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第3章
実力差
しおりを挟むアレンに隊長格の男が詰め寄った時、何処からか風を切る音が聞こえたかと思うと、矢が男の右腕に突き刺さった。
矢の飛んできた方向を見ると、弓を携えたマナがこちらに走って来ている。
「アレン!」
言葉少なくマナが双剣を投げてきた。
アレンは双剣を受け取り、剣を抜き構える。
その間もマナは男達に向かって矢を放っているが、先ほどの奇襲と違って矢は槍によって弾かれる。
「まだ仲間が居たか。……我々に手傷を負わせる事は、この国では死刑に値する。貴様らはここで息絶えるのだ」
男達は二手に別れアレンとマナそれぞれに向かってくる。
マナ一人で二人を相手するのは無理だ。そう思ったアレンはマナの元へ移動する。
しかしその眼前に槍が飛んで来て、民家の壁を貫いた。
「そう簡単に合流させると思ったか?」
アレンは隊長格の男にすぐさま向き直す。
「バカかお前は? 武器を離すとは!」
そう言って男に斬りかかった時、後ろから高速でアレンの横を槍が通過し、男の右手に戻った。
「バカは貴様の方だった様だな」
男は薄く微笑みながら、手元に戻った槍をアレンに向け突き出す。
アレンは身をよじったが、槍の三手に分かれた刃の1つが肩の辺りを貫いた。
アレンは肩を押さえながら後ろに下がる。
今のは見たことがある。
アンジの刀と同じく、魔法力で所持者に戻ってくる武器なのだろう。アンジの時は、ただ単に所持 者の元に戻ってくる武器だと思っていたが、「戻る」と言う事をどれぐらい操る技量があるかで戦闘の幅が広がるのだ。
肩の手傷によりアレンが片手しか使えぬと見ると、男は槍を唸るように操り攻撃を出す。
一見、闇雲に振っているようにも見える槍は、その一撃一撃が正確に狙ってきてアレンは防ぐのが精一杯で魔法を使う隙さえ無い。
「貴様、魔法は中々だが剣はイマイチの様だな!」
男はそう言うと、槍の柄の部分で双剣を弾き、そのまま槍を回転させアレンの腹部を横に斬り払う。
アレンは咄嗟に後ろに飛んだが、腹部に熱を持った痛みを感じた。
それは一瞬の事ではあったが、腹部の傷に気を取られた時。男がすかさず次の行動に移った事に気付くのが遅れてしまった。
男はアレンを横に切り払った後、体ごと回転し体重を乗せ更に斬りかかって来る。
その一撃はつい先ほどつけられた傷とは違い、アレンの腹部を深く抉った。
?
「強い」男の槍さばきに対する率直な印象を漏らした時、膝が地に着いた。
魔力を大きく失ってしまっているのと、流れ出した血でアレンは体の自由が失われて来たのだ。
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