25 / 51
第1章 進退窮まった人々
(24)意思統一
しおりを挟む
「クレアさん。どうしても分からないので、お伺いしたいのですが」
「何ですか?」
「父のあなた宛ての手紙には、『故クライブ殿下の遺骸は、我が家の墓所に埋葬済みで毎年供養しております。後程、家族にお尋ねください』と記載してありますが……」
最後に回ってきた手紙に視線を落としながらエリオットがそう述べると、フィーネがその後を継いだ。
「確かにレンフィス伯爵家の墓所に、全く表記が無い小さな墓碑が有ります。私達はそれを、セレナの前後に産まれて夭折した、兄弟の物かと思っておりました。ですがそこが、本物のクライブ殿下の墓所だと言うのなら、どうして旦那様がご遺体を引き取る事ができたのでしょう?」
「ゼナ?」
その場にいる殆どの者を代表した彼女の問いに、クレアは困った顔になってゼナに声をかけた。しかし彼女も、当惑した表情のまま首を振る。
「それは本当に私達にも、全くわけが分からないのです。泣く泣く深夜密かに後宮の庭園の、目立たない片隅の木の根元に、殿下のご遺体を埋めた筈でしたのに……。そこで時折、祈りを捧げていたのですが」
するとここで、この間黙っていた庭師の一人が、恐縮気味に手を上げながら発言した。
「エリオット坊ちゃま。少し喋っても構いませんかね?」
「キリル? 勿論、構わないよ?」
そして発言の許可を貰った年配の庭師は、首を傾げながら話し出した。
「王宮に何人の庭師が居るのかは知らんけど、きちんと担当する場所が決まっとりますよね?」
「普通に考えると、そうじゃないのかな?」
「加えて、王宮の庭園なんていう所だと、毎日隅々まで手入れを行き届かせる必要がありませんかね?」
「それは確かに……」
「落ち葉が大量にあっても、いつの間にか無くなっているしな」
エリオットに続き、セレナとラーディスも考え込みながら答えると、キリルは真顔で話を締めくくった。
「それなら素人が穴を掘って埋めた所なんて、幾ら目立たない場所だとしても、日々管理している庭師の目に留まらないものですかね? 不自然に柔らかい土が盛り上がっていたら、俺だったら気が付きますが」
それを聞いたエリオットが、納得した風情で頷く。
「ああ、なるほど……。なんとなく、繋がった気がする」
「エリオット? 繋がったって、何が?」
不思議そうに問いかけた姉に向き直った彼は、たった今考えついた内容を他の者達に披露した。
「父様は貴族にはしては珍しく、我が家にとってはかなり珍しい、内務省勤務の官吏でした。最後はそこそこの地位にいましたが、二十年程前であれば、下っ端のすぐ上の辺りの地位が妥当ですよね?」
「そうかもしれないけど……。それが?」
「内務省でも人事部辺りの配属だと、王宮内で使役されている人間の管理などを担いますよね?」
「……それで?」
なんとなくセレナには話の筋が見えてきたが、余計な事は言わずに弟に話の先を促した。
「当時、庭師なども監督する立場だったのかな、と。それで自分が管理している庭園が不自然に掘り返されているのを見つけた庭師が、不審に思ってそこを掘り返してみたら、どう見ても王族の特徴がある乳児の遺骸を発見してしまったとしたら?」
それを聞いた彼の家族は、真剣な顔で意見を述べ合った。
「相当驚く事は確かね。対外的には、クライブ殿下は死んでいないのだし」
「陛下が女性に手を出して産ませた子供が、密かに処分されたとか邪推しそうだ」
「どう考えても一介の庭師の手に余るし、変な騒ぎになったら、責任を取らされるかもしれないわ。それで青くなった庭師が、密かに旦那様に相談したのでは?」
「それで父様は密かに遺骸を引き取った上、その庭師に口止めしたわけね?」
「あの義父上ならあり得る。そして身元が不明だが、公にしないまま王族かもしれない遺骸を放置できないと、レンフィス伯爵家の墓所に密かに埋葬したわけだ」
顔を見合わせながら頷き合う家族を見て、エリオットが話を続けた。
「恐らく、それが真相じゃないかと思う。それから父様は王宮内の動向を調べて、陛下が手を付けた女性の話も聞きつけたんじゃないかな。更にその家が産まれた娘をどこぞに養子に出した事実を知って、グランバル国との当時の関係性を考慮して、その娘と殿下を入れ替えた事まで推察していた上で内密にしていたのなら、父様の勘の冴えに寒気を覚えるけど」
そんな事を淀みなく言い切った弟に向かって、セレナは顔を引き攣らせながら感想を述べた。
「エリオット……。私は今、あなたの推理っぷりに寒気を覚えているわ」
「そうですか? それで女の身であるので婚約者も決められず、最近すっかり進退窮まっていた王妃様とクレアさん達の境遇と我が家の継承問題を、死ぬ前に一気に纏めて解決しようと企んだ父様の胆力には、本当に頭が下がります」
「いや……、それは胆力云々と言うより、腹黒いと言う方が相応しいと思う……」
思わずラーディスが額を押さえながら呻いたところで、クレアが顔付きを改めて声をかけてきた。
「それでは、こちらの事情は全て説明しましたので、レンフィス伯爵家の意向をお伺いしたいのですが」
「え? 意向?」
咄嗟に意味を捉えかねたセレナが困惑すると、エリオットが横から解説した。
「姉様。つまり、このままクレアさんとの偽装結婚を成立させる事を目指すのか、それとも長年陛下を欺いていた事実を白日の下に晒すのか、どちらを選ぶのかと言う事です。ですが告発する場合、我がレンフィス伯爵家の関与も明らかになって、責任を問われるのは確実です。継承云々の前に、我が家の取り潰しの危機ですね」
そんな事を冷静に断言されて、セレナは本気で頭を抱えた。
「お父様……。今更言っても仕方がないけど、せめて当事者にだけは、直接説明しておいてくれても良いじゃない……。本当に恨むわよ?」
そこで家族や使用人達から、憐憫の視線を一身に浴びたセレナだったが、少ししてから決意に満ちた顔を上げた。
「分かりました。こうなったらクライブ殿下に関する真相は、死んでも漏らしません。あなたと偽装結婚するので、エリオットが無事に正式に伯爵位を継承するまで、宜しくお願いします」
そう言って頭を下げた彼女を見て、クレアは表情を緩めて大きく頷く。
「勿論、エリオット君の後見についてはお約束します。その後、クライブは死亡した事にして、あなたを解放してあげますから」
「それに関しては、引け目に思わなくても結構です。最悪、遠縁のバカボンを押し付けられるか、年寄りの後妻にされるかと思っていたので。寧ろ、結婚相手が若くて美形なんですから、望むところですわ!」
「それはどうも、ありがとうございます」
握り拳で主張してきたセレナを見て、クレアは思わず失笑してしまった。そんな二人を眺めながら、屋敷の者達が呆れと諦めを含んだ呟きを漏らす。
「お嬢様……、完全に開き直ったな」
「どう見ても、自棄になってますよね」
「確かにまともな神経じゃ、やっていけないかもしれないけど」
「若くて美形なのは確かだけど、女じゃなぁ……」
そんな彼らに向かって、セレナが語気強く叫ぶ。
「皆、分かっているわね!? 今、ここで見聞きした事は、口外厳禁よ! 例え親兄弟妻子にも、漏らしたら駄目ですからね!?」
「畏まりました」
「勿論ですわ」
「承知しました」
「本当にレンフィス伯爵家の家風と言うか気質は、普通の貴族とは随分異なっていますね」
セレナの厳命に使用人達は即座に真顔で応え、そんな彼らを眺めながら、クレアは心底感心した風情で無意識に呟いていた。
「何ですか?」
「父のあなた宛ての手紙には、『故クライブ殿下の遺骸は、我が家の墓所に埋葬済みで毎年供養しております。後程、家族にお尋ねください』と記載してありますが……」
最後に回ってきた手紙に視線を落としながらエリオットがそう述べると、フィーネがその後を継いだ。
「確かにレンフィス伯爵家の墓所に、全く表記が無い小さな墓碑が有ります。私達はそれを、セレナの前後に産まれて夭折した、兄弟の物かと思っておりました。ですがそこが、本物のクライブ殿下の墓所だと言うのなら、どうして旦那様がご遺体を引き取る事ができたのでしょう?」
「ゼナ?」
その場にいる殆どの者を代表した彼女の問いに、クレアは困った顔になってゼナに声をかけた。しかし彼女も、当惑した表情のまま首を振る。
「それは本当に私達にも、全くわけが分からないのです。泣く泣く深夜密かに後宮の庭園の、目立たない片隅の木の根元に、殿下のご遺体を埋めた筈でしたのに……。そこで時折、祈りを捧げていたのですが」
するとここで、この間黙っていた庭師の一人が、恐縮気味に手を上げながら発言した。
「エリオット坊ちゃま。少し喋っても構いませんかね?」
「キリル? 勿論、構わないよ?」
そして発言の許可を貰った年配の庭師は、首を傾げながら話し出した。
「王宮に何人の庭師が居るのかは知らんけど、きちんと担当する場所が決まっとりますよね?」
「普通に考えると、そうじゃないのかな?」
「加えて、王宮の庭園なんていう所だと、毎日隅々まで手入れを行き届かせる必要がありませんかね?」
「それは確かに……」
「落ち葉が大量にあっても、いつの間にか無くなっているしな」
エリオットに続き、セレナとラーディスも考え込みながら答えると、キリルは真顔で話を締めくくった。
「それなら素人が穴を掘って埋めた所なんて、幾ら目立たない場所だとしても、日々管理している庭師の目に留まらないものですかね? 不自然に柔らかい土が盛り上がっていたら、俺だったら気が付きますが」
それを聞いたエリオットが、納得した風情で頷く。
「ああ、なるほど……。なんとなく、繋がった気がする」
「エリオット? 繋がったって、何が?」
不思議そうに問いかけた姉に向き直った彼は、たった今考えついた内容を他の者達に披露した。
「父様は貴族にはしては珍しく、我が家にとってはかなり珍しい、内務省勤務の官吏でした。最後はそこそこの地位にいましたが、二十年程前であれば、下っ端のすぐ上の辺りの地位が妥当ですよね?」
「そうかもしれないけど……。それが?」
「内務省でも人事部辺りの配属だと、王宮内で使役されている人間の管理などを担いますよね?」
「……それで?」
なんとなくセレナには話の筋が見えてきたが、余計な事は言わずに弟に話の先を促した。
「当時、庭師なども監督する立場だったのかな、と。それで自分が管理している庭園が不自然に掘り返されているのを見つけた庭師が、不審に思ってそこを掘り返してみたら、どう見ても王族の特徴がある乳児の遺骸を発見してしまったとしたら?」
それを聞いた彼の家族は、真剣な顔で意見を述べ合った。
「相当驚く事は確かね。対外的には、クライブ殿下は死んでいないのだし」
「陛下が女性に手を出して産ませた子供が、密かに処分されたとか邪推しそうだ」
「どう考えても一介の庭師の手に余るし、変な騒ぎになったら、責任を取らされるかもしれないわ。それで青くなった庭師が、密かに旦那様に相談したのでは?」
「それで父様は密かに遺骸を引き取った上、その庭師に口止めしたわけね?」
「あの義父上ならあり得る。そして身元が不明だが、公にしないまま王族かもしれない遺骸を放置できないと、レンフィス伯爵家の墓所に密かに埋葬したわけだ」
顔を見合わせながら頷き合う家族を見て、エリオットが話を続けた。
「恐らく、それが真相じゃないかと思う。それから父様は王宮内の動向を調べて、陛下が手を付けた女性の話も聞きつけたんじゃないかな。更にその家が産まれた娘をどこぞに養子に出した事実を知って、グランバル国との当時の関係性を考慮して、その娘と殿下を入れ替えた事まで推察していた上で内密にしていたのなら、父様の勘の冴えに寒気を覚えるけど」
そんな事を淀みなく言い切った弟に向かって、セレナは顔を引き攣らせながら感想を述べた。
「エリオット……。私は今、あなたの推理っぷりに寒気を覚えているわ」
「そうですか? それで女の身であるので婚約者も決められず、最近すっかり進退窮まっていた王妃様とクレアさん達の境遇と我が家の継承問題を、死ぬ前に一気に纏めて解決しようと企んだ父様の胆力には、本当に頭が下がります」
「いや……、それは胆力云々と言うより、腹黒いと言う方が相応しいと思う……」
思わずラーディスが額を押さえながら呻いたところで、クレアが顔付きを改めて声をかけてきた。
「それでは、こちらの事情は全て説明しましたので、レンフィス伯爵家の意向をお伺いしたいのですが」
「え? 意向?」
咄嗟に意味を捉えかねたセレナが困惑すると、エリオットが横から解説した。
「姉様。つまり、このままクレアさんとの偽装結婚を成立させる事を目指すのか、それとも長年陛下を欺いていた事実を白日の下に晒すのか、どちらを選ぶのかと言う事です。ですが告発する場合、我がレンフィス伯爵家の関与も明らかになって、責任を問われるのは確実です。継承云々の前に、我が家の取り潰しの危機ですね」
そんな事を冷静に断言されて、セレナは本気で頭を抱えた。
「お父様……。今更言っても仕方がないけど、せめて当事者にだけは、直接説明しておいてくれても良いじゃない……。本当に恨むわよ?」
そこで家族や使用人達から、憐憫の視線を一身に浴びたセレナだったが、少ししてから決意に満ちた顔を上げた。
「分かりました。こうなったらクライブ殿下に関する真相は、死んでも漏らしません。あなたと偽装結婚するので、エリオットが無事に正式に伯爵位を継承するまで、宜しくお願いします」
そう言って頭を下げた彼女を見て、クレアは表情を緩めて大きく頷く。
「勿論、エリオット君の後見についてはお約束します。その後、クライブは死亡した事にして、あなたを解放してあげますから」
「それに関しては、引け目に思わなくても結構です。最悪、遠縁のバカボンを押し付けられるか、年寄りの後妻にされるかと思っていたので。寧ろ、結婚相手が若くて美形なんですから、望むところですわ!」
「それはどうも、ありがとうございます」
握り拳で主張してきたセレナを見て、クレアは思わず失笑してしまった。そんな二人を眺めながら、屋敷の者達が呆れと諦めを含んだ呟きを漏らす。
「お嬢様……、完全に開き直ったな」
「どう見ても、自棄になってますよね」
「確かにまともな神経じゃ、やっていけないかもしれないけど」
「若くて美形なのは確かだけど、女じゃなぁ……」
そんな彼らに向かって、セレナが語気強く叫ぶ。
「皆、分かっているわね!? 今、ここで見聞きした事は、口外厳禁よ! 例え親兄弟妻子にも、漏らしたら駄目ですからね!?」
「畏まりました」
「勿論ですわ」
「承知しました」
「本当にレンフィス伯爵家の家風と言うか気質は、普通の貴族とは随分異なっていますね」
セレナの厳命に使用人達は即座に真顔で応え、そんな彼らを眺めながら、クレアは心底感心した風情で無意識に呟いていた。
0
あなたにおすすめの小説
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
ため息ひとつ――王宮に散る花びらのように
柴田はつみ
恋愛
「離縁を、お願いしたいのです」
笑顔で、震えずに、エレナはそう言った。
夫は言葉を失った。泣いてくれれば、怒ってくれれば、まだ受け止め方があった。しかしあの静けさは、エレナがもう十分に泣き終わった後の顔だと、ヴィクトルにはわかった。
幼なじみと結ばれた三年間。すれ違いは静かに始まり、深紅のドレスの令嬢によって加速した。ため息を飲み込み、完璧な微笑みを保ち続けた公爵夫人が、最後に選んだのは――。
王宮に散る花びらのような、夫婦の崩壊と再生の物語。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる