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きっかけは、かなり間抜けな話
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巷で某事情による外出自粛が叫ばれる中、一応IT企業に属する職場勤務の谷崎志郎は、上層部からのお達しによりリモートワークに突入した。しかしその1日目、もっと正確に言えばその午前中から、些細な違和感を覚えた。
「おかしい……」
志郎は妻子が既に出勤登校しているであろう九時過ぎにのんびり起き出し、用意してあった朝食を食べ終えた。それから一階の自室で小一時間PCに向かって仕事をしてから、珈琲を飲もうと二階のリビングに上がったが、自分の記憶と微妙に異なる光景に首を傾げる。
「テレビは消した記憶はあるが、そういえばエアコンを消した記憶がないが……」
リビングが微妙に肌寒く、停止しているエアコンに目をやりながら志郎は少しだけ自分の記憶を遡ってみたが、はっきりとした答えは見出だせなかった。
「気のせいか?」
無意識に消したんだろうと結論付けた志郎は、それ以上時間を無駄にせず、珈琲を淹れ始めた。それをリビングのソファーに座って飲み終えてから、再び自室に戻って暫くの間、作業に没頭した。一時間ほどして換気扇の下で煙草を吸おうと2階に上がってきた志郎は、キッチンに入るなり首を傾げた。
「うん? 朝起きたとき、注意して見ていなかったが、こんなにたまっていたか? それにさっき飲んだマグカップ、あのテーブルに置いたままだった気がしたが、洗い桶に入ってるな……」
各部屋の小さめのごみ箱に入れたごみを回収しておくキッチン内のごみ箱が、溢れそうになっているのを目にした直後、志郎は先程自分が珈琲を飲むのに使ったマグカップが水中に沈んでいるのを見て、眉根を寄せて考え込んだ。
「気のせいだな」
しかし考えたのはほんの数秒で、志郎はすぐに換気扇のスイッチを入れて煙草を吸い始めた。
それから仕事を再開した志郎が、昼食を近くのコンビニで調達しようと部屋を出たのは、軽く1時を過ぎていた。
「そういえば、綾が回覧板を回してくれとか言ってたよな……。昨夜、玄関先に置いてあったのを見たから……」
ふと妻からの頼まれ事を思い出した志郎は、シューズボックスの上を見回したがそこは綺麗に片付いており、他にも回覧板らしき物は見当たらなかった。
「綾が出勤する時、隣に持っていったのか?」
それなら別に自分に頼まなくても良いだろうにと、志郎は憮然としながら靴を履いて近所のコンビニに向かった。
その後、買い込んだ物で昼食を済ませた志郎は再び仕事に取り掛かり、4時を過ぎた頃に意気揚々と2階に上がった。
「さて十分働いた後は、糖分補給だよな。昼に買っておいたチョコムースを食うぞ!」
珈琲を淹れる間に出しておこうと冷蔵庫を開けた志郎だったが、取り出しやすいように真正面に置いていた筈のチョコムースが影も形も無くなっていることに愕然とした。
「……ない? いやいやいや、俺は確かに買ったよな!? そしてすぐ取り出せるように、真正面に置いておいたんだぞ!?」
動揺しながら冷蔵庫内を確認した志郎は、すぐに自分が置いていた段の一つ上の段、しかも若干奥まった所に置いてあったチョコムースを発見した。
「あった……。あったが……、俺は絶対、そこには置かなかったぞ……」
チョコムースを手前に持ってきて凝視し、眉間にシワを寄せて考え込む志郎。そして約三十秒後、彼は家族で作っているLINEグループ【谷崎さんち】にメッセージを書き込んだ。
『この家には悪戯好きな幽霊がいる。各自、注意しろ』
職場と学校の妻子の反応が後になることは分かっていた志郎は、それから珈琲を淹れてチョコムースを食べ、再び自室に戻って仕事を再開した。
『ごめん、遅くなる。ご飯だけ炊いておいて。それから幽霊云々の寝言は寝てる時に言いなさい。まさか仕事せずに寝てないわよね!?』
6時近くになってスマホが音を立てたのを契機にLINEを確認した志郎は、自分のメッセージが既読2になっているのと、綾からの怒り顔のスタンプ付きのメッセージを見て、反射的に打ち返した。
『仕事をしていたに決まってるだろ!』
軽く腹を立てたものの、ここでご飯を炊いていなかったら後が面倒なのが分かりきっていた志郎は、愚痴をこぼしながら2階へと上がった。
「はぁ……、取り敢えず、飯だけ炊いておくか……」
しかしキッチンには予想外の先客がいた。
「お? 晃、今日は随分帰りが早いな。部活はどうした?」
「は? 帰ってないけど。ずっと家にいたし」
「え?」
「俺の中学校、半月前から全面リモート授業に切り替わっているんだけど?」
どうやらほぼ同時に綾からのメッセージを目にしたらしい晃が米を研ぐ手を止めながら不思議そうに問い返してきたのを見て、志郎は慌てて記憶を探った。
「……そんな事を言っていたか?」
「ずっと朝飯を食べたら3階に上がってたんだけど、着替えて登校していたと思ってたのか? 父さんが出勤する時、玄関に通学靴がずっとあった筈だけど?」
「…………全然、気がつかなかった」
「そっちも今日からリモートワークだったっけ? 一々言うのも面倒くさいから一階の部屋まで行かなかったけどさ、使ってない部屋のエアコンは消しとけよ。それから使った食器は水を張った洗い桶の中にいれておくか、その場で洗う。帰ってきた時に散らかしていると、母さんが怒るぞ」
晃が真顔で指摘してきた事柄を聞いて、志郎は昼前から感じていた違和感の理由が漸く分かった。
「ああ……、エアコンを切ってくれたり、マグカップを入れてくれたりしたんだな。ひょっとして回覧板は……」
「昼に飯を買いに行くついでに、隣に置いてきた」
「因みに、昼にチョコムースを買ってきて食ったか?」
「昼に買って、3時間位前に食べたけど。それが何か? ……あ、さっきの幽霊云々って、まさか俺がやってた事、幽霊の仕業だと本気で思ったとか言わないよな?」
「………………」
3階に部屋のある晃と見事にすれ違い、仕事に集中していたせいか玄関の開閉音や息子の在宅にも全く気が付かなかった事実と、晃からの呆れ返った風情の視線を向けられて、志郎はがっくりと肩を落とした。
「しっかし、近くのコンビニに昼飯買いに行くのも飽きたな。でも母さんが業務が増えて苛々してるから昼飯まで準備しなくて良いって言ったし、色々好きなものを食べたいけどさ」
米をセットしながらぶつぶつ文句を呟く晃に、志郎は思わず声をかけた。
「コンビニ飯に飽きたなら、デリバリーを頼んだらどうだ? このご時世、かなりの店舗が提携しているだろう?」
「実は先週2回頼んだんだけどさ、ここの周囲にビルが多くてGPSが狂うのか、あとここは元々広い屋敷だったところを分割したのか、同じ地番で隣の家やアパートまで入ってるだろ? うちは塀がなくて玄関が奥まってるから道路から玄関の表札が見えにくいし、場所が分からないって連絡が入って、2回ともあのコンビニの駐車場まで受け取りに行ったんだよ。もう頼まないからな!」
「それは災難だったな……」
本気で憤慨している息子を見て、志郎は同情した。
「じゃあ明日はカレーなんかどうだ? あの隣駅前のカレー屋。以前綾がテイクアウトしてきて、お前美味いって言いながら食ってただろ? 先に電話かネットで注文して、受け取りに行けば良い。車を出すぞ?」
その提案に、晃は真顔で考え込んで頷く。
「……昼休みが50分間だから、そうしてくれると無駄がなくて助かる」
「よし、決まりだ」
それから男二人で、晃の昼休み時間に合わせて昼食を調達する日々が始まった。
「今日は久しぶりにケンチキとかどう?」
「そうするか。じゃあ、あの国道沿いだな。12:30に車を出すぞ」
「了解。注文しておく」
午前中に打ち合わせを行い、一緒に調達した昼飯を食べる。
リモートワークの副産物として、男同士の会話と時間がぐっと増えることになった。これはもう少し続く予定だが、何年かしたら懐かしく思い返すことになるだろう。
今日も息子と二人向かい合って昼食を食べながら、志郎はしみじみとそんな事を思った。
「おかしい……」
志郎は妻子が既に出勤登校しているであろう九時過ぎにのんびり起き出し、用意してあった朝食を食べ終えた。それから一階の自室で小一時間PCに向かって仕事をしてから、珈琲を飲もうと二階のリビングに上がったが、自分の記憶と微妙に異なる光景に首を傾げる。
「テレビは消した記憶はあるが、そういえばエアコンを消した記憶がないが……」
リビングが微妙に肌寒く、停止しているエアコンに目をやりながら志郎は少しだけ自分の記憶を遡ってみたが、はっきりとした答えは見出だせなかった。
「気のせいか?」
無意識に消したんだろうと結論付けた志郎は、それ以上時間を無駄にせず、珈琲を淹れ始めた。それをリビングのソファーに座って飲み終えてから、再び自室に戻って暫くの間、作業に没頭した。一時間ほどして換気扇の下で煙草を吸おうと2階に上がってきた志郎は、キッチンに入るなり首を傾げた。
「うん? 朝起きたとき、注意して見ていなかったが、こんなにたまっていたか? それにさっき飲んだマグカップ、あのテーブルに置いたままだった気がしたが、洗い桶に入ってるな……」
各部屋の小さめのごみ箱に入れたごみを回収しておくキッチン内のごみ箱が、溢れそうになっているのを目にした直後、志郎は先程自分が珈琲を飲むのに使ったマグカップが水中に沈んでいるのを見て、眉根を寄せて考え込んだ。
「気のせいだな」
しかし考えたのはほんの数秒で、志郎はすぐに換気扇のスイッチを入れて煙草を吸い始めた。
それから仕事を再開した志郎が、昼食を近くのコンビニで調達しようと部屋を出たのは、軽く1時を過ぎていた。
「そういえば、綾が回覧板を回してくれとか言ってたよな……。昨夜、玄関先に置いてあったのを見たから……」
ふと妻からの頼まれ事を思い出した志郎は、シューズボックスの上を見回したがそこは綺麗に片付いており、他にも回覧板らしき物は見当たらなかった。
「綾が出勤する時、隣に持っていったのか?」
それなら別に自分に頼まなくても良いだろうにと、志郎は憮然としながら靴を履いて近所のコンビニに向かった。
その後、買い込んだ物で昼食を済ませた志郎は再び仕事に取り掛かり、4時を過ぎた頃に意気揚々と2階に上がった。
「さて十分働いた後は、糖分補給だよな。昼に買っておいたチョコムースを食うぞ!」
珈琲を淹れる間に出しておこうと冷蔵庫を開けた志郎だったが、取り出しやすいように真正面に置いていた筈のチョコムースが影も形も無くなっていることに愕然とした。
「……ない? いやいやいや、俺は確かに買ったよな!? そしてすぐ取り出せるように、真正面に置いておいたんだぞ!?」
動揺しながら冷蔵庫内を確認した志郎は、すぐに自分が置いていた段の一つ上の段、しかも若干奥まった所に置いてあったチョコムースを発見した。
「あった……。あったが……、俺は絶対、そこには置かなかったぞ……」
チョコムースを手前に持ってきて凝視し、眉間にシワを寄せて考え込む志郎。そして約三十秒後、彼は家族で作っているLINEグループ【谷崎さんち】にメッセージを書き込んだ。
『この家には悪戯好きな幽霊がいる。各自、注意しろ』
職場と学校の妻子の反応が後になることは分かっていた志郎は、それから珈琲を淹れてチョコムースを食べ、再び自室に戻って仕事を再開した。
『ごめん、遅くなる。ご飯だけ炊いておいて。それから幽霊云々の寝言は寝てる時に言いなさい。まさか仕事せずに寝てないわよね!?』
6時近くになってスマホが音を立てたのを契機にLINEを確認した志郎は、自分のメッセージが既読2になっているのと、綾からの怒り顔のスタンプ付きのメッセージを見て、反射的に打ち返した。
『仕事をしていたに決まってるだろ!』
軽く腹を立てたものの、ここでご飯を炊いていなかったら後が面倒なのが分かりきっていた志郎は、愚痴をこぼしながら2階へと上がった。
「はぁ……、取り敢えず、飯だけ炊いておくか……」
しかしキッチンには予想外の先客がいた。
「お? 晃、今日は随分帰りが早いな。部活はどうした?」
「は? 帰ってないけど。ずっと家にいたし」
「え?」
「俺の中学校、半月前から全面リモート授業に切り替わっているんだけど?」
どうやらほぼ同時に綾からのメッセージを目にしたらしい晃が米を研ぐ手を止めながら不思議そうに問い返してきたのを見て、志郎は慌てて記憶を探った。
「……そんな事を言っていたか?」
「ずっと朝飯を食べたら3階に上がってたんだけど、着替えて登校していたと思ってたのか? 父さんが出勤する時、玄関に通学靴がずっとあった筈だけど?」
「…………全然、気がつかなかった」
「そっちも今日からリモートワークだったっけ? 一々言うのも面倒くさいから一階の部屋まで行かなかったけどさ、使ってない部屋のエアコンは消しとけよ。それから使った食器は水を張った洗い桶の中にいれておくか、その場で洗う。帰ってきた時に散らかしていると、母さんが怒るぞ」
晃が真顔で指摘してきた事柄を聞いて、志郎は昼前から感じていた違和感の理由が漸く分かった。
「ああ……、エアコンを切ってくれたり、マグカップを入れてくれたりしたんだな。ひょっとして回覧板は……」
「昼に飯を買いに行くついでに、隣に置いてきた」
「因みに、昼にチョコムースを買ってきて食ったか?」
「昼に買って、3時間位前に食べたけど。それが何か? ……あ、さっきの幽霊云々って、まさか俺がやってた事、幽霊の仕業だと本気で思ったとか言わないよな?」
「………………」
3階に部屋のある晃と見事にすれ違い、仕事に集中していたせいか玄関の開閉音や息子の在宅にも全く気が付かなかった事実と、晃からの呆れ返った風情の視線を向けられて、志郎はがっくりと肩を落とした。
「しっかし、近くのコンビニに昼飯買いに行くのも飽きたな。でも母さんが業務が増えて苛々してるから昼飯まで準備しなくて良いって言ったし、色々好きなものを食べたいけどさ」
米をセットしながらぶつぶつ文句を呟く晃に、志郎は思わず声をかけた。
「コンビニ飯に飽きたなら、デリバリーを頼んだらどうだ? このご時世、かなりの店舗が提携しているだろう?」
「実は先週2回頼んだんだけどさ、ここの周囲にビルが多くてGPSが狂うのか、あとここは元々広い屋敷だったところを分割したのか、同じ地番で隣の家やアパートまで入ってるだろ? うちは塀がなくて玄関が奥まってるから道路から玄関の表札が見えにくいし、場所が分からないって連絡が入って、2回ともあのコンビニの駐車場まで受け取りに行ったんだよ。もう頼まないからな!」
「それは災難だったな……」
本気で憤慨している息子を見て、志郎は同情した。
「じゃあ明日はカレーなんかどうだ? あの隣駅前のカレー屋。以前綾がテイクアウトしてきて、お前美味いって言いながら食ってただろ? 先に電話かネットで注文して、受け取りに行けば良い。車を出すぞ?」
その提案に、晃は真顔で考え込んで頷く。
「……昼休みが50分間だから、そうしてくれると無駄がなくて助かる」
「よし、決まりだ」
それから男二人で、晃の昼休み時間に合わせて昼食を調達する日々が始まった。
「今日は久しぶりにケンチキとかどう?」
「そうするか。じゃあ、あの国道沿いだな。12:30に車を出すぞ」
「了解。注文しておく」
午前中に打ち合わせを行い、一緒に調達した昼飯を食べる。
リモートワークの副産物として、男同士の会話と時間がぐっと増えることになった。これはもう少し続く予定だが、何年かしたら懐かしく思い返すことになるだろう。
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