・・・こんな大それたこと、ダークエルフでも思いつかないぞ」
「戦いが終わったら私が矯正してあげないと・・・」
イズとリズが物騒なことを言う。
コルツは指を鼻先に当てて天を仰いでいる。
竜人のこの仕草は何を意味するのだろう?
「そんなに酷いですか?効率的かつ効果的な作戦だと思うのですが」
皆に軽蔑されてもゼロは意に介していない。
「そりゃそうだ。しかも、敵だってこんな馬鹿げた策は思いもよらんだろうな」
「確かに、敵の頭が良ければ良い程嵌まってくるかもしれないわね。そして策に嵌まれば僅かながらも勝機が見いだせるかもしれないわ」
呆れながらもオックスとレナはゼロの策を真剣に検討し、そしてゼロの策に乗ってみることにした。
どちらにしても隊長はゼロで、主力であるアンデッドを指揮するのもゼロなのだ。
「失敗は許されないし、失敗すれば即全滅に繋がるが、やってみる価値は大いにある。策に嵌まった時の敵将の顔が見てみたいもんだな。みんな、時間がない直ぐに行動を開始するぞ!」
オックスの言葉に全員が覚悟を決め、目的地に向けて移動を開始した。
「俺、ゼロと仲良くしていて良かった。敵に回したら絶対に太刀打ちできないわ・・・」
「バカなこと言ってないの!」
ライズの呟きを聞いたイリーナはライズの頭を小突いたが、内心はライズと同意見だった。
(あの日、ゼロに声を掛けなかったら、一緒に冒険に出なかったら私達はどうなっていたのかしら?ゼロとの縁が始まったあの日が私達の分岐点だったのね)
イリーナは自分の横を歩くライズの横顔とゼロの背中を交互に見比べた。
2日後、太陽が天頂に差し掛かるころ、軍の移動と展開を済ませたベルベットはゼロ達が現れるのを待ち受けていた。
総兵力2万、オークやトロル、リザードマンによる歩兵、ケンタウロスやダークエルフ、竜人による騎兵、その他に弓兵隊や魔導部隊による重厚な布陣がオックスの予測したとおり広い荒野に展開している。
「さあ、何時でもいらっしゃい。叩き潰してあげるわ」
ベルベットはゼロ達が到着するのを本陣でお茶を飲みながら待つ。
敵がどれ程の兵力で攻めて来ようとも真正面から受け止めて殲滅できる構えだった。
やがて西方から軍勢が接近して来る旨の報告を受ける。
「臆することなく来たわね。誉めてあげる」
敵軍接近の報告を受けてベルベットは立ち上がった。
近づいている敵軍は3千程。
スケルトン、スペクター、ウィル・オー・ザ・ウィスプの混合部隊だ。
「アンデッド・・・なる程。ゼロという男、ネクロマンサーだったわけね。ホント、面白いわ」
ベルベットは氷のような微笑みを浮かべた。
この情報は魔王ゴッセルにも届いている筈だ。
「宣戦布告・・・本当に面白い人。でも、魔王様にまで刃向かうなんて、身の程知らずも甚だしい。結構、挑発に乗ってあげる。私自ら迎え撃ってあげましょう」
ベルベットは自軍を等分し、連合軍の対処を副将に任せて自らは2万の軍勢を率いてゼロの迎撃に向かった。
その頃、ゼロ達は夜の闇に紛れて潜伏中の村を離れて再びその姿を眩ませた。
捕らえたダークエルフはメッセンジャーの役割を果たしてもらうために解放した。
当然ながらイズとリズの手によってゼロ達の足取りが辿れないように巧妙に秘匿操作をされたうえである。
「決戦まで2日、時間がありません。速やかに移動して戦場の優位な位置を確保しなくてはいけません」
決戦場と決めた国境線に向かう森の中で地図を広げて全員に説明する。
連合国と帝国の国境は王国と連合国の国境の山脈ほどではないが、山々の連なりに隔てられている。
そして、ゼロ達が向かうのは道などは整備されていないが、辛うじて山を抜けて帝国に向かうことができる地点。
魔王軍を突破できたら、又は魔王軍がゼロ達を無視したならばそこを通過して帝国領に進軍するつもりだ。
「場合によっては数万の大軍を相手にするとなると俺達が最前線に立つ機会は無いな。戦いはゼロのアンデッドを中心にして、俺達はアンデッドを指揮するゼロの護衛に徹するべきだ」
ライズの言葉に全員が頷く。
確かに大軍同士の衝突ではライズ達の個人的な強さは意味を呈さないのだ。
オックスは山の入口の荒野を指示した。
「敵が万単位の軍勢で来るのならば、この荒野に布陣するだろう。だとしたら、俺達は真正面に陣を張るのは危険だ」
レナもオックスに同意する。
「ゼロが万の兵を連れてこい、なんてハッタリかましたからたまったもんじゃないわ。こっちの総兵力の10倍以上じゃない。戦略やアンデッドの用兵はゼロに任せるとして、私達は戦場を見渡せる後方の丘を確保したいところね」
レナの意見に皆が同意するが、ゼロだけは不敵な笑みを浮かべながらも首を縦に振らない。
「どうしたんだ?」
そのゼロの様子を見てオックスが問いかける。
「いえ、ちょっと安心しました。皆さんの意見を聞いて私の考えが間違えていなかったことが分かりました。そのうえで、私の策を説明します」
ゼロの説明を聞いた全員が呆れ顔、白け顔、蔑んだ目でゼロを見た。
「ゼロ、いくらなんでもこれは無いんじゃない?バカに磨きが掛かってきたわよ?」
目を細めてゼロを睨むレナ。
「こりゃあ、魔人だかなんだか知らんが、魔王軍の将軍に叱られるぞ」
オックスも頭を抱える。
「ガキのイタズラみたいで面白いじゃねえか」
ライズは楽観的だ。
「ゼロが魔族に見えてきたわ」
「いえ、生粋の詐欺師よ」
呆れ顔のリリスとイリーナ。
「これは・・・こんな大それたこと、ダークエルフでも思いつかないぞ」
「戦いが終わったら私が矯正してあげないと・・・」
イズとリズが物騒なことを言う。
コルツは指を鼻先に当てて天を仰いでいる。
竜人のこの仕草は何を意味するのだろう?
「そんなに酷いですか?効率的かつ効果的な作戦だと思うのですが」
皆に軽蔑されてもゼロは意に介していない。
「そりゃそうだ。しかも、敵だってこんな馬鹿げた策は思いもよらんだろうな」
「確かに、敵の頭が良ければ良い程嵌まってくるかもしれないわね。そして策に嵌まれば僅かながらも勝機が見いだせるかもしれないわ」
呆れながらもオックスとレナはゼロの策を真剣に検討し、そしてゼロの策に乗ってみることにした。
どちらにしても隊長はゼロで、主力であるアンデッドを指揮するのもゼロなのだ。
「失敗は許されないし、失敗すれば即全滅に繋がるが、やってみる価値は大いにある。策に嵌まった時の敵将の顔が見てみたいもんだな。みんな、時間がない直ぐに行動を開始するぞ!」
オックスの言葉に全員が覚悟を決め、目的地に向けて移動を開始した。
「俺、ゼロと仲良くしていて良かった。敵に回したら絶対に太刀打ちできないわ・・・」
「バカなこと言ってないの!」
ライズの呟きを聞いたイリーナはライズの頭を小突いたが、内心はライズと同意見だった。
(あの日、ゼロに声を掛けなかったら、一緒に冒険に出なかったら私達はどうなっていたのかしら?ゼロとの縁が始まったあの日が私達の分岐点だったのね)
イリーナは自分の横を歩くライズの横顔とゼロの背中を交互に見比べた。
2日後、太陽が天頂に差し掛かるころ、軍の移動と展開を済ませたベルベットはゼロ達が現れるのを待ち受けていた。
総兵力2万、オークやトロル、リザードマンによる歩兵、ケンタウロスやダークエルフ、竜人による騎兵、その他に弓兵隊や魔導部隊による重厚な布陣がオックスの予測したとおり広い荒野に展開している。
「さあ、何時でもいらっしゃい。叩き潰してあげるわ」
ベルベットはゼロ達が到着するのを本陣でお茶を飲みながら待つ。
敵がどれ程の兵力で攻めて来ようとも真正面から受け止めて殲滅できる構えだった。
やがて西方から軍勢が接近して来る旨の報告を受ける。
「臆することなく来たわね。誉めてあげる」
敵軍接近の報告を受けてベルベットは立ち上がった。
近づいている敵軍は3千程。
スケルトン、スペクター、ウィル・オー・ザ・ウィスプの混合部隊だ。
「アンデッド・・・なる程。ゼロという男、ネクロマンサーだったわけね。ホント、面白いわ」
ベルベットは氷のような微笑みを浮かべた。
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