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第3章
密約
しおりを挟む馬とも山羊とも思えない、その中間のような見た目をした動物の背に乗り深い森の隙間を駆けていく。
アレンとマナはコリダロス達と共に、この国の王宮へと向かっていた。
移動しながら聞いた話では、バルバロはこの国ではまだ悪魔の門を召喚していないらしい。
「悪魔の門とはただの神話だと思っていたが、まさか実在するとはな……。そしてそれを兵器として使っているとは」
コリダロスは信じられないと言った顔でしていた。
「……しかし、あのキャスタルが滅ぼすにはそれ位の大きな力が必要なのは間違いない」
コリダロスの独り言の様な言葉を聞いていると、アレンはふと疑問が湧きあがった。
「そう言えば、キャスタル は周辺諸国に援軍の要請を出していたはずだけど、なぜこの国をはじめ他の国たちも援軍を送って来なかったんだ? キャスタルが滅んでしまえば、次はその周りの国にバルバロが侵攻してくると分かっていたはずなのに」
それを聞いたコリダロスは答えにくそうな顔をしたまま黙ったが、少し時間を置いて答えた。
「……あの時、周辺国にはバルバロと密約が交わされていたのだ」
「密約? ……なんなのそれ?」
「バルバロのキャスタル侵攻に対して、キャスタルの支援をしなければ周辺諸国には危害を加えない。と言う物だった」
「そんな約束を交わしておいて、この国にも侵攻してくるなんて。そんな事をしてバルバロは世界の国々から制裁を受けて不利な立場 になるだけじゃないのか?」
アレンの言った事を聞いてコリダロスは悔しさと怒りが混じったような顔をした。
「始めからキャスタルと、その周りの国々すべてを手に入れるつもりだったのだろうな。キャスタルを制圧したあと速やかに拠点を置いたバルバロは、流れるように周りの国々を包囲した。こちらがそれに気付くころには、援軍要請も出す隙間のなかった。隣国と連絡を取ろうと使者を何名か送ったがそれっきりだ。」
アレンは疑問に思った。
バルバロは軍事大国と呼ばれているだけあって兵の数も多いが、この広い海の上を一つの船も通さないと言うのは不可能だろう。
人などを感知する魔法使いが居たとしても、そんな広範囲は検知出来るはずもない。
アレンが考えを巡らせている所に、マナが口を挟んだ。
「でも悪魔の門を使っていないとすれば、そんなに不利な状況にもならないんじゃないの? コリダロス位強い兵士も他にいるんでしょう?」
「確かにただの兵であれば、世界樹の加護を受けた我が国の兵の敵では無いのです。……しかし、奴らは恐ろしいものを持ち込んでいるのです」
「恐ろしい物?」
アレンが聞こうとした時、山なりに発光するものが見えた。
「お下がりください!」
コリダロスの部下が、アレン達をかばう様に立ちふさがった。
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