異世界転生したら死ぬ直前!? ~お淑やかさゼロのトンデモ聖女に心臓を分け与えられて超絶強化! 常識外れの相棒と最強デュオで成り上がります~

阿澄飛鳥

文字の大きさ
1 / 28
1章

①ハートブレイク・トゥ・ハートブレイク ※挿絵有

しおりを挟む
 人間の体は本当に脆い。

 奇跡的に隕石が頭に当たれば死ぬし、偶然トラックに轢かれても死ぬ。まぁつまり運さえ悪ければ簡単に死ぬということだ。
 

 それは街中だろうが山中だろうが一緒だった。
 

 たまたま足を滑らせて、落ちた先にちょうどいい太さと鋭さを持った枝があればほら――心臓にぶっ刺さる。

 まさか現在社会のストレスから逃れるために大自然へと来たのに、こんな死に方をするなんて。

 潰れた心臓が最後に一度だけもがくように脈打って、止まる。そうして俺の意識は途絶えた。
 
 
             ◇   ◇   ◇
               ・   ・
             ◇   ◇   ◇


 
 という前世の記憶を思い出したのは、次の人生でも同様のことが起こった瞬間――つまり心臓が同じようにぶっ刺されたときだった。

 きっかけを今際の際に寄せ過ぎだ。これじゃ【強くてニューゲーム】が瀕死で始まるようなもんじゃないか。
 
 
 俺はユーリ・コレット。十六歳、冒険者で格闘士。現在進行形で心臓を貫かれて死にそうになっている。

 
 発端という発端はない。冒険者の仕事などすべてが命がけなのだから、それこそ運が悪かったとかそういうレベルだ。

 馬車に乗ったご令嬢を隣町まで護衛する。それだけの仕事だった。普段は獣すらめったに見かけない安全な道を通って、やけに金払いのいい依頼人から金貨をがっぽりもらって家路につく! ……はずだった。
 
 
 それがどういうわけか化け物に襲われた。

 
 その化け物は食べるためでなく殺すために殺す獣――忌獣という。

 姿かたちは色々あるが俺の目の前に出てきたのは巨大カマキリを一つ眼にしたようなやつだ。それがめっぽう強く、他の冒険者の首やら胴体やらがポンポン飛んでいく。

 そりゃあ誰も彼も逃げるだろう。

 まぁ、それは理解できる。だが仲間の冒険者たちはあろうことか依頼主の馬車をおとりに逃げやがった。

 俺にも連中と同じように自分の命を優先する度胸があれば助かったかもしれない。けれど、俺は依頼主の少女に少しだけ情が湧いてしまっていた。

 妹と同じくらいの少女だったからかもしれない。
 
 
 俺は彼女を逃がそうとした。
 

 手を引いて馬車から引っ張り出し、化け物とは反対の方向へ突き出す。
 
 そのドレスの手触りの良さに、一度でいいからこんな服を妹に着させてやりたかったと思った。しかし、折れた剣を片手にぼんやりと抱いた憧れは、すぐさま打ち砕かれる。

 華奢な彼女の背中を押したところで、俺の胸からは凶悪な脚が飛び出していたのだ。
 
「ごはっ……」


 
 ――そうして、俺は前世で日本という国で二十数年を生きた記憶を取り戻す。

 だが心臓が貫かれてからでは、現代社会の一般教養程度の知識では逆転は不可能だろう。
 
 脚が引き抜かれると俺の口から盛大に血が噴出した。それが悲しそうな目でこっちを見る彼女のドレスを汚してしまって、俺の胸は痛みよりも虚しさを感じた。

 そのまま走って逃げればいいのに、銀髪の彼女は崩れ落ちる俺の体を受け止める。

 前回の死に方にくらべれば数千倍マシな死に方かもしれない。俺はそう自分自身を慰めた。
 
 ひんやりした腕に抱かれながら俺は死を待つ。カマキリはこちらに迫ってきて、もうすぐ俺は二度目の人生の幕を下ろすことになるだろう。

 薄れゆく意識の中で、俺は願った。

 
 せめてこの子だけでも助けたい。

 
 震える右腕をカマキリに向けて、魔法を撃つ。

「【風鋭槍撃ケイセル・ランシア】……!」
 
 こんなこと無駄だとはわかっている。けれど、やらないよりはマシだ。そう思い、目を開けた瞬間――。

 
 ――カマキリの頭がなくなっていた。

 
 ……おかしいな。目の錯覚かなにかか?

 しかし、まばたきしても目の前の光景は変わらない。試しにちょっと周囲を見回してみると、ちょうど道の茂みにカマキリの頭っぽい物体がどさりと落ちるところだった。
 
「アンタに決めた」

 声が聞こえる。

 視線を上げると銀髪の彼女が俺の顔を覗き込んでいた。

 俺のくすんだ黒髪と違って、艶のある綺麗な髪だ。いい香りもする。何が起こったかわからないが俺はもうすぐ死ぬ。だがこの子が助かったならいいのかもしれない。
 
「残念だけどアンタ死ねないわよ」

 ……なんだって? こちとら心臓が潰されるのは二回目なんだ。血圧ゼロの人間がここから盛り返すのは無理なことくらいわかるんだよ。

「だいじょぶだいじょぶ。アタシの心臓半分あげたから」

 半分あげた……? ていうかなんでさっきから会話が出来て――。

 と、自分の胸を見た瞬間、俺は飛び跳ねた。

「うお!?」
 
 
 彼女の手が俺の胸に突っ込まれていた。


 それもだいぶ深くまでいっている。前腕の半分くらいまでズップリいっている。
 
「暴れないでよ。痛くないでしょ? どうどう」
 
 彼女はペットを落ち着かせるみたいに俺を宥める。

 たしかに痛みはない。むしろ胸からは血ではなく微かな光があふれ出ていて、じんわりと熱を感じた。

「な、なにやって……?」

「言ったでしょ。心臓をあげたの。さっきの魔法もアンタの願いがアタシを介して星に届いた結果よ。アタシたちは今、星から見たら一つの存在なのよ」
 
 得意げに語る彼女の顔に、俺はいつの間にかに見惚れていた。気がつくと、貫かれたはずの心臓が強く高鳴っている。

 
「アタシの名前はセレスティルーナ・ノヴァ・シュタリア。聞いたことある? 一応、この国で聖女やってるんだけど」

 
 それが、その後の相棒となる聖女様との出会いだった。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

身代わりで呪いの公爵に嫁ぎましたが、聖女の力で浄化したら離縁どころか国一番の溺愛妻になりました〜実家が泣きついてももう遅い〜

しょくぱん
恋愛
「お前のような無能は、死神の生贄にでもなっていろ」 魔力なしの無能と蔑まれ、家族に虐げられてきた伯爵令嬢レティシア。 彼女に命じられたのは、近づく者すべてを病ませるという『呪いの公爵』アレクシスへの身代わり結婚だった。 鉄格子の馬車で運ばれ、たどり着いたのは瘴気に満ちた死の城。 恐ろしい怪物のような男に殺される――。 そう覚悟していたレティシアだったが、目の前の光景に絶望よりも先に別の感情が湧き上がる。 (な、何これ……汚すぎるわ! 雑巾とブラシはどこ!?) 実は、彼女が「無能」と言われていたのは、その力が『洗浄』と『浄化』に特化した特殊な聖女の魔力だったから。 レティシアが掃除をすれば、呪いの瘴気は消え去り、枯れた大地には花が咲き、不気味だった公爵城はまたたく間にピカピカの聖域に塗り替えられていく。 さらには、呪いで苦しんでいたアレクシスの素顔は、見惚れるほどの美青年で――。 「レティシア、君は一体何者なんだ……? 体が、こんなに軽いのは初めてだ」 冷酷だったはずの公爵様から、まさかの執着と溺愛。 さらには、呪いが解けたことで領地は国一番の豊かさを取り戻していく。 一方で、レティシアを捨てた実家は、彼女の『浄化』を失ったことで災厄に見舞われ、今さら「戻ってきてくれ」と泣きついてくるが……。 「私は今、お城の掃除と旦那様のお世話で忙しいんです。お引き取りくださいませ」 これは、掃除を愛する薄幸令嬢が、その愛と魔力で死神公爵を救い、最高に幸せな居場所を手に入れるまでのお話。

異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました

黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。 彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。 戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。 現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと! 「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」 ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。 絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。 伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進! 迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る! これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー! 美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。 人生、逆転できないことなんて何もない!

スキル『農業』はゴミだと追放されたが、実は植物の遺伝子を書き換える神スキル【神農】でした。荒野を楽園に変えて異世界万博を開催します!

黒崎隼人
ファンタジー
「そのスキル『農業』?剣も魔法も使えないクズはいらん、失せろ!」 勇者召喚に巻き込まれて異世界へ転生した植物オタクの青年カイルは、地味なスキルを理由に王都を追放され、死の荒野へと捨てられた。 しかし、誰も知らなかったのだ。 彼のスキルが、ただの農業ではなく、植物の遺伝子さえ書き換え、不毛の大地を瞬く間に聖域に変える神の力【神農】であることを。 荒野を一瞬で緑豊かな楽園に変えたカイルは、伝説の魔獣フェンリルを餌付けして相棒にし、傷ついた亡国の美姫ソフィアを助け出し、自由気ままなスローライフを開始する。 やがて彼が育てた作物は「エリクサーより効く」と評判になり、その噂を聞きつけた商人によって、彼の領地で世界規模の祭典――『異世界万博』が開催されることに!? 一方、カイルを追放した王国は深刻な食糧難に陥り、没落の一途をたどっていた。 「今さら戻れと言われても、この野菜は全部、俺とソフィアのとフェンのものですから」 最強の農民が送る、世界を揺るがす大逆転・万博ファンタジー、ここに開幕!

追放された無能鑑定士、実は世界最強の万物解析スキル持ち。パーティーと国が泣きついてももう遅い。辺境で美少女とスローライフ(?)を送る

夏見ナイ
ファンタジー
貴族の三男に転生したカイトは、【鑑定】スキルしか持てず家からも勇者パーティーからも無能扱いされ、ついには追放されてしまう。全てを失い辺境に流れ着いた彼だが、そこで自身のスキルが万物の情報を読み解く最強スキル【万物解析】だと覚醒する! 隠された才能を見抜いて助けた美少女エルフや獣人と共に、カイトは辺境の村を豊かにし、古代遺跡の謎を解き明かし、強力な魔物を従え、着実に力をつけていく。一方、カイトを切り捨てた元パーティーと王国は凋落の一途を辿り、彼の築いた豊かさに気づくが……もう遅い! 不遇から成り上がる、痛快な逆転劇と辺境スローライフ(?)が今、始まる!

無能スキル【模倣】で追放された俺、実は神々の力さえコピーできる【完全模倣・改】で世界を救うことになった件

黒崎隼人
ファンタジー
クラスごと異世界に勇者として召喚された高校生、佐藤拓海。 彼が授かったのは、他人のスキルを一度だけ劣化させて使うことしかできない【模倣】スキルだった。 「無能はいらない」――仲間からの無慈悲な言葉と共に、彼は魔物が蔓延る森へと追放される。 死の淵で彼が手にしたのは、絶望か、それとも希望か。 これは、外れスキルと呼ばれた【模倣】が、あらゆる理を喰らい尽くす【完全模倣・改】へと覚醒する瞬間から始まる、一人の少年の成り上がり英雄譚。 裏切ったクラスメイト、世界の欺瞞、そして神々が仕組んだ壮大なシステム。 全てに牙を剥き、信頼できる仲間と共に自らの手で望む世界を創り上げる! 絶望の底から始まる、爽快な逆転劇と壮大な世界の謎。 あなたの心を掴んで離さない、究極の異世界ファンタジー、堂々開幕!

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

処理中です...