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第一章 クッキング無双への一歩

妹は天才なんだぜ

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 ‥できる兄の朝は早い。魔法使いを目指す妹のナガツキは、都立ローズ魔法学校へ通っている。
 兄の俺がいうのもなんだが、天才なんだ‥!
 
 本来は寮暮らしなのだが、自宅が近い事と自宅に籠って、アルバイトで錬金術師をやっている。
 
 最早‥錬金術師を名乗っているので、本職はそっちだと兄の俺は思う。

 親は幼い頃、親父もお袋も結構強い冒険者だったが‥クエストの途中、逃げ遅れた村人を救うため、犠牲になって死んだ‥

 なに、もう何年も前の事で、今は農家のダラル爺さんの処で畑借りて、
 我が家の食糧を育てたり、妹の被験体をやったり、稼ぎ頭が妹なのが今の状況なのだが‥
 
 今日、俺は15歳になる。
 妹を見送ったら、冒険者ギルドで適正職業の鑑定を依頼して貰い、冒険者として出稼ぎに出ようと思うんだ。

「お兄ちゃんおはよう」妹の目の隈が凄い‥

「おはよう、また徹夜したのか?」

「うん、もう少しで3日は飲まず食わずで動き回れるスーパーエナジードリンクが完成しそうなの!!」

「何それ、健康に悪そうだなぁ‥朝御飯できているから顔洗ってきな」

「うん」

 このように我が妹は錬金術で色んなものを開発する。
 そして飛ぶように売れるんだが‥魔法薬って健康に悪いイメージがあるから苦手だ
 というより、毎度開発途中の物を、最終的に飲まされるから‥
 今回のスーパーエナジードリンクとやらも、試飲させられるのだろう。

 朝食を食卓のテーブルに並べる。
 シンプルに砂糖多めの卵焼き、
 フライパンで焼いた一次発酵で作るパンにコーンポテトスープだ!


「いただきます」「召し上がれ」

 俺の役割は、家事全般と食糧の確保が基本だが‥
 本当は、金銭で稼いで妹の学費に宛てたいんだ。


「じゃあ、ちょと俺はダラル爺さんの畑行ってくるわ」

「うん‥お兄ちゃんこれ、、」
 スッと小綺麗な木箱を渡される

「今日はお兄ちゃんの誕生日でしょう。あと‥、
 ギルド行くんでしょう?だからあげる!」

 照れくさそうに、早口で捲し立てあげる

 中を開けてみると、そこには灰色一色のシンプルなリングがあった。

「おー!格好いい‥我が妹の事だ、これ何かしら仕掛けがあるの?」

「そうだよ♪指に嵌めてこう‥空中に円を描いてみて」

「こうか?‥うおッ!別空間が現れた!?」

 フフンと、得意気な妹はこう語る

「これはね、私が前に発明した、魔法袋のリングバージョン。
 どんなものでも、どんなに大きくても、詰められる容量は無限、また円を描けば収納完了だよ」

 再び円を描いてみる。

「おお、本当に空間が戻った‥これなら調理器具や納品物だって、クエスト中に運べる‥」

 我が妹はやはり天才だった

「有り難う、これをうまく使ってそこそこ強い冒険者になって見せるからな!」

「うん‥でも無茶しないでね?お兄ちゃんがいなくなったら私は、、」

 妹が悲しむ顔は、もう見たくない。

「ああ勿論、冒険者になっても戦いには不向きだろうし、、薬草採集や納品クエスト中心になるだろうさ」

「え?お兄ちゃんは‥」

「ん?どした」

「‥なんでもない、どうせギルドで鑑定して貰えば直ぐ解るよ!」

「???」

 よく解らんが、まあいいか

「じゃあ、そろそろ行ってくるよ‥あ、ダラル爺さんところで畑作してから、ギルドで鑑定してそのまま依頼受けてくるかも‥そしたら今日は帰るの遅くなるから、作り置きの夕飯は魔力倉庫にいれてあるから食べておいてくれ。」

「わかった」


「じゃあ行ってきます!」

「行ってらっしゃい!」


 妹に素晴らしいプレゼントを貰った俺は、
 鼻唄交じりにダラル爺さんところへ向かった。



「おっす爺さん、今日も畑借りるぞ」

「おお、シモツキか!相変わらずくそ真面目じゃなあ‥儂の畑の一部を貸したとはいえ、お前の場所は良好な土になって良い作物が育っておる」

「せっかく貸して貰ったし、食糧調達できるなら良いもん育てて美味いものを妹に食べさせたいじゃんか」

「まあそれは一理あるがな?貸し出しといてなんだがその区域はとくに土壌が最悪だったんだが‥」

「だからタダ(収穫物数割り献上)で貸してくれたんでしょう?」

「だから驚いておるというか‥芋か豆くらいしか育たぬ土地を果物の木まで生やす程良質な土に換えるって、本当儂は80余念生きてきて初めてシモツキのような若造に未来があるんだと実感させられたわい!」

「お世辞でも、そう言って貰えると嬉しいね!」

「「ワハハハッ!」」

 今日は、いい天気だ‥もう少し手入れをしたら
 ギルドへ向かうとしよう。


 ~ギルド~


「ほえー‥おっきいなあ」

 クエストボードには沢山の依頼が、
 併設されたbarは、まだ昼頃だって言うのに酒を飲む冒険者がちらほらいる。

 取り敢えず受付カウンターへ向かう。

「ようこそ、サンサイ帝国フキのギルドへ!」

「今日で15歳になりまして、ギルドに加入したいのですが、その前に適正な職種を鑑定して貰いたくて‥」

「畏まりました、新たな冒険者様は大歓迎です!此方の、ジョブ鑑定魔石に手を触れて頂けますか?」

 水晶のような淡い赤色の魔石が、ステータスを計ってくれる。

「はい」手をかざす

「ふむ‥ん!?」あからさまに驚いた顔の受付嬢
「しょ、少々お待ち下さい」
 受付嬢は、カウンター奥の控え室へ向かった。

 バタバタと受付嬢と、なにやらお偉いさんらしき方が出てきた。魔石に出たステータス画面を眺める‥

「‥成る程本物だ」
 
 なにやら興奮気味の様だが、なんだろう?
 ユニークスキルでもあったらいいな‥

「キミが今日から冒険者になりたいという子か、名前は?」

「シモツキです」

「そうかそうか!おっと、申し遅れた私はこのフキのギルド所長を勤めるカリノスだ。
 いやぁ‥キミはどうやらとんでもない天職を初期からお持ちのようだ」

「え?」

「魔族や魔物が蔓延るこの世の中、
 力で成り上がれる冒険者は‥誰でもなれるし、なりたい職業だ。戦士、魔法使い、僧侶、盗賊と‥他にも数多の職種が存在するなか、ある職業‥
 ギルドも貴族も王族も喉から手が出る程手元に置いておきたい逸材、それは戦闘料理人!
攻守共に支援&戦闘も御手の物‥バフやデバフ、、魔物迄手懐けてしまう究極の職種‥最近は、滅多に存在しない職業ジョブでね、、、シモツキ君がその職業の適正であり、ステータスをみる限りそれなりにレベルがもう上がっているね‥普段何をしているんだい?」

 俺が戦闘料理人?

「幼い頃、両親がクエストの途中で死んでから、妹と2人で過ごしてきたのですが、食糧確保の為に畑を耕したり、家事全般したり、妹の実験体になったりするだけで、凄いのは稼ぎ頭の俺の妹ですがね。」

「成る程?ざっくり説明して貰ったが、
 なにやら納得いったよ。毒耐性付きで体力HPはその年にしては高い。スキルに(自動蘇生)や(目利き)があるし、ユニークスキルはこれまた珍しい、【創造】がある。」

「普段の生活が冒険者として役にたちそうですか?」

「むしろ、此方がギルドに加入してと懇願するものだが‥おっと、、その前に帝王に謁見の許可を貰わねば‥」
 
 いきなり城へ!?

「ごめんね?さっきも話した通り、王族も貴族も喉から手が出る程欲しい職業ジョブだからね。今のうちに報告して、シモツキ君は冒険者希望です!って伝えないと行けないからさあ。
 謁見の許可が下りたらキミの家に迎えをよこすから、今日は家に帰って待機してて貰える?」

「解りました‥ちなみに帝王との謁見ではドレスコード必須ですか?」

「我々ギルドが貸し出すから安心して!」

 頼もしいなあ

「では、シモツキ君また会おう」

「では失礼します」

 ギルドを後にする。俺がそんな凄いジョブになれるとは、実感沸かないなあ‥

 でも、頑張ればその分普通のジョブよりも賃金良いのかもしれない!

 早く帰って妹に報告しよう。思ったより早く帰れるから夕飯の支度しよう!
 キノコのパイユをメインにしますか。そうと決まれば市場へ向かう

 良い材料が安く手に入り
 沢山買ってしまったが、妹から貰ったマジックリングで収納したから楽チンである。
 帰宅後自宅で調理しながら妹を待った


「ただいま」「お帰り~」

「あれ?お兄ちゃん早いね」

「ふふ、妹よ実はな‥」事の経緯を話す

「やっぱりねえ、、あとは魔力MPは平均より少ないからそこをはね上げる薬をつくるね!」

「ちょいまち!え、なんで驚かないの?」

「だって‥私の実験データでお兄ちゃんのステータスやスキルは、何時でも観れたから」

 やだっ‥うちの妹は天才!

「取り敢えず夕飯、今日はキノコのパイユだぞ~」

「わあい!」

 俺も‥地道に頑張るぞ!

「ああ、そういやプレゼントで貰ったマジックリング。早速、買い出しで使ったけどさ‥便利すぎない?実質手ぶらで帰れたよ、本当に有り難う」

「実は、まだ改良の余地があるから、、
 材料が揃ったらバージョンアップさせてね?」

 やだっうちの妹本当に天才!




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