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第3章
食と住
しおりを挟むガロと別れ村へと辿りつくと、村の人は自分を見つけると笑顔で挨拶をしてくれる。
初めてこの村に来た時は、余所者など警戒され冷たくあしらわれると思っていたが、ここの人達はとても優しかった。
ここで生きていく術を教えてくれ、使っていない山小屋まで貸してくれた。
「よう、元気かアレン」
見覚えのある、若者の男が話し掛けて来た。
「あっ、カザロさん。こんにちは」
「元気そうだな。今日は何しに村まで来たんだ?」
「何か手伝う事とか、肉の捌き方とかを教えて貰おうかと思って」
「あ~なるほどね。……捌き方は教えてもらえるだろうけど、仕事とかは無いかも知れないなぁ。最近、山渡り が来てないしな」
「山渡り?」
「あぁ、そうか知らないよな。山渡りってのは、村から村へこの山々を歩いてやって来る商人達の事だ。定期的にやって来るんだけど、ここ最近は来てないんだよ。山渡りが来ないと物々交換や、山で収穫した物を金に変えれないから、みんな金が無くなってきてるんだ。だから仕事はないかもな」
アレンはガックリと肩を落とした。
「なんだよ、そんなに困ってるのか? この辺だと山の食料で自給自足出来るから、金なんて要らないくらいだろ?」
「それはそうなんですけど、これから冬になるなら小屋の隙間風が吹いてくる所も直さないといけないし、雪が積もるなら屋根とかも直したいと思ってたんで」
「ん? 山の木は切っても いいんだぞ。材料はタダで手に入るじゃないか」
「釘とかも欲しいですし」
ああ、なるほど。その様な表情を浮かべ、カザロは山を指さした。
「アレン、ここの山は大きく分けて二種類の木があるんだ。薄茶色の幹をしたのが白木と呼ばれ、柔らかく加工しやすい。濃い茶色をした幹をしてるのが黒木と呼ばれ硬い木だ。だから白木を板にして黒木を釘の変わりにして、小屋を直せるぞ。この村の家も今でこそ山渡りの持ってくる鉄の釘を使って建てられているけど、昔は白木と黒木だけで建ててたんだ」
山の木を見てみると、確かに色の違う木がある。
「もし黒木で作った釘でも固定出来なければ、黒木に絡み付いているツルの植物を使えばいい。伸縮性と弾力があって昔 は弓の弦にも使われていた物だ」
「なるほど。それなら冬が来る前に、小屋の補修が出来そうです」
お礼を言って、カザロと別れた後は村の人達に手伝える事は無いかと聞いて回ったが、やはり何処も仕事は無かった。
肉の捌き方にしても、村には肉自体が無いようで捌き方の話しか聞けなかった。
捌き方を教わっていた女が、何か閃いた様に話し掛けてくる。
「そうだ! あんた若いんだから山の動物狩って持って来てくれたら、おばちゃんがその肉捌いて、分前半分こにするってのはどうだい?」
そうか、その手があったか。それなら自分で捌かなくても肉を手に入れられる。
「それ良いですね! じゃあ動物を狩れたら持ってきます!」
「お互い得していいじゃないか!」
おばさんに礼をして村を後にすると、山小屋へと戻っていく。今日は収穫が色々とあった。まだ日は真上に登りきっていない。まずは小屋の修理からしようか。
小屋の近くまで来ると、木の枝に洗濯物を干しているマナの姿が目に入った。
「あら? 早かったわね?」
「ああ、仕事は無かったんだけど他の仕事が出来たよ」
小屋の中で探し物をしながら答えた。
「あったあった、ここに置いてたか」
木で出来た小さな物置から引っ張り出したのは、アレンが使っていた双剣だった。
「そんな物出してきて、狩りをする気になったの?」
「狩りもするんだけど、まずはこの小屋を直すんだ」
不思議そうな顔を するマナには目もくれず辺りの木々を見渡すと、小屋の近くの木も「白木」と「黒木」が丁度半々の割合である事に気付いた。
「材料の宝庫だな。これなら割と早く修理が出来そうだ」
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