ブラインドワールド

だかずお

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『部族の儀式』

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光の道は、眩しいくらいの青白い光を放出し輝いている。

「何て、眩しいウキッ、あんまり目が開けられないウキね」

「確かに一体なんなんだ、この光は」
多村は目を少し開きながら、前を睨むような表情で、手探りで歩いて前に進んで行く。

「こりゃ、目が開けられないぜ、みんな離れるな」光堂が警戒する

それは、眩く輝き、なんとも美しい光の道
その、まばゆい光とは、違った意味で対象的に見えたのは、光の道から見える赤い河の色と雰囲気だった。
ドロっとした、何だか気分を重苦しくさせる様な液体が流れている

「これ血じゃないよね」とマサは苦笑いして冗談を言う様に言った。

「一瞬、私もそう思いました。でも、さすがに、この河がこんな色になるには、いったいどれ程の人が・・・」

光堂は、もちろん赤い河も気になってはいたが、前方にそびえ立つあの紫色のピラミッド、それに惹かれていた。
それは何処か神秘的にも見えるのだが。

ペレーは一歩踏み出すのに時間をかけながら、恐る恐る歩いている
「たっ、たのむから向こう岸に着く前に、この道が消えるなんてオチやめてくれウキよ」

その言葉に、一瞬、一同はドキッとする。
確かに、もし今この道が消えたら…
そんな事を考えると生きた心地がしなくなった。
光の道は眩しく、全体の風景は見えにくいのだが、しっかり見て見ると、道自体は透明に透けていて、下方の赤い河が光の奥に見えていた。

「結構高いよ、ここ」マサは、下に流れる赤い河を、覗き込むのをやめた。
ペレーの言葉に、落ちる事を連想したからだ。
五人は、一歩一歩落ち着かない心持ちで、反対側の岸に近づいていく。
早く着いてくれ。

「みんな、油断するなよ」多村は、今居る、この不思議で不可解な世界を、今一度皆に思い出させるように言った。
そして、つづけて多村はこう口にする
「これから何があっても、自分の命を生かしてくれ、どうしても危ない時は必ず逃げるんだ」
その言葉は、それぞれの身に、これから何が待ち受けているか分からないんだと言う事を、再び肝に命じさせた。
そして、もしもの時は友を見捨て、自分の命を選び生き抜くという約束も。
そんな状況下で果たして、そんな選択が出来るのだろうか?
ここにいる何人がその約束を守れるか分からなかった。
仲間が危ない時、本当に見捨てて逃げられるか?
光堂は祈るように、首に巻くみんなとの誓いのアクセサリーを、強く握りしめる。

どうか、みんなを守ってくれ

そして一同はついに反対岸に着く
辺りには、砂埃が舞っている、どうやら砂漠地帯のようだ
目の前に広がる道は、ピラミッドに通じている。
視界で見えていたよりも、ピラミッドまでは、随分距離はありそうに思えた。

「はぁーっ、無事についたウキ」ペレーはホッとし地面に座り込む。

「反対側に着いたくらいで、根をあげてちゃ大変だぞペレー」光堂は肩を叩きペレーを鼓舞した。
それは事実、自分自身の肩を叩き鼓舞しているようだった。
光堂の持つ、不安や恐れは自分の命が危険にさらされる事ではない。
この愛する者達が危険にさらされる事、それを何よりもおそれていた。

マナが前方を指差し言う
「ピラミッドにつく途中に、テントが張ってある地帯がありますよ」

「よしっ、行ってみるか、吉と出るか凶と出るかだな」多村は前に進み始める

「猿食い族ならアウトだな」光堂はペレーを見て、からかいながら笑った。

「頼むから、変な冗談やめてくれウキー」

「勇敢なるペレーは、どこいったの?」
マサのつっこみに、一同は、また爆笑
皆は、この状況下でも不安に負けない様、必死に明るさを保っていた。
怖気付いたら最期、もう先には進めない。
今までのこの場所の状況から、どんな想像を超える事が起こってもおかしく無いのだ。

「見てたら、結構近くにピラミッドがあると思えたんですけど、歩いてみると、なかなか遠いですね」

テントの見える場所までも、距離は結構あり、歩いても歩いても一向に距離が縮む事は無く、視界に見える場所まで、中々近づかなかった。

「確かに、まだ距離はあるな。いったんここらで休憩しないか?」と多村
みんなは地面に座り、持ってきた食料や水分などを補給する事に。

「あーっ生き返るな水は」光堂は空を見て寝転ぶ

ペレーはバナナ、マナはサンドイッチ、マサは酒を飲んでいる

「マサこんな時に酒か、大した奴だ」と多村が微笑む

「ちょっと排出してくるウキ」
ペレーは照れ臭そうに、離れた所に、木陰を見つけ歩いて向かって行った。

「あれっ、向こうのテントから馬に乗って誰か近づいてきてます」

「なにっ?」一同は身構える

「ペレー、いそげ誰か来たよ」マサは木陰にいるであろう、ペレーに向かって叫んだ。

ペレーには聞こえていないらしく、返事がない

「こっちから向かうつもりだったんだ、待ってやろうじゃないか」光堂は相手に恐れを見抜かれ、舐められない為にも、そう言った。
どんどん馬に乗った人達は近づいてくる。
そう、彼らの格好は映画でよくみるインディアンの様だった。
ここから見る限り、馬は四頭。
それぞれの馬に一人ずつ誰かが乗っている。

彼らは、ついにこちら側にたどり着いた。
「君たちは、よそものか?」

「そうだ」みんなは返事をした。

その瞬間だった、突然、槍を突き出し、光堂達全員の首元に突きつける
「すまぬ許してくれ、こうするしか他に手がないんだ」一人の男が言った。
光堂達は、馬に乗れと、命じられ歯向かう事も出来ずに、連れられていってしまった。

木陰で用を足したペレーは、みんなが馬に乗って去って行くのを見た。
あっ?
「おーいみんな、ヒドイウキー、置いて行くなんて」ペレーは血相を変えて馬を追いかけて走って行く。

光堂達は、テントの場所に連れてこられ降ろされた。

「どういうことだ?」多村が叫ぶ

「君たちには大変申し訳なく思うが、明日中に儀式の為、生贄がどうしても必要なんだ。

「なんだと、なんで俺たちが生贄にならなきゃならないんだ、お前らが勝手にやれ」多村は叫びつづけている

「すまないな、我々は、この部族以外の人間を生贄に捧げなければならない。これは、神からの命令なんだ」

「なんだ、そりゃ何処に、そんな神がいるんだ」光堂も叫ぶ

彼らは、黙って指を差す
指差された方角は、なんと、あの紫のピラミッドだった。
ある、その部族の女は、マナの顔を優しく拭き、泣いている
子供達、長老も下を向き、申し訳なさそうにしていた。
どうやら悪い人達には見えなかった。
一体彼らは、何に怯え、何故いうとおりにしなければならないのか?
あのピラミッドの中に、よっぽど恐ろしい奴がいるのか?

その時、女が泣きながら叫んだ
「もうやめましょう長老、こんなこと、彼らが犠牲になっても私達は、こんなこと永遠につづけられません」

「もう、私達が滅びる他ないのです」

「何を言ってるんだ貴様は、黙っていろ」一人の男が叫ぶ

彼らにも、どうやら事情があるらしい事が見て取れた。

「話をきかせてくれないか?」光堂は、じっと長老の顔を見つめ言った。
長老は下を向き黙り込んでいる

男が「長老こいつらは生贄です、聞く耳を持ってはなりません」

その時だった。
「みんなズルいウキー」
顔を真っ赤にしたペレーが近づいて来る

その瞬間

「ハッ、ハハーー」
その、部族の者達は顔を地面につけ、ひれ伏した

「どうなってるんだ?」
彼らは、ペレーを見ては一向に頭をあげようとしない

「なんなんだ、ウキ?」
ペレーはようやく、みんなが縄で縛られてるのを見て状況を察した。
そして、目の前の人達が、自分をおそれてなのか、ひれ伏してる事も、やる事は決まった。
「この者達は、わたしの仲間すぐに放すウキー」

「ですが、神の使い様、こいつらは明日の生贄でして」

「良いからはやくしろウキー」
ペレーは両手を振り上げ、彼らを、威嚇する素振りをみせた。

良いぞペレー、ナイス演技だ。みんなは心の中で叫ぶ。
ペレーの言動に怖れをなした彼らは、光堂達を解放し始める。

「そして、ペレーは事情を話せ」と長老に伝えた。
どうやら、目の前の部族達は、猿を神の使いと崇めているらしい。

「我々は、あそこに住む神の命令に従い、もう百年も昔から儀式をやっているのです。それは七日に一度、決まった日、決まった時間に、ピラミッドの入り口に一人、我々以外の血族の生贄を差し出さなきゃならないのです」

「そんなのやらないで、逃げれば良いウキよ」

「我々は何度も試みました。しかし、そんな事をすれば、全てばれてしまい、私達の村の人間は殺され、あの河に流されてしまうのです、一体どれ程の仲間が殺されあの河に流された事か…」
あの河の色は、やはり人の血だったのか?
いったいどれ程の人が殺されたというんだろう。

「もし、差し出せないときも村の者は、神によって殺されます」

「一体何者なんだ、そのピラミッドに住む神ってやつは?」光堂が口をはさむ

「不思議な力を持つ存在、まさに神です」長老は震えている

その時だった。
ピラミッドの入り口が大きな音をたてて開き始めた。
そして次の瞬間、不気味な声が、天に響き渡ったのだ。

「違う次元から集まった者達よ、こちらへ来い、特別に我がまねいてやるぞフッフッフ」
そう言い放つと、たちまち声は消えてしまう。

「ひぃー、ありえないウキ、天から声が聞こえたウキ、化け物ウキー」ペレーはテンパっていた。

「一体、なんだってんだよ」多村も驚いている

その時だった、部族の女が
「みなさん逃げてください、私はもうこんなこと続けたくありません、こんなことなら、滅びる事を選択します」女は涙を流しニッコリ微笑んだ。

子供達は震え
男達も悔しさからか、涙を流し立ち尽くしている

長老が突然、口を開く「その通りかも知れない、我々は生贄など、これ以上捧げたくはない それならば、神に歯向かい滅びようぞ」

「わっ、悪いとは思うけど、そっ、そうさせてもらうしかないウキねっ」ペレーはすぐに帰ろうとした。

すると、ペレーの身体に、最後だからと、沢山の子供達が泣きながら抱きつき始めたのだ。
すぐにその場から逃げようとしていたペレーは立ち止まり
「みんな・・・お願いがあるウキ」
ペレーが力を振り絞りつぶやく。
ペレーは自分を崇めてくれた、この人達を見殺しに出来そうもなかったのだ。
「その、お願いって言うのは」

「分かってる」

「当たり前だろ、いくぞ」

四人の身体はすでに、ピラミッドの方角を向いていた。

それを見てペレーは微笑んだ後、目をしっかりと見開き叫んだ。
「素晴らしい民達よ、この神の化身ペレー様が、助けてやるぞ、だからもう心配するな」

「わああああああぁあああー」
人々は、喜び 抱き合い 涙を流していた。

「ペレーは、本当に勇敢なお猿さんね」マナが微笑む

「当たり前ウキ」ペレーは力強く先頭を歩いている

もちろん光堂、多村、マサ、マナも、同じ気持ちだった。

「一発、そんな神ぶっとばしてやる」普段温厚なマサも拳を握り力を込めていた。

「よしっ、いっちょその神さんを拝みに行くか」

五人はいつも以上に力強く、深く、地面を踏み込み歩いて進む、そう、謎のピラミッドに向かって。
人々を、こんなに苦しめる奴は神なんかじゃない。
五人の行く手には、紫色の巨大なピラミッドが不気味に待ち構えている、まるで、大きな口を開き、今にも襲いかかって来るかの様に、そびえ立っていた。


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