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第65話 旅立ち
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俺とユリアーナとロッテの三人は礼拝堂を見下ろせる二階の部屋へと来ていた。
礼拝堂では大勢の神官たちの先頭に立って怪我人や病人を治療するオットー助祭の姿があった。
「信者の皆さんがオットー助祭のことを拝んでますね」
窓に張り付いて礼拝堂を見下ろしていたロッテが感心したように言った。
彼女の言葉通り、大勢の信者がオットー助祭を拝んでいた。
治療してもらった人はもちろん、礼拝堂に集まった人たちのほとんどがそうだ。
治療にあたっているのはオットー助祭だけではなかった。
「軽い怪我や病気の人たちは他の神官に任せたのね」
「さすがオットー助祭だ」
人気取りのために病気や怪我の程度に関係なく傷病者を一人で治療しようとしていた悪徳司教とは大違いだ。
「あんなに大勢の神官が集まるのは初めて見ました」
「見習い神官も含めて総動員したみたいだな」
光魔法が使える神官たちは治療にあたり、それ以外の神官・見習い神官たちはその補佐や人々の誘導をしている。
「司祭様がオットー助祭に指示をあおいでいるように見えますよ」
ロッテの視線の先には、オットー助祭と会話した後、軽く会釈して踵を返す司祭の姿があった。
それを見たユリアーナが言う。
「人は圧倒的な力の前にはひれ伏すのよ」
「この場合は力だけじゃないけどな」
「まあね」
俺の反論にユリアーナが渋々と同意し、ロッテが嬉しそうに振り返った。
「ですよね」
ユリアーナの言うことも確かに真理だ。
圧倒的な高レベルの光魔法で裏付けされた治癒の力があるとはいえ、自分よりも高位の神官たちの協力を引き出せているのはオットー助祭のひととなりがあるのは間違いない。
「とはいえ、力があるに越したことはない」
「光魔法のスキル付与も大盤振る舞いしたものね」
「そんなに高位の光魔法を付与したんですか?」
とロッテ。
「オットー助祭に付与した光魔法のスキルはこの世界でも二番目に高レベルだからな」
「一番は誰なんですか?」
「一番はロッテだ」
「え? やだ、そんな……、いきなり何を言うんですか、もう!」
突然、頬を赤らめて身体をよじりだした。
ときどき、突然、自分の世界に入り込むな。
「盛大に勘違いするんじゃない」
「え? 勘違い?」
紅潮した頬で可愛らしく小首を傾げるロッテに言う。
「お前に付与した光魔法の方が高レベルだという話をしているんだ」
「ああ、昨夜の!」
胸の前で両の手のひらを打つ。
「昨夜も説明したと思うが、使えるようになった魔法やスキルは光魔法だけじゃないからな」
ロッテが身に付けているアクセサリー類――、指輪、腕輪、ネックレス、アンクレット等に付与した魔法やスキルをすべて剥奪し、彼女本人に付与し直したことを改めて告げた。
「昨夜までは魔道具だったそれらが、いまは何のスキルも付与されていないただのアクセサリーだということだ」
「それじゃこの指輪や腕輪も、もう必要ないんですか」
少し残念そうな表情で身に付けたアクセサリーを見詰める。
「そんな物がなくてもたくさんの魔法やスキルが使えるんだ、嬉しいだろ?」
「やっぱりー。生まれて初めて男の人からプレゼントされたアクセサリーだったのにー……」
不幸のどん底のような声と表情。
これまでは魔道具の力を借りなければ発揮できなかった能力が自分自身の能力となったのだからもう少し喜ぶと思った。
だが、能力を得た喜びはさておき、アクセサリー類を手放すのは悲しいようだ。
泣きべそをかきながら指輪を外そうとしているロッテに言う。
「あー、なんだ。指輪も腕輪も、何だったらアクセサリーは一つも返さなくていいぞ」
「本当ですか!」
途端、表情が明るくなった。
何とも現金なものだな。
内心で苦笑しながら言う。
「もっと良いヤツと交換しようか?」
「必要ありません。あたしはこれがいいんです」
嬉しそうな表情を浮かべたロッテが、指輪を包み込むように両手を重ねた。
その表情と仕草にドキリとした瞬間、足に痛みが走る。
「ほら、もう行くわよ」
「何も蹴ることないだろ」
「この街には四つ目の神聖石はなさそうだし、そろそろ次の街へ行きましょう」
そう言って先ほどまで礼拝堂を見下ろしていた窓に視線を向けるとこちらも可愛らしい笑顔で話を続ける。
「あの様子なら、当面はオットー助祭に任せても大丈夫そうでしょ」
「人格者だからな」
「そうですよね! オットー助祭はとても良い方ですから」
今後も孤児院の運営に力を貸してくれると約束してもらったことでロッテのオットー助祭に対する信頼は天井だった。
だが、ユリアーナの言いたかったことは違う。
そのことには触れずにユリアーナが言う。
「そうね、これであなたも安心してあたしたちと旅に出られるでしょ?」
「はい! 少し寂しいですが、あたし、ユリアーナさんやシュラさんと旅をしたいです」
「街にはロリコン代官もしるしな」
俺の一言にロッテの肩がピクリと反応しきり無言で固まるロッテをスルーしてユリアーナが聞く。
「ロリコン代官に挨拶していく?」
「こままってのもなー。挨拶くらいして行くか」
「代官様は良い方ですよ。そりゃ、あたしにとってはとても困った方ですが、この街や孤児院にとってはとても良い方です」
俺とユリアーナの会話を誤解したロッテがロリコン代官の擁護に回った。
カール・ロッシュが優秀な代官であることは間違いない。
「分かってるって」
「ロリコン代官に神罰を下すつもりはないわ」
権力と財力と行動力あるロリコンという悩ましい短所はあるが、それを補って余りある長所があるのも事実だ。
「孤児院の経営にも協力してくださると約束してくれました」
その孤児院の運営が心配なんだが……。
第二、第三のロッテが現れないとも限らない。
まあ、その辺りはオットー助祭にも頼んであるし何とかしてくれると信じよう。
「取り敢えず挨拶くらいはして行こう。他の街にも顔が利きそうだし、紹介状の数枚くらいは書いてもらっても罰はあたらないだろ」
「そうね! そうしましょう! 紹介状を書いてもらいましょう」
「騎士団へは行かないんですか?」
「何で?」
とユリアーナ。
「そこまでの義理はないかな」
騎士団は二者択一で、「どちらがマシか」という基準で一方には失脚してもらった。
個人的に恨みがあったのもある。
結果、ライバルの失脚で得したのは残った騎士団だ。
感謝されるのはこちらである。
「そう、ですか」
ロッテの寂しそうな顔に思わず言葉がでる。
「街でお世話になった人たちには一通り挨拶してから出発するか」
「それが良いと思います!」
無言で渋面を作るユリアーナだったが反対はしていない。
弾む足取りで扉へと向かうロッテに聞く。
「出発は明日にして、今夜は孤児院に泊めてもらえるよう頼めるか?」
「もちろんです! 院長にダメだと言われても泊まれるようにしてみせます!」
溌剌とした答えが返ってきた。
内容はともかく、俺の心もどこか弾む。
「ほどほどにな」
そう言って俺も二人に続いて扉へと向かう。
この広い世界に散らばった百個余りの神聖石。
すべて探し出すにはまだまだ時間がかかりそうだが、この二人となら多少時間がかかっても良いかもしれないな。
幸い、この異世界で生きていくのに困らないだけの力はある。
どうせならこの異世界を巡り、楽しみながら探すのもありだろう。
そんな風に考えると心が弾む。
「たっくん、急ぐわよ。のんびりしていたら神聖石を悪用するヤツやこの間みたいなアンデッド・オーガみたいにこの世界の住民じゃ手に負えない魔物の出現に繋がっちゃうかもしれないんだから」
ユリアーナの言葉が俺を現実に引き戻した
◇
翌日の早朝、孤児院の子どもたちが起きるよりも早く俺たち三人はラタの街を後にした。
街を出て程なく、馬車の操車をするロッテが寂しそうな表情で何度も振り返る。
俺は馬車のなかからロッテの隣へと移動しながら聞いた。
「やっぱり生まれ育った街から離れたくはないか?」
「そうですね……。何日か前に行商人さんの馬車に潜り込んだときは感じなかった寂しさがあります」
ロリコン代官から逃げるのに必死だったのだからそれもうなずける。
「街に残ってもいいんだぞ」
「戻りませんよ。あたしの居場所はお二人の隣なんですから」
キッパリとした口調で即答した。
「ありがとう」
「どうしたんですか?」
「楽な旅じゃないけど、改めてよろしくな」
「こちらこそよろしくお願いします」
「こら、助手1号と2号。あたしを仲間外れにしないの」
頬を染めるロッテと俺の間にユリアーナが割り込んだ。
「ユリアーナさんを仲間はずれにするわけないじゃないですか」
「そうそう。俺たちのボスはユリアーナなんだから」
「よろしい」
ユリアーナの得意げな笑みとロッテの幼い笑顔が映る。
暖かい何かが込み上げてきた。
慌てて二人から視線を前方へと、隣国へと通じる街道へと向ける。
「ロリコン代官のはなしじゃ、隣国の街で急に盗賊団が力を持ったそうじゃないか」
「異変のあるところ、神聖石あり、よ」
ユリアーナが前方を指さした。
それを横目で見ながらロッテがつぶやく。
「それって異変を起こしている原因が神聖石ってことじゃ……?」
「細かいことは気にしないの。目的を達成することだけを考えましょう」
俺とロッテの視線が交錯し、俺たちの笑い声が重なった。
◇
後の世に神の使徒にして稀代の錬金術師として名を刻む少年と慈愛の大聖女と呼ばれる少女を乗せた馬車が街道を進む。
」」」」」 あとがき 」」」」」
本作品は今話を持ちまして最終話となります。
初投稿から1年あまり。
長らくお付き合い頂きありがとうございました。
他作品も投稿しております。
そちらも応援頂けますと幸いです。
礼拝堂では大勢の神官たちの先頭に立って怪我人や病人を治療するオットー助祭の姿があった。
「信者の皆さんがオットー助祭のことを拝んでますね」
窓に張り付いて礼拝堂を見下ろしていたロッテが感心したように言った。
彼女の言葉通り、大勢の信者がオットー助祭を拝んでいた。
治療してもらった人はもちろん、礼拝堂に集まった人たちのほとんどがそうだ。
治療にあたっているのはオットー助祭だけではなかった。
「軽い怪我や病気の人たちは他の神官に任せたのね」
「さすがオットー助祭だ」
人気取りのために病気や怪我の程度に関係なく傷病者を一人で治療しようとしていた悪徳司教とは大違いだ。
「あんなに大勢の神官が集まるのは初めて見ました」
「見習い神官も含めて総動員したみたいだな」
光魔法が使える神官たちは治療にあたり、それ以外の神官・見習い神官たちはその補佐や人々の誘導をしている。
「司祭様がオットー助祭に指示をあおいでいるように見えますよ」
ロッテの視線の先には、オットー助祭と会話した後、軽く会釈して踵を返す司祭の姿があった。
それを見たユリアーナが言う。
「人は圧倒的な力の前にはひれ伏すのよ」
「この場合は力だけじゃないけどな」
「まあね」
俺の反論にユリアーナが渋々と同意し、ロッテが嬉しそうに振り返った。
「ですよね」
ユリアーナの言うことも確かに真理だ。
圧倒的な高レベルの光魔法で裏付けされた治癒の力があるとはいえ、自分よりも高位の神官たちの協力を引き出せているのはオットー助祭のひととなりがあるのは間違いない。
「とはいえ、力があるに越したことはない」
「光魔法のスキル付与も大盤振る舞いしたものね」
「そんなに高位の光魔法を付与したんですか?」
とロッテ。
「オットー助祭に付与した光魔法のスキルはこの世界でも二番目に高レベルだからな」
「一番は誰なんですか?」
「一番はロッテだ」
「え? やだ、そんな……、いきなり何を言うんですか、もう!」
突然、頬を赤らめて身体をよじりだした。
ときどき、突然、自分の世界に入り込むな。
「盛大に勘違いするんじゃない」
「え? 勘違い?」
紅潮した頬で可愛らしく小首を傾げるロッテに言う。
「お前に付与した光魔法の方が高レベルだという話をしているんだ」
「ああ、昨夜の!」
胸の前で両の手のひらを打つ。
「昨夜も説明したと思うが、使えるようになった魔法やスキルは光魔法だけじゃないからな」
ロッテが身に付けているアクセサリー類――、指輪、腕輪、ネックレス、アンクレット等に付与した魔法やスキルをすべて剥奪し、彼女本人に付与し直したことを改めて告げた。
「昨夜までは魔道具だったそれらが、いまは何のスキルも付与されていないただのアクセサリーだということだ」
「それじゃこの指輪や腕輪も、もう必要ないんですか」
少し残念そうな表情で身に付けたアクセサリーを見詰める。
「そんな物がなくてもたくさんの魔法やスキルが使えるんだ、嬉しいだろ?」
「やっぱりー。生まれて初めて男の人からプレゼントされたアクセサリーだったのにー……」
不幸のどん底のような声と表情。
これまでは魔道具の力を借りなければ発揮できなかった能力が自分自身の能力となったのだからもう少し喜ぶと思った。
だが、能力を得た喜びはさておき、アクセサリー類を手放すのは悲しいようだ。
泣きべそをかきながら指輪を外そうとしているロッテに言う。
「あー、なんだ。指輪も腕輪も、何だったらアクセサリーは一つも返さなくていいぞ」
「本当ですか!」
途端、表情が明るくなった。
何とも現金なものだな。
内心で苦笑しながら言う。
「もっと良いヤツと交換しようか?」
「必要ありません。あたしはこれがいいんです」
嬉しそうな表情を浮かべたロッテが、指輪を包み込むように両手を重ねた。
その表情と仕草にドキリとした瞬間、足に痛みが走る。
「ほら、もう行くわよ」
「何も蹴ることないだろ」
「この街には四つ目の神聖石はなさそうだし、そろそろ次の街へ行きましょう」
そう言って先ほどまで礼拝堂を見下ろしていた窓に視線を向けるとこちらも可愛らしい笑顔で話を続ける。
「あの様子なら、当面はオットー助祭に任せても大丈夫そうでしょ」
「人格者だからな」
「そうですよね! オットー助祭はとても良い方ですから」
今後も孤児院の運営に力を貸してくれると約束してもらったことでロッテのオットー助祭に対する信頼は天井だった。
だが、ユリアーナの言いたかったことは違う。
そのことには触れずにユリアーナが言う。
「そうね、これであなたも安心してあたしたちと旅に出られるでしょ?」
「はい! 少し寂しいですが、あたし、ユリアーナさんやシュラさんと旅をしたいです」
「街にはロリコン代官もしるしな」
俺の一言にロッテの肩がピクリと反応しきり無言で固まるロッテをスルーしてユリアーナが聞く。
「ロリコン代官に挨拶していく?」
「こままってのもなー。挨拶くらいして行くか」
「代官様は良い方ですよ。そりゃ、あたしにとってはとても困った方ですが、この街や孤児院にとってはとても良い方です」
俺とユリアーナの会話を誤解したロッテがロリコン代官の擁護に回った。
カール・ロッシュが優秀な代官であることは間違いない。
「分かってるって」
「ロリコン代官に神罰を下すつもりはないわ」
権力と財力と行動力あるロリコンという悩ましい短所はあるが、それを補って余りある長所があるのも事実だ。
「孤児院の経営にも協力してくださると約束してくれました」
その孤児院の運営が心配なんだが……。
第二、第三のロッテが現れないとも限らない。
まあ、その辺りはオットー助祭にも頼んであるし何とかしてくれると信じよう。
「取り敢えず挨拶くらいはして行こう。他の街にも顔が利きそうだし、紹介状の数枚くらいは書いてもらっても罰はあたらないだろ」
「そうね! そうしましょう! 紹介状を書いてもらいましょう」
「騎士団へは行かないんですか?」
「何で?」
とユリアーナ。
「そこまでの義理はないかな」
騎士団は二者択一で、「どちらがマシか」という基準で一方には失脚してもらった。
個人的に恨みがあったのもある。
結果、ライバルの失脚で得したのは残った騎士団だ。
感謝されるのはこちらである。
「そう、ですか」
ロッテの寂しそうな顔に思わず言葉がでる。
「街でお世話になった人たちには一通り挨拶してから出発するか」
「それが良いと思います!」
無言で渋面を作るユリアーナだったが反対はしていない。
弾む足取りで扉へと向かうロッテに聞く。
「出発は明日にして、今夜は孤児院に泊めてもらえるよう頼めるか?」
「もちろんです! 院長にダメだと言われても泊まれるようにしてみせます!」
溌剌とした答えが返ってきた。
内容はともかく、俺の心もどこか弾む。
「ほどほどにな」
そう言って俺も二人に続いて扉へと向かう。
この広い世界に散らばった百個余りの神聖石。
すべて探し出すにはまだまだ時間がかかりそうだが、この二人となら多少時間がかかっても良いかもしれないな。
幸い、この異世界で生きていくのに困らないだけの力はある。
どうせならこの異世界を巡り、楽しみながら探すのもありだろう。
そんな風に考えると心が弾む。
「たっくん、急ぐわよ。のんびりしていたら神聖石を悪用するヤツやこの間みたいなアンデッド・オーガみたいにこの世界の住民じゃ手に負えない魔物の出現に繋がっちゃうかもしれないんだから」
ユリアーナの言葉が俺を現実に引き戻した
◇
翌日の早朝、孤児院の子どもたちが起きるよりも早く俺たち三人はラタの街を後にした。
街を出て程なく、馬車の操車をするロッテが寂しそうな表情で何度も振り返る。
俺は馬車のなかからロッテの隣へと移動しながら聞いた。
「やっぱり生まれ育った街から離れたくはないか?」
「そうですね……。何日か前に行商人さんの馬車に潜り込んだときは感じなかった寂しさがあります」
ロリコン代官から逃げるのに必死だったのだからそれもうなずける。
「街に残ってもいいんだぞ」
「戻りませんよ。あたしの居場所はお二人の隣なんですから」
キッパリとした口調で即答した。
「ありがとう」
「どうしたんですか?」
「楽な旅じゃないけど、改めてよろしくな」
「こちらこそよろしくお願いします」
「こら、助手1号と2号。あたしを仲間外れにしないの」
頬を染めるロッテと俺の間にユリアーナが割り込んだ。
「ユリアーナさんを仲間はずれにするわけないじゃないですか」
「そうそう。俺たちのボスはユリアーナなんだから」
「よろしい」
ユリアーナの得意げな笑みとロッテの幼い笑顔が映る。
暖かい何かが込み上げてきた。
慌てて二人から視線を前方へと、隣国へと通じる街道へと向ける。
「ロリコン代官のはなしじゃ、隣国の街で急に盗賊団が力を持ったそうじゃないか」
「異変のあるところ、神聖石あり、よ」
ユリアーナが前方を指さした。
それを横目で見ながらロッテがつぶやく。
「それって異変を起こしている原因が神聖石ってことじゃ……?」
「細かいことは気にしないの。目的を達成することだけを考えましょう」
俺とロッテの視線が交錯し、俺たちの笑い声が重なった。
◇
後の世に神の使徒にして稀代の錬金術師として名を刻む少年と慈愛の大聖女と呼ばれる少女を乗せた馬車が街道を進む。
」」」」」 あとがき 」」」」」
本作品は今話を持ちまして最終話となります。
初投稿から1年あまり。
長らくお付き合い頂きありがとうございました。
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そちらも応援頂けますと幸いです。
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